戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1589/005.hmos

アゴスチニヨから布教長宛てに、嘆願が届いた。

 

アマクサに対し、殲滅戦を行う。

その前に、島内のパードレ及びイルマンへの避難指示を出されたし。期日は、今月下旬。

攻撃開始後はいかなる場合も島から脱出する者を見逃すことを許さない。

確実な退去を願う。と。

 

少し前に上陸したアゴスチニヨの兵が、島民の反撃によって全滅したという噂を聞いている。

アマクサ民がすごいのか、アゴスチニヨが劣化したのか。

両方なのであろうが、いいかげん潮時だから両者とも相手に敬意をもって話し合いに就いたらどうかねと思っていたところだ。まだ、やる気らしい。

 

それにしても我々に指図をするとは、のぼせ上がりすぎじゃないかね、アゴスチニヨ。

島の信徒が悲しがることを、こちらが呑むとでも思っているかい。

むしろ代理人として立つさ。

恥の上塗りをする前に、世間的には立場が上と思われている君の方から王者の貫禄を見せてほしいものだ。

教えを請いに来ましたと。

そんな姿勢が対話の第一歩になるんだぜ。わかってくれてほしいものだよ。

 

召集をかけ、20名ほどの義勇兵を選抜した。

さっそくアマクサ各地へ送りこむ。

現在カチウラで上長をしているパードレ・アフォンソ・ゴンサルヴェスを総司令官として、住民への戦術指導と迷いの払拭、士気の鼓舞につとめ、アゴスチニヨが完全撤退するまで見届けるべし。

残念ながら、兵装は提供できない。

今年は仕入れがなかったし、前の年はサリートリまですべてカンパクに買い取られた。

敵の火力を侮るなかれ。

食料と燃料、防寒具などはアリマじゅうから掻き集めてなんとか届ける。雪が降る頃まで耐え抜けば、敵の動きも停滞し、何らかの講和条件が提示されるだろう。

我々も誘導してみるがね。

では、よろしく頼むぞ。

 

地形について確認しておこう。

アマクサ全体は、大小100を超える諸島の集まりで、中心となるアマクサ島には最大領主のドン・ジョアンがカチウラ城を構えている。

同島の北西部にはシキと呼ばれる一帯があり、領主シキ殿はいわゆる五人衆の1人であるが、まだ洗礼をしていない。

7レグワほど東にシモ島ヒゴ領国の突端が見える。ウトと呼ばれるこの小さな半島に、アゴスチニヨは大きな前進基地をつくった。

ウトとカチウラを結ぶ線上。ここにアマクサ五人衆のうち3人の領土が集中している。東から、オーヤノ、コーツラ、スモト。

まっすぐ進軍するならこの順に戦闘が始まる理屈だが、アゴスチニヨは海賊なので、わざわざ陸地を突っ切る真似はすまい。

 

殲滅戦という言葉から、私はイセイ湾での戦闘を想起する。

アゴスチニヨがどれだけ小舟を大量に保有していても、アマクサを海上封鎖することは不可能である。

また、イセイ湾で殲滅されたのはイコ宗だったが、ここでは自立心に磨きをかけたデウスの信徒がお相手する。

アゴスチニヨよ、私があの戦闘から学んだ経験は大きかった。採点は厳しく行うぞ。指揮官として、有能なところを見せてくれよ。

 

その後、ドン・プロタジオから、アゴスチニヨが100名ほどの援軍を要請してきたとの情報が入る。

プロタジオはカンパクの子供を祝いにキナイへ行ってきたが、このときにアゴスチニヨやオオムラ領主ドン・サンチョらと一緒の班に入れられ、仲良く官位ももらってきたそうだ。そんな縁もあって断れない間柄になってしまったみたいだな。

アマクサ衆は敵兵の出身地など区別しないから、もしアリマ兵が陸戦隊の先鋒をつとめさせられたりしたら、全滅しちゃうだろう。と思っても言えるわけがない。

だいたい、コンパニヤがアマクサヘ義勇兵を送りこんだこと自体、言えない。

 

今回は、アマクサ以外の領主たちとの関係が、一時的にとはいえ敵対という位置付けになる。

せつないけど、これが政治というものだ。

 

ところでカンパク詣でには、ブンゴ国よりパンタリヤンも参列した。

ヨシムネは策を弄して日程をずらし、パンタリヤンの不在中に、ミョウケン領の家臣を呼びつけ断罪するという、昨年パウロのタケダ領に対して行ったのとまったく同じ政略を仕掛けた。

ただし、ヨシムネの目論見は、見事に失敗した。

 

大きな要因のひとつは、愚昧な大臣連中が前回の成功体験からなにひとつ工夫せず、同じ手をそっくり繰り返したことにある。

パンタリヤンたちは、当然攻撃がくるものと予想し、パウロたちとも連携をとって、対策を準備していた。

ブンゴの官僚連中は、領内の統治に不手際があることを、書類の粗を徹底的にほじくることで追及する。

パンタリヤンは一年間、かれらに追及させやすいようにつくった書類を提出し続けていた。

家臣たちは呼び出され、想定通りの指摘をされる。そこまでさせてから、それと同様あるいはもっとひどい他領の実績を一つひとつ丹念に持ち出して、これを参考にしたのですが、と言い返す。

弁解は、相手の側にさせるのだ。

下僚をいたぶる快感だけを期待して烏合していた白痴の群れは、最初は庇い合うものの、次第に仲間の不甲斐なさに我慢がならなくなって、お互いをひたすら罵り合うのだそうである。

 

用事を済ませてキナイから帰ってきたパンタリヤンは、この茶番劇を引き継ぐ。

この頃には大将ヨシムネも太鼓持ちのチカカタも、恥をおそれてほとんど喋らなくなっていたそうだが、なんといってもパンタリヤンはドン・フランシスコの末子だ。

兄の失敗談は星の数より知っているし、器用に立ち回る才能だけを磨いてきたチカカタおじさんをうまく乗せて滑らせる手練手管も身につけている。

阿呆どもを追い詰める間際で情けをかけてやり、ドン・パウロに自制心があってよかったですねと締めくくることによって、出来得る限り先輩の名誉と失地の回復も果たした。

ウスキに巣食うクソムシどもは、当分攻めてはこないだろう。かかってくるならもう少し知恵を足してからじゃないと。まあ、無理か。

 

ただ、実父ドン・フランシスコの墓所を破壊されたことは、もはや取り返しがつかなかったという。

坊主たちは死者を33年間弔うべきだという商慣習を持っているから、今後30年間、ドン・フランシスコは彼らの食い扶持であり続ける。

忌々しいことではあるが、今は、うまい奪還の手段を思いつけない。

 

この問題は、私が来日した37年前でも議論されていた。私だって幾度も民衆に問うた。

地上の生を終えられた先達を、後世でも讃えるのは大切なことだ。いつでも折に触れて、やったらいい。

しかし坊主はこれを、長期にわたり年度計画化する。

自分を招いて、食事と酒を振るまえ。それなりの金銭も支払えと強要する。

死者は、生者から搾り取り続けるための道具と化すのだ。

 

寿命を終える者からしても、認知も抵抗もできなくなってから33年間にもわたって家族を坊主に貢がせるための存在に自分自身がなるのだと思えば、心安らかに旅立てまい。

なぜこんな制度を、坊主以外の人間までが平気で容認しているのかは、日本の大いなる謎のひとつである。

もちろん、気付かせられたことで坊主の陰謀と訣別し信徒となる道へ入る者は大勢いるし、私たちはそのために来ているのだから、これからも説得を続けてゆく。

だが坊主は儲かるので悪の道に邁進し、人々を無知蒙昧なままにさせておくことに必死だ。

そんな輩が、ほんとうに、まだまだ多すぎて、うんざりもしているのだ。

知恵もつけずにかかってくる連中ばかりなのだが、ただひたすらに、うざい。うざくて、たまらぬ。

 

殲滅戦か。いい響きだ。

殲滅するとは、実に、小気味よいものだな。大いに肯定し、この手で遂行してやりたい。

アゴスチニヨも、とっとと気付いて、カンパクへ向けて、殲滅戦を始めやがれ。

 

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