戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1590/002.hmos

戦闘は終結した。御子割礼の祝日に。

 

全島で武装解除が始められた。徹底的だった。農具、調理器具なども立派な武器だ。没収される。

春になったら貸し出してもらえるという。ただし賃料を取られる。

納得する農民など一人だっていやしない。ドン・ジョアンだって、そんなことは百も承知だ。

だから、徹底的にやる。反乱の芽は根こそぎ摘み取る。

アゴスチニヨは前面に出てこない。占領政策は、あくまで対象者たちの領主によって行わさせる。

それも、カンパクから学んだやり方なのかい?

 

カトーは、揚々と引きあげていった。

治安維持は手柄にならない。不穏分子の憎悪は自分たちへ向かってくるのがわかりきってる。だから、迅速に撤収した。アゴスチニヨの船団に、戦利品を大量に積ませて。

 

カトーによって解放され、全面協力した坊主どもは置いていかれた。

ここからは、この坊主たちが、アマクサ全島民の憎しみを一手に引き受ける存在となる。

ジョアンは、かれらを逃さなかった。島民の大部分を占めるデウスの信徒たちよりもずっと厳しく監視して、渦巻く不満の捌け口として、有益に活用した。

おかげで信仰は守られた。

そう。結果的には、よかったのだ。

アゴスチニヨも住民たちも、未だ、敬虔な信徒である。

ドン・ジョアンも、シキも、スモトも、コーツラ、オーヤノも。アマクサの島民たちは皆、純真な信徒ばかりだ。

かれらの間に争いがあってはならないし、事実、ない。

悪いのは坊主である。

この島に悲劇をもたらしたのは、デウスに逆らうことをもって存在理由となす、頑迷な坊主たちだったのである。

人々は、ちゃんと理解している。前進しよう。正しい者すべてが幸福になれる世界へ向けて、この冬を乗り切ることを考えよう。

戦闘は終わったのだから、やっと。

 

シキに新領主がやってきた。

なんと、ヴィセンテだ。ドン・ヴィセンテ。

童顔だから似合わないな。

挨拶に行って、積もる話に花を咲かせた。

 

父ディオゴは、サカイで元の店を切り回している。

キナイでのデウス排撃はシモにおけるよりずっと過酷ではあるが、ディオゴの場合、いまさら隠しようもない。

ルカスが殺され、後継者を一から育てなければならなくなった。しかし商家として、彼の店は地域から必要とされている。役人ともうまく渡りをつけて、なんとかうまくやっているという。

 

ヴィセンテとアゴスチニヨは、ニエッキをナンガサキから呼び寄せたいと言ってきた。

ニエッキ以外のパードレではダメらしい。仲良し小良しだね、おまえら。

戻って、当人に伝えた。

ミゼルコルヂヤで、うんちにまみれながら働いていたニエッキは、少しだけ迷ってから、行くと答えた。

予想通りの展開だったが、代わりの下働きを見つけなくてはならないな。ステファノーニなんてどうだ。あいつにもこのくらいの懲罰は必要だ。

 

それからアリマへ戻り、ドン・プロタジオにも、おつかれさまを言いに行く。

最近、キナイの事情はプロタジオから聞くことが多いのだが、ここで、カンパクが東部方面軍を召集したとの情報を得た。

何年も延び延びになっていたが、いよいよ、やるのか。

春になったら出陣する予定だそうだ。

 

よい機会だから、4年前の西部戦線について整理しておこう。

 

87年春。カンパクは大軍を率いてオーザカを出発した。

シモでは数年前よりサツマの猛攻が脅威となっており、86年にはブンゴ王ドン・フランシスコが窮状を訴えに上京している。

冬のうちに先遣隊が二手から駆けつけていた。

イヨ島からの部隊はフナイに陣取った。アキ国を経由して来たシメアンの隊は、アカマからブゼンヘ入ってわざと時間をかけながら進路上の小城を制圧しつつ、本隊の到着に備える。

およそ戦闘集団とは思えない陽気な物見遊山一行が、だらだら時間をかけて、シモ入りした。カンパクに名所観光させながら。

先頭ではサツマを圧迫し本国まで追い詰めるが、とどめは刺さず、過去の暴虐を赦免し新たな国境線を策定することでシモの平定を完了。

ファカタの復興にも全面支援をすることで、カンパクの人気と信頼を一気に高めるなど、きわめて巧妙な計算に貫かれていた。

 

仕上げは、デウス追放令だ。

いよいよシモを立ち去るその直前に、我々の自由を奪った上で遂行された。

まんまと罠に嵌められたことは今も痛憤でならない。私はそれ以前より、カンパク=ハシバをのさばらせていては危険だと警鐘を鳴らし続けていたのだが、追放令以後も奴はますます凶暴化し盲目的に従う手下を養い育て超越的な支配力を誇示して今日に至っている。

 

この事実をもとに、本年始まる東部戦線を予想してみよう。

 

計画自体は87年すでにあった。シモから凱旋してそのまますぐ向かう可能性すらあった。

遅れた理由のひとつは、カンパクの後継者をつくりあげておくという猿芝居のためであっただろう。それも滞りなく片付いた。支配領域全土から領主たちを呼びつけ、かれらの忠誠心を確かめた。

 

……それをしておく必要を感じるほど、東方の敵は強大なのか?

 

日本全土、とくにカミ島の東北部は、もともと不鮮明な日本地図の中でもとりわけぼんやりとしている。

カミ島とは呼ばれているが、東北の先が海なのか、大陸につながっているのか、実は日本人も知らないのだ。そこは真夏でも雪山に閉ざされた秘境であり、全身毛むくじゃらの大猿が常に腹をすかせている魔界らしい。

一千年ほど昔、ミヤコから派遣された軍隊が、原住猿を駆逐して領国を樹立させた。その子孫たちにカンパクへの絶対忠誠を誓わせ、服属させようというのが今回の遠征だ。

クヌカ地方も雪深いが、その比ではないらしい。しかし夏の間に結着がつくことを、プロタジオでさえ疑っていない。

いまのカンパク軍を手こずらせるほどの軍隊を東北の領国が有しているなら、とっくに向こうから攻めてきているはずだからという。

あのカンパクが、敵の偵察をすくなくとも4年以上行ってきた上での出征だ。サツマほどの抵抗も見せないのではないか。そんな楽観論さえ谺する。

 

カンパク・ハシバの旧臣ですら、まだまだ領地にありつけていない者は多い。

西域が平定されてしまった今、東北は、最後の勝負どころだ。

初陣を希望する諸将が、我をこそとカンパク詣でを続けてきた。なるほどカンパクとしては、仮に東北勢が自分から服属を願い出てきたとしても呑めまいな。

言いがかりをつけ、戦端を開き、武力で制圧し、新たな国境線を敷くという、そんな猿芝居が必要になる理屈だ。

 

もちろん私としては、そんなスンナリ片がついてほしくはない。

東北諸国にはサツマ以上の闘志と戦闘技術を求めたいし、万年雪の戦場という環境に特化した戦術を駆使してカンパク軍の腑抜けどもを翻弄し、その戦力を削り取っていただきたい。

カンパクからの講和を蹴りつけるくらいの意地を示せれば上出来だし、本音はそこまで期待する。

 

この夏、もしマニラからの艦隊が来てくれれば、カンパク軍を背後から脅かすことができるのだがな。

間に合うかどうか。

こればかりは、予定に組み込むわけにはいかない。

 

シモの国境線だって、安泰ではない。

カトーは、アゴスチニヨがいかに指揮官として、領主としても不適格であるかを、外連味たっぷりに中央へ報告するだろう。

アゴスチニヨは降格。最悪その前のヒゴ王と同様、処刑されるという展開すらありえる。

カトーが、お仲間の坊主を代替の領主に推薦すれば、容れられよう。

アマクサは奴隷狩りの産地、または軍事演習基地として、かれらに再利用される運命をたどるかもしれない。私は、そこまで想像してしまう。

 

カンパクが生きている限り、この流れは止まらない。一刻も早くその息の根を止めなくてはならない。

その後、日本はふたたび戦乱の世へと回帰するだろう。

それでいいと考える。

いったん、すべてをぶちこわすのだ。洗い流すのだ。忘れよ。カンパクというおぞましき太平の時代を忘れさり、そこから新しく生み出すのだ。

 

生きとし生けるもの皆自然のままに育ち羽ばたく、デウスが創りし大地とともに、人間が健やかなる理性をもって自由と責任を確かめ合いながらこの世の生をせいいっぱい享受できる、そんな正しい世界をとりもどすべきなのだ。

 

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