戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1565/016.hmos

やさしいヴィレラは、きもちわるい。

 

イイモリにおけるヴィレラは、ミヤコにいたヴィレラと、まったくの別人だった。

山羊の目をしていない。

私にかける言葉が丁寧。

他の人にも礼儀正しく模範的な態度で接し、私の体調をことのほか気遣ってくれ、手を握って勇気づけようとしてくれる。

こんなの、ヴィレラじゃない。

 

ロレンソや大小ジョアン、その他少年たちも、違和感を抱いているのじゃないか。

ミヤコにいた時より明瞭に、私へ近づこうとしなくなった。

ヴィレラのいないところで、フロイスと何か話していましたよ、なんて告げ口されると、あとがこわいのかな。

そんな風に考えるべきではないのかもしれない。私の心が穢れているのかもしれない。

お腹がすきすぎて、でも食物を胃が受けつけなくて、あれから何日経ったかもよくわからない状態でこうしていて、少し気が変になっているのかもしれない。

ヴィレラは、変わってないのかもしれない。

世界は美しいはずだ、きっと。

 

そんな療養をしながら聞いた、最新ミヤコ事情。

 

ミヨシドノ政権の樹立は、どうやら絶望的となったようだ。

いまさらだけど、反乱を起こす前に、ダイリサマやフォッケ宗らへ、根回ししておくべきだったんじゃないかなあ。

計画が漏れる危険は増えるけど、そんな話は聞いてないぞと急な対応を迫られる側にも、都合や諸事情があったりするでしょうから。

せめて主要な親分衆には伝えておいて、共犯関係を築いてから、事に及べば、もっと手際よく政権交代できたのではないでしょうか。

いまさらだけど。

 

殺されたクボウサマは、アシカンガという家名の一族で、13代目にあたるという。

妻も子も母も皆、殺されてしまったけど、遠い親戚がアワにいて、その人を14代目として政権を立て直すという方向で、調整が進められているということです。

日本を構成する主たる3島の、カミとシモに次ぐ、もう一つがアワ、と聞いて、イヨではなかったですか?と尋ねると、キナイ語ではアワというらしい。

日本語って、ほんと、むつかしい。

 

ヴィレラは、このアワへ行って、14代目に布教許可を再発行いただくという。

 

ダイリサマの出した追放令が、はたして従来のクボウサマ発行許可状の内容を無効化せしめるものなのか。

追放令の方が日付が新しいこと、13代目は死没していること等鑑みて、状況はきわめて不利です。

なのでこれを、新クボウサマに確認していただき、叶うならばダイリサマへも追放令の取り消しを願う方向へ、つなげてゆきたい。

 

最悪なのは、14代が何も知らずミヤコへ行って、フォッケ宗坊主どもに言いくるめられ、ダイリサマの勅令を追認、という事態になること。

可能な限り、否、不可能を可能にしてでも、14代へ我々の潔白と熱意を伝えねば。というわけです。

献上品を山ほど持参して、懐柔作戦に臨むということであります。

 

ここまで大きな話になってくると、私の出る幕ではありませんね。パードレ・ヴィレラに全部まかせる他にない。

しばらく帰ってこなくていいから、絶対に成功してきてください。

デウスの御加護が、あらんことを。

 

 

体調がよくなってきたので、ここへ来て以来気になっていたことを、城の家臣に訊いてみた。

朝夕、エスピンガルダの訓練をされてますよね?

軍事教練ゆえ、はぐらかされるかな?と思っていたのだが、いともあっさり教えてもらえた。

イイモリでは山の中、サンガでは川へ向かって、毎日、射撃の練習をしているのだという。

 

エスピンガルダ。

エウロパでは戦術に革命を起こした。兵が携帯できる遠隔武器であり、誇り高き騎士道を時代遅れの遺物へと変えた。

日本で複製されたものは、テッポウと呼ばれる。鉄の炮を意味する。

実物を見せてもらうことができた。

素人目だが、ポルトガル水兵たちの使うムスケットに酷似している。

軽い。口径は、やや小さめ。

決して、粗末な出来ではない。

 

練習で一斉に撃つ音を聞く限りでは、精度も高いことがわかる。

すぐれた者になると、飛ぶ鳥を狙い撃ちさえできるとか。

これは思ったより、えらいことだ。

日本人の恐ろしさを、あらためて噛みしめた。

 

 

サンガ城には、壮麗な聖堂がつくられていると聞いていた。

山を下り、小舟に乗って島へ渡る。

小さいけれどもよく整えられ、手入れもゆき届いた愛らしい庵が、そこにあった。

わざわざ対岸の山から杉材を運んできて、組み上げたという。城主サンティアゴ殿自慢の建築だ。

専属管理者のアゴスチニヨと共に、家臣たちの前で厳粛なるミサを捧げた。

ヂシピリナの音も、川面に響きわたった。

 

 

ヴィレラが、アワより戻った。

口もきいてくれなかったところから察するに、交渉はうまくいかなかったらしい。

しかし門外漢が言うことでもなかろうが、根回しの第一段階だと割り切れば、いいんじゃないかな。

ロレンソによれば、14代本人が話だけは聞いてくれたというし、感触は良くもなく悪くもなかったそうだから、成功だと考えようよ。

誰だって、一発目からうまくいくわけがないさ。

粛々と、地道な努力を積み重ねることで、いずれは、仲良くもしてくれるだろう。

あきらめず、交渉を続けるんだ。

君もそのくらいの度量を、持ったらいい。

 

とはいえ僕は、そんな器でもないからね。

そろそろ、次の手を打ちたい。

ここにパードレが2人いても効率が悪いと思うし、ミヨシドノとの連携はヴィレラに任せるのが一番だろう。

僕は、サカイへ行きたいと思うんだよ。どうだろう。

 

ツテはある。ディオゴ殿のもとへ、厄介になろう。

そして、サカイで、出来る限りのことをやってみる。

 

いともあっさり、許可がもらえた。

さらばイイモリ。

そして、よろしく。僕のサカイ。

 

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