戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1565/020.hmos

ヴィレラが、サカイへやって来た。

 

訪問ではない。移住である。

少年従僕たちをゾロゾロと連れてきた。

私の住んでいたボロ家を一瞥し、鼻でせせら嗤い、立ち去った。

 

数日後、サカイ教会が誕生した。

ミサを手伝えと呼び出された。

ディオゴ殿と子供たちもやって来て、ヴィレラとの再会を懐かしがった。

 

ヴィレラと少年たちは教会兼住院へ住むが、私は引き続き、ディオゴ殿のあばら家へ厄介になることに決めた。

ただし、日中は教会へ通って、聖務を行う。

外聞が悪いので従僕のような仕事はしないように。と注意されたのだが、そもそも間違ってないかヴィレラ。

私もパードレだぞ。

おまえの召使いじゃない。

炊事洗濯掃除に買物は、お抱えのドジコスたちにやらせたまえ。

 

目下、ミヨシ家では内紛が起こっている。

大ミヨシドノの下に何人もの小ミヨシ殿がいて、小競り合いが止まらない。

頭領が新クボウサマになれていたら、全員が大儀ある官職につけたのだろうに。それが御破算になったものだから、不満も噴出しているのだろう。

軍人ばかりだから、口喧嘩ではすまない。

そのうち、一波瀾あるかもしれない。

 

イイモリ城は現在、大ミヨシドノの息子でサキョウ殿という人物に支配されているらしい。大ミヨシドノは戦場にでも出向いているのだろうか。

悪いことに、サキョウ殿は邪宗にかぶれている。

ミヤコでの追放令後は公然と城内の全信徒に棄教を迫るようになった。

川向こうのサンガ城へも、その暴政を押しつけた。

サンガ城主サンティアゴ殿は抵抗したが、唯一の補給路を押さえられては為す術もない。

だが、デウスを裏切ることなど、できはしない。

家臣を連れてサカイヘ隠居を決めた。

これに、ヴィレラもついてきたわけだ。

 

新教会は、大きく立派な邸である。サンティアゴ殿が自由にできる物件の中から、特に良いものが提供された。

その上、ヴィレラは潤沢なカネを持っている。

コンパニヤからの予算はまずブンゴで振り分けられ、ミヤコへも送られてくるが、連絡員は直接ヴィレラへこれを届ける。私には報告すらされない。

それでいて、私がサカイヘ来て3週間も経つのに何一つ活動をしていないだと。言いたい放題だ。

ひどいだろう。

デウスはどうしてこんなクソヤロウを放置しておかれるのか。

あとでたっぷり利息をつけて精算してもらわなくては、肚の虫がおさまらない。

 

献堂式に参加されたディオゴ殿は、ヴィレラとは表面上、たいへん親しそうな素振りを見せていた。

その脇で、モニカやヴィセンテは、軽い挨拶にとどめている。

私は外野に撤していた。各人各様の、肚の探り合いを想像しながら。

ヒビヤ一家の内紛も、ミヨシ家並に深刻だと感じる。

 

モニカは、父親が余計なことを口にしないか、一言も聞き漏らすまいと神経を張り詰めさせているように見える。

ディオゴ殿は、子供たちを常に全員視野へ入れつつ、表情に変化が生ぜぬかどうか窺っている。

ヴィセンテは教会に置かれている最新型の機械時計を夢中で眺め回している。

モニカの2人の妹は、友達とのお喋りに忙しい。私には、まだ区別がつかない。

奥方は来ていない。

 

 

私がミヤコから担ぎ出された日に教会へ訪れ輿と舟を用意してくれた、あの、フィウンガ殿と再会した。

フィウンガ殿もミヨシ家の一族である。遠縁ながら、発言力は大きいらしい。

地元はサカイだそうだ。私が来ていたことに驚いていた。

ぜひ説教を聴いてみたいから、日を改めて邸へ来られたい、という。

立派な人物である。

私が請われたんだから、私が行くべきであるが、ロレンソを連れていくことはできるかな。情報蒐集もしたい。

ああ、課題が山積みだ。

 

 

教会設立を境に、モニカが私の住居を訪れなくなった。

毎日欠かさず、ヴィセンテを伴って、教会へは来ている。私より早く来ていたり、私より遅くまでいることも珍しくない。

なにせ美しく、気品のある少女だ。

教会に住み込んでいる少年・青年たちの仕事ぶりがめざましく向上し、彼女目当ての男性求道者も増える一方である。

隙あらば群がる悪い虫から彼女を守る役目を任じるヴィレラは、常にモニカの傍にいる。邪推する余地も無いほど、あからさまに。

教会におけるモニカの存在は、ヴィレラの絶対権力を最大に高め、かつ、強固にさせる。

 

モニカは、ヂシピリナをしない。

これはメステレ・フランシスコに始まる日本布教史上、大変革の兆しだ。

日本では古来、性的な意味での純潔が軽視されてきた。

いろんなイミで、ゆるかった。

人前で堂々と尻をまくり上げ、四つん這いになるという嬌態が流行するのも、そんな国民性ゆえだった。

私たちはこれを恥ずかしく思いながらも、順応することを強いられた。つい、慣れさせられてしまっていた。

しかしこれは本来、とてもおかしな、いけないことだったのだ。

モニカはそれに気付かせてくれた。

 

彼女を慕う男どもは、より稀少価値を高めた彼女の肉体に対して、欲望を尖鋭化させるようになる。

容易に見ることすら叶わない、それを、見たい、触れたい、自分だけのものにしたいと、強烈な渇望にとらわれるのだ。

日本人でもイルマンになる道は開かれているが、そこまで目指す者は、ごく僅かである。ほとんどは、いずれ妻を娶り、家庭を築く将来を夢見ている。

もちろん、それで構わない。

ただ、デウスの信徒であるからには、肉欲に衝き動かされた選択であってはならない。

君たちには、霊名とともに、高潔なる精神性が与えられているのであるから。

 

モニカは、あまりにも優れた資質を持つ、1000年にひとりの聖乙女である。

少年よ。君は、彼女と釣り合うだけの人間力を、磨いているか。

彼女は、生涯で一度だけ、本人同士の意思に基づく愛情を与え合える相手とのみ結婚することを、デウスに誓っているのだぞ。

君は、彼女に愛される資格を持たねばならない。

候補者となれる男は、何十人といるだろう。その中から、たったひとり選ばれ抜く男になれ。

その覚悟と自信が無いならば、モニカをあきらめ、君にふさわしい相手を選び直すのもいいだろう。

決めるのも、努力するもしないも、君次第だ。

 

なんてことを、若者たちに、説教してやりたいところもあるわけですがね。

ここにヴィレラが入ってくると、美しい話じゃなくなるんです。

いっそ、少年たちとヴィレラを反目させる、いい機会なのかなこの状況。

ああいかんいかん、仕事仕事。

 

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