戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1565/022.hmos

トマスが、シモから戻ってきた。

ミヤコでは僅か4箇月の間に驚くべき事件が重なったが、シモでも、烈しい変化があったことを知る。

 

3年前、私はオオムラ領アジュダの港へ上陸した。

その夏のうちに、反乱が起こる。教会と村は焼かれ、交易港としての生命は終わった。

トルレスはアリマへ移り、私はタク島でフェルナンデスと1年間過ごした。

 

翌年の定航船は、2隻がアリマへ行き、1隻はフィラドに碇泊した。

私がフィラド領主フィッシュと交渉し、交易を許可する代わりに教会設立と布教を認めさせた。新しく来日した3人のパードレのうち、誰だったかに、あとを託した。

すべてが慌ただしすぎたせいで、もう何十年も前の出来事のようだ。

 

その年の暮れに、私はミヤコ派遣を命じられた。アルメイダと一緒に、内海を横断した。

来て早々、何度も殺されかけた。ミヤコではヴィレラという悪魔にいじめられ抜いた。

無慈悲なダイリサマが追放令を発した。私は安住の地を求め、サカイへとやって来た。

ヴィレラが後からやってきて、大王気取りでふんぞりかえっていやがる。

これが、今日までの、あらすじだ。

 

 

今年の定航船は、ファクンダという港へ投錨した。

知らない地名だ。オオムラ領だという。

ドン・バルトロメウが復帰したらしい。それはうれしい。

アジュダほど恵まれた環境ではないが、今後、私たちの拠点として大いに栄えることだろう。

反対派を刺激しないよう、土地の名前を変えることはしないそうだ。

ファクンダか。3年前の私なら、発音しにくいと感じたはずだが、今は、なめらかに言えるよ。

ファ、クン、ダ。

 

「その福田で、死人が出た話は、伝わっているかな?パードレ・フロイス」

 

いや、まったく聞いてない。いったい、誰が?

 

「定航船は、昨年の情報を頼りに、口ノ津と平戸へ、分散して向かった。

平戸沖に隠れていた一隻へ、新港・福田へ向かわれたしとの連絡が遣わされた。

出帆する際、平戸の舟に発見された。平戸衆は、商船から個人の漁船まで、なんとか一隻だけでも平戸へ碇泊して商売をしてくださいと懇願するつもりで、大勢でそのナウを追いかけた。

福田まで来たところで、港にいた水兵どもは、仲間が海賊の集団に追いかけられていると早合点したようだ。大炮をぶっぱなして、撃退した。

肥州松浦公は、領民の前で、自らの不甲斐なさを詫び、切腹までしようとしたそうだ」

 

ふうん。結局、フィラドには入港しなかったんだよね?

いいことじゃないか。

 

「パードレ・フロイス。平戸には、君が交渉して新築させている教会が、今年中には完成しようとしているところであり、駐在のパードレ・コスタがなんとか取りなしをして、やっと落ち着いた次第なのだ。

誤解があったとはいえ、戦争にならなかったことが不思議なほどの禍根を残す事件だったのだぞ」

 

ミヤコでも僕は何度も日本人に殺されかけた。僕たちにとって、マルチリヨは覚悟のうえのことなんだ。

落ち着いたのなら、もういいじゃないか。

ナウ一隻ぶんの収益って大きいんだぞ。

みすみす、フィラドにくれてやることはない。

 

そして今年は、3人のパードレが来日した。

その詳細は、トマスが託されてきたぶ厚い書翰の束に書かれているそうだ。

あとで、じっくり読もう。

それより今は、トマスからの、生の報告を聞きたい。

 

「生の声だ?

ならば、言わせてもらおうか。

フロイスよ。君とヴィレラの仲の悪さを、パードレ・トルレス以下、シモの全員が嘆いている。なんとかならんのか」

 

ええっ。それは、心外だな。

僕とヴィレラは別々にシモへ報告を送っているが、奴もどうせ僕の悪口しか書いてないだろうことは、わかりきっている。

判断はトルレスたちに一任するが、私は正々堂々と、そうなるに至った根拠を説明している。

ヴィレラの報告なんて、以前と同じ調子なら、狂人の愚痴以外の何物でもないだろう。

アルメイダは連れて帰るほどひどくはないと判断したが、そんな審査にかけられるような奴だったんだよ。前からね。

仲良くしろだって?僕にも狂えというのかい。

すべての活動費をヴィレラに握られている時点で、僕にできることにも限度がある。

そこにも配慮を願いたいね。

ちなみにこれも、文書で何度も何度も訴えてきたことだ。なのにシモからは、便り一つ来やしなかった。

今回、やっと来たようだから、読ませてもらうけど。

 

「活動費については、今年は特例として私が預かってきた。私の判断で適切な額を君たちにそれぞれ、手渡すことになっている。

詳細はその書翰にも書いてあるから、同意したら署名をくれ。ヴィレラにも、私から、同じようにする。

君たち同士が話し合いを設けるなら、それは好きにしてもらって構わない。

以上のことを、諒解してもらえるかな」

 

承知した。

トマス、君にはほんと、迷惑をかける。

デウスの御加護を、私からも祈ろう。

 

 

その夜、あばら家で、蝋燭の灯りの下で、じっくり読んだ。

僕は書くのも速いが、読むのだって速いんだ。

さて、対策を考えよう。

 

皆の心配のほどは、わかる。

全員が、腫れ物に触るような、あたりさわりのない、優しすぎる言葉だけを使って、僕の半年間の苦労に精一杯の同情を寄せてくれている。

 

いらつくんだよな、こういうの。

 

ますます、肚が立ってくる。

同情するなら、私の怒りに同調してくれよ。

おまえら、拒絶しかしてないじゃないか。

しっかり距離をとって、ヴィレラにだって、同じ調子で同情してるんだろ。

お見通しだよ。

そんな白々しさに縋ってたら、狂っちゃうよ。

ヴィレラみたいに、なっちまうよ。

 

今年の新パードレ3人は、イタリヤ人と、カタロニヤ人と、グラナダ人だった。

ポルトガル人は、いないのか。

ゴアでも、ほとんど話したことのない人ばかり。顔もよく覚えてない。

 

せつないなあ。おやすみ。

 

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