戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1565/026.hmos

ミヤコの信徒たちが、日々、坊主の嫌がらせに苦しんでいる。

なんとかパードレ戻ってきて救ってください、との切実な嘆願が寄せられる。

ヴィレラが私に、お前行ってこい、と命令する。

 

断る。

 

ヴィレラの手下が一人、ミヤコへ旅立つ。

戻ってきて言うには。

どうやら罠です。追放令に背いたテンジク坊主を捕まえて、処罰する作戦のようです。

なんだやっぱりフロイスを行かせればよかった。なんて言ってましたよヴィレラが。という声が、あちこちから聞こえてくる。

 

私は、デウスへ祈る。

正しき者は、正しき道へ導かれるものなのです。

 

 

町から子供が姿を消す。

テンジク坊主が家へ連れこんで、悲鳴がして、それきり……といった噂が広まる。

私のあばら家へ、そのたびに役人がやってくる。

またですか大変ですねと言ってタタミの下まで全部見てもらう。

そのうち子供は腹を空かせて家へ戻ってくる。

親たちも、噂の拡散者も、誰ひとり謝りに来ないから、そんな噂もなんとなく聞いて、そうかい無事でよかったねとつぶやく。

 

私は、デウスへ祈る。

私は常に潔白です。だから堂々としていられるのです。

 

 

私は決して子供を食べませんと日本のカミに宣誓せよ、と求められたことがある。

誓うまでもないことだし、あなた方のカミってのは坊主どもの手下でしょう。

ふざけてます。

まずはあなた方が、御主の前に跪きなさい。

そのときには、私をカミの前で弁明させようと考えていたこと自体が、愚かしい躓きであったことを、あなた方は理解されていることでしょう。

一日も早く、迷いと訣別されることを勧めます。

 

あいつらカミに誓えないって拒否しましたぜ、やっぱり喰ってやがるんだ、と遠吠えが聞こえてくる。

私は、デウスへ祈る。

愚か者は、賢くなろうとしないから、愚か者なんですね。

 

 

処女懐妊しました、とコンヒサンする少女が、後を絶たない。

これまでは、生んで育てるか、生んで人にあげるか、生まれる前に殺すか、生んだ後で殺すか。

家族ぐるみでコソコソやっていたところが、

絶好の抜け道を見つけた!

と言わんばかりの勢いで、皆、親を引き連れて、教会へ駆けこんでくる。

私がマリヤ様となったことを認めてください!と。

 

その必死さには脱帽するが、私は、冷徹に諭す。

聖母マリヤを騙るなど、おこがましい行為です。

真の処女懐妊であれば、町じゅうの信徒にそれとわかる、大天使ガブリエルからのお告げがあったはずです。

虚偽と姦淫は十戒に違反する大罪であることを、あなたは認めなくてはなりません。

なおかつ、すでにあなたの胎内に宿ったいのちを、あなたは殺してはなりません。

その子の父なる者との結婚が、唯一の解答です。

そのためになら、私は助力を拒みません。

 

ほぼ必ず、泣かれる。泣きじゃくられる。

コンヒサンを終え、部屋を出ると、これもほぼ必ず、父親から殴られる。

容赦ない殺意が、私だけに向けられる。

かれらが教会へ戻ってくることは、稀である。

 

私は、デウスへ祈る。

間違ってないですよね?

私は、正しいことを言ってるだけですよね?

 

 

ブンゴには、孤児院があった。

始めてから数日で、受け入れを中止したという。

日本では、子供を欲しがる親も多いが、それ以上に望まれぬ出生も多いことを実感している。

大都市サカイでは、人々はより強く外聞を重視するため、もし孤児院など開設すれば、何百人もの子供が持ち寄られるだろうことを、容易に想像できる。

実際、現状として、この街のあちこちで、今も子供たちはひっそりと殺されているのだろうか?と気になった。

 

こういう、口にしづらい質問は、私の腹心の部下、トマスへ訊くに限る。

 

トマスによれば、一番無難なのはテラに提供することだそうだ。

サカイ周辺ならば、オーザカのイコ宗が子供の受け入れに積極的らしい。

ただし、我々の活動とは主旨が正反対。乳幼児は敬遠される。

そろそろ生意気ざかりで手のつけられなくなってきた男の子が邪魔になってくると、イコ宗へ放り込む。というのが一般的な処分方法だ。

 

「儂は本願寺に入ったことはないが、あそこは修練の厳しさでは群を抜いとるからの。

どんな悪ガキでも、一年過ごせば、たくましい極道者に変わりおるぞ。ケツの穴を広げてな」

 

ホンガンジというのが、イコ宗の本拠地であるテラの名だ。

放りこまれた子供が、もとの家に、戻ってくることはあるのかい?

 

「本人と、親と、寺と、全員がそう望めば、そういうことも、あるんじゃないか。知らんがの。

まあ縁切りされて送られることがほとんどじゃろうから、たいていは、足軽になるか、他で仕事を見つけるか、坊主になるか、していくと思うがのう」

 

アシガルとは、雑兵のことだ。

最前線で敵を襲い、奪い、焼く。

着の身着のままとびこんで、隊長に取り立ててもらう。

最も下層の戦闘員だが、昨今の需要は著しいという。

戦争がかれらを生むのか、かれらが多いから戦争になりやすいのか。

坊主どももこれに分かちがたく結びついているという現実には、暗澹たる未来しか感じない。

 

 

サンティアゴ殿が、挨拶にやって来た。

急遽、サンガ城へ戻ることになったという。

ミヨシ家の内部抗争が、ついに、火を噴いた。

イイモリ城では、二派が激突。大ミヨシドノとその息子が、追い出されたという。

 

この息子の方から、サンティアゴ殿は棄教を迫られ、拒んで、隠居したわけであるが、その元凶がいなくなったので、戻ってきて兵を率い共に戦ってほしい、と反乱側から請われたので、復帰するのだ、という次第である。

 

「ヴィレラ殿、フロイス殿。

三箇城の聖堂は、無惨にも破壊されたと聞いておりますが、私が戻るからには、再建させてみせます。

来年の四旬節には、ぜひ、おいでいただきたい。

デウスの御加護を、ふたたび三箇へもたらすために、お力を貸していただきたい。

それでは、御免」

 

ヴィレラは、複雑な表情だった。

そりゃそうだろう。

大ミヨシドノとサンティアゴ殿は、敵同士となった。

君は今後、どっちへ就くつもりかな?

サカイのことは私にまかせて、サンガの再建に、全力を尽くしてきてくれたまえ。

 

私は、デウスへ祈る。

来年こそは、しあわせになりたいです。

 

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