戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1566/001.hmos

インヘルノは、地底の、最中心に存在する。

 

私たちはポルトガルから日本まで、地球を半周してきた。

だから、この球体がどれだけの大きさかを知っている。

エウロパの幾何学を使って、地上からインヘルノまでの距離を求めよう。おおよそ2000レグワだ。

そこには空気も光も無いし、ものすごく熱い。

ルシヘル以下、ありとあらゆる悪魔と堕天使に加え、もとは人間だったはずの何者か等が、延々と殺し合いを続けている。

たとえまっすぐ通じている穴が開いてたとしても、覗きこむことすら危険だね。

 

悪魔は時々地上へ狩りをしに出てくるが、この穴のひとつが、ナラという街に開いている。

私は無益で非力な下僕にすぎないから、一生近寄りたくないし近寄らないつもりだが、サカイからは10レグワほどだから一日歩けば着けちゃうんだよね。

おそろしい。

 

私たちの最大の敵のひとり、ソウダイは、このナラを拠点としている。

いま、彼はミヨシ一族の内乱において劣勢の状況下にあり、徐々に追い詰められている。

清く正しく戦争協力を拒む私たちコンパニヤの全員が、どちらを応援するかなんて、考えるまでもないことだ。

この点はヴィレラにも異存ないらしく、サンティアゴ殿を通じて、ソウダイを倒すためにいろいろと援助しているらしい。

カネもずいぶん、つぎこんでいるようだが?

まさか予算を使い果たしてからトンズラしようなんて、たくらんじゃあ、いないだろうね?

 

私には会計を徹底的に精査し、報告する義務と責任が生まれるのだから。

前任者がどれだけ不正と濫用をしていたかも、しっかりと、調べなくちゃならない。

だから今は、泳がせておいてあげるよ。

 

 

灰の日を迎えました。あらためまして、フロイスです。

ブンゴから連絡がありました。

復活祭が終わったら、ヴィレラはシモへ戻されます。

なので、あと40日の辛抱です。

断食とコンヒサンが楽しく思える四旬節なんて、生まれて初めてですよ。

 

笑っちゃいけませんが、でも一番喜んでるのはヴィレラかもしれませんね。

長く苦しい8年間。よくぞ独りで耐え抜いた。

私をいじめてたことも、赦してあげよう。

美しく清らかなお別れをしようではないか。

最後まで、変な気起こすんじゃないぞ?

 

 

私はまっさきに、ディオゴ殿へ、知らせました。

ヴィレラが、モニカを連れていくなんてことになったら一大事ですから。

ヴィセンテはシモで1年暮らしていたので、結託する可能性、大いにあります。

そこで、モニカ監視隊が、強化されました。

ディオゴ殿の店で働く信徒たちが必ず教会に来て、常に2人以上がモニカから目を離しません。

 

モニカのコンヒサンはあいかわらず続いてますが、それ以上に監視人たちもヴィレラを指名して、コンヒサンでヘトヘトにさせます。

ヴィレラ。無駄な抵抗はやめて、きっぱりと別れ話をしちゃいな。

それが、みんなのためだ。

まちがっても、変な気起こしたりすんじゃねえぞ。

 

そんなわけで復活祭後は私が、キナイ専従になります。

増援が来てくれればありがたいけど、何も書かれてなかったから、当面、ひとりで全部やります。

ミヤコの情勢も知っておく必要があるので、独自に、調査員を派遣しました。

頼りになる、トマスです。

商売のついでに、有力な信徒の家を訪問して、信仰を守っているかどうか確認して回るよう、お願いしました。

 

 

戻ってきたとき、男の子をひとり連れてました。

あれ、見覚えがある。

ミヤコ教会のお隣さんだった家の、息子さんじゃないか。

 

教会跡は、屋根など修復されたのち、ミヨシ系列の兵の宿舎となっているそうです。

トマスは近所の何軒かに、行商のふりをして、テンジク人が去ってからのことを尋ねました。

そのとき、この子と仲良くなり、パードレたちの居場所なら知っているよと、教えました。

連れていってほしいと言われました。

で、連れ去った。

 

親御さんには?

 

「言わないでくれと、この子から頼まれた」

 

それって誘拐では?

 

「そういう見方も、できるかのう」

 

いいのかそれで。

ひとまず、今日はここへ泊まりなさい。

 

 

その他、トマスが調べて回った範疇では、おおむね信徒は隠れてデウスへ祈っている。

大っぴらに信徒だと言えていた頃は坊主どもへの拠出金を拒むことができたが、私たちがいなくなってから、あらゆる宗派の坊主どもが押しかける。次はうちと契約せよと、しつこいそうだ。

ネを上げて、改宗している人も多いそうだ。

なんとも、非道い話なのである。

 

家出してきた少年は、ずっと私たちのことを見てきて、いつかデウスの教えを聴いてみたいと切望していたらしい。

しかしフォッケ宗の家族が絶対に許さない。

ああ。君のお父さんお母さんは、厳しいからねえ。私も毎日、謝っていたが、顔が腫れあがるまで、ゆるしてはもらえなかった。

わかった。とりあえず、しばらくここで、住み込みしながら説教を聴きなさい。

最初は、お掃除からやってもらおうか。

おお、筋がいいな。

 

 

少年は、3日ほどいた。

私、ロレンソ、ヴィレラのうち、ヴィレラから洗礼を受けたいという。

少し負けた気もしたが、彼はヴィレラの方をずっと長く見てきたわけだし、もうすぐ遠いところへ行ってしまうと聞けばなおさら、感傷的にもなるのだろう。

今もモニカが傍にいるから、なんて理由も小さくなかった風にも思う。

まあいいや。負けを認めよう。

ヴィレラの授洗で、霊名はコスモと決まった。

こっそり、トマスが連れ帰す。

 

「子供は、よく神隠しに遭うものだ。二、三日程度ならば役人は動かん。生きて帰ったんだと喜ばれて、しまいじゃ」

 

そういうものなのか。

ゆるいな。

 

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