戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1566/005.hmos

モニカは、どんな男に言い寄られても理性で叩き返す、無敵の弁舌家だった。

しかしその力は、一時的だったはずなのだけど、失われていた。

気丈に見せていたが、非常に不安定な精神状態だったのだ。

 

以前からモニカにしつこくつきまとっていた、ソウサという青年がいた。

それまで教会へ来たことはなかったと思う。

町の不良の番長格で、素行は甚だ悪かった。

 

ある日、教会から帰る途中のモニカに、ソウサがからんできた。

普段なら小蝿を払うごとくに対処するモニカが、このときはしどろもどろに言い返した。

やがて感情が決壊して、大泣きし始めてしまったらしい。

 

ソウサは、あわてた。

ひとまず、彼の家へ連れこんだ。

悪友たちがついてきた。

ヴィセンテは、大慌てで自宅まで知らせに戻った。

 

ディオゴの店から数人やってきて、モニカを連れて帰ろうとしたが、モニカは帰りたくないという。

お嬢様がそんなことを言うわけがない、と口論から殴り合いに発展し、収拾がつかなくなった。

役人も呼ばれてきたが、モニカ自身の口から帰りたくないとあらためて説明されたことで、ひとまず、その日は外泊となった。

 

とはいえ。

町で評判の娘である。

美貌の処女である。

それが、名うての不良宅へ泊まる。

いくらソウサの両親が一緒とはいえ、これは大問題である。

 

教会で何があったのかと、ディオゴ殿からも役人からも、野次馬根性丸出しの信徒や求道者からも、さんざん訊かれたが、私にだってわけがわからない。

 

数日経つうち、これは絶対におかしい、モニカは薬かなにか飲まされていて、本心でないことを言わされており、すでにソウサのいいように弄ばれているのではないか、という疑いが膨れあがって止められなくなった。

 

ソウサの父親が、ディオゴ邸へ説明にやってきた。

伝聞の伝聞によるものであるが。

モニカとソウサは毎日語り合っているらしい。

ただひたすら、語り合っているだけだという。

床を共になどしていないし、ソウサの母が常に一緒だから、間違いはない。

 

ディオゴですらそんな話は真に受けない。

娘を早く返してくれと言う。

いえ帰りたくないと言っているのはモニカなのです。

そんな馬鹿な話があるか。

ここでも、殴り合いが始まる。

 

私には、デウスのお考えが、さっぱりわからなかった。

ただ祈るしかなかった。

一所懸命、祈り続けた。

最大級の断食に撤した。

視界が虚ろになってきた。

 

モニカの母上が、教会へやって来た。

あなたも御主へ祈りに来られたのですか、と言おうとしたら、頬をひっぱたかれた。

今すぐこの街から出て行きなさい!あなたたちが来てからです、何もかもおかしくなったのは!子供たちを、夫を、皆を、もとに戻してください!この恥知らず!

そんな言葉を、浴びせられた。

お母様、それは誤解です。

私にもわけがわからないのです。

悪いのは、ソウサじゃないかと思います。

さすがに凹んだので、この日は、お粥を食べた。

 

モニカから、自宅へ手紙がよこされた。

これも、私は直接見ていないが、こんな内容だったという。

 

「お父様、お母様、お祖父様、お祖母様、妹弟たち、家族同様の皆さん、そして、信徒の仲間たち、ご近所の皆々様へも、ご迷惑をお掛けしていること、大変申し訳なく思っております。

私は、甚だ罪深く、愚かで、本来ならば生きる価値さえ無い女です。今も、無力感に苛まれ、何をどうすればいいのか、わからなくて、もがいております。

家へ帰るべきだとは思うのですが、未解決のまま一つの受難から逃げれば、また新たなる受難が覆い被さってくるものと、私たちの聖書は教えています。私は、いま、立ち向かっているこの問題に答えを出してから、必ず、笑顔で戻ってくることを誓いますので、どうか、それまで、お待ちください。

ソウサ殿も、彼のお父様、お母様、それからお友達からも、決して乱暴などされておらず、むしろ、大変良くしていただいてますので、ご心配なさらぬよう。

御主のお導きのままに。アーメン」

 

私の名前は、入ってなかったという。そうですか。

それはともかく、この手紙がまた、憶測を拡げる。

まちがいなくモニカの筆跡だったそうだが、絶対無理矢理書かされたに相違ない、と。

 

ソウサの家には、投石や落書き、罵詈雑言が絶えず、ソウサの悪友たちはそれを見張るために夜中まで周囲をうろついている。

決して彼らからは攻撃をしてこないのが救いだが、そんな物騒な状況が一週間ほど続いて。

突如、結末が訪れた。

 

 

モニカは、ソウサと、その仲間たちを、教会へ連れてきた。

顔や手足のおびただしい傷跡から、相当の不良だったことが察せられるものの、全員、躾けられた子犬のように従順で、瞳は澄みきっていた。

説教を聴き、洗礼を受けたいという。

私はさっそく、ミサを始めた。

その後でやっと、モニカは自宅へ戻り、ソウサと結婚したいと家族に告げた。

 

ソウサは次の日から、日の出とともに教会へ来るようになり、従僕たちにも、他の信徒にも礼儀正しく挨拶をし、モニカが来れば貴婦人に対する廷臣のようにこれを迎え、誰に冷やかされても笑って受け流し、すぐにルカスという霊名を授かった。授けたのは、私であるが。

町じゅうの誰もが、二人の結婚を祝福するようになるのに、時間もかからなかった。

モニカの母上だけはあいかわらずだが、あのソウサをここまで変えさせたモニカと、デウスの力を、人々は認めざるを得なかったのだ。

 

教会には、求道者が押し寄せている。

ここまでの忙しさは、私がキナイへ来て以来、なかったほどだ。

やはり、増援を求む。とはいえ、そのためには、報告書を送らねばならない。

ヴィレラは悔しがらせたいが、アルメイダは傷つけたくない。

 

さあ、どんな風に書けばよいやら。

 

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