戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1563/007.hmos

私の名はルイス・フロイス。

懐郷病で、こころもからだも、ぼろぼろです。

せつないよう。くるしいよう。

 

日本では、夏、コメの収穫期より前に、祝祭期間が設けられる。

今年は聖ペドロ投獄日の翌々夜が、満月となる。

ちなみに日本の暦は月の満ち欠けを基準とするため、教会暦とは毎年、日付がずれてゆく。

 

この夜から次の満月までの約ひと月をウラボンと呼び、その初日には民衆が総出で、踊る。

これもまた、邪宗由来かどうか判断が難しい対象のようだ。フェルナンデスにとっても、研究課題のひとつだという。

無視できないのは、この祝祭が、死者や先祖の霊魂が帰郷するのでその者たちを出迎える儀式、という性格づけを持つこと。

坊主どもがカネ儲けの機会として利用している、という実情もある。

 

日本人は、死者の葬儀を、一度きりでは終わらせない。

埋葬ではなく火葬をするのが一般的だが、そのあと定期的に坊主を招き、飲み食いをさせ、カネを払い、何年にもわたって先祖に感謝し続けることを社会的な圧力によって強要される。

坊主どもが肥え太る理由は、まさにこの、無限商法ゆえである。

 

一方で、生誕の祝福には冷淡だ。

洗礼どころか、名前さえ付けられず、生きたまま棄てられる新生児はあとをたたない。

ブンゴの孤児院はたちまち満員になったと聞く。坊主は、かれらを救おうと考えることすらしない。

裕福な家で安らかに死を迎えた者だけを大切にし、そこからいつまでもいつまでも、財産をしぼりとり続ける。

 

ウラボン自体は、やめると民衆が悲しむ。

しかし、坊主どもがここぞとばかりに家々を回って荒稼ぎする習慣は、断ち切らねばならない。

本年より正しき道を歩むことになったバルトロメウ王は、さっそくこれに改革の手を加えた。

 

坊主たちは、まず城へ群がり、王や家臣からカネを毟り取った後に、村々へ向かう。

王はこの坊主どもへ向かって、今後は邪宗団への寄付は一切しないことを明言した。

一方で、領内の全祝祭会場において、民衆へは食事の無料提供を行うことを発表した。

すばらしい采配だ。

ドン・バルトロメウはデウスの教えを、完全に、正確に理解している。

 

その準備も兼ねてだろう。祝祭会場となる場所を王みずからが視察して回っている。

家臣団を大勢引き連れて、我がノッサ・スニョラ・ダ・アジュダへもやって来た。

連れの半分くらいは、洗礼を済ませたか、あるいは未だ勉学中の貴人であるが、まだ心を開いていない、邪宗に取り憑かれている者たちも混じっていた。

そんなかれらも、そそり立つナウを見れば言葉を失い、圧倒されていたのが愉快だ。

信徒となった人々の笑顔と自信に満ちた目の輝きに、ただただ驚嘆する、未開人たち。

 

気づいてくれさえすればいいのです。私たちはあなた方の敵ではありません。

疑心暗鬼と戦争を、地上から根絶する。それが私たちの使命です。

それだけなのです。

 

ドン・バルトロメウは、通訳たちを通して、これからの計画も語ってくれた。

宣教師も足りないし、急ぎすぎるのもよくないが、来年の末までには領内すべての住民をデウスの信徒にしたいこと。

坊主たちへも改宗をすすめ、まずは説教を聴きにくることを奨励する。

どうしても理解できない場合は、領外へ追放。

ただし、あらためて私たちの言葉を聴く準備ができた時には、いつでも戻ってきてよいものとする。

 

隣接する諸国との戦争は、簡単には止められない。だが受洗した兵がめざましい働きを示しており、デウスの御心に沿う者は戦においても優秀であることを、王は実感しているという。

やがては敵も、デウスの教えがいかなるものかと、白旗と共に手を差しのべてくるのではないか。

そのときは、うけいれよう。

主席家臣のドン・ルイスも、日々ドン・バルトロメウとそんな話をしているのだと、にこやかな笑顔で場をなごませてくれていた。

いい国だ。懐郷病も、いつの間にか吹っ飛んでいた。

 

2週間後の、聖マリヤ御昇天日。

メステレ一行が15年前のこの日にカゴシマへ上陸したこともあって、日本宣教団にとって大切な記念日だ。

わが教会では盛大なミサを行うことを決めているが、併せてパードレ・トルレスの盛式誓願もすることになった。

ゴアより許可は出ていたのだが、司式するパードレが誰もいなくて宙に浮いていたものだ。

パードレ・モンテがここにいれば、彼がすることになったろうけど、今は私しかいない。

初めての、大役だ。

懐郷病が戻ってきた。あいたたたたた。

 

それが終わったら、ぜひ城下でも祝祭をしたいので2人揃って来てもらえないか、とドン・ルイスより懇請される。

まもなくドン・バルトロメウがまた前線へ出征する。タケオ領との戦闘が、難しい局面を迎えているという。

なので、兵たちの士気を鼓舞する狙いもあるのだそうだ。

城下では、まだまだエウロパ人を見たこともない人が大勢いるという。

ぜひ伺って、皆様を驚かせましょう、と予定に加えた。

 

タケオ。

そこからも、招待状がきていたな。説教できる人をよこしてほしいと言ってきていた。

オオムラ領と戦争していることは知らなかったが、私たちには両者の関係修復へ向け、積極的な協力ができると思う。

これは、優先的に取り組むべき課題に違いない。

 

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