戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1569/010.hmos

悪い知らせが一つあります。

それ以外は、いい知らせばかりです。

 

悪い知らせから。

トマスが、いつになく早く帰ってきた。

定航船が、今年は来日しなかったのだ。

商人たちが手分けしてゴトウやサツマまで回ったが、1隻も目撃されていない。

全艦が海の藻屑と消えたのか。それとも何らかの事情で出港しなかったのか。判明せず。

ともかく、現れなかったのだ。

 

商人たち、オオムラやアリマの町民たちには、大打撃だ。1年間の収入をここへ賭けている人も大勢いるのだから。

私だってそうだ。仕送りが途絶えてしまう。キツい。

レアンがいなければ、日に一杯の粥を塩もかけずに啜る生活に戻っていたところだよ。

 

アマカウから来たジャンクが1隻だけ、ファクンダへ入港した。

ただし、定航船ではない。密貿易船ということになる。

船長も船員もチイナ人ばかりで、ポルトガル船団についての情報は持っていなかった。

積んできた商品も、質の低いガラクタばかりで、日本商人たちを余計にガッカリさせた。

ジャンクとは、インディアでつくられた、ナウの模造船をいう。

帆が三角でないこと、竜骨を持たないから嵐の直撃に耐えられないことなど技術的に劣るものの、近年は定航船の僚艦としても普通になってきているらしい。

単独で日本まで来るというのは珍しいし無謀に過ぎるが、ひとまず、往復ができるほどの技術がついてきたと考えるべきかもしれない。

チイナ人は安い賃金で猛烈に働くため、定航船の船員としても昨今その比率が高まっているそうだ。もしかしてそれのせいで全艦遭難しているなんて可能性はないか。

そんな想像をしてみたが、現時点では確かめる術がない。

 

 

シモにおける布教状況は、たいへん好調のようである。

とくにアルメイダが、アマクサという地へ派遣され、領主に洗礼を授けてからは家臣から領民までどんどん教えが広まり、町では子供たちの歌声が途切れる暇もないという。

アマクサにはサシノウラという良港があり、今後の定航船拠点にしたいところだが、オオムラ領やアリマ領が妨害を仕掛けてくる。誘致合戦の勃発だ。

こうなるとアルメイダの交渉術が炸裂する。

サシノウラは迎撃にも向いている地形なので、丘の上に火炮設置を薦め、すでに2門売りつけたとのこと。

コチノスやファクンダへも、この脅威をちらつかせて営業中だそうだ。

なんとも頼もしい話である。

 

 

次の話題。

コスモくんが、ミヤコへ来た。

教会は前と同じ場所にあるから、すぐ隣はコスモくんの実家である。

いいのかい?と確認した。

コスモくんは、サカイの教会を任せている信徒と激突してきたので、ミヤコの方がマシだという。

そんな理由か。わかるなあ。

私もヴィレラと一緒にいた頃は、苦痛の連続だったからねえ。

 

コスモくんの引っ越しは、お隣にすぐバレた。

久々に彼の父親から殴られた。

信徒たちが総出で説得をしてくれ、なんとかおさまる。

こっちには武装兵もいますからね。お父様、手を出させないでください。

平和。平和が一番です。

 

コスモくんの強情さは筋金入りだ。

庭越しに、もと家族と目が合うと

「まだ邪宗にとらわれているのか!」

と強い語調で先制する。

フォッケ教への憎悪もすさまじいものがあり、坊主を悪罵するときには彼の背後から輝きが伴う。スピリツサントスが全力で応援してくれているようだ。

コスモくんは受洗後にフォッケ宗の妻を娶らされたが、その奥方がまだこの家に住んでいる。夫の両親や弟夫婦と一緒に。

彼女も時々庭越しに顔を見せ、そのたびコスモくんから罵られる。

いつも、泣いている。

この光景だけは、私も心を痛める。せつない。

コスモくん。もう少し優しく言ってあげないと、かれらは、こっちへ来てくれないよ。

君の家族だった人たちが、心からクルスの前に跪き、デウスの教えをそのアニマに染み渡らせるようになるためには、攻撃一辺倒では、よくないとも思うんだけどな。どうだろう。

そういう機微もこれからは学んでいってほしいものだなあと思ったりは、する。

 

 

攻撃といえば、カヅサ殿。

今年も絶好調だ。

ヤマト国の東で、オーミ国の南。イセイという国がある。

カヅサ殿の故郷ヲアリとも、海を挟んで向かい合っている。

秋風が吹き始める頃、ここが戦場となった。

 

秋といえばコメの収穫期。

カヅサ殿の軍勢は、刈り入れの直前に襲いかかり、黄金色の稲畑を悉く焼き払った。

同時に、イセイ領主の立てこもる城を包囲。

わずか2週間で降伏させ、領民にはただちに、オーミから輸送した食糧を配給した。

 

ギフの城で、私はカヅサ殿の子供たちとも遊んでいる。

次男のチャセンくんが、これからイセイの領主となるみたいだ。

まだ少年なので、もちろんお飾りだが。日本では珍しくないことである。

実際の政務は、屈強の家臣団が執り行う。

領内の城や砦は、防衛に欠かせないものを除いて解体され、オーミやミノと同じく関所も廃止される。

すでに効果も実証された政策だから、迅速に導入された。

イセイは広域商業圏に加わることで、これからは人流も物流も盛んになって、より豊かとなる。

民衆は歓喜して、解放者カヅサ殿を讃える。

 

これに対して、ダイリ陣営が不満を漏らしているらしい。

イセイはヤマト国にも接しているが、同じくカミの聖地なんだそうだ。領内にダイリの直轄地が多数存在し、複雑な利権も絡み合っていた。

ヤマト国の領都ナラは数年前に焼滅したが、今回イセイ国を奪われたことで、ダイリの財源はほぼ枯渇することになる。

すでに無用の長物となり果てている王朝だが、いよいよ存亡の際に立たされたというわけだ。

 

愚か者にカネを積まれて追放令なんか出した罰だよ。

インヘルノで永遠に反省してください。

ニチジョウも、まだ生きていたら、反省しているだろうかね。

とっくに興味もないけれど。

 

 

最後に、レアンの話です。

彼は高利貸しだった。個人で小口の取引を、ミヤコ中心に何十年もやってきた。

返せなければ、娘を連れていく。

たっぷり遊んだあと、キモノで飾りつけて売り払う。

どれだけ豪遊しても使い切れないほどのカネが、いつもレアンの手許にあった。

だが彼は、デウスを知った。

これまでの乱れきった生活を、虚しく恐ろしいものだと気付くようになった。

 

彼は跪き、心から反省し、すべての財産を教会に寄付したいと、洗礼を希望する。

私は、二度と悪行に手を染めないことを誓わせて、霊名を授けた。

 

ただ嘆かわしいことに、中毒者の社会復帰は、そう簡単にはいかない。

彼には並はずれた才能があり、全財産を寄付しても、わずかな生活費を元手にいつの間にかまた大金を手にして、コンヒサンを求めてくるのだ。

私は彼の涙に何度も赦しを与えた。

彼はそのたびに、全財産を教会に預けていく。不幸な人々への施しに使ってもらいたいと言って。

その純真な、切なる思いに、私は応える義務がある。

 

彼はいつも叫んでいる。死にたい、自分なんて生きていてはいけない存在だと。

それは間違っている。

レアンよ。君は、生きなければならない。

一日でも長く生き続けて、デウスの教えを学び続けなくてはならない。

いつでも、ここへ来ていいから。

そう言って今日も、送り出した。

 

デウスは常に君を見ているからね。アーメン。

 

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