戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1570/001.hmos

降誕祭。

具合が悪くて、ずっと寝ていました。面目ございません。

 

その前の週に、東の空で、異変が起きました。

空が虹色に燦めき、流れ星のようなものが光って飛んでいきました。

いったい何事だろう、と皆で見つめていると、急に頭が痛くなって、私は倒れたらしいんです。

そのときは、それきりだったんですが、いよいよ降誕祭というある日。

また突然、烈しい頭痛と耳鳴りで、倒れました。

過労かしらん。大事をとって、安静を心掛けるようにします。

教会の聖務一切は、コスモくんやロレンソたちにお願いしました。

 

私はいつも書翰では、具合が悪い悪いと言っておくのが常ですけど、いえ皆がやっていることですけど、今度のこれは、本気で、洒落にならなかったです。

 

ミヤコで、キナイで、たった一人のパードレですもの。無理が祟ってたんでしょう。

それにしても、楽しい楽しい降誕祭を、信徒たちと過ごせなかったのは、残念でした。しょぼん。

 

1570年。あけましておめでとうございます。

 

今年の復活祭は、聖母御受胎の日と重なるのですが、40日さかのぼる灰の日は聖アガタ記念日の近くになります。この日は日本の暦で1月4日にあたるため、少々、困った状況が発生します。

敬虔な信徒は、思い詰めた顔で問うてきます。

お正月なのに、断食せねばなりませんかと。

私は答えます。しなくてよいよ。

祝いの席では、食いたまえ。飲みたまえ。

過度に騒ぐことはよろしくないが、人間関係を気まずくさせることは、コンパニヤも望まない。普段会えない客人とも語り合える機会だろう。安心して、お正月を過ごしなさい。

 

難しいのは、信徒の中でも、原理を貫きたい人たちですね。

日本のお正月にまつわる様々な出費を今年は一切払わないぞと心に決めて、灰の日前から邪宗徒との交際を拒絶する。

皆が楽しくおせち料理を食べているのを隅から睨みつけて過ごすお父さんが、いるわけです。

様々な苦情が寄せられます。

さすがにこれは従僕にまかせておさまる業務ではないので、私が出動します。

ほんともう普通に過ごしてくれよ、みんな。お願いだから。

 

 

そんなある日。

物体ことウルトラから、話しかけられました。

珍しいというか、あんな対話は初めてですかね。

私から呼びかけても、返事してくれるのは5回に1回か、それ以下。

基本的にぶっきらぼうで無愛想で、冷たいヤツです。

こんなヤツにも友達がいるなんて。

驚きました。

 

((( フロイス。表に出てもらえないか。

私の友人が、近くまで来ているようだ。)))

 

今日は晴天で、陽射しがあたたかそうです。

年末の大雪が積もっていて照り返しが強いですが、人影は見えません。

白い犬が、一匹、こちらを見ています。

私の方へ、近寄ってきます。

ゆっくりと。

 

((( 彼のようだな。

どこかで、腰をおろしてくれ。語り合いたい。)))

 

犬というより、狼に見えます。

近づくと、意外に大きい。

目が怖いです。牙が鋭いです。

私は硬直しましたが、ウルトラは、心配無用だと言います。

人に慣れているようには感じますが……

それにしても、こええ。

 

裏手の石段の上で、日向ぼっこしながら、犬の毛を撫でてました。

もふもふして、あたたかいです。オスですね。

時々私の股間の匂いを嗅いでます。

たしかに吠えませんし、危険はなさそうです。

 

はて。語り合うと言いながら、何も喋りません。

かれらなりの伝達手段があるのでしょうか。

静かな、ふしぎなひとときが、過ぎていきました。

 

半時間ほどでしたか。逢瀬は、終わったようです。

犬は、立ち上がりました。

去っていきます。

用事は、すんだのかな?

 

((( ありがとう。また、時々、来ると思う。

今日のように、撫でてやってくれ。)))

 

ウルトラよ。訊きたいことは色々あるが、いったい彼とはどういう関係なのだい?

 

((( パードレの先輩と後輩、みたいなものかな。私が先輩だ。

異国の地で、同郷に会えるというのは、いいものだな。)))

 

ほう。

君がそんな、人間味のある言葉をつぶやくなんて、驚くね。

 

((( ははは。君に影響されてきたのかもしれない。

ところで、彼は、君たちの分類でいうと、犬なのかな?狼なのかな? )))

 

え?……さあ、どうだろう。

飼い犬ではなさそうだった。

狼だったら、あんなに大人しいわけがない。

ちょっと、わからないな。

 

((( 判別する必要は、無しかな。

まあ、犬だとして、どんなものが好物か、わかるかね。)))

 

好物か。

なんでも食べるんじゃないか?

エウロパでは肉を骨ごとくれてやるが、日本では、残飯を適当に与えてるようだね。

野菜は、あまり好きではないようだが。

 

((( 私は、君の目を通して、野良犬がよく棄てられた子供を食べている姿を見ているが、あれが、かれらにとってのごちそうだと思っておいてよいかね。)))

 

な。おい、物体。それ以上言うのをよせ。

不道徳きわまりない。

 

((( フム。斟酌する。

話題をかえるが、彼は人間よりもずっと嗅覚がすぐれているらしいよ。

その代わり、視力は弱いようだ。)))

 

……まあ、犬だからな。視力は知らんが、鼻はきく。

賢い犬は、落とし物の匂いを嗅いで、持ち主の家まで突き止めることができるよ。

しかし、届ける前に、噛んでぼろぼろにしちゃうけどね。

 

((( それは傑作だ。

犬に、歩行用とは別の肢がついていれば、もっといろんなことができるだろうにね。)))

 

なんだそりゃ。6本肢ってことかい?

デウスがそんな動物を創られてない以上、必要の無いものだよ。

それより、お客さんだ。

 

また、ひと悶着あったのかい。

やれやれ。普通に過ごしててくれよ。たのむから。

ちょっと、出かけてくる。

 

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