戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1570/002.hmos

<<< ハヤタ師、ですか? >>>

 

((( 君は? )))

 

<<< エースといいます。

C期C番に所属。隊はTAC。

構成子はミナミ&ホクト。

製造者はシン・イチカワ博士です。>>>

 

((( 後発だな。

私のパイロット・コードはベムラー。

B期C番の戦隊で出征した。)))

 

<<< お会いできて光栄です。

先輩は、俺たちの世代からはファースト・マンと呼ばれています。最高の英雄です。>>>

 

((( そうなのかね。

この星には、君と私以外に、隊員はいるかな? )))

 

<<< シグナルは、ここしか捕捉していません。航跡を辿って来たら、先輩でした。>>>

 

((( そうか。

ちなみに、私の乗物はきわめて脆弱なので、何発もシグナルを打てない。

もし他にいたら、君が連絡をとってくれ。)))

 

<<< こいつが……ですか。

確かに弱そうですが、そんなにひどいですか? >>>

 

((( 地表の重力場に対し、このタッパで、双脚歩行だよ。ひとめで欠陥設計だとわかるだろう。股関節に負担がかかりすぎている。

数え上げればきりがないほど、ひどいのだ。この、ヒトという生物は。)))

 

<<< 別のに乗り移っちゃえば? >>>

 

((( 幾度も迷った。

だが、この建物群を見てくれたまえ。すべてヒトの所産なのだが。

私はこれに興味があってね。設計理念や技術情報に触れるためには、ヒトでいる方が好都合だろう。

そう割り切ることにして、とりあえずこいつの肉体が動く間は、乗り続けることにした。)))

 

<<< せめて、制御系だけでも完全に奪うとか。>>>

 

((( それも考えた。

しかしそれは、この個体になりすまし、この星の一員として行動することを意味する。

しばらく観察していたんだが、あまりに複雑で面倒だと感じた。

私の調査範囲は制限されるが、こいつの生活を邪魔はしないでおくつもりだ。)))

 

<<< なんでまた、こんな乗物を選んじゃったんですか。>>>

 

((( 初めて見たとき、この個体は自らの命も顧みず、他者を救っていた。悠然とな。

その姿に感動したのだ。

もっとよく調べてからにしておけばよかったんだが。不時着したばかりで急いでもいたから、しかたがない。

じゅうぶんに反省しているので、この話はやめてくれ。)))

 

<<< 先輩でもそんな失敗をするものなんだって、俺も気が楽になりますよ。

俺の乗物は、どうやらバランスが非常にすぐれた個体のようなので、先輩のぶんまで、働いてみせましょう。>>>

 

((( たのもしいな。

その生物は、イヌ、もしくはオオカミと呼ばれているもののようだ。

実際どんな感じかね? )))

 

<<< D脚駆動。移動方向は前進のみ。水平面上の旋回が可能。

全身に高密度のワイヤーが張り巡らされており、その中は水と鉄を主成分とするオイルで満たされています。

大気中の酸素を混合炉で鉄と化合させ、発動機の圧力で循環させます。

これにより体内の温度が一定に保たれ、高度な制御系を安定させています。

水と酸素の他には、動力源として同種生物の体組織片を摂取する必要があり、そのための捕獲能力を備えています。

ひとまず、こんなスペックですかね。>>>

 

((( 基本構造は、ほぼ、ヒトと一緒かな。

エース、君の本体はどんな形状なのか? )))

 

<<< 円環型です。

大きさは、そうですね。今、俺の体を撫でている脚の先端に触手があるでしょう。

それの直径くらいのサイズです。>>>

 

((( 指輪のような感じかな。

ずいぶんと小さいんだな。)))

 

<<< 先輩は、世代でいうとベータカプセルでしたっけ。

あのサイズだと、乗物も大きくないと潜れませんよね。>>>

 

((( 今の私は、初期型より小さいボディに改造されているのだが、それでも君より随分大きい。

小さなのは良いことだ。

乗物を選択できる幅が広がる。)))

 

<<< 先輩。さっきから違和感があったんですが……もしかして、そのヒトという乗物の主たる認識センサーは、空間幾何学体系ですか? >>>

 

((( そうだよ?

イヌにもヒトにも同じ器官があるね。これだ。

目という。)))

 

<<< やっぱり。

イヌの主要センサーは、それの前方に突き出している、この器官なんです。

大気中の微粒子を判別して周辺環境を認識します。

目は、これの補助をする役割しか持ちません。>>>

 

((( ほう。イヌは、目よりも鼻で世界を知るわけか。面白い。

ヒトにも嗅覚が備わっているが、貧弱だ。

表現するための語彙も少ないね。)))

 

<<< 嗅覚の次にウエイトが高いのは、大気の振動波に共鳴する器官です。

ここです。>>>

 

((( 耳か。聴覚という。

ちなみに目で認知する刺激は視覚と呼ぶ。

ヒトが受容する外界認識のウエイトは、視覚>聴覚>触覚>味覚>嗅覚……といった順になるかな。)))

 

<<< はあ。

イヌとヒトは、ずいぶん違う種に属するみたいですな。

コミュニケーションは難しそうです。>>>

 

((( たしかに。

ところで私は今、イヌの視覚が弱い理由のひとつに気付いたよ。

ヒトの場合、C個の目が水平に配置されていて、その視野角は大部分重なっている。

C個の目で同時に見ることにより、対象物への距離を判断しやすいのだ。

イヌの場合、突き出た鼻が邪魔をして、視野が遮られてしまう。

ム?おかしいね。

君はさっきイヌには捕獲能力が備わっていると言ったが、相手を襲うときに距離が曖昧であることは、不利になる要素だね。)))

 

<<< 言われてみれば。

確かにその通りなのですが、不便と感じたことはありませんねえ。

嗅覚だけで距離をほぼ正確に捕捉できますので。>>>

 

((( なんだって。匂いで位置関係を特定できるのか。

それは、ヒトには想像もつかない能力だ。

だったら視覚なんて不要かな。)))

 

<<< ちなみに俺は今、先輩の乗物の匂いを記憶しました。

おそらくですが、かなり遠くまで離れても、ここへ戻ってこられる自信がありますよ。>>>

 

((( 随分と高度なスペックを備えているみたいだね。

それは個体特性かな?

イヌ全般にあてはまる能力なのだろうか? )))

 

<<< 俺もまだ、この乗物には慣れていないので、少し時間をください。

他のイヌも観察することで、そのあたりも分析できると思います。>>>

 

((( よろしく頼む。私も楽しみができた。礼を言う。)))

 

<<< また来ます。

先輩の乗物、体温が下がってきているようです。そろそろ、建物の中に戻してあげてください。>>>

 

((( ありがとう。

この欠陥生物は本当に、不便だらけで困る。

じゃあ、気をつけて。

グッド・ラック! )))

 

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