戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1570/003.hmos

ワタ殿と、1年ほどぶりにお会いした。

 

ペンテコステを過ぎて、ほどなくだった。

頭髪をすべて無くしていて、驚いた。

詳しくは聞かなかったが、業務上の過失でカヅサ殿からお叱りを受けたとか。

禿になることは日本において罪を認め、反省を顕示する習わしである。ただ、坊主も好んでこれをするので、何かしら区別をつけてほしいところ大である。

 

ワタ殿は家臣団を連れて、教会を訪れた。

しばし語らう。

心労が嵩んでいるのか、うつむきがちで声にも元気がなかった。

訪問の目的は明らかだ。カヅサ殿が今、ミヤコへ来ているので、御挨拶するとのこと。

私も誘われた。

いいですね、お伴しましょう。献上品は、何がいいかな。

 

昨年完成した、ダイリサマの新しい政庁。

ここで祝宴が催されている。

その前後の日取りで、謁見希望者が殺到。

キナイ中の有力者が、カヅサ殿とクボウサマに、いろんな要望を持ち込んでいるようだ。

王様って、大変だなあ。

 

私たちの番が来て、カヅサ殿、サクマ殿、その他の皆さんと久しぶりに語らった。

日本の宴会ではやたらとサケを飲まされるのが常だが、カヅサ殿は飲酒をしないので、私にも勧めない。

他人が飲むのは全然かまわないという。むしろ大いに飲んで笑え、楽しい話を聞かせよ。そう命じられる。

自分だけは常に臨戦態勢で、より多く相手に語らせるのが狙いなのかも。と、この日はちょっと思った。

勘繰りすぎかな。

 

ワタ殿は、時々しどろもどろになりながら、いろいろ喋らされている。

失敗を赦されるかわりに、次の戦で兵を率いて参加するようにとの約束をさせられている。

どの程度の兵力を出せるか。馬は何頭、弓手は何人、鉄炮は何挺あるか。など具体的に要求されている。

隣室で書記官のセキアン殿が、聴き耳を立て、書き留めていたりしてるんだろうな。気配は、感じられないですが。

私も最初の日に、サクマ殿からいろんな質問をされて、無防備に答えちゃっていたなあ。

とくに隠すことは今も無いけど。

恥ずかしい振る舞いはしないように、気をつけたい。

 

「フロイス殿、もっと食べなされ。断食期間は終わったのであろう。教会では、貧しい者への施しをいつもやっておると聞く。立派なことじゃ。坊主どもに、見習わせたいものじゃ」

 

サクマ殿が、私を気遣ってくれます。ありがたいことです。

遠慮なく、いただきましょう。

 

「フロイス。いま、そちの下には、どれほどの信徒がいる?」

 

お。カヅサ殿が、こちらへ興味を向けられたようです。

信徒の数ですか……

ミヤコでは約150人。サカイ、アマンガサキ、サンガ、などを合わせると、2000人くらいでしょう。

シモでは、信徒ばかりになった町や村などもあるそうですが、キナイでは、なかなか厳しいです。

 

「ゆくゆくは、日本人をすべてデウスの信徒にしたいと思うか」

 

む。ここは、気をつけて回答した方がいいかもしれませんね。

ひと呼吸おいて、ゆっくりと、答えます。

 

はい。その通りです。ゆくゆくは。

ただし、無理強いをしてはなりません。

私たちは、人々に気付いてもらえるまで、語り続けます。

その流れに沿った上で、日本の老若男女すべてに、敬虔かつ謙虚で清貧を貫く生き方に目覚めてもらうことを、願います。

 

「それでは、時間がかかろう。今いるパードレだけでも足りるまい。

まだまだ、送りこんでくるつもりか」

 

おっしゃる通りですが、私たちは1500年もかかって、やっとここまで来たのです。

まだこの先、1000年、2000年かかるかもしれませんが、一歩一歩、積み重ねるだけです。

パードレは、多くても1年に3人くらいまでしか、来日しません。

人手は欲しいですが、こればかりは、なかなかつらいところです。

 

「悠長なことよ。それまでには儂らが、日本を平定してしまうぞ」

 

家臣のアケチ殿が、絶妙な発言をしてくれました。

私はすかさず応えます。

 

今はまだ、皆様への貢献が出来ないでいること、忸怩たる思いです。

然れども私には、カヅサ殿があと10年、20年のうちには、日本66領国を平定している姿しか想像ができません。

そのとき王国全土から争乱は消え去り、住民は自由に移動ができ、商売は盛んとなり、子供たちの笑顔も絶える暇がない。日本がそんな楽園になっていることは、疑いがありません。

私たちが、そのお手伝いをできるとしたら、こんな形でです。

 

人々に夢を与え、生きる目的を示しましょう。

デウスの教えを理解した者は、職務に迷いを持ちません。

このことは、皆様方も、兵士たちの活躍によって実感されていると思います。

そして私たちは、まずは大船を造る技術を皆様にお伝えしたい。

これによって日本人自ら、大海原に出ることが可能になります。

シンダン、テンジクを遙かに越え、いずれはエウロパまでご案内したい。

一日も早くそんな未来が訪れることを、私は願ってやみません。

全信徒の思いが、同じはずです。私たちは、ひとつになれます。

そのための平定を、カヅサ殿に託したい。

 

皆の息づかいが聞こえてきた。

全員の時が止まり、瞳に輝きが増した。

大成功だったと言ってよいのでは、ないかしらん。

ワタ殿も、もっと元気を出してください。

今日は、とにかく、明るくて威勢のいい話だけをしましょうよ。

さあ、食べて、飲んで。

 

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