戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1570/007.hmos

物価が、おそろしく高い。

とくに、塩。

 

春のエチゼン攻めが始まった頃から、じわりじわりと上がっていった。

北からの物流が制限されているという。

ミヤコ中心部には耕作地がほとんどないため、キナイ各地からコメ・魚・野菜などが毎日、輸送されてくる。

鮮度を保つために、塩が必要。

エウロパでも肉料理には香辛料が欠かせないが、それと同じだ。

 

従来、オーミ商人によって、北国から魚と共に塩が日々、ミヤコへもたらされていた。

これが戦争開始とともに、手に入らなくなる。

ミヤコには、ツノ国やイズミ国など西方内海からの塩も輸入されているから、影響が出てくるまでにはそれでも少し余裕があった。

しかし、ついに、決壊した。

 

労働者が体力維持のために舐める塩はもちろん、サケや漬物をつくるための原料や、工具・武器の精製、着物や紙をつくるのにも必要な塩が、連鎖的に不足し、市民生活に影を落としている。

教会では裕福な信徒たちから分けてもらってなんとか凌いでいるが、先行きの見通しは暗澹たるもの。

 

カヅサ殿はエチゼンへ入ることすらできなかったぞ、と軽薄な反対派が囃し始めた。

カワチ国やツノ国でも、けしからん声が確認されている。

坊主だけなら言わせておけだが、一般町民の間にまで不穏な風聞が広がっていることは、看過できない。

 

そんな中、アワのミヨシ軍がこっそり再上陸して、オーザカのあたりで陣を構築中と聞いた。

 

ああもう。あんたらの出番はもう、終わってるんだよ。

オーザカで、イコ宗とミヨシが芋洗いか。二度と行きたくない土地だが。

そういえば。あのおじいちゃんは元気かな。

私がキナイへ来た最初の年、火事と大雪から逃げ回ってたとき何日か匿ってくれた、あの信徒。

その後、消息を聞いてないね。まだ、生きてるかしら。

 

 

聖マテウ記念日の前後。

カヅサ殿が、オーザカへ、ミヨシ征伐に赴いた。

ミヤコで再び数万規模の兵員を集め、進撃を開始。

図に乗る身の程知らずに、早めに鉄槌をお見舞いしておくのだ。

背後に憂いを抱えたままでは、エチゼン攻めに全力を投入できませんからね。

 

カヅサ殿より遅れて、15代目クボウも、駆けつけた。

今回は手勢を1000人くらい集めたようだが、内訳をきくと、筆頭が占い師。以下、陣地の土台を積み上げたり、武具その他を運んだり、その場で手入れしたりなどの大工や人夫たち。

まあ必要だとは思いますけど。

カヅサ軍にだって、専属の後詰めはいるよ。しかし普通、兵力には含めまい。

しかも。ここでもやはり、クボウ側の職人は仕事が遅い上、気位ばかり高くて協働がままならないと。

そんな話を聞くたびに、思う。

カヅサ殿、クボウサマを奪っちゃいなよ。早いとこ。

 

そんなニギヤカシはおいといて。

川を挟んで、カヅサ軍と、ミヨシの残り滓とが、向かい合う。

勢力比は、10倍以上。

とっとと勝負をつけましょう。

 

雨がちの天候が続いていたが、晴れた日にはカヅサ軍の方からのみ、鉄炮の威嚇射撃が始まる。

敵は対抗手段を持たない。一気に攻めこめば、結着はすぐついたろうにと思う。

私の想像だが、和睦交渉をしていたのじゃないだろうか。

無益に全滅するよりも、ミヨシにも華を持たせてやるから予の軍門に降れと。

有能な兵はカヅサ軍へ編入させて鍛えてやるから、エチゼン攻めに加われと。

合理的に考えれば、これが正解。

逆らえば、駆逐するだけのこと。どうせ死ぬなら、北で死ね。いいじゃない。

その調整に、少し、時間がかかっていたのじゃないかな。

前線は、しばらく動かなかった。

 

ところが。

 

昨日の朝から、大事が発生したとの噂が飛びこみ始めた。

正午頃にはミヤコへ通じる街道が、すべて封鎖された。

南も、東も、北も、西も。

我々は呆然となりつつ、情報蒐集に全力を挙げた。

 

避難者が、関所の外側で大勢溢れかえっている。

軍属や、裕福な者、その一族たちは、カネを払って関所をくぐる。

そして噂を徐々に、ミヤコへもたらす。これを信徒たちが集めてくる。

私はそれを分析し、可能な限り正確に構成する。

 

一昨夜。

真夜中に、鐘が鳴り響いた。

直後、カヅサ軍は炮撃の雨にさらされた。

最初はミヨシだと思われたが、規模が違う。かれらの兵力を上回る数の群衆が、炮撃のあと、襲いかかってきた。

新たな戦闘集団が突如、あらわれたのだ。敵として。

 

驚くことに、同様の攻撃が、北オーミでもほぼ同時刻に、始められていた。

各地の軍が対応に追われ、大挙出陣しているらしい。現時点では、どことどこが戦っているのか、滅茶苦茶でわからない。

 

 

立て続けに、今、新たな情報を入手した。

エチゼン軍が北オーミへ向かって、南進を始めたそうだ。

兵士ばかりでなく、着の身着のままの群衆が、鍬や鉈を持って従軍しているらしい。

血まみれの農具を握りしめた老若男女が口々に、イコ宗の念仏を唱えて歩き続けている、だと?

 

いったい、それは、何の冗談だ。

 

いや、冗談であってほしい。

塩どころか、何もかもが手に入らなくなり、私たちは明日食べる食糧にさえ窮しているところなのに。

悪夢以外のなにものでも無い。早く醒めてくれ。

 

デウスよ、あなたは、いったい、何をたくらんでおられるのですか!?

 

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