戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1570/008.hmos

いつもなら、食欲の秋。

なのにミヤコは受難節。

 

この季節外れの断食は、いったい何週間続くのか。

教会ではそれでも、あるだけの食糧を貧しい信徒たちに分け与えている。

苦しいときこそ扶け合うべき。それが私たちのつとめだから。

この美学を貫くからこそ、信頼も寄付も集まってくる。

困っている同朋を締め出せば、自らも締め出されるのが当然だ。

イエズスの教えは、かくも真理を衝いている。逆境のときほど、正義を示す絶好の機会は無いのである。

それにしても、おなかがすいた。

早く戦争、終わらないかな。

 

カヅサ殿一行が、ミヤコへ入ってきた。

カミキョウ、シモキョウ、各所に分散して防衛拠点を構築している。

厳戒態勢で、不用意に近づく者は追い払われるという。

それでいいと思います。狙撃者だって、うろついていますから。

逃げきってください、カヅサ殿。

 

逃げる?

 

いま私は、カヅサ殿に似つかわしくない言葉を、つぶやいたかな。

カヅサ殿は、オーザカから退却してきた。

北でも手こずり、南でも敗北したぞ。そんな、ごろつきどもの声が脳裏をよぎる。

どうしたことだ。おかしな流れになってないか。

 

デウスよ。

私を苦しめるのは構いませんが、カヅサ殿や一般市民まで困らせることは、ないんじゃありませんか。

ゼンチョの群衆まで操って。いったい何がしたいんですか。

人の心をもてあそぶのは、やめてください。いじめるなら私だけにしてください。

お願いします。お願いですから。

もう、耐えきれないんですよ。

教会に来て、ただひたすら御主に祈りを捧げている子供たちに、握り飯ひとつ、食べさせてあげられない。つらすぎます。こんなの、おかしいです。

今すぐ、悪夢よ、醒めろ。消え去れ!

 

 

ジョルジ殿がやってきて、一緒に祈ってくれました。

食糧は、自分たちにも余裕はないが、なんとか手に入れて届けよう、と言ってくれます。

戦況については当然、詳細を教えてはもらえず。

心配ない、カヅサ軍の力を信じろ、と言われるばかりでしたが。

深刻な局面にあることは明らかです。

彼に、コンヒサンしろと強要したいところではありましたが、露骨すぎるのでやめておきます。

 

辛うじて、これだけ、聞き出しました。

ミヤコからギフへ向かうには、ヒエノヤマという峠を越えなくてはならない。

現在ここがエチゼン兵によって幾重にも包囲されており、カヅサ軍を足止めさせている。

ヒエノヤマには、フォッケ宗のテラが何百と点在している。かれらもエチゼンと結託して、カヅサ兵を見つけ次第殺すべしと、武器を手に徘徊している。

ミヤコ市内にイコ宗はほとんどいないが、最大勢力のフォッケ宗までが反カヅサ殿の側についたとなると、周囲敵だらけといっても全然過言ではない状況ということになる。

 

いったいぜんたい、何がどうして、こうなった?

 

反対意見もある。フォッケ宗を学ばされていたことのあるコスモ君によると。

ヒエノヤマ派はフォッケ宗の一部に過ぎず、戦力的には大した敵ではないはずだ。

農具や調理道具を振り回すくらいはできるが、元来、腕力より政治力で解決を図る集団だし。

エチゼン兵の方が先に来たから、保身のために提携しただけという可能性もある、と。

 

ニチレン派ならフォッケ衆の中でも武力闘争主義だが、現在ヒエノヤマに拠点は持っていない。

ミヤコ市内の坊主どもの動きを見ている限りでは、そこまで警戒はしなくてよさそうだ。

それよりも注目すべきは突如、戦闘集団として登場した、イコ宗。

 

イコ宗は、確かにもともと教義を軍隊的統帥と織り交ぜて教えこむのが特色だった。

日本には掃いて捨てるほどの坊主組織があるが、自分たちで堂々と国を領有し、自治権を掌握しているのは、かれらくらいだ。

これまでにも日本各地で、領主に対し武装蜂起で反抗し、租税減免や兵役拒否などの要求を呑ませてきた実績を持つ。だからどこの領国でもイコ宗は反社会集団と認識され、要警戒監視対象にされるのが常だった。

 

オーザカは、地勢的にはツノ国の一部だが、実態は独立国。サカイと同じだが、孤立化しているところは真逆ともいえる。80年前にカンガ国領主という地位まで手に入れ、その正統性に自信をつけてしまった。

ミヨシ残党勢は、よりにもよってこんな土地に上陸し、砦を築いた。

カヅサ軍までやってきた。連日、小競り合いが繰り広げられた。

イコ宗も我慢が限界を超えたのではないか。

以上が、コスモ君による推理。

 

イコ宗の脅威は、オーザカだけではない。

オーミ国でも同時刻に蜂起が発生した。完全にオーザカと呼応している。この連帯は、高度な軍隊の挙動だ。

すかさずエチゼン軍がイコ宗を引き連れてオーミ国へ入ったことも、きわめて重要な意味を持つ。

カンガ国とエチゼンは、永年、敵対していたはずだ。それが、いつの間に和解した?

オーミ国内部でもイコ宗の手引きがあったとすれば、ヒエノヤマまで到達したエチゼン軍に、イコ宗もついてきているはずだが、これは確認されていない。

ミヤコへ入るとフォッケ宗を刺激するから、イコ宗だけ、オーミ国内まででとどまったのか。

だとすれば、相当に高度な戦略を立てて全体の指揮を執っている参謀がいると考えてよい。

いったい誰が、最終的に何を目論んで、カヅサ殿を追い詰めているというのだ?

既存勢力で、そんなことをできる人間など、思い当たらない。

 

可能性をいうなら、たったひとつだけ、これを為し給うことのできる存在が、あられるのだけれども。

まさかそればかりは。いや。口に出すのもはばかられる。

しかし、いやしかし、やめておく。

 

 

暖房が必要な季節を迎えます。

今年は薪も手に入りません。

あちこちで、塀や納屋が壊され、板が燃料と化していきます。

木枯らしを遮るものが、失われていきます。

 

最後には、家までも焼くしかなくなるのだろうか。

春まで生き延びることができたとして、その後は、何を支えに暮らしていけばよいのだろうか。

 

受難節は、一年に一度だけで、じゅうぶんです。

もう、耐えきれません。

 

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