戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1571/001.hmos

年末年始、いろんなことが起きすぎた。

 

カヅサ殿はミヤコに立て籠もってすぐ、それを囲む各方面軍と個別に交渉を始めた。

 

おそらくだが。

一斉に牙を剥いて襲いかかってきた敵どもが、各々どの程度連携しているのか。

最後の一兵まで戦うつもりなのか。

条件さえ整えば撤退してくれるものなのか。

そんな勢力図を確かめながらの時間稼ぎだったと思われる。

それができる、優秀な家臣たちが、カヅサ軍の中には大勢いるのだ。

 

半月ほどで、包囲網の一角が崩れた。

それを見て徐々に、有利な条件で和睦を結ぶところが増えていった。

安全になった街道から物資が運びこまれ、カヅサ軍も監視する中で、ミヤコ市民への配給が開始された。

そのおかげで降誕祭が可能になった。

 

配給にもありつけなかった者、今日だけでも暖をとれる場所で過ごしたい者は、教会へ来たれ。

余裕のある信徒は、備蓄の材料を持ち寄ってくれた。

劇も、ヂシピリナもない降誕祭だったが、信徒も、求道者も、皆が支え合い、慈しみ合う行為の素晴らしさを、感じとってくれたと思う。

日本へ来て以来、これほどまでにヴィルトゥスが高められた聖夜は初めてだったのではなかろうか。

 

ヲアリからは、コンスタンチノが12人の弟子を連れて来てくれた。

イセイからイガの方を回ってきて、ミヤコへ入れるようになるまで待つつもりだったという。

イコ宗の反乱は、なんと、ヲアリでも勃発していた。

暴徒は領内の城へ押し寄せて兵を殴り殺し、門を叩き割り、あらん限りの掠奪と破壊に精を出した。

城主である、カヅサ殿の弟君も、殺されたという。

 

カヅサ殿は自分の家族を皆殺しにしたと聞いていたが、服従を宣誓した兄弟は家臣に加えていたらしい。

別な弟が、オーミ国の一角で城主を任されているはずだ、とも聞く。

そちらの消息も気になるが、まだヒエノヤマに陣取っているエチゼン軍とは和睦が成立していないため、オーミの情報はわからない。

 

 

そんな降誕祭が終わって、割礼祭を迎えた日。

ロレンソとトマスが戻ってきた。

ロレンソは秋の初め、サカイへ行ってきた。むかし授洗した信徒が、亡くなる前にもう一度ロレンソに会いたいと切々たる便りをくれたので、従僕を連れて出かけたのだ。

その信徒は、安らかに息を引き取ったという。丁度、オーザカで早鐘が打ち鳴らされた頃だった。

ミヤコへの交通が遮断され、ロレンソはそのままサカイへ留まっていた。

 

トマスもまた、1人のパードレを連れてシモから帰ってきたものの、ミヤコへ入って来れないでいた。

サカイでも、オーザカのイコ宗が掠奪目的で襲いかかってくるのではと、市門を閉ざして厳戒態勢が敷かれていたのだ。

そういえば、ディオゴ殿の奥方もイコ宗ではなかったかしらん?

訊いてみた。案の定、彼女は、自分もオーザカへ駆けつけて共に戦わねばならぬ、この世に災いをもたらす邪宗は成敗してやらねばならぬといきり立って、一時は手のつけられない有様だったという。

デウスへの中傷も、その頃は特別、烈しかったそうだ。

なるほど。各地のイコ宗徒は、こんな暗示にかけられているのかと、納得する部分はあった。

かわいそうな人たちだ。

お日様の下へ、二度と出してはいけないだろう。そう思った。

 

 

シモからの報告も、こってりと分量がある。

69年に定航船は来日しなかったのだが、70年の夏に、その詳細が判明する。

アマカウからは3隻、出港した。2隻が難破した。1隻は引き返し、再出発しなかった。それで完全な空白が生じたのだ。

大きな被害だった。二度と起きぬよう、しっかりと対策を施してもらいたい。

そして、今回は3隻のジャンクで3人のパードレが、無事来日した。

 

フランシスコ・カブラルが、来た。

 

ジョアンじゃない方のカブラル?

四誓願立誓修道士の、あいつだよね?

大物だよ。

笑わないことで有名な。鋼の男だ。

とにかく厳しい。なにごとにつけ、融通がきかない。冗談が通じない。

ゴアのコレジオでは、倫理神学の教官だった。

単位?とれなかったよ。当然だろ。

よりにもよって、あいつが、来ちゃったのか。

 

しかも。

病床にあり、死期間近いパードレ・トルレスの、代わりとしてだ。

新しい日本布教長になるべくして、送りこまれたということだ。

なぜ69年に難破した船に乗ってなかったんだろう。

いや、デウスがさせるわけがない。

私を、みんなを、苦しめるためにだ。決まってやがら。

 

 

カブラルは上陸後すぐ、会議を召集した。

シモの全宣教師が集められ、現況報告を提出し、今後の方針が決められていった。

教会設備がすべて日本式家屋で、ミサを正座して行っていること。

宣教師が普段は日本の着物を身にまとって生活していること。

修道服を日本で仕立てる際は、絹衣で作らせることを基本としていること。

などが、次々と槍玉に挙げられた。

 

やがて、ヂシピリナの実態もばれ、カブラルの怒りは爆発する。

トルレスまでもが痛罵を浴びせられ、20年余に及ぶ日本布教の一切が全否定されるまでに至った。

カブラルは全員に、パードレにも、信徒にまで、告解と反省を強いた。

お前たちこそが、デウスとイエズスの教えを歪めまくっている、禍の元凶なのであると、責めまくった。

 

早ければ今年、カブラルはミヤコへ巡察に訪れる。

覚悟しておくようにな、と今、私の目の前にいるパードレが嗤う。

 

おかしな対話だ。彼はイタリヤ語とラテン語で話す。

私とトマスとロレンソは、日本語とポルトガル語で話す。

得意分野がそれぞれ違う。

一節ごとに翻訳して、確かめ合いながら、理解を共有させていく。

手間のかかる作業だ。しかし、必要なことだ。

敵が、まもなく、ここへ、やって来る。

 

パードレ・ニエッキ・ソルド・オルガンティーノ。

ようこそ、日本へ。

戦場へ。

 

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