戰國ぢあぼろす   作:ひねもす@HAMELN

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SengokD.1571/005.hmos

ワタ殿は、馬で出陣したらしい。

 

領内の砦へ向かう途中、敵の大軍に包囲された。

兵力は6倍差。

鉄炮の猛射を浴びた。

奮戦むなしく首をとられた。

タカツキ城は、攻めこんだイケダ軍の手に陥ちた。

その背後には、ミヨシ一族と、まだしぶとく生きてやがるソウダイたちが、力を貸していたようだ。

 

ワタ殿の息子と家臣たちは、アークタンガワ城へ逃げのびた。

ダリオ殿は、救援を送ることができなかった。

自領の守りを固めることで手一杯だった。

デウスの、コンパニヤの、希望の一柱が、こんなにもあっけなく、崩れ落ちてしまうとは。

 

ワタ殿に霊名を与えていなかったことが、悔やまれる。

彼のアニマはパライゾへ辿りつけない。

今からでも、望みの洗礼を、授けられないだろうか。ニエッキとも相談した。

しかし条件が揃わない。

ワタ殿の生きた証を、救済する手立てはない。

むごい。むごすぎる。

デウスよ、あなたはなぜ、私から、何もかもを奪う。

いや、私はいい。

ワタ殿からも、すべてを奪った。なぜだ。なぜなのですか。

楽しいですか。ご満悦ですか。

 

私は半狂乱になりながら、ニエッキや従僕たちに手を引かれ、ミヤコへと帰ってきた。

 

 

カヅサ殿が、ミヤコの手前まで来ていた。

軍事行動ではない。クボウサマとの会見が目的である。

その前に、ヒエノヤマで、坊主たちとの懇親会を催した。

あの包囲網が始まってから1年も経つのか。早いものだ。

 

フォッケ宗ヒエノヤマ派はエチゼン軍に全面協力して、カヅサ殿がギフへ戻る道を塞いだ。

その行為が、脅されての追従だったのか、それとも、カヅサ殿へ直接向けられた敵意だったのか。

イコ宗の広域叛乱を、かれらはどう見ているのか。

今後、共闘する可能性はあるのか。

カヅサ殿にとっても、たしかめたいことは、尽きないはずだ。

 

数日後、ヒエノヤマは、紅く染め上がった。

 

山のいたるところに、200ものテラが築かれていたという。

普段は観光や参詣も受け入れるが、戦時にはそのすべてが砦と化す。

ヒエノヤマを敵にするといかに手強いか、カヅサ殿は思い知らされた。

ならば、焼けるときに焼いておこう。

これは実に賢明な判断というべきだろう。

 

おそらく、条件はつけてやったものと思う。

味方に加えられるものならば、それに越したことはないからだ。

坊主どもには、そんな損得勘定も、できなかったのではなかろうか。

できないか。坊主だものな。

 

燃えさかる炎を見ているうちに、私の心は落ち着いてきた。

翌日には、ミヤコ入りしたカヅサ殿への謁見が叶えられた。

私たちは、以前と変わらず、最厚遇されている。

光栄なるかな。

 

カヅサ殿は、上機嫌だった。

弟2人をイコ宗の暴徒に殺され、妹君は裏切者アサイの妻として、今も北オーミに囚われている。にも拘わらずだ。

今に見ておれ。

すべてを取り返してみせる。

予から何かを奪った者は、必ず一切合切を奪われ尽くすことになる。

その教訓を叩きこんでやるからなと、澄んだ声で、貫くように語る。

ニエッキも、感銘を受けていた。

 

ニエッキの生まれたプレシャ、育ったイタリヤの話は、カヅサ殿を非常に喜ばせた。

中でもロムルス帝国時代、イタリヤ半島全域に街道が整備され、これが商業の発展を促し、未曾有の繁栄を築き上げたという件りは、セキアン殿にしっかりと書き取らせるため、二度三度と語らせた。

 

ニエッキに言わせると、日本はイタリヤによく似ている。

海に突き出した細長い島で、山地が多く、水源が豊かである。

人々は朗らかで勤勉。戦争となると勇猛果敢であることも共通している。

しかし、日本ではデウスの教えがまだまだ広まっていないことが違う。

 

かつてはイタリヤの民衆も、多くの邪宗団体に蝕まれ、皆がてんでばらばらな偶像を崇めていた。ロムルス帝国興亡史として知られる。奢侈に溺れ、衰退が始まり、蛮族の侵入に耐えきれなくなり、滅んだ。

この時代に遣わされたイエズスは、乱れに乱れた人々の心をひとつにまとめた。蛮族にすら、教えを知り生き方を改めれば救われるのだよと、説いた。

おかげでエウロパは、たったひとつのカウトリカを中心に、今は平和を謳歌している。

次はエウロパの外へ、教えを広めに行く段階だ。

こうして、私たちはやって来たのである。

 

家臣の面々も、真剣な眼差しで私たちの説教を聴いてくれた。

私は、ワタ殿の死を迎えたばかりだったこともあり、カヅサ殿へ、洗礼を授けさせてほしいと願い出た。

カヅサ殿はいつものように、自分にはまだやらねばならぬ仕事があるからなと固辞された。

 

だが彼はすでに、精神の上では信徒になっていると言ってよかった。

 

「予は、日本から、坊主どもを根絶やしにする。

武将は殺しきれぬが、坊主なら、坊主である限り殺し抜いてやる。

おぬしたちは、そのあとでゆっくり、領民をデウスの信徒にすればよい。

刃向かうことなど、教えるな。清く正しく、生きさせよ。

そのときがきたら、また朱印状を与える。

忙しくなるぞ。しっかりと、準備をしておけ」

 

カヅサ殿の澄んだ声には、一片の躊躇いも感じられなかった。

その言葉は、深く私たちの心を貫いた。

まるで、福音が訪れたかのように。

 

デウスよ。

私だって、取り返しますよ。

いつもいつも、奪われてばかりじゃ、終わりませんからね。

 

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