────ピピピ ピピピ ピピピ
スマホから鳴るアラームで、目を覚ます。
まだ朝の5時。
早起きするにはあまりにも早すぎるが、毎朝のお弁当を作ることを考えたら、この時間にもすっかり慣れてしまった。
眠い頭を覚ますように、台所で一杯の冷水を飲む。
ようやくはっきりしてきた意識、気合を入れて僕は自分の仕事に向かうのだ。
「さてと……ご飯が炊きあがるまでは後1時間ぐらいあるし、お弁当用のメインおかず、何にしようかな」
定番になる副菜類は先に作ってあるから詰めるだけ。
今週はほうれん草のおひたしと、きんぴらごぼう。
あまりバリエーションは多くないから、何週かで色々ローテーションしている。
「よし……取りあえずいつもの卵焼き作ろうかな? あと冷蔵庫見ながらメインのおかず決めようっと」
冷蔵庫から卵を取り出す。
最初は割るのも一苦労だったが、今では片手でスムーズに割れる様になった。
いつも通り卵を4つ割って、そこに合わせるのはボトル入りの白だし。
最初は出汁を取ってたけど、少し前にボトル入りの白だしを見つけてからこれに切り替えた。
かなり便利に使えるからすっかり冷蔵庫のレギュラーメンバー。
「溶いた卵に白だしを加えて…………ちゃんと濾してあげると卵白もしっかり混ざるからいいかな」
「そして姉さんとヴィブロスから貰った卵焼き器、まだまだ使い込みは足りないけど、僕のようにいっぱい使っていけば、きっとさらに輝くもんね」
だし巻き卵の準備をしながら、卵焼き器をガスコンロにかける。
姉さんたちから二人が一緒に過ごすようになったからと、プレゼントとしてもらった銅製の卵焼き器。
少しずつ使い込んでいくと、自分のものに出来ている感じがして楽しくなる。
この子はまだまだ一年目。
僕だって5年間走ったのだから、1年目なんてまだまだ若い。
「油をいつも通り引いて、卵液を少しずつ加えてく。半熟くらいで手前に巻き込みして、卵液を足していく……」
最初に出来る量は少ないが、少しずつ巻いていくと大きくなる。
ちょっとずつ成長していく姿は、現役だったころも思い出す。
最初は小さな一歩でも、少しずつ少しずつやることで、大きくなる。
そんな成長具合が、使い込む卵焼き器と並んで好きなのだ。
「──よし……今日もいい感じだ。一旦皿の上に開けて冷ましておいて…………メインは豚バラあるし、少し余った長ネギとかキノコを巻いて焼けばいいかな?」
出来上がっただし巻き卵を皿の上に乗せ、冷ます。
その間にちょうど炊きあがったご飯を弁当箱に詰めつつ、メインのおかず準備だ。
今日のメインは野菜室に残っていた、長ネギとキノコの整理がてら豚バラ巻に決めた。
フライパンを火にかけながら、メインのおかず用の豚バラや長ネギ、キノコを取り出す。
軽く塩コショウを振って、豚バラの内側に小麦粉を振る。
後は長ネギやキノコを巻いて行ってフライパンで焼くだけだ。
「最後にお味噌汁…………これは昨日野菜だけ切っておいたから炒めながら作業できるな」
味噌汁用のダイコンやニンジンは昨日切って野菜室にしまっておいたから作業は楽だ。
味噌汁用の小鍋でごま油を熱し、野菜を入れる。
しばらく炒めながら、メインの豚バラにも目を光らせる。
程よくいい香りがしてきたところに、お水を加えて顆粒出汁も合わせる。
味噌はトレーナーさんが起きて来てから溶けばいいだろう。
しっかりパリパリと焼きあがった豚バラ巻もフライパンから取り出し、先に冷ましておいただし巻き卵と合わせて切り分ける。
「後は残った豚バラのエキスでソースを作って…………あっ、おはようございます。トレーナーさん。少し早起きですね、今味噌汁の味噌も溶いて仕上げますから」
フライパンの中に醤油や砂糖、みりんを入れて煮詰めた簡単ソース。
それを豚バラ巻にかけて、メインの完成。
最後に味噌汁の味噌を溶いて、今朝の味噌汁も完成した。
後は副菜類を弁当箱に詰めて、トレーナーさんが出発するまで少しふたを開けておけばいいだろう。
「はい、今日の朝ごはんとお弁当です。それじゃあトレーナーさん、朝ごはんにしましょうか」
早起きして出来るのは、少しずつ上手くなっていく料理の腕と、トレーナーさんが美味しく朝ごはんを食べてくれること。
それだけで僕の頑張りがいがあったものだ。
──明日は、どんなおかずにしようかな?