鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
最初の任務
―狭霧山から北西の町―
炭治郎は狭霧山から北西の町で鬼の情報を集めるために歩いていた。
「(鬼がどんな能力を持っているか…女の人が毎晩いなくなるのに犯人の目撃の情報が一つも無いのはおかしい…いくら普通の人よりも身体能力が高い鬼とは言っても毎晩そんな行動をしていればかなり目立つはずだ…なら考えられるのは透明になれるとかリィン教官が講義で話していた佩狼と言う昔の十二鬼月と似た能力を持っているか…このどちらかの筈…)」
炭治郎はそのように思考しながら町を歩いていたが途中で明らかに心ここにあらずと言った様子で歩いている青年の姿を目にしその直後に傍にいた二人の女性の会話が聞こえてきた。
「ほら和巳さん…可愛そうにあんなにやつれて…」
「一緒にいた里子ちゃんが攫われたから…」
それを聞いた炭治郎はすぐに彼を追いかけると声をかけた。
「和巳さん!お話を聞かせてもらってもよろしいですか?」
和巳は炭治郎を見て何処かいぶかしんだが同時に藁にもすがるような気持ちで全てを話した。
―事件現場―
和巳は炭治郎を事件の現場まで案内し、炭治郎は彼に確認した「ここで里子さんは姿を消してしまったんですね?」
「あ…ああそうだ…誰も信じてくれなかったが…」
和巳の話を聞いた炭治郎は地面に屈みこむと手がかりを探すために地面に残った匂いを探り出した。
「(少ないけど鬼の匂いが残ってる…いくら薄くなってるとは言っても途切れてる部分が多すぎるから…少なくとも透明になれる能力ではなさそうだ…)」
和巳は困惑し「一体何を…」と聞きかけたが炭治郎の真剣な表情にすぐに口を閉じた、炭治郎は日が暮れるまでそれを続けていたが突然はっとした表情になると駆け出し和巳はすぐに声をかけた。
「急にどうしたんだ!!」
彼はそう叫びながらも炭治郎の足の速さに驚いていたが炭治郎は走りながら状況の説明をした。
「急に匂いが強くなった!近くに鬼がいる!」
そのまま炭治郎はいとも簡単に二階立ての建物の屋根に飛び乗るとそのまま駆け出し、最も匂いが強い場所で飛び降りた。
「(鬼がいるのはここだ!多分血鬼術で地面に潜ってる!鬼と…人間の女の人…鬼だけならあの技を使う所だけど人が捕まっている以上この手は使えない…なら取るべき方法は…)」
炭治郎は刀を抜くと鬼の匂いが最も強い場所に思い切り突き刺した、すると「ぎゃっ!」と言う悲鳴と供に黒い煙のような物が噴出し気を失った少女が現れ炭治郎はすぐに彼女を引っ張り上げると間を空けずに飛びのいた、その後すぐに長髪で額に角が三本ある鬼が姿を見せた。
「攫った女の人達はどこだ!!」
炭治郎は間を空けずに聞いたがその鬼は明らかに苛立った表情で凄まじい音を立てて歯軋りをすると再び地面に潜って姿を消した。それを見た炭治郎はすぐさま追いついて来た和巳に指示を出した。
「和巳さん!この人を抱えて傍に来てください!おれの間合いの中だったら守れますので!」
炭治郎は目を閉じながら気配を探った。
「(どこから来るかわからないけど潜ってる間も匂いが有る…見つけた!)」
炭治郎は目を開きながら水の呼吸の五の型で攻撃しようとしたが角の数以外全ての特徴が一致した鬼の姿を見るとこの技では駄目だと慌てたがすぐに技を変えた。
「(落ち着け!三人いるならこの技だ!)」
炭治郎は八の型である滝壺に切り替えたが全ての鬼の急所を外してしまい逃げられてしまったが炭治郎はすぐに思考を巡らせた。
「(落ち着け…三人とも匂いが変わらない…つまりあの鬼は姿を消すだけじゃなく分身もできる、それもどれも本物…やりにくい相手だ…)」
その直後に角が二本ある鬼が現れ和巳が「あっ」と声を上げたが炭治郎はすぐに対応した。「(八葉一刀流五の型、残月!)」そのまま最小限の動きで反撃できる残月で攻撃したが集中力を欠いていたため頸を斬る事はできず逃がしてしまった。そしてそのまま鬼は叫んだ。
「貴様ァァ!邪魔するなァァ!!女の鮮度が落ちるだろうがァァ!!その女はもう十六だ!一番美味い時期だから早く喰わねえと味が落ちて不味くなっちまうんだよ!!」
炭治郎と和巳の二人は愕然としたが程なくして今まで無言だった一本だけの角の鬼が姿を見せた。
「まあ落ち着け、おれよ。すでにこの町では随分十六の娘を喰ったからなどれも美味だったしな、たまにはこんな夜があってもいいさ、おれは満足してるよ」
その鬼は冷静だったが二本角の鬼は喚いた。
「おれはまだ全然満足してないんだおれよ!!まだ喰い足りないんだよ!!」
この鬼が犯人だと確信した和巳は震えながらも口を開いた。
「化物…一昨晩攫った…あの人を…里子さんを返せ!」
彼の言葉に三本角の鬼は相変わらず凄まじい音で歯軋りしながら現れ、一本角の鬼は首を傾げた。
「里子?誰のことかは知らないが…最も…この蒐集品の中にその娘のかんざしがあれば喰ってるけどな」
そう言いながら鬼は服の裏に収めらたかんざしを何処か嬉しそうな表情で見せつけ、和巳はその中に当時彼女が着けていたかんざしを見つけ涙を流した。それを見た炭治郎の怒りは遂に限界を迎えたがそこに三本角の鬼が凄まじい威力の突きを放ち、炭治郎は咄嗟にかわし反撃したがすぐに地面に潜ってかわされ、腕を落としただけで終わった。
「(この鬼、思ったよりも速い!)」
炭治郎がそう心の中で叫ぶと同時に今度は二本角の鬼が壁から姿を見せたがリィンからの修行の成果もあり炭治郎はすぐに体制を崩す事無くかわし、地面からの追撃にも対応したがやはり数の差もあり反撃に転じる事が難しく、防戦一方となっており何よりもう一つの理由があった。
「(こいつらは三人で組んでいるんじゃ無くて元々は一人の鬼だから文字通り一切の隙がなく連携して来る、二人を守りながら三人の鬼の連携に対応するのは無理だ!少なくともおれ一人なら…)」
炭治郎はどうすればこの状況を打破できるか既にわかっていた『禰豆子を信じるんだ』以前リィンに言われた言葉を思い出した炭治郎は腰のポーチに手を伸ばすと、そこに入ったアークスを握り締めつつ目を閉じた。
「(おれが信じなくて誰が信じるんだ!)禰豆子!頼んだ!」
炭治郎がそう叫んだ直後、背後に迫っていた二本角の鬼が箱の中の禰豆子に蹴り飛ばされ、首が凄まじい力で蹴られた事で倒れ、残った二人の鬼は予想外の状況に困惑していた。
「なぜだ?なぜ人間の分際で鬼を連れている?」
禰豆子が箱から地面に降りると程無くして二本角の鬼は地面に沈んで行き、一本角の鬼は考えこんだ。
「(なぜだ?こいつらは?剣士と鬼が共に行動していると言うのか?意味がわからない)」
鬼の困惑を他所に禰豆子は二人に歩み寄ると優しく触れ、すぐに炭治郎の後ろに立つと怒りに満ちた表情でその鬼を見据えた。
「…背中は任せたぞ、禰豆子!」
「!」コクッ!
炭治郎の言葉に禰豆子は頷き返すとほとんど同時に二人の持つアークスが光り二人を繋いだ。禰豆子は鬼にされているとは言え二人は血が繋がった兄妹である事から相性は最高と言って良いだろう。すぐに三本角の鬼が奇襲を仕掛けて来たが禰豆子はすぐに踵落としで鬼を地中に引かせ炭治郎は今自分がいる地面の下に残る二人の鬼が自身を引きずり込もうとしているのに気付くと刀を上段に構えた。
「(奴らを地上に出せるなら無理に付き合う必要は無い!)八葉一刀流、三の型―」その勢いのまま力強く地上に振り下ろすと同時に影が広がり渾身の力が込められた一撃が振り下ろされた「―業炎撃!」当然気付いた時点で既に遅く、炭治郎に奇襲を仕掛けようとした二人の鬼は勢い良く上に打ち上げられ、隙だらけになったのを炭治郎は見逃さなかった。
「(今までの術の使い方を見るに空中では使えない!決めるなら今しかない!)」
炭治郎は瞬時に水の呼吸に切り替えると自身も跳躍し、体を強くねじった。
「(全集中・水の呼吸!)陸ノ型・ねじれ渦!!」
炭治郎は強い回転切りを放つと二人の鬼の頸を寸分違わず切り落とす事に成功し瞬時に炭治郎は一本角の鬼の服の一部を破り取った。アークスのリンクシステムにより禰豆子もそれに気付くと一息に体制を低くし、残った二本角の鬼の攻撃をかわすと、そのまま現代で言う所のカウンターの要領で炭治郎がいる方向に蹴り飛ばした。
「!(バカめ!そちらにはあの剣士だけでなくおれも二人いるぞ!)」
二本角の鬼は勝利を確信し笑みを浮かべ、炭治郎の方を見たが、直ぐに自分の間違いに気付いた、炭治郎は刀を構え自身を待ち受けていた。
「なっ!(馬鹿な!おれが二人共コイツに殺られたのか!?まさかあの女!)」
鬼は禰豆子に再び目を向け、困惑した。
「(気づいたと言うのか!?あの剣士がおれを二人共殺ったことに!)」
鬼の困惑も意に介さず炭治郎は構えた。
「八葉一刀流四の型―」炭治郎は鬼が自身の近くまで来た所で抜刀した「―紅葉切り!」炭治郎はあえて頸を狙わず鬼の両腕と下半身を細切れにすると激しい口調で言い放った。
「はっきり言ってお前達から感じた匂いは腐った油のようだ、一体どれだけの…何人の人を殺した!!」
炭治郎の叫ぶような声に鬼は一切悪びれずに言い放った。
「女共はあれ以上生きてると醜いうえに不味くなるんだよ!だから奇麗で美味いうちに喰ってやったんだ!!おれたちは感謝される覚えはあっても攻められる筋合いは無いな!!」
直後炭治郎は鬼の口を一瞬で切りつけ、鬼は「ギャッ」と悲鳴を上げた。
「言い訳はもう言い」そう言った炭治郎の声は彼自身も思った以上に冷たい声だったが意に介さず言い放つとそのまま刀を突きつけた。
「鬼舞辻無惨、あるいは黒のイシュメルガについて知っている事を全て話してもらう」
途端に鬼は凄まじい量の冷や汗をかき始め震えだし、搾り出すようにただ一言「言えない」とだけ口にしそのまま鬼は壊れた機械のように「言えない」とだけ何度も繰り返し炭治郎はその鬼が底知れない恐怖を感じているのに気付いた。
「言いたくても言えないんだよぉぉ!!」
鬼はそう叫ぶと悪あがきとでも言うべきか腕を再生させ炭治郎を攻撃しようとしたが炭治郎は直ぐにかわし頸を切り落とした。
「(…また何も聞けなかった…)」
炭治郎は心の中でそう呟いたが直ぐに先ほどの鬼の言いたくても言えないという言葉を思い出した。
「!(待て、言いたくても言えない?つまり無惨はなんらかの方法で鬼に自分のことを…それにもしかしたらイシュメルガのことも話せないようにしているのか?…いや今はそれより…)」
炭治郎は禰豆子を箱の中に戻すと地面に座り込み静かに涙を流す和巳の下に跪いた。
「…和巳さん…大丈夫ですか?」
炭治郎の言葉に彼は震えながら口を開いた。
「…大丈夫かだって?婚約者をあんな化物に殺されたのに大丈夫だと思うか?」
炭治郎はなんと言えばいいのかわからなかったがそれでも自分なりに言葉を紡いだ。
「…和巳さん…大切な人を失っても残された人は生きるしかないんです…どんなに辛くても…打ちのめされたとしても…」
炭治郎の言葉を聞いた和巳は蒼白な顔かつ悲痛な表情で炭治郎に掴みかかった。
「何が…何がわかるって言うんだ!!お前みたいな子どもに!」
それを聞いても炭治郎は怒らずにただ穏やかに微笑むと彼の手を優しく握りその手の感触に和巳は思わず手を離し、炭治郎は鬼の服の一部―犠牲者のかんざしが納められた部分を差し出した。
「おれはもう行きます…それからこの中に里子さんの持ち物があると良いんですが…」
炭治郎の言葉を聞いた彼は直ぐにそれを受け取ると炭治郎は頭を下げ、去って行った、そして彼は炭治郎も自分と同じく大切な人達を失ったのだとはじめて気付くとその背に向けて叫んだ。
「すまない!!酷いことを言ってしまった!!許してくれ…すまなかった…」
炭治郎は一度だけ振り返ると手を振り替えし直ぐに去っていき和巳はその背を泣きながら見送った。
それから炭治郎は無惨とイシュメルガを倒すと言う決意を新たにしていたがその肩に天王寺が降り立つとけたたましく言った。
「次ハ東京府浅草!鬼ガイルトノ噂アリ!カァァア!」
彼の言葉に炭治郎は困惑し、「えっ!?もう次に行くの!?」と問い返し天王寺は意に介さず「行クノヨォォ!」と何故か現代で言うオネエ言葉のような口調で返答しそのまま言い争いながら浅草へと向かうこととなった。
沼鬼との戦いはアークスを使っているからこその改変を入れましたがどうだったでしょうか?
次回で遂にラスボス二人の関係が有る程度わかるかも知れません。