鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

19 / 83
今日中に投稿したい所まではできました、タイトルからもおわかりだと思いますが遂にあの存在が姿を見せる事になります。


二つの悪意

 

―東京府浅草―

 

 炭治郎はそれから二日かけて浅草まで歩き―リィンに連れられた時は途中から車だった―禰豆子の手を引きつつ辺りを見回しながら考えこんだ。

 

「(相変わらず凄いな…本当にリィン教官に一度連れてきてもらってよかった…もしもそれが無かったら間違いなく倒れてた…)」

 

 炭治郎は夜で人が少なくなった広場の長いすに禰豆子を座らせ、自身も箱を下ろし、水筒を取り出すと水を飲みながら考えこんだ。

 

「(さて…これからどうするか…これだけ人が多いと鬼に関する噂を探るなんて逆に難しいな…)」

 

 と言うのも噂と言うのは尾鰭がつく物であり誰かが冗談で言った鬼の噂が巡り巡って本当の事と誤解されて伝わった可能性もある。当然その場合は最初期の人物以外嘘とは認識しない為確認するのが難しくなってしまう炭治郎はずっとそのように思考を巡らせていたその時だった。

 

「!こ…この匂いは!!」

 

 炭治郎は愕然としながらも立ち上がると慌てて駆け出した、以前家で感じた、そして今まで遭遇したどの鬼よりも強い匂いだった。

 

「(間違いない!あいつの物だ!家に残っていた匂いだ!鬼舞辻無惨!!)」

 

 炭治郎は帽子を被り黒いスーツを着た男の肩に掴みかかった、その男―鬼舞辻無惨は炭治郎を見下すように見据えた、「(こいつが皆を殺した!!)」炭治郎は殺意を漲らせると躊躇い無く刀に―日輪刀では無く利剣『緋皇』に―手を伸ばしたその時だった「おとうさん、だぁれ?」と声が聞こえ炭治郎は硬直し青ざめた。無惨はまだ幼い少女を抱えており、それに気づいた炭治郎はこれまでに感じた全ての鬼に対するそれとは比べ物にならないほどの凄まじい恐怖を感じた。

 

「(こいつ…こいつ!!人間のふりをして暮らしているのか!?アレだけの悲劇を起こしておきながら何食わぬ顔で平気で!!)」

 

 無惨は炭治郎の動揺を知ってか知らずか―先ほどの見下した表情からすれば間違いなく知っているだろうが―穏やかな口調で話し始めた。

 

「私に何か用でしょうか?随分慌てているようですが…」

 

 無惨がそういった直後、一人の女性が歩み寄り声をかけた。

 

「あら?どうしたの?」

 

「おかあさん」

 

 その女の子が彼女をおかあさんと呼んだ事、そして炭治郎だからこそ気付いた事実に炭治郎はさらに顔を青ざめさせた。

 

「(女の子と女の人の匂いは人間の匂い…こいつが鬼だってわからないのか?いやそもそも本物の父親はどこにいるんだ!?最悪こいつに殺されてる可能性だって…!)」

 

 炭治郎はつい最悪の想像をしてしまい、息が上がり焦りだした。それを余所に女性は炭治郎を見ながら「お知り合い?」と無惨に問いかけ、無惨は淡々と「いいや困った事に少しも知らない子ですね…世の中には似た顔の人が三人はいると言いますし…人違いではないでしょうか」そう言いながら無惨は炭治郎以外の人には見えないように近くにいた男性の首を切り裂き自身の血を流し込んだ。炭治郎はそれを見て驚き、その男性は急に苦しみだし鬼と化すと自身の妻に襲い掛かり彼女は悲痛な叫び声をあげ、炭治郎はパニックを起こした群集をかき分け、その男性を妻から遠ざけると布を噛ませ拘束しながら叫んだ。

 

「奥さん!こちらは大丈夫ですのでまずは自分のことを!傷にどんなものでも良いので布を当てて抑えてください!」

 

 炭治郎はどうにか彼を抑えていたが視界の端で何処かへ去ろうとする無惨を見つけると叫んだ。

 

「鬼舞辻無惨!!おれはお前を絶対に逃がさない!!お前がどこへ逃げたとしても地獄の果てまで追いかけて必ずお前の頸に刃を振るう!!絶対にお前を逃がさない!!」

 

 無惨は炭治郎を見たが彼の耳飾りに見覚えがあり目を見開いた。「(あの耳飾りは…!)」それは無惨の記憶に深く刻まれた記憶を思い出させるには十分だった、やがて誰かが伝えたのか騒ぎを聞きつけたのかは不明だが警官が現れ男性から炭治郎を引き離そうとし、炭治郎は必死に叫んだ。

 

「頼むから止めてくれ!!この人(・・・)に誰も殺させたくないんだ!お願いだから!」

 

 すると炭治郎の叫びを聞いて動いた人物がいた。

 

「惑血、視覚夢幻の香」

 

 炭治郎は妙な香りに気付き戸惑ったが炭治郎の視界には花が咲き誇る幻が現れ炭治郎は驚いたが、そこに女性と男性の二人組みが現れ炭治郎に声をかけた。

 

「あなたは…鬼にされた者も「人」と呼んでくださり…そして助けようとしている…でしたら私もあなたの助けとなりましょう…」

 

 彼女が嘘をついていないことが炭治郎には直ぐにわかったがだからこそ同時に困惑もした。

 

「…なぜですか?あなたは…」

 

 そういった炭治郎の言葉に彼女は頷きながら答えた。

 

「…そう…私は確かに鬼です…ですが医者でもありあの男を鬼舞辻無惨を抹殺したいと思っています」

 

 彼女は一切の躊躇い無くそう言いきり炭治郎と向き合った。

 

 

―浅草の路地裏―

 

 

 無惨は表向きの家族二人を帰らせ自身は路地裏を歩いていたが向こう側から歩いてきた三人の酔っ払いの一人がわざとぶつかり、その酔っ払いはたかる為かわざとぶつけた腕を抑えながら叫ぶように言った。

 

「痛っ!…なんだよてめぇ」

 

 彼はそういったが無残は俯きながらただ一言「すみません」とだけ言うと自然な行動で去ろうとしたがその酔っ払いは諦めずに「おい!!どこに行くんだよ!!」と叫びながら無惨の肩を捕まえたがそれでも無惨は「申し訳ありませんが…急ぎの用がありますので」と言い、立ち去ろうとしたがそれでもその酔っ払いは懲りなかった。

 

「おいおい良く見りゃ随分いい服着てやがるなあ…ほんと気に入らねぇな…青白い顔しやがってよお…今この場でぶっ倒れて死んでもおかしくなさそう(・・・・・・・・・・・・)じゃねえか」

 

 この言葉が彼の最後の言葉(・・・・・)になった。

 

 無惨は目を見開くと目にも留まらぬ速さで酔っ払いを殴り飛ばし、その酔っ払いは壁にぶつかったが彼は殴られた時点で死んでいた(・・・・・・・・・・・・)ため痛みを感じる暇もなかったのはこの男の残忍さを考えるとある意味ではせめてもの救いかもしれない。

 

「おい!弟に何しやがる!」

 

 坊主頭のいかにもヤクザやチンピラともいえる風貌の男が弟が既に死んでいる事に気付かず無惨に報復しようと近づき一緒にいた女性が顔を青ざめさせながら叫んだ。

 

「あんた!!死んでるよ!!やっちゃんが―」

 

 彼女の言葉はそれ以上続かなかった、無惨はその男を蹴りの一撃で高く飛ばすとその男は蹴られた時点で弟と同様に絶命しており文字通りの血の雨を降らせると大きな音を立てながら落下した、最後に残った女性は完全に腰が抜けてしまい無惨は至近距離まで近づくと女性の顔を睨みながらすごんだ。

 

「私の顔色は悪く見えるか?青白く見える(・・・・・・)か?病弱に見える(・・・・・・)か?長く生きられない(・・・・・・・・)ように見えるか?死にそう(・・・・)に見えるか?違う違う違う違う…私は限りなく完璧に近い生物だ」

 

 無惨はそう言い彼女の額に指を当てたと思いきや一息に突き刺し、無惨は冷たく語った。

 

「私の血を大量に与え続けるとどうなると思う?人間の体は急激に変異しその速度に耐えられず―」そう言いながら無惨は指を引き抜きながら言った。

 

「―細胞が壊れ、その体は崩れ、崩壊する」

 

 無惨が言うように彼女の体はドロドロに溶け出し凄まじい悲鳴とともに息絶えた。

 

 そしてその場に無惨以外の生者がいなくなったところで無惨はパチンと指を鳴らすと二人組みの男女の鬼が姿を見せた。

 

「「何なりとお申し付けを」」

 

そう言った二人の鬼に無惨は静かに命令を出した。

 

「耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りの頸を持って来い。いいな?」

 

 無惨の指示で二人が姿を消したところで彼は再び口を開いた。

 

「…この三人の死体を片付けて復活の為に思念を取り込み糧にするがいい…イシュメルガ(・・・・・・)

 

 無惨の呼びかけで表れたのはかつてリィンと敵対した地精の長、黒のアルベリヒが使役していた戦術殻、ゾア・バロールでありそれは三人の死体に近づくと黒い煙のような物が三人の体から湧き出し、それを取り込み、さらに三人の死体は消え、それは無惨に語りかけた。

 

『感謝スルゾ…我ガ新タナルライザーヨ…コノ町ニ住ム人間全員ノ思念ヲ取リ込メバスグニデモ復活デキルガソレヲオマエハ望ンデハイナイダロウ?』

 

 ゾア・バロール―否―イシュメルガは無惨にそう語りかけ無惨は顔をしかめた。

 

「…冗談でもそのことを言うな。私は確かにお前の復活に手を貸すとは言ったがやり過ぎはよくない、このような大きな町で事を起こせば何が起こるか想像に難くない…鬼狩りだけならまだしも警察や軍隊までも敵に回したくない、少なくともお前が真の力を取り戻し私に力を与えるまではな…」

 

 無惨の言葉にイシュメルガは『ワカッテイル…真ニ受ケルナ…(シカシ…アノ小僧ノ持ッテイタ二振リノ刀ノ片割レハ…オモシロクナリソウダ…)』と言い無惨を落ち着かせると同時にイシュメルガはもしも人間であったなら間違いなくニヤリと笑っていたであろう様子でともに姿を消した。

 

 




次回はギャグが挟まると思います、ずっとシリアスな回が続いていたので楽しみにしていてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。