鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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前回の後書きでギャグかもと言いましたがどちらかと言うとホラー回かもしれないです。


またの名をシスコンマジギレ回とも言えます。


悪意に抗う者達

 

 炭治郎は禰豆子と箱を回収しに戻り、「置いて行ってごめんな…」と声をかけ、迎えに来た不機嫌そうな青年はそれを見て「なぜ鬼が…妹か?」と炭治郎に問いかけ、炭治郎は「はい…そうですけど…」と返すと彼は「そうか…ついて来い」とだけ言うと炭治郎の先を歩き始め、その行動を炭治郎はいぶかしんだが、ついて行くべきである事はわかっていた事もあり、彼の後についてあの女性の診療所まで案内されていた。

 

「(ここが…あの紙を使った血鬼術で周りから見えなくしているのか…)」

 

 炭治郎はそう考察していたが彼はそんな炭治郎の様子を彼は意に介した様子も無く入り口を開け苛立ったように「早く来い」と言い放ち、それを聞いた炭治郎は禰豆子の手を引きながら慌てて駆け込んだ、青年は彼女に対し「戻りました」と言い炭治郎も「失礼します」と言いながら彼女が待つ診療所に足を踏み入れた。彼女は二人の方を見ると「おかえりなさい」と声をかけ、炭治郎は直ぐに巻き込まれてしまった女性の容態を問いかけた。

 

「あの…お任せしてすみません…その人は大丈夫ですか?」

 

 炭治郎の問いに彼女は頷くと答えた。

 

「この方は大丈夫ですよ。傷は深いですが命に別状はありません、傷についてもあの人が提供してくださった薬を参考に作った薬ならば目立たなくできるでしょう…」

 

「そうか…よかった…(あの人?)それから…無惨に鬼にされた人は…」

 

 炭治郎の言葉に彼女は頷きながら答えた。

 

「ご主人は…気の毒ですが拘束して地下牢に…ですが誰一人として殺していないのは不幸中の幸いと言っても良いでしょう…その点は間違いなく彼方のおかげと言えます」

 

 それを聞いた炭治郎はほっと一息をついたが、もう一つの疑問を問いかけた。

 

「…あなたは鬼なんですよね?その…人の手当をしてつらくはないんですか?」

 

 炭治郎は遠慮がちに聞いたが隣の青年がそれなりに力を入れて炭治郎に肘鉄を食らわせ、しかめ面で言い放った。

 

「お前…鬼であるおれ達が食人衝動を持った上でそれに耐えながら人間の治療をしているとでも思っているのか?」

 

 彼女は彼の言動に眉を潜めつつ彼を咎めた。

 

「よしなさい、その子の疑問は鬼殺隊に所属している以上当たり前です、なぜ暴力を振るうの?」

 

 彼女は座っていた椅子から立ち上がると炭治郎に歩み寄りつつ名乗った。

 

「まだ名乗っていませんでしたね私は珠世と申します、彼は愈史郎…仲良くしてあげてくださいね」

 

 彼女―珠世の言葉を聞いた炭治郎は横目で愈史郎の顔を見たが凄まじい表情でゴゴゴと言う擬音が聞こえそうなほどの邪気を放つ彼に炭治郎は絶対無理だと感じつつはっとした表情になり問いかけた。

 

「ってあれ?ちょっと待ってください、珠世と愈史郎って言いましたか?」

 

 唐突な炭治郎の問いに「?ええ言いましたが…」と珠世は答え、愈史郎も同じく疑問符を浮かべ、それを聞いた炭治郎は懐に手を入れるとリィンから以前渡された紹介状と書かれた封筒を取り出し、それを見た珠世は「そちらの封筒は?」と問いかけ愈史郎は「手紙ならまずおれが中身を検めるから見せろ」と言ったが炭治郎は「いえその…愈史郎と言う人には絶対に渡さずに珠世と言う人に直接渡すようにと言われましたので…」と返しそれを聞いた珠世は「それは構いませんが…誰からの手紙ですか?」と問いかけ、炭治郎はすかさず「えっと…リィン・シュバルツァーと言う異国出身の隊士です」と答えたがそれを聞いた珠世は「リィンさんからですか?」と驚いたように答えたが反面、愈史郎は目を見開くと「!リ…リィン・シュバルツァーだと!?」と恐怖に染まった声で言い、傍目にもわかるレベルでガタガタと震えだした。

 

「ど…どうされたんですか!?」と炭治郎は叫ぶように聞いたが珠世は何ともいえない表情で「…その話は後にしましょう…その子の完全な自業自得としか言いようがありませんので…ついてきて下さい…奥の部屋で話しましょう」と言い、珠世は自身と愈史郎が人を喰らう必要が無く少量の血で問題ないこと、血は輸血用と称しその人物の健康に問題ない量しか貰わない事、愈史郎を鬼にしたのは無惨ではなく自分であり鬼を増やすつもりは無くそれ以外に生きる手段がない患者のみにしかその処置はせず、本人同意の上で行うと語った。炭治郎は彼女が嘘を言っていない事に確信を持つとリィンからの紹介状を渡し、珠世は頷くと近くの棚に置かれていた現代で言う所のペーパーナイフを取り封を開けるとリィンの紹介状に目を通すと頷き、口を開いた。

 

「リィンさんからの紹介状は貴方の妹…禰豆子さんを人間に戻すための薬の製造をして欲しいと言う依頼でもあるようですね…まずは結論から話しましょう、鬼を人に戻す方法はありますが今はまだ研究が不十分で現時点では不可能です…ですが鬼に人間だった頃の記憶を呼び戻す薬ならば既に完成しています」

 

 それを聞いた炭治郎は「本当ですか!?」と問いかけたが珠世はすぐに「ですが…」と続け、炭治郎は口を閉じ珠世は続けた。

 

「その薬で記憶を呼び戻せる鬼はある程度はっきりとした人格を確立させた鬼でなければならないと言う欠点があり…その点から禰豆子さんには効くことはないでしょう…何よりその薬は材料が希少で手に入れることができたのもほとんど偶然で今はリィンさんが持つ一本しか在りません…ですので再び作る事は余程の幸運が無い限り不可能でしょう…ですが私達は確実に鬼を人に戻せる治療法を完成させたいのですあなたにお願いする事は二つです。禰豆子さんの血の調査をさせて欲しいと言う事、もう一つはできる限り無惨の血が濃い鬼からの血液の採取です…お願いできますね?」

 

 炭治郎はこの道が凄まじい程に困難なものだとわかったが頷いた。

 

「ええ…覚悟はできています…リィン教官からも無惨に近い強さの鬼に関する講義を受けたのもこの為だとわかりましたから…」

 

 そう言った炭治郎に珠世は微笑み「ありがとうございます」と言い、炭治郎も「いえ、禰豆子を助けるためですから」と答えたがすぐにいまだにガタガタ震えたままの愈史郎に炭治郎は目を向け「…ところで一つお聞きしますが…愈史郎さんはリィン教官に何をしたんですか?」と聞き、珠世も溜息をつきつつ「ええ…気になるでしょうし…お話ししますね…」と言い、リィンが珠世達の前に現れた日の事を語り始めた。

 

 

―半年前…―

 

 

 リィンはティアの薬を初めとする自身の世界の治療薬を再現できる医者の事を耀弥に相談したところ彼は自身の協力者でもある珠世という鬼の医者の事をリィンに紹介し、ある場所で直接会うことになったため、リィンは直ぐに会いに行き珠世と愈史朗と会い当然の様に愈史郎はリィンにすごんだがリィンはそれを受け流しつつ珠世に用件を話した。

 

「…と言う事情がありまして、私が所持する薬を再現できる医者か薬師を探していたんです、どうかお願いできるでしょうか?」

 

 珠世はリィンから渡されたティアの薬を顕微鏡に少量だけ移すと成分を調べ、口を開いた。

 

「そうですね…時間はかかるかもしれませんが不可能ではないでしょう。ですがこの量だけでは不安がありますのでもう何本か研究用と資料用として提供していただけますか?勿論対価はお支払いします」

 

 そう言った珠世にリィンは頷くと「構いません、それと対価に関してはお金ではなく珠世さんの医者としての知識を借りる事にさせてほしいです。いずれ私の生徒が珠世さんにあることを依頼するはずなのでその時にお願いします…ある事については…難しい内容なので直接私の生徒からお聞きしてください」と言う風に答え、それを聞いた珠世は「わかりました、引き受けましょう」と返すと、リィンは持ってきた鞄からティアの薬だけでなく、それをさらに強力にしたティアラルの薬までの薬に加え、ある程度の毒の治療が可能なキュリアの薬を取り出した、ちなみに鬼の毒―十二鬼月のものでは進行を遅らせるのがやっとかもしれないが―にも効く事は以前リィン自身が実証済みである、すると―パサリ―と音がし、鞄から何かが落ちたのを愈史郎が見つけた。

 

「…おい何か落ちたぞ」そう言いながら愈史郎はそれ―二枚の写真―を拾い確認した。

 

「…写真…か?(異国の写真は色が付いているのか…よく撮れてはいるが…)おい、お前の物だろう?」

 

 流石に拾ってしまった以上無視してしまうのもバツが悪かったこともあり、リィンに手渡した。

 

「ああ、ありがとう…古い鞄だから少しガタが来てて…そろそろ新しくしないとな…」

 

「…ところでその二枚の写真に別々にお前と写っている女は誰だ?」

 

 流石に気になったのか愈史朗はそう問いかけ、リィンはすぐに答えた。

 

「ああ…こっちは妹のエリゼでもう一人は…二年ぐらい前に撮った…一応恋人って言うか婚約者って事になるのか?いや…でも正式に婚約したとは言いにくいし…」と考え出し、珠世はそれを聞き「(婚約者がいるのに異国から来てわざわざ鬼殺隊に…なにやら込み入った事情があるようですね…)」リィンに何か事情があることを察した珠世は悲しげな表情になったが愈史郎は顔をしかめた。

 

「フン!お前の妹に婚約者だと?妹もだが婚約者についても見るに耐えん程の醜女だな全く、趣味が悪いなんて物ではすまない、拾うんじゃなかったな…」

 

 躊躇いなくそう言い放ち、後ろを向いて部屋から去ろうとしたその時だった「おい…お前…今なんて言った?もう一度言ってみろ」と地獄の底から響くような声が聞こえ、同時に珠世はビクッと体を強張らせ顔を青ざめさせた。その声の主―リィンは幽鬼のようにユラリと立ち上がると気のせいか赤黒い気を放ち、目を血のように赤く光らせ、その上髪が白銀に染まっているようにすら見えた。

 

「事実を言って何が―ヒッ!!」

 

 愈史郎はさらに暴言を吐こうとしたがリィンが放つ恐ろしい殺気と幽鬼のような姿に彼は初めて心の底から恐怖を感じ、自身がリィンの逆鱗に触れてしまった事を悟り、まさに蛇に睨まれた蛙と言う喩えが当てはまる状態だった。

 

「愈史郎と言ったな?珠世さんの邪魔しちゃ悪いから他の部屋でゆっくり話そうか?妹のエリゼをバカにしただけならまだしもおれの妹と婚約者が醜いだって?…二度とそんな事を言えない様にしようか…安心しろ愈史郎は鬼だからな日輪刀もおれの愛刀も使わなければ死なないだろうからな…」

 

 そう言いリィンは穏やかな笑顔を浮かべたがその殺気は弱まるどころか強まっており愈史郎は完全に腰が抜けてしまい、助けを求めて珠世を見たが、珠世は目をそらすと「…いい機会ですからこってりしぼられて来なさい、実際の所あなたが何度も患者を睨んで怖がらせている事で苦情が何度も来ています…つまりは反省しなさい」と言い、珠世からの事実上の死刑宣告―鬼だから死なないが―に愈史郎は絶望の表情で連行されて行った。そして数時間たち現れたのは落ち着きを取り戻したリィンとガタガタ震えながら「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」と壊れた機械のように謝り続ける愈史郎の姿だった。

 

 

―そして現在…―

 

 

「と言う事が以前ありましたので…」と珠世は遠い目で答え、炭治郎は本気で怒ったリィンの恐ろしさに愕然とした。何しろ炭治郎は嘘がわかる為珠世が語った出来事が紛れもない真実だとわかったからだ。

 

「もしもこの出来事がなかったらおそらくですが愈史郎は禰豆子さんを醜女よばわりしたでしょうね…」となんとも言えない表情で珠世は言い、炭治郎は今の愈史郎を見てリィンに対し流石にやりすぎではないかと思う自分とリィンの怒りは当然の事と感じる自分がいると言う事実に複雑な気分になり「あの人ってリィン教官だったのか…」とか「リィン教官には婚約者がいたのか…」と言った風に現実逃避気味にぼやいたがその時今までガタガタ震えていた愈史郎が突然はっとした表情になり叫んだ。

 

「!?拙い、伏せろ!!」

 

 愈史郎が珠世を炭治郎が禰豆子をかばった直後だった、何かが壁に大穴を開け、その勢いのままさらに部屋を破壊しそれが収まった直後に炭治郎は外に目を向けた、そこには二つの毬を持った少女の鬼の姿があった。

 

 




書いているうちに自分でも「リィンやり過ぎでは?」と思いましたが閃の軌跡Ⅲでのある場面での発言から相手の命に別状さえなければこれぐらいやってもおかしくないと思ってしまったのであえてこのまま投稿しました。

リィンの恋人に関してはあの列車で誰なのか明かしますので楽しみにしていてください。
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