鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
炭治郎は向こう側の部屋の通路を見据え、響凱が部屋を覗いたのが目に入った瞬間、炭治郎はダッとかけだし、自身が響凱に近づいたところで二人に向け「叩け!」と叫んだ瞬間、ポンと鼓の音が響き、二人の姿が消えた所で炭治郎は響凱に斬りかかろうとし、響凱は「虫けらが…忌々しい…」と呟くと、同じ鼓を素早く二度叩き、炭治郎は回転した部屋の天井に身体を打ち付けそうになったが素早く体制を立て直し、響凱を見据えたが、響凱はすぐに腹の鼓を叩き、爪の攻撃を放ちそのまま立て続けに、部屋の回転と爪による攻撃を放ち、炭治郎に攻撃の隙を与えず、炭治郎は素早い攻撃と回転に対応しつつ、思考を巡らせた。
「(くっ!思ったより速い!どうにかどの鼓がどの回転に対応しているのかは覚えられたけど回転が速すぎて攻撃に移れない!)」
炭治郎は響凱の攻撃にどうにか対応しようとしたが一向に変わらない状況に内心愚痴っぽくなってしまっていた。
「(手当てはしてもらっているけど前の戦いのときの怪我が完治していないし、ぎりぎり折れてないだけマシだけどそのときの怪我が痛くて痛くて堪らないんだよ!おれは長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった…何より!)」炭治郎は立て続けに繰り出される響凱の血鬼術を避けながらある事実について再び思考を続けた。
「(この鬼はあの時の二人よりもずっと強い!この鬼の術は室内だからこそ効果を発揮する術なんだろうけどその分この場は奴にとって有利すぎる!だからと言って廊下に逃げる事はできそうに無いし外に追い出す事も無理だ!もし外に追い出したら外に寝かせているあの人にも危険が及ぶ…それだけは絶対に避けないとダメだ!かと言って間合いに入るのも難しい、もしもこの疲れと痛みで足が縺れたりしたらおれは間違いなくバラバラにされる!鱗滝さん…リィン教官!)」
炭治郎は思考の末に自分の二人の師の姿と言葉を思い出した。
『八葉一刀流は確かに強い流派だけど一つ大きな弱点がある…炭治郎も鱗滝さんも解ったら答えてほしいけど…』
以前最終選別の後に行われた講義の時の言葉で、剣を始めたばかりの炭治郎にはその時は答えられなかったが見かねた鱗滝が少し間をおいてから答えた。
『…八葉一刀流は基本的な構えは居合いによる物…ゆえに足に力を入れる必要が有る技が多い、だからこそ足場が不安定な場所や空中では使いにくい…だな?』
鱗滝の言葉にリィンは『その通りです』と答え、『反面…』と鱗滝を見ながら口にし、鱗滝は引き取るように口を開いた。
『…水の呼吸はその名の通り水を体現した技でありどんな形にもなれる…事実水は四角い物に入れれば四角に、丸い物に入れれば丸く、さらに勢いが付けば岩すら砕く事ができ、そのままどこまでも流れてゆく…』
鱗滝の言葉にリィンは頷き、『まあ、それが八葉一刀流の弱点と、水の呼吸の利点だ、まあ…速さだったら八葉の方が勝ってるだろうけど…炭治郎は状況に合わせて二つの技を使い分けると良い、八葉だけでも水だけでもない、炭治郎なら間違いなくそれができる筈だ』そう答えたのを思い出した炭治郎は目を見開いた。
「(そうだ!水の呼吸の型は十種類の型が有る、どんな敵とも戦えるし…それに加えて上手くやれればどんな技とも合わせられる!だったらこれ以上ひどいことにならないように補う動きをしつつ二つの技を合わせる!)」
炭治郎は響凱に対して技を当てるための隙を見出す為に今しがた思いついた八葉の技と水の呼吸の合わせ技の構えを取りつつ、自身を鼓舞する為に叫んだ。
「頑張れ!炭治郎!負けるな!!俺は今まで良く戦ってきた!!俺はできる奴だ!!今日も!これからも!俺は絶対に挫けない!!」
それを聞いた響凱は炭治郎を睨むと、再び鼓を叩き、叩きつけようとしたが、炭治郎はどうにか受身を取り、続けざまに放たれた斬撃も避けたが響凱はそこから少しずつ鼓を叩く速度を上げ始め、幾度も避け続ける炭治郎に痺れを切らしたのか、それともナニカを思い出したのか、それは解らないが響凱は「消えろ!虫けら共!!」と叫ぶと響凱は両手を広げ、それを見た炭治郎は響凱の意図を悟り、「!(まさか…まだ速くなるって言うのか!?)」そう戦慄し、響凱はそこからさらに鼓を叩く速度を上げ、これまでとは比べ物にならない速さで回る部屋と爪の数が三本から五本に増えた斬撃に考える間も無く避け続けるなか、炭治郎を斬撃の一つが掠めた時、その斬撃が傍に有った机を切裂き、その中から何枚かの原稿が落ち、それを見た炭治郎は「(あの紙…誰かの手書き文字か?)」それに気付くと誰の物であれ、努力の結晶とも言えるそれを踏みつける事はできない、そう感じた事もあり、炭治郎は反射的に踏まないように着地し、それを見た響凱は驚きのあまり、攻撃を止め、炭治郎も全く身体が痛まなかった事に驚き、同じく固まり、本当に一瞬の沈黙の後に再び響凱は斬撃を放ち、炭治郎はすぐに飛びのきながら思考を巡らせた。
「(ようやく解った!怪我が痛まない身体の動かし方が解った!)」
炭治郎は斬撃をかわしつつ、体が痛まない動きを意識し、同時に攻撃の際に来るカビのような匂いに気づき、上から来る斬撃を体制を低くしてかわすと技の構えに入った。
「全集中・水の呼吸・玖の型・
「―水流飛沫・乱・緋空ノ舞!!」
炭治郎が放った技は水の呼吸の技の中で不安定な場所に最も上手く対応できる技である水流飛沫・乱に八葉一刀流の六の型で唯一鬼を倒せない技である緋空斬を組み合わせ、最小の威力で不規則に放つと言う物で、いくら効かないとは言え、いくつもの斬撃が不規則に飛んでくると言う状況に響凱も動かざるを得なくなり、その結果、大きな隙ができ、炭治郎は響凱の頸から伸びる隙の糸をはっきりとその目で捉えると、「君の血鬼術は凄かった!!」そう叫ぶと躊躇い無く響凱の頸を斬り、元の状態に戻った床に着地したが、「!!(しまった!!うっかり息を吸いすぎた……)」痛みのあまりうずくまり―後でわかったことだが―元々折れかけていた骨のヒビが悪化してしまっていた、すると「小僧…答えろ…」と響凱が声をかけ、炭治郎はすぐに響凱に目を向けると彼は「小生の…血鬼術は……凄いか?」と弱々しく聞き、炭治郎は一瞬呆気に取られながらも「…凄かった…」と答え、すぐに「…でも…人を殺した事は…許せない」と告げるとそれを聞いた響凱はただ静かに「……そうか…」とだけ告げた、そのすぐ後に炭治郎は珠世から渡された特殊な小刀を響凱の身体に投げるとそれが自然に吸い取った血を見つめた。
「(凄いな…半信半疑だったけど本当に血が採れてる…)」
炭治郎はそれを暫く見つめていた時だった、突然「ニャー」と猫の鳴き声が聞こえ、炭治郎は驚いて「わっ!」と声を上げた、見るとそこにいたのは、珠世の使い猫の茶々丸だった、炭治郎は彼の役目に気付くと「そっか、君が珠世さんの所に届けてくれるんだな?ありがとう、気をつけて帰るんだぞ」と言いながら小刀を茶々丸が身に着けていた袋に入れ、そのまま去って行くのを見届け、響凱はただ静かに炭治郎を見つめながら涙を流していた。
「(…小生の書いた物はこれまで何度も塵のように踏みつけられてきた…だが…少なくともあの小僧にとっては踏みつけにするような物ではなかったのだ…最後の最後に…小生の血鬼術も…鼓も…なにより努力も…認められた……)」
響凱は最後に確かに満たされるものを感じ、静かに消えて行った…
炭治郎は響凱が消えて行ったのを見届けると、すぐに清とてる子の待つ部屋まで疾走し、二人が待つ部屋を見つけると、「清!てる子ーーーー!!」と二人の名前を叫びながら開けたが二人は「キャアア!!」「うわーーーっ!!」と叫ぶとその部屋に置かれていた家具を手当たりしだいに炭治郎に投げつけ、炭治郎は慌てて「ふ…二人とも落ち着いてくれ!何でものを投げつけるんだ?」と返し、それを聞いた清は相手が炭治郎だと気付くと「あ…ごめんなさい…鼓が消えて混乱して…」と答えそれを聞いた炭治郎は「(そっか…あの鬼の術の一部だから消えるのは当然のことか…)」と考えると「さあ今は外に出よう」と言い清を背負うと出口へ向かったがすぐに血の匂いを感じた炭治郎は玄関を見据えた、そこには戸がぶち破られた玄関が有り、外には禰豆子が入った箱を身を挺して守る善逸とその善逸を一方的に蹴り飛ばす例の猪の皮を被った男の姿があり、炭治郎は身体が痛むのも構わずに走って駆けつけると、その男は「刀を抜いて戦え!この弱味噌が!!」と炭治郎達に目もくれず善逸を罵り、善逸は炭治郎に気付くと「…あ…炭治郎…おれ…守ったよ…お前が禰豆子ちゃんのこと…何よりも大切に思ってるってこと…前から知ってたから…」とボロボロになりながらもはっきりと伝えた。
オリジナル技解説 その二
水流飛沫・乱・緋空の舞
水の呼吸の玖の型に八葉一刀流の緋空斬を組み合わせた技、玖の型に最小まで威力を落とした緋空斬を不規則に放つ事で、攻撃と牽制を同時に行う、室内や洞窟など、四方を壁に囲まれた場所で真価を発揮する技となっている。