鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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今回と次回は善逸視点の話となります。


勇気と歩み

 

 一方炭治郎と伊之助が母鬼を倒した頃、善逸は…

 

「どこにいるんだよぉぉーーー!!炭治郎ぉぉーーー!禰ぇ豆子ちゃぁぁーーーん!!」

 

 ただ一人、盛大に迷っていた。

 

「ここ山のどの辺りなんだよ!酷い匂いがするし、音で聞き分ければいけると思ったけどさっきから蜘蛛がカサカサカサカサうるさくて音も聞き分けられないし!いや蜘蛛もおれ達人間と同じで一生懸命生きてるんだろうけどさ!だとしても気持ち悪い上にうるさすぎて炭治郎たちがどの辺にいるかわからないのは本当にやなんだけど!!それにさっきから妙な音もするし!!」

 

 と、このような様子で行き所の無い怒りをぶつけており、肩を怒らせながら歩いていたがその直後、手に何か刺さるような感覚が有り、善逸は「イタッ!」と声を上げると何か(おそらくは蜘蛛だろうが…)に刺された左手を見つめながら「もう本当に最悪!!炭治郎たちは見つからないし!蜘蛛には刺されるしほんと腹立つ!!もう泣きたい!!」と叫んだ直後ガサッと一際大きい音がし、善逸はそちらに目を向けつつ「もーーーっ!百歩譲って近くにいるのは良いけどうるさいからじっとしてて!!」と叫んだがそこにいたソレ、この世のモノとは思えない姿のそれ―血走らせた目を見開いた人面蜘蛛を目にした善逸は一瞬硬直し、直後「こんなことってあるゥゥーーー!?」と叫びながら物凄く綺麗なフォームでソレがいる方向とは逆方向に向けて駆け出した。

 

「マジで信じらんない!!人面なんですけど!!人面蜘蛛だったんですけど!!本当にどういうこと?マジでどういうこと!?夢だよね?夢だよね!?頼むから夢であってくれよ!!」

 

 善逸は凄まじい速さで走りながら僅かに開けた場所の近くで速度を緩めつつ「もしも夢だったなら俺頑張るから!修行からも逃げないし、なんだったら起きた時に禰豆子ちゃんの膝枕とかだったらそりゃもっと頑張る!畑だって耕すし、それから俺と禰豆子ちゃんと炭治郎とついでに伊之助も広々と住める家だって自力で建てるしついでに最近夢に出てくる変な扉だって開けてみせるから!だから…悪夢から覚めてくれぇーー!!」と天に向けて叫んだ直後、あるモノが目に入り硬直した。

 

 善逸の目に映ったのは、蜘蛛の糸で宙に吊るされた家とその家の周囲に吊るされた身体の一部が蜘蛛に変わりつつある人間と言う異様な光景で困惑した。

 

「!(なんだよあれ…家が糸で吊るされていて…人間が蜘蛛に変えられているのか!?そ…それってつまりさっきの人面蜘蛛はここで蜘蛛に変えられた人達ってこと!?それになんなんだよこの嫌な臭いは!おれでこれってことは鼻が利く炭治郎だったら死んでるだろ!!)」

 

 善逸は自身の鼻を塞ぎながらそう心の中で言った時だった『ギィィィーーー』と嫌な音を響かせながら吊るされた家の引き戸が開き、そこから人間並みの大きさで頭だけが人のソレとなった蜘蛛のような姿の鬼が姿を見せ、善逸は凄まじい表情で固まり、それを見た鬼はニタリと嘲笑うような笑みを浮かべ、善逸はすぐに「俺、お前みたいな気色悪い奴とは絶対に口利かないからな!!」と叫ぶと勢いよく方向転換しそのまま来た方向へ駆け出したところでその鬼が善逸に一方的に話しかけた。

 

「くふっ逃げても無駄だぜ!お前はもう負けてる(・・・・・・)んだよ」

 

 相変わらずニタニタ笑いを崩さない鬼に善逸は「話しかけんじゃねーよ!!お前みたいな気色悪い奴嫌いなんだよ俺!!」と走りながら叫び返したが鬼は「まぁ手を見てみな…くふふっ」と言い善逸は「はぁ!?手!?手がどうしたって言うんだよ!!」と叫びながら手を見た善逸は「!えっ?な…何…これ…?」と異様に膨れ上がり変色した手を見て固まり、鬼はニタニタ笑いをさらに強めながら続けた。

 

「毒だよ…お前さっき蜘蛛に噛まれただろ?それもただの毒じゃない…その毒を喰らった奴は四半刻後には蜘蛛になり…自分が人間だった事も忘れて…俺の奴隷となり…地面を這い回るんだ…」

 

 恐怖から震えを隠せずにいる善逸に対し、鬼は何処からか懐中時計を取り出すと順番に数字を示しながら恐ろしく丁寧に説明を始めた。

 

「コイツがわかるか?時計だ、この長い針がここに来た時には、お前も蜘蛛の仲間入りってわけだ…お前の場合はそうだな…まずはこの壱の所に来ると手足に痛みと痺れが出てくる…次に参に来たらめまいと吐き気が加わる…そしてここだ…肆の所まで来ると失神して目が覚めた時には…」

 

 ここまで説明された所で善逸は「ギャアアアアッ!!」と悲鳴を上げ、さらに足元に群がっていた人面蜘蛛の群れに気付くと「イィィヤァァーーー!!」と甲高い悲鳴をあげてそのまま逃げ出し、それを見た鬼は再び「逃げても―」「無駄ね!!ハイハイハイ!!わかってんだよ!!二度も言わなくていいからッ!!」無駄と言おうとしたが善逸はすぐにそう言い返し、その勢いのまま木によじ登ると鬼に背を向けたまま泣き出した。

 

「ハハハハ!何やってんだお前!ここ最近いろんな鬼狩りを見てきたがお前みたいな奴は始めてだぜ!安心しな、さっきも言ったが蜘蛛になった時点でその恐怖も忘れて自分が人間だったこともわからなくなるってわけだ…まあ結果的にではあるが恐怖からは解放されるな…」

 

 鬼は完全に善逸を舐めており嘲笑うことを取り繕いもしなかった、一方善逸はその様子に恐怖と苛立ちがごちゃ混ぜになり、たまらず言い返した。

 

「うるせーよ!それが一番嫌なんだわ!俺が情けない奴だってことくらい俺が嫌って程わかってるんだから黙れよ!そもそもお前なんでそれがわかんねーんだよ!おまえ冗談抜きで悪趣味だし絶対に友達も恋人もいないだろ!間違いなく嫌われてるだろ!!」

 

 それを聞いた鬼は善逸の言葉に苛立ったような表情で黙り込み、一方善逸は恐怖で震えながらも考えていた。

 

「(ああ…どうしよう…どうしよう…アイツはなんか黙ったけどここからどうすれば…このままこうしてても蜘蛛になるだけだし…なにか薬とかあれば…うん?薬?)」

 

 炭治郎から渡された薬のことを思い出した善逸は懐に手を入れ『キュリアの薬』が入った小瓶を取り出すと炭治郎から言われた言葉を思い出した。

 

「(そういえば炭治郎は鬼の攻撃で調子が悪くなったら使えって…効くかはわからないけど何もしないよりはマシな筈…!)」

 

 善逸は蓋を取るとすぐに『キュリアの薬』を飲み干すと深呼吸し、あの時の男性が生還した事から善逸はすぐに落ち着くように自身に言い聞かせると考えこんだ。

 

「(落ち着け…落ち着くんだ俺…炭治郎たちだってこの山で戦ってるんだ…せめてコイツだけは俺が倒さないと…)」

 

 一方鬼は善逸に先ほど説明しなかった症状―毛が抜け落ちるというソレが現れないことにいぶかしんでいた。

 

「(どうなってる?何故毛が抜け始めない?そろそろ症状が出てもいい筈だが…まさか今あいつが飲んだ薬が毒を弱めているのか?まだ解らないな…暫く様子見をするか…)」

 

 善逸は思考を巡らせ、様々な考えが現れては消えていくと言う思考のループにはまりかけていた。

 

「(とにかくどうすれば良いんだよ?俺だって戦いたい…ちゃんとした人間になりたい…臆病な自分から勇気を持ちたい…時々見る夢みたいに強くなって友達だったり…大切な誰かのために戦いたいよ!俺だって…炭治郎たちと一緒に戦いたい!!隣に立って一人でも誰かを守りたいんだよ!!)」

 

 善逸が初めて自分ひとりで戦うという選択を選んだ時だった。

 

『ヨウヤク一歩踏ミ出シタカ…マダ未熟ナガラソウ決意シタ…小サクモオ前ハ確カニ決断シタ…ソレハ大キイ意味ヲ持ツダロウ…』

 

 その声を聞いた善逸はギョッとした、聞き覚えが無いのではなく逆に夢で聞いた覚えがある―扉の向こうから聞こえた声であり、善逸はすぐに聞き返した。

 

「!(だ…誰なんだよ!アンタ!!夢だけじゃなく現実にまで出てくるの!?あの扉の向こうにいるってことは解ってるけどアンタ誰なのよ!?)」

 

 善逸の言葉を聞いた彼(本当に男性かは不明だが)はどこか冗談めかして答えた。

 

『サテナ…カツテノ英雄ノ魂カモ知レヌシ、神カモシレヌシ、悪魔カモ知レヌ…アルイハ魔王カモ知レヌナ?』

 

 彼の謎めかした言い回しに善逸は答える気が無いと気付くとなんともいえない気分で言い返した。

 

「(…アンタが今俺に正体を明かす気がないってのはわかったよ…それでどうして今声をかけたのさ?いつもみたいに夢の中でも良いだろ?わかってる?俺はあの気持ち悪い奴をどうにかして倒さないといけないんだよ!!)」

 

 善逸の言葉に彼はどこか苦笑いしてるような様子を見せながら答えた。

 

『…全ク…臆病ナノニ妙ニ肝ガ据ワッテイルモノダ…ダガ良カロウ…オ試シ期間ト言ウ物ダッタナ…コノ戦イニ限リ、我ノ力ヲ少シバカリ貸シテヤロウ…』

 

「えっ?」

 

 その言葉に善逸は思わずそう声を上げ、それに気付いた鬼は善逸が動くつもりだと考えたのか蜘蛛にされた隊士に「飛びかかれ!!」と指示を出し、それに気づいた善逸は「アーーーーッ!!もう!こうなったらヤケだ!!この気持ち悪い奴は俺一人でだってやってやる!!」と叫ぶと木をよじ登ってきた蜘蛛を避ける為に木の枝から飛び降り、地に降り立つと居合いの構えに入った。

 

「!(なんだコイツは…さっきまでずっと怯えていたってのに急に雰囲気が変わりやがった…!)」

 

 鬼は善逸から発せられる威圧感に怯むと同時に困惑し、善逸の精神に宿っていた存在は『サア…我ガ力ヲ貸スニ相応シイカドウカ…見セテ貰ウゾ…我妻善逸トヤラ…』と善逸の実力を試す為にその戦いの様子を見据えていた。

 

 





 次回は累の兄と善逸の対決となります、今の善逸は炭治郎の期待と謎の存在の言葉により精神的なリミッターが一時的に外れかかっている状態のため気絶せずに済んだと言う設定があります、どう言った展開となるかはお楽しみに。
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