鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
善逸はなんとしてもコイツだけは倒すと言う意思だけで全神経を集中させつつ構えた。
「雷の呼吸・壱の型・霹靂一閃!」
善逸は『ダンッ!』という音を響かせながら跳躍して鬼に迫り、それを見た鬼はすぐさま反撃した。
「!(思ったよりも速い!)」
鬼は善逸の速さに驚いたが直ぐに“斑毒痰”と言う猛毒の痰を吐き出して迎撃し、善逸は反射的に身体を捻らせ間一髪で避けると先ほどとは別の地面に降り立ったがその途中でソレが当たった木の幹が『ジュウウ』と言う音を立てて溶け出したのを目にした善逸は顔をしかめた。
「!(あ…危なかった!あんなの当たったらまず間違いなく怪我じゃすまないだろ!けどここに来たのがおれある意味では良かったかもしれない…炭治郎だったら匂いで気絶かなんかしてる間に蜘蛛にされかねないし、伊之助だったら後先考えないで突っ込んで間違いなく死ぬ!おれだってこんな気持ち悪い奴の相手なんかしたくないけどこうなったらやるしかないだろ!)」
ある種のゾーン状態に入っている善逸は地面に降り立つと再び居合いの構えに入ったがその鬼は回りにいた蜘蛛にされた隊士に「飛びかかれ!」と指示を出した直後、その言葉通り善逸の周りにいた彼らが飛びかかって来た事もあり、善逸は直ぐに技を中断すると飛びのいた。
「!(クソッ!こいつらがただ見た目が気持ち悪いだけの蜘蛛だったら良かったけどこいつらはただの蜘蛛じゃなくて元は人間だから傷つけたりしたらどんな影響があるか解らない!それに炭治郎たちだけじゃない!この人たちを助ける為にもこの気持ち悪い奴をどうにか倒さないとダメだ!)雷の呼吸・壱の型―」
善逸は避けた場所で再び居合いを構えたが鬼は再び“斑毒痰”を放ち、善逸は飛びのき、再び居合いの構えに入り、一連の動きからある事実に気付いた鬼はニヤリと笑みを浮かべた。
「(やっぱりそうか…何度も同じ構えばかりしている!こいつは動きは速いがその代わりに一つの技しか使えない!)」
一方、鬼が心の中で嘲笑ってる中、善逸は以前自分の師である桑島慈悟郎から言われた言葉を思い出していた。
『…一つの技しか使えない…か…いいんだ善逸…お前はそれで良い…唯一つだけでもできれば万々歳だ…それにな多彩な技を持った達人がとあるたった一つの技を極め抜いた者と戦い呆気なく負けた話がある…なぜだか解るか?』
「(…いやこの話ししたちょっと前のじいちゃん割とマジギレだったじゃん、兄貴と違っておれが雷の技一つしか使えないから…と言うか本当にそんな人いたの?いたとしていつの時代の何処の国の人なのかすごい知りたいんだけど…)」
現在の善逸のそんな思考を余所に彼の記憶の中の桑島は何を思ったのか善逸の頭を叩き出した。
『そうだな…例えて言うなら刀の打ち方を知っているか?刀はな何度も何度も叩いて不純物や余計な物を飛ばす事で鋼の純度を高めて強靭な刀を造るんだ』
「(いやなんで急に刀の話になってんの?さっきは達人の話してたよね?と言うかたとえ話だとしても叩きながら話さなくても良いでしょ?泣くよおれ…でも確かにこんな話ししてた…あの時は解らなかったけど今にして思えばじいちゃんなりにおれの事慰めてくれたんだよな…何度も叩かれたから痛かったけど…)」
すると先の質問に答えるように桑島が答えた。
『それはな…一つだけ極めた者はその一つに集中できるからじゃ…対して複数の技を持つ者は戦うたびにどの技をどのように使うか考えねばならない…だからこそ初動に隙ができる…だが一つを極め上げた者にはそれが無い…つまりその一を極限まで極めた者はより速く、より鋭く動ける…じゃから一を極めた者は百の技を持つ達人に勝利できたのじゃよ…つまり唯一つを鍛えて鍛えて鍛え上げて何よりも速く鋭くすればよいのじゃ…時には逃げても泣いても良い…じゃが諦める事だけはしてはならぬ…お前は…一つの事を極限まで極めろ…!』
善逸はかつて桑島に言われた事を思い出し、口元に笑みを浮かべた。
「(…そうだった…炭治郎だけじゃない…じいちゃんもおれのことちゃんと見てくれてた…いやあの時は明らかに叩きすぎだったとは思うけど…おれが何度逃げようとしてもそれでも連れ戻してくれったっけ…だから…やって見せる…!)」
善逸が心の中でそう呟いた直後『バチバチッ』と何かが弾けるような音が善逸を中心として響きだし、それを聞いた鬼は得体の知れないナニカを感じ、身体を震わせた。
「!?(どうなっている!何故おれはこんな情けない奴相手に恐怖しているんだ!?いや…そいつはあとだ!)そいつに毒を打ち込め!」
鬼の支持で蜘蛛にされた隊士が善逸に毒を打ち込もうと飛びかかったがその直後『ドンッ』と言うまるで雷が落ちたような音が響くと善逸の姿はその場から消え、次の瞬間には蜘蛛が飛びかかった場所から離れた場所に移動していた。
「!!(なんだ?何をしたんだ?こいつは!?)」
「!!(おれ…今何をしたの?)」
鬼は勿論、この力を発現させた善逸自身にも何が起こったのかは理解できずにいた、だが善逸は漠然とだが今なら勝てると確信し、鬼はこのままでは負けると本能で悟り、冷静になった善逸に対して鬼は恐怖から“斑毒痰”を何度も吹きかけようとしたが善逸はその度にそれを避け、避けきれない物は先程の瞬間移動のような技で避けていたが善逸は僅かだが焦りを見せていた。
「っ!(まずい!腕が痺れてきた…!早く決めないと動けなくなる!!)」
先ほど鬼が説明した症状の一つである身体の痺れが現れ始めていた、いくらキュリアの薬で毒を弱めているとは言え、人間を蜘蛛に変えると言うソレは余りにも特殊すぎた為か完全な無効化はできていなかった。
「(…僅かだが動きが一瞬鈍ったな…やはり完全な解毒はできていなかったようだな…)」
その事実は鬼も気付いており、分析していたがソレは善逸は直ぐにでも勝負を決めに来る事を意味しており、善逸は鬼を見据えるとこれまで以上に力強く地を踏みしめ居合いの構えに入りつつ思考を巡らせた。
「(…ただの霹靂一閃じゃダメだ、さっきみたいに毒液を吹きかけられる…だったらやれるかは解らないけどこの力と組み合わせる!!)」
善逸は彼自身でも驚くほど冷静に思考を巡らせ、そして全神経を技に集中させると、善逸の周囲に青白い光がうっすらと現れ、先程のように弾けるような音が響きだした、それを善逸の内から見ていたモノは『…マダマダ未熟…ダガ…合格ダ』と結論を出し、ソレを余所に善逸は技に移った。
「(ここだ!)雷の呼吸・壱の型・霹靂一閃・―」
「!(どうするつもりだ!所詮コイツは―)」
一つの技しか使えない、そう続けようとしたが次の瞬間、先程の『ドンッ』と言う音と共に善逸の姿が消え、鬼は困惑し、辺りを見渡した。
「!どこだ!何処から来る!?」と辺りを見渡した直後だった。
「―
その言葉と共に消えたはずの善逸の姿が鬼の目の前に現れ、一瞬にして鬼の頸はまさに雷のように速く鋭い一閃によって斬り落とされた。
「なっ?(何が起こったんだ?斬られたって言うのか!?おれの頸が一瞬で…そもそもコイツは何をしたって言うんだ!?)」
鬼のその疑問に答える者は誰一人としておらず、満月を背に宙に舞う善逸の姿を目にしながら身体を崩壊させていった。
「…終わった…」
善逸はそう呟くと蜘蛛の糸に繋がった家の上に背中から落下し呻いた。
「っ!…いったいなぁ…炭治郎たちの所…行きたいけど…疲れすぎて…体動きそうに無いな…そういえば…おれ…はじめて一人だけで鬼…倒したんだっけ…それに…見たかよ…クソ兄貴…おれだって…鬼倒せたんだ…ははは…おれにしては上手くやれただろ?」
実際の所善逸は何度か一人で鬼を倒しているのだがその時はいずれも気を失っていたため意識がある状態かつ一人と言う意味では確かに初めてだった…そしてその善逸に語りかけるモノがいた。
『見事ダッタゾ…我妻善逸…イズレオ前ガ本当ノ意味デ覚悟ヲ決メタ時ニマタ会オウ…ソノ時ハ本当ノ意味デ我ノ力ヲ託ストシヨウ…ソノ時マデ暫シノ別レダ…(最モソノ覚悟ヲ決メル時ハ何ガキッカケニナルカハ解ラヌガナ…)』
善逸の精神に宿るソレは一方的に話すだけ話すと何も言わずに善逸の意識の底に沈み、善逸は「…認めて…くれたのは…嬉しいけど…誰…なんだよ…」とある意味ではご最もな疑問を口にすると気を失った。
「もしもーし、大丈夫ですか?」
…気を失った善逸に一人の女性―胡蝶しのぶが声をかけたが善逸は目を覚ます様子がなく、彼女は善逸の診察をし頷いた。
「…命に別状は無さそうですね…ですが毒のことも有りますし直ぐにでも治療を始めましょう…リィンさん…冨岡さん…そちらは任せましたよ…」
しのぶはリィンと義勇が向かった方向に目をやりながらそう口にしていた。
オリジナル技解説
仮称・善逸の異能
謎の存在の手引きにより善逸に一時的に発現した異能、詳細こそ現時点では不明だが確認された限りでは発動時の弾けるような異音に瞬間移動の際の激しい音が確認されているが累の兄との戦闘以後は善逸自身も使用不可能となっている為不確定な要素が多い力となっている、また瞬間移動は善逸の身体への負担も凄まじく、連続で使用したこともたたり、戦闘後は動けなくなってしまった。
霹靂一閃・
善逸が上記の異能と霹靂一閃を組み合わせる事で習得した霹靂一閃の派生技、今回は累の兄の目の前に出現し、そのままの勢いで加速した斬撃を食らわせると言う形で使用したが理論上は相手の死角からの攻撃も可能であり一撃必殺と言う意味では強力だが、反面連続での使用は上記の異能の特性もあり不可能となっており、同時に一度の使用ですら凄まじい程の集中が必要となる。