鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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予告通り累戦最終話です。

あの名シーンを上手く表現できるか頑張ろうと思います。




ヒノカミ・そしてー

 

 炭治郎は勢いよく駆け出し、刀を振り上げた。

 

「本当に諦めが悪いな…無駄だってわからないのかい?」

 

 累は炭治郎をそう睨みつけたが炭治郎は「やってみないとわからないだろ!!」と叫び技の動きに入った。

 

「水の呼吸・拾の型!生生流転!!」

 

 炭治郎はすぐ傍に三重に張られていた強度がバラバラの糸を纏めて斬り落とし、それを見た累は考え込んだ。

 

「(糸を纏めて斬り落とした…単純だけど効果的なやり方だね…けどぼくに近づけば近づくほど硬い糸は多くなる…何処かで弾かれて終わりだよ…)」

 

 累は勝ちを確信してそう考え、一方炭治郎は生生流転の動きを続けつつ《C》の言葉を聞いていた。

 

『気をつけろ!あいつに近づけば近づくほど糸も硬くなってやがるからな!どんな方法でも良い!あいつの頸を斬れるところまで近づかねぇと意味がねぇ!そういう意味ではどっちみちおれの力は使えねぇってことを常に考えて置け!さもないとおれ達の負けだ!』

 

 炭治郎は《C》が言うおれ達が自身と《C》だけではなく善逸と伊之助に村田、そして今もこの山の何処かで戦っている名も知れない鬼殺隊の仲間全員を指している事に気づき炭治郎はより一層技に集中し、少しずつ、しかし確実に累に近づきそれを目にしていた累は苛立った表情を見せながらも冷静に思考していた。

 

「(少し侮っていたな…思っていたよりもやるみたいだ…ここまで近づかれるのは流石に誤算だった…侮っていたことは認めても良い…だけどね…)ねぇ…勝てると思ってるところ悪いけど…糸の強さはこれで打ち止めとでも思って無いよね?血鬼術・刻糸牢!」

 

 累は自身の手が赤く染まる程の量の血を流し、その血を媒体としてこれまでとは違う赤黒い糸を蜘蛛の巣の様に炭治郎の目の前に出現させ、それを前にした二人は焦ることになった。

 

「(まずい!この糸はダメだ!この糸は斬れない!まだ回転が足りない!このままだと…死ぬ!どうする?どうすれば良い!?後ろに下がれば躱せるけどもう一度この距離まで近づくのはおれの経験に体力に技術、そのすべてを見ても無理だ!!考えろ!考えろ!どんなことでも良い!!この場を乗り越える方法を考えるんだ!!)」

 

 この時炭治郎はこれまでの様々な経験を思い出していた、鼓屋敷での響凱との闘い、珠代と癒史郎との出会い、沼鬼との闘い、手鬼との闘い、善逸との出会い、狭霧山での修行の日々、リィンとの出会い、禰豆子が鬼にされた日と続き、そこから更に過去へと遡り母親である葵枝に嘗て一度だけ見せてもらった花のことなど幼い頃のことも思い出した直後、最後に父親である竈門炭十郎の姿を思い出し、炭治郎の記憶の中の彼は幼い頃の炭治郎がある事の真似をしている様子を見て穏やかに微笑んでおりまるで今の炭治郎に対する助言の様に口を開いた。

 

「炭治郎…呼吸だ…落ち着いて息を整えて…ヒノカミ様になりきるんだ」

 

 この言葉を思い出した直後、炭治郎は雪が降るある夜―初めて彼がヒノカミ神楽を舞っていたのを目にした日のことを思い出していた。

 

 

 

「炭治郎見て、お父さんの神楽よ」

 

 幼い頃の記憶にあるその日は大雪が降っている上に夜ということもありとても寒くこうしてただ外にいるだけでも辛いものがあった、だがそれをものともしないかのような炭十郎の舞から幼い頃の炭治郎は目が離せず、葵枝は静かに続けた。

 

「うちは昔から火を使った仕事をしているでしょ?だから怪我や災いが起こらないように年の初めは必ず『ヒノカミ様』に舞いを捧げてお祈りするのよ」

 

 炭十郎の舞は正に誰もが目を引き付けられる物で本当に神様が乗り移っているかのようだった、だが同時に炭治郎は幼いながらにもある疑問を感じ後日炭十郎に問いかけた。

 

「お父さんは昔から体が弱かったんだよね?どうしてあんなすごい雪だったのに長い間舞を舞えたの?おれは肺が凍りそうだったよ?」

 

 炭治郎の疑問に炭十郎はただ穏やかに微笑むと炭治郎を撫でながら答えた。

 

「息の仕方があるんだよ…どんなに長い時間動いても疲れない息の仕方がね…正しい呼吸ができるようになれば炭治郎もずっと舞えるようになるよ…寒さだって平気になるしそれに…強くなることだってできる…」

 

 炭十郎は外で洗濯をしている他の家族の姿を一瞥したがすぐに炭治郎に目を戻すとこれまでの微笑みとはどこか違う穏やかながら強い決意のような物を感じさせる表情で続けた。

 

「炭治郎…この神楽と耳飾りだけは何があっても必ず途切れさせずに継承していってくれ…ある人との約束(・・)なんだ…」

 

 

 

 その時のことを思い出した炭治郎は咄嗟に水の呼吸は勿論、八葉一刀流とも違う動きに変え、それと同時に生生流転により幻視される水の龍は炎に姿を変えた。

 

「ヒノカミ神楽!円舞!!」

 

 炭治郎が振るった刃は容易く累の血鬼術を切り裂き、累は勿論《C》も困惑した。

 

『(どうなってるんだよ!?蒼炎の太刀か?いや…似てるが明らかに違う!けどこの技なら!)』

 

 《C》はこれなら勝てると笑みを浮かべ、累は斬られると思わなかった糸が斬り落とされたことで激しく動揺し、後ろに後退しながら無数の糸を放ったが炭治郎はその全てを斬り落としながら累に迫った。

 

「(止まるな!止まるな!!水の呼吸から呼吸を必要としない八葉ならまだしも全く別の呼吸であるヒノカミ神楽の呼吸に無理矢理切り替えたんだ!今止まったら間違いなく反動が来て最後の作戦もできなくなる!確実に勝つ為にも!リィン教官にもう一度会って力になるためにも!善逸に伊之助のためにも!何より禰豆子を守るためにも!今ここでこいつは倒す!!)」

 

 ついに炭治郎の刃が累の頸に届く場所までついた、だが今の炭治郎は死ぬつもりこそなかったものの殆ど相打ち同然だった、累の糸の位置と『利剣・緋王』の刀身の長さから死ぬ可能性こそ低いが間違いなく腕は犠牲になることは疑いようはなかった。しかしそんな中、眠る禰豆子の夢に葵枝が姿を見せ、涙ながらに訴えた。

 

「禰豆子…お願い起きて…今の禰豆子ならお兄ちゃんを助けられる…頑張って…このままだとお兄ちゃんまで死んでしまうわよ…」

 

 その直後禰豆子が覚醒し、同時に累に斬りかかろうとする炭治郎の姿を見た彼女は手をグッと伸ばし、自身の血に意識を集中させた。

 

「(血鬼術・爆血!!)」

 

 禰豆子が手を握りしめた直後、累が咄嗟に防御に使った糸―それは禰豆子を吊るし上げているそれと同じだったため炎が燃え広がりすぐに糸が焼き切れ、炭治郎の腕は斬られることは無く、そのまま累の頸に振るわれた。

 

「(糸が焼き切れたのは驚いたけどその程度では切れるものか!僕の体はそれよりも…!?)なぜだ!?」

 

 炭治郎が振るった刃は累の頸に振るわれ、一瞬止まったもののすぐに累の頸に食い込んでいきそのまま加速した、累自身焦りから忘れていた事実として炭治郎は『利剣・緋王』を完全には使いこなせていない―だがそれでその刃の鋭さ、切れ味は変わらない、結果として累の頸に振るわれたその刃は進み、累の糸を通じて僅かに付着していた禰豆子の血も爆ぜその助けとなり、そのまま刃は振りぬかれ、累の頸は宙を舞ったが累は怒りこそ抱いていたものの焦っておらず炭治郎を睨みつけた。

 

「(これで勝ったつもりだと思ったら大間違いだ!!こいつ相手に使うことになるとは思わなかったがぼくは頸を斬り落とされる寸前に自分で頸を斬ったんだ!ここまで激しい動きをしたんだ!こいつはすぐに動けなくなる!こいつが倒れたらすぐに殺目籠(あやめかご)で殺してやる!!)」

 

 累は死んだふりとして倒れこもうとしたがその時だった。

 

「まだだ!!」

 

 倒れそうになっていた炭治郎は意地と気合だけで踏みとどまり、それに驚いた累は倒れこむのも忘れて立ちすくんでしまい、炭治郎が自身の頸を斬っていないと言う事実に気づいていたことに困惑した。

 

「!!(どういうことだ!?こいつまさか!!ぼくが自分で頸を斬ったことに気づいたのか!?)」

 

 予想だにしていなかったこともあり累は頸を戻すのも二の次として炭治郎に向けて無数の糸を放ち、同時に炭治郎はかつてリィンから十二鬼月と戦った時に起こり得る事態として聞いていたことを思い出していた。

 

―初任務の一週間前―

 

「十二鬼月はただ頸を斬っただけでは死なないこともある…ですか?」

 

 リィンのその言葉に炭治郎は困惑してそう問いかけ、リィンは頷くと続けた。

 

「珍しい例だけどそう言った報告例はあるんだ、例としてはまず斬った頸が実は頸ではない張りぼてという例だ…まあこのパターンは少し特殊すぎるから考えなくていいと思う、だから考えられるのは分身を創り出す血鬼術で本体そっくりの分身が戦っていたと言うパターンでもう一つ考えられるのは…何らかの方法で斬られる直前に自分で自分の頸を斬り落とすと言う場合だな…」

 

 炭治郎はそれを聞いて「そう言うことが…どう言った術を使う鬼がそれをできるんでしょうか?」と問いかけリィンは少し考えこむと口を開いた。

 

「そうだな…まず考えられるのは緋空斬の様に真空の刃を飛ばせる鬼だな…もう一つは鋼糸と言う鋼の様に硬い糸のようなものを使う鬼だったら斬られる直前に自分の頸を落とせると思う…万が一ということもあるから覚えておくと良い。」

 

 リィンのアドバイスを聞いた炭治郎は頷き、しっかりと頭に刻み込んだ。

 

―そして今―

 

 そして現在、炭治郎は累と言うリィンから聞いた通りの能力を持った鬼と対峙しており、万が一の事態に備えて《C》にも作戦としてこのことを伝えており、炭治郎は倒れそうな自分の身体に鞭打ってなお、駆け出すと累が再び張り巡らされた糸に向けて刃を振り上げた。

 

「(この技は今まで一度も使えなかった…けど今のおれと《C》の力を合わせれば使える!!これで最後だ!もう逃がさない!!)《C》!お願いします!!」

 

 

 炭治郎は《C》にそう呼びかけ、それを聞いた《C》はニッと笑うと『ああ…ここまで繋いだんだ、しくじんじゃねぇぞ!炭治郎!!』そう叫んだ直後、手鬼との闘いの時と同じように炭治郎の身体は蒼いオーラを纏い、「リィン教官!この技を使わせてもらいます!!」そう叫ぶと炭治郎は自身の身体に力が漲るのを感じ累の周囲に盾として張り巡らされた糸を全て連続で切り落とすとそのまま続けて累の頸の付け根を捉え、累は驚きのあまり困惑した。

 

「!(し…しまった!く…頸の付け根を!!)」

 

 累はどうにか脇の下に糸を回そうとしたが守るためにすべての糸を使ってしまい、最早糸を新たに創り出しても間に合わない、その事実を理解してしまい、そして炭治郎は累に対してこれまでで最も強い口調で叫んだ。

 

「おれと禰豆子の絆は誰にも引き裂けない!!」

 

 そして炭治郎が渾身の力で振るった刃は伊之助と共に倒した頸なしの鬼と同じように累の頸の付け根から脇の下まで袈裟斬りとし、炭治郎は振りぬいた刀を構えたまま静かに「終ノ太刀…暁…」とその技の名を告げると同時に蒼いオーラが消え、力が抜けたように倒れ、そのまま累の身体も倒れると、これまで炭治郎が倒した鬼と同じように崩れだし、累は唖然としていた。

 

「(…ぼくが…負けた…結局何もわからなかった…自分が何をしたかったのか…家族の記憶に触れられればわかると思っていたのに…!)」

 

 そこまで思考したことで累ははっきりと自分の過去を思い出した。これまで思い出せなかった自分の過去をはっきりと、何故自分が鬼となってもなお家族を作っていたのかということを思い出していた。

 

「(そうだ…ぼくは…ぼくは生まれつき身体が弱くて…走るどころか歩くのも難しかったんだ…無惨様が現れて鬼になってからは日の光に当たることはできなくても外を歩くことはできた…でも…両親は喜ばなかった…人を喰らわないと生きられず日の光にも当たれないから…あの時…父さんがぼくを殺そうとしたとき…泣いていた…それに母さんも…あの時は理解できなかった…でも今ならわかる…父さんはぼくが人を殺した罪を一緒に背負って死のうとしてくれたんだって…でもあの時ぼくは父さんも母さんも殺してしまった時にぼくは自分が欲しかった本物の絆を自分で捨ててしまったんだって…両親が悪い…そう思わないと耐えられなくて…)」

 

 累は倒れた炭治郎の傍にふらつきながらも歩み寄った禰豆子の姿を見てせめて二人の絆に少しでも触れたい、そう思って手を伸ばし、それに気づいた炭治郎は累の手を優しく握り返し累は泣きながら呟いた。

 

「…今ようやく思い出した…ぼくは家族に謝りたかったんだ…でもぼくは人を殺しすぎたから地獄に行くんだ…父さんと母さんと同じところには行けないよね…」

 

「地獄だとしても一緒に行くよ…」

 

 突然だった、累は懐かしい声を聴き、そちらを見た、そこには累が殺してしまった二人の姿があり累は唖然とし、そんな累に対し彼は「地獄に行くとしても父さんと母さんは累と一緒に行くよ…」その言葉を聞いた累は泣きながら二人に抱き着き、その姿はかつての―鬼になる前の姿に戻っており泣きながら抱き着き「全部…全部ぼくが悪かったんだよね…ごめんなさい!ごめんなさい…」累は泣きながら何度も謝り三人の家族は抱き合ったまま地獄の炎に焼かれていった…

 

「…地獄だとしても救いがあると思うよ…だって君の家族はずっと傍にいてくれたんだ…だから…せめて…女神の下へ…」

 

 累の思い、そして錆兎や真菰の時と同じように魂となってもずっと彼の両親がいたことを悟った炭治郎はリィンが自分の家族を弔ってくれた時の言葉を自然と口にしていた。そしてどこからか誰かが駆け寄る音がし、炭治郎は「(この優しいけど悲しい匂いは…)」と誰が来たのかを悟るとそちらの方にどうにか顔を向け、駆け寄ってきた彼は炭治郎と禰豆子の傍に駆け寄ると呆れたようにけど確かな優しさが込められた声で二人に声をかけた。

 

「全く…少し無茶しすぎだ…けどよく頑張ったな炭治郎…」

 

 炭治郎はどうにか彼―リィンの顔を見ると「すみません…リィン教官」と曖昧な笑顔でそう言い、リィンは頷くと「まあおれも遅くなったのも事実だから仕方ないところはあるけどな…十二鬼月の討伐…最後の方しか見れなかったけど確かに見届けさせてもらったよ」と言いそれを聞いた炭治郎は安心感から気が抜けたのかそのまま眠りについた。

 

 

 

 





 タイトルのそしての部分は自由に解釈してもらえると嬉しいです、今回出番が無かった凪についても別の見せ場を用意していますので楽しみにしてもらえると嬉しいです。

 炭治郎が『終の太刀・暁』を使った場面は某運命のあの場面を参考にしました。

 因みに今回累とリィンに絡みはありませんでしたがこの世界ベースのキメツ学園の世界ではしっかりと関りがあり、文化祭の隠し芸大会ではコンビを組んで『どっちが喋っているんでSHOW』なるネタをやっています。なお一卵性双生児並みにそっくりな声のため絶対音感持ちの善逸でも聞き分けるのは難しかったりします。
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