鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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原作における柱合裁判編です、途中からオリジナルの展開も入りますので楽しみにしていてください


第四章―明かされる真実―
最強の剣士達


 

「―ろ―おい―きろ―」

 

「(…?誰の声だろう?夢かな?)」

 

 気を失って眠ったままの炭治郎は何処か夢見心地な心境でそう心の中で呟きぼんやりとしていたが先ほどよりも強い声で「おい―起きろ、起きろって言ってるだろ!!」と聞こえ「!(夢じゃない!)」すぐに目を覚ますと傍にいた隠の男性が「やっと目を覚ましたか…呑気に眠りやがって…柱の前だぞ!!」と言い放ち、炭治郎の眼には自身を見下ろす六人の人物の姿を目にすると同時に彼らが柱と呼ばれていたことに気づくとすぐにリィンも柱と呼ばれていたことを思い出し、考え込んだ。

 

「(この人達がリィン教官と冨岡さん以外の柱!なんとなくだけどわかる…この人達がリィン教官と並ぶ強さの剣士だって…つまり今から始まるのは…)」

 

 炭治郎は以前リィンに従っている隠の一人である九重から聞かされていた柱合会議と言う言葉を思い出すと炭治郎から見て左側に立っていた女性が屈みこみながら話しかけた。

 

「初めまして竈門炭治郎くん、ここは鬼殺隊の本部です、突然で申し訳ありませんがあなたは今から裁判を受けるのですよ…そしてわたしはあなたの弁護人を務めさせてもらう医療班主任の胡蝶しのぶという者です、わたしは柱ではありませんが万が一柱に欠員が出てしまった際の控え要員でもあります、よろしくお願いしますね」

 

 彼女の言葉を聞いた炭治郎は「は…はい…」と答えたが―ある意味では予想通りの反応だったが―柱たちの反応は好ましい物ではなかった。

 

「裁判という形式ではあるが鬼を庇うのは明らかな隊律違反!本来なら裁判は勿論だが弁護も必要無い!我らのみで対処可能!鬼もろとも斬首する!」

 

 そう何でもない風に柱の一人である炎の様な模様が入った着物を着た青年―炎柱・煉獄杏寿郎はどうということも無いとでもいうようにそう言い放ち、それを聞いた見るからにどこにいても目立つであろう格好をした青年―音柱・宇随天元は「なら執行役はおれがやろう、誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ、そりゃあもう派手派手にな」と意に介した様子も無く告げた。

 

「(えぇぇ…こんな可愛い子を殺してしまうなんて…胸が痛くて苦しいわ…それにこの子…確かリィンさんの継子だって聞いたことがあるしリィンさんがこのことを知らないなんて思えないからリィンさんもこの事を知った上で継子にしたんだと思うから何か事情があると思うんだけど…)」

 

 そんな二人を余所に柱の中ではリィンと義勇を除き現時点で唯一炭治郎の味方側の柱である女性―恋柱・甘露寺蜜璃はリィンに何か考えがある事を察していたがそれを余所に盲目の男―岩柱・悲鳴嶼行冥は涙を流しながら「ああ…なんとみすぼらしい子供だ…可哀想に…生まれて来たこと自体が可哀想だ…」と余りにも酷い言葉を告げていたが唯一炭治郎に見向きもしていない柱の中では最年少である少年―霞柱・時透無一郎は何処かぼんやりした様子で空を見ながら「(あ…あの雲の形最近夢に出てきた扉にあった模様に少し似てるな…)」とどこ吹く風といった様子で考え込んでおり、炭治郎は慌てて禰豆子が入った箱は勿論、善逸に伊之助に村田、そしてリィンの姿を探して辺りを見回していた時だった。

 

「そんなことより冨岡とシュバルツァーはどうするのかね?」

 

 上から唐突に聞こえてきた声に炭治郎は木の上に目を向けた。そこには蛇を連れて口元を隠した青年―蛇柱・伊黒小芭内の姿があり彼は徹底的に責めるように話し出した。

 

「拘束もしていない様におれは頭痛がしてくるんだが?胡蝶めの話を聞いたところ隊律違反は二人も同じだろう?冨岡はともかく来たる無惨とイシュメルガとの闘いにおいて重要な役割があるシュバルツァーを死刑とする訳にはいかないが何らかの形で責任を取らせるべきだろう…さてどんな目に合わせてやろうか…」

 

 すると少し離れた場所にいるリィンと義勇の二人の姿が炭治郎の目に入り、それを見た炭治郎は「(おれのせいでリィン教官と冨岡さんまで…)」と申し訳なさで一杯になったがこれまでの様子を見たしのぶは珍しく顔をしかめると口を開いた。

 

「皆さんいい加減にしてください、これは裁判であって私刑にする為のものではありません、そもそも今のわたしは炭治郎くんの弁護人ですから炭治郎くんの話も聞かずにそのようなことをされるのを見過ごすわけには行きません…いずれにせよ先ずは炭治郎くんの話を最後まで聞くべきでしょう」

 

 しのぶの言葉を聞いた柱は彼女から発せられた威圧感に閉口しそれを見たしのぶは頷き炭治郎の前に屈みこむと「先ずは水を飲んだ方がよさそうですし落ち着いてゆっくりと話してください」と炭治郎に水を飲ませながら言い、炭治郎は深呼吸すると慎重に話し始めた。

 

「…(落ち着け…冷静に話せ…)おれの妹は二年以上前に鬼になりましたが人を喰ったことは一度もありません…そもそもその二年間の殆どを禰豆子は眠っていましたし目を覚ましたのは最終選別から帰った日でした…実際に禰豆子が目を覚まさなくなっている間に何度か医者の先生に診て頂きましたので…その方に話を聞いていただければこの事が事実だと確認できるはずです…目を覚ましてからも禰豆子はずっと人を襲うことなくおれと一緒に戦ってきました…何より禰豆子のことは…お館様も既にご存じのはずです…」

 

 途端にその場にいた全員がざわつき出し、それを見たしのぶは一瞬だけ笑みを浮かべると「(ここまでは段取りも合っていますね…次は…)それが事実でしたらお館様のお言葉も無しに禰豆子さんと炭治郎くんを罰する権利はこの場に居る誰にも無いということになりますね、すぐにでもその医者の方を探すとしましょうそれから―「待て、胡蝶…」―何でしょうか伊黒さん?」しのぶはこれからするべきことを話そうとしたが伊黒に遮られたことですぐに聞き返し伊黒は静かに答えた。

 

「確かにお前の言うようにそれが事実ならば罰する権利は無いだろう…だがそれは本当のことか?お館様がご存知だとそいつが言っているだけかもしれないだろう?確実な証拠がない以上おれは信用しな―「二人のことをお館様に伝えたのは俺だ」―なっ!」

 

 突如今まで沈黙を保っていたリィンが口を開き、発せられた言葉に伊黒は困惑し、リィンの言葉を聞いた宇随が口を開いた。

 

「…おい、リィン、そいつは派手にどういう事だ?事と次第によっては自分もただじゃすまないってことが解っているのにあっさりと認めるんだな?」

 

 宇随の言葉を聞いたリィンは周囲の柱に鋭い目を向けるとすぐに語りだした。

 

「…念のため言わせてもらうがおれは我が身可愛さにこのことを明かしたわけじゃない、おれは二人の存在を認めてもらうために事前に明かしたんだ…何より忘れていないと思うが…おれは確かに柱ではあるがある意味では炭治郎以上に難しい立場にいる隊士だ…そうである以上お館様には事前に伝えるべきだと思った…おれと義勇以外の柱に伝えられなかったのはお館様の判断だ…それを踏まえてもまだ裁判とは名ばかりの魔女裁判を続けた挙句、お館様の意思を踏みにじった上で炭治郎と禰豆子を殺すというなら…お館様がおいでになられるまでの間、おれ一人でお前たち全員を相手にしてもかまわない!」

 

 途端に周囲の柱に緊張が走った、リィンに怒りの籠った目を向けられた柱は―感情が希薄な無一郎も含めて―思わず怯み、その中で悲鳴嶼は唯一冷静に状況を分析していた。

 

「…(鬼殺隊灰柱・リィン・シュバルツァー…異世界から来たという事実を除いてもその実力は凄まじい…何より若くして剣聖と呼ばれるまでに至った剣士であり我ら柱ですら一度も見たことが無い『鬼の力』という物がある…眠れる獅子…否…龍の目を突いてしまったとでも言うべきか…)」

 

 一方柱の中で義勇を除いて唯一殺気を向けられなかった蜜璃はと言うと「(リィンさん…自分の生徒さんを守るために怒ったのよね、かっこいい!…でも…止めないと大変なことになっちゃうわよね!?)あ…あの!わたしはお館様を待つべきだと思います!本当かどうかは兎も角お館様の支持も無しに処分を決めてしまうのはお館様のご意思を無視してしまうことになってしまいますし…まずはお館様を待ってお話を聞いてからでも遅くないですよね!?」と状況を見るなり場を収めるために慌ててそう言い、それを聞いた柱は全員黙り込み、蜜璃の提案に従おうとした時だった。

 

「全く…少し遅れてきてみりゃあ…面白いことになってるなァ」

 

 如何にもヤクザか何かのような言い回しの声が聞こえ、炭治郎も含めた全員がそちらに目を向けると同時に出入口付近にいた隠と炭治郎は絶句し隠の片割れは慌てて「こ…困ります!不死川様!どうか今は箱から手を放してくださいませ!!」そう言って止めようとしたが彼―風柱・不死川実弥は禰豆子が入った箱を片手で弄びながら止めようとした隠を睨むと「放す必要なんざねェ…どうするかはもう決まってんだからなァ…」そう言い放ち、すぐに炭治郎に目を向けると「さァて…そいつが鬼を連れてたって言う馬鹿隊員だなァ…一体全体どういうつもりだァ?」と言い、それを見た蜜璃は半ば慌て気味に「(不死川さん…また傷が増えて素敵だけど…リィンさんこのままだと本気で怒っちゃうからやめて!)」そう心の中で叫んだが当然そんな叫びが聞こえるはずも無く、彼は空いている右手を刀の鞘にやりながら「鬼が人を守るために戦えるって言ったのか?坊主ゥそんなことはなァ…ありえねぇんだよ!馬鹿がァ!!」と容赦なく叫び、目にも止まらぬ速さで刀を抜き、禰豆子が入った箱にそれを突き刺そうとした時だった。

 

「禰豆子!!」

 

 炭治郎がそう叫ぶとほぼ同時に誰かが炭治郎の横を目にも止まらぬ速さで駆け抜けて行き、直後に『キィン』と金属同士がぶつかり合う音がし、そのまま何かが宙を舞う音が続き塀の外から『カラン』と何かが落ちる音が響いた。

 

「…オイどういうつもりだ?灰柱…」

 

 実弥の右手に握られていた刀は根本近くで折れ、その前には刀を抜き、実弥の刀を折ったのであろうリィンの姿が有り、さらにリィンのもう一方の手には禰豆子が入った箱が有り、リィンは刀を鞘に納めると静かに口を開いた。

 

「どういうつもりだって?…その言葉…そのまま返させてもらうぞ…風柱…お館様の意思を無視してまで禰豆子と炭治郎を殺す事はおれが許さない…禰豆子も炭治郎も必要以上に傷つけるな…もしも今回の会議で禰豆子の危険性が証明された場合はおれの事も含めて好きにすると言い…だが証明も無しに二人を害する事だけは許すつもりはないぞ…」

 

 リィンの言葉は静かだったが同時に凄まじい怒りが込められており、それを向けられた柱たちは勿論リィンにとって守る対象である炭治郎も恐怖を感じるほどであり、まさに一触即発と言っていい空気になりつつあったその時だった。

 

「お館様のお成りです!」

 

 いつの間にか座敷の中に双子と思われる二人の少女の姿が有り、奥の襖が開けられ、そこには鬼殺隊・当主、産屋敷耀哉の姿が有った。

 

 





 今回リィンが本気で怒りかけていたという事情もありますが、甘露寺さんが何だか微妙に苦労人になりかけているような気がしてきました…
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