鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

45 / 83

 原作で言う所の柱合裁判にあたる回です、思ったよりも長くなりました。



柱合裁判

 

 炭治郎は座敷の奥の部屋から歩み寄ってきた男性―産屋敷耀哉の姿を目にして唖然とした。

 

「(この人が鬼殺隊の当主…確か…産屋敷耀哉さん…だったような…あの顔は…傷?いや…何かの病気なのか?)」

 

 炭治郎は彼の何処か美しさを感じさせる佇まいと裏腹に顔の上半分を覆いつくしたソレを見て困惑したが直後、リィンと実弥がすぐに炭治郎を間に挟んで跪くとリィンは無言で炭治郎に目配せをし、リィンの意図を察した炭治郎はすぐに頭を下げ、その直後に耀哉は穏やかな口調で話し始めた。

 

「お早う皆…今日はとてもいい天気みたいだね…空は青いのかな?顔ぶれが変わることなく半年に一度の柱合会議を迎えられたことをうれしく思うよ」

 

 彼の言葉の直後、リィンと実弥を除いた残る柱としのぶも跪き、最初に口を開いたのは実弥だった。

 

「お館様におかれましても変わらずにご壮健で何よりです、ますますのご多幸を切にお祈り申し上げます」

 

 実弥の言葉を聞いた耀哉は「ありがとう実弥」とただ穏やかに返し、実弥はすぐに続けた。

 

「…畏れながら柱合会議の前にこの竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士について…そして仮にも柱である冨岡義勇とリィン・シュバルツァーは何故この事を我々に黙っていたのか…ご説明いただきたく存じますがよろしいでしょうか?」

 

 実弥の問いを聞いた炭治郎はまたも困惑し「(…さっきまでリィン教官と一触即発だったのにそうとは思えないくらいきちんと喋りだしたぞ…)」と内心呟きながら実弥を半眼で睨んでいた。

 

 それを聞いた耀哉は目を伏せると静かに口を開いた。

 

「そうだね…事情はどうあれ黙っていたのは事実だからね…驚かせてすまなかった…炭治郎と禰豆子のことは二年前から既にリィンさんから聞いていてね…だからこそ私は二人のことを容認していたんだ…そして皆にも認めてほしいと思っている…勿論そう簡単に認められないのはわかっているけど…実は理由もあってね…理由は大きく分けて二つだけど一つ目の理由は先日の那田蜘蛛山の件だけどそこには十二鬼月がいてね…鎹鴉の報告によるとその山にいた十二鬼月…下弦の伍を倒したのは炭治郎だ」

 

 途端に感情が希薄な無一郎と既にこの事を知っていたリィン、義勇、しのぶを除いた全員がざわついた。

 

「…ふむ…普段ならばお館様の願いでも承知しかねるが…しかし十二鬼月の討伐を成し遂げたのが事実ならば何らかの減刑した上で残ることにするべきか…悩ましいものだが…」

 

 悲鳴嶼は炭治郎が十二鬼月を討伐したという事実に考え込み、宇随も考えた末に口を開いた。

 

「そうだな、何の功績も無かったらおれも派手に反対したが鬼殺隊に入って一年も経ってない隊員が十二鬼月を倒したってのが本当なら正直言って貴重な戦力になる…ここは鬼だけを殺して竈門炭治郎を地味に監視の上で生かす…そんである程度したら監視付きで復帰…と言うのが妥当だと思うが…」

 

 悩んでいた最初の二人に反して蜜璃は迷わずに「わたしは処刑には反対です、お館様が容認していたのでしたら反対する理由はありませんし…何よりリィンさんの事情を考えると必要なことだったんだと思います!」と躊躇いなく答え、無一郎はぼんやりした表情で「じゃあお館様が許してるならぼくも処刑に反対で…どうせすぐに忘れるので…」と呟き、杏寿郎は考え込むと「うむ!普段ならば確かに全力で反対するところではあるが十二鬼月を倒したのは覆しようのない事実!ならば人を襲わないことを証明する事ができれば二人とも生かすということでどうだろうか!」とある種の妥協案とも言える意見を述べ、伊黒はそれを聞き「一理有るかもしれんが信用しない…そもそも鬼は大嫌いだ…」と答え、実弥はより表情を歪ませると、「十二鬼月を倒したのが事実だとしても関係ありません…鬼を滅殺してこその鬼殺隊…重要な役割を持つシュバルツァーを殺すわけには行きませんがそれではほかの隊士には示しが尽きません…竈門、冨岡両名の処罰を願います」と頑なに答えたがそれを聞いた耀哉は困った表情になるとリィンに対し「…リィンさん…あの事を話しても構わないね?」と問いかけ、リィンも頷くと「構いません…それで炭治郎と禰豆子が助かる可能性が上がるなら…」と答えたが炭治郎は考え込んだ「(あの伊黒さんって呼ばれてた人もリィン教官を処刑する訳にはいかないって言ってたけど…リィン教官が担う重要な役割って一体なんなんだ?)」と困惑する中、耀哉は真剣な表情で口を開いた。

 

「…ならもう一つ私が二人のことを容認していた理由を話させてもらうよ…皆リィンさんの目的は覚えているね?」

 

 耀哉の問いに全員困惑したが無一郎以外の全員がリィンの目的を覚えており耀哉は静かに続けた。

 

「リィンさんは無惨の協力者となったイシュメルガを倒すのが目的であること…そしてイシュメルガに対抗できる存在と適合した人物…残る五人の捜索も担っていることは皆も知っているね?」

 

 耀哉の言葉には誰も反論せず、耀哉は静かに続けた。

 

「炭治郎はその残る四人のうちの一人…蒼の適合者だよ…鎹鴉の報告でも下弦の伍との戦いで蒼い光を纏ったそうだからね…」

 

 それを聞いた炭治郎は困惑し「(蒼の適合者?何のことだろう…もしかしておれの中に《C》がいることと関係があるのか?それに今残る四人って言ってたけど…おれとリィン教官以外にもその適合者がいる…?もしかしたらこの中に…)」と考え込んだが直後、柱たちもざわつき出し、頑なに二人の処刑を進言していた実弥も明らかに驚いた表情になると思わず黙り込み、残る柱も考え込みだし、最初に口を開いたのは悲鳴嶼だった。

 

「…ならば事情が変わる…この子を殺し、新たな適合者が現れたとしてもそれを見つけ出せるかは別の問題だ…ならば私は処刑には反対するとしよう…」

 

 悲鳴嶼が突然意見を変えたことに炭治郎は困惑したがそれを余所に宇随が口を開いた。

 

「ならおれも処刑には派手に反対だ、一年もしないで十二鬼月の討伐だけではなく蒼の適合者になったって言うんだろ?…十二鬼月の討伐だけならまだしも蒼の適合者ってことだけは修行でどうにかなるもんじゃねぇからな…」

 

 宇随はそう言いつつもどこか悔しがっているような様子であり、炭治郎は疑問に思ったが続いて杏寿郎が口を開いた。

 

「ならばおれも反対としよう!一年もせずに十二鬼月を倒したことに加え蒼の適合者と言う事実がある以上貴重な戦力だ!処刑するには惜しすぎる!!」

 

 杏寿郎の言葉に伊黒も口を開いた。

 

「…鬼の助命については意見を変えるつもりは無いが竈門炭治郎の処刑については反対だ…癪だが認めるしか無いだろう…」

 

 炭治郎はここまでほとんどの柱が意見を変えたことに困惑し、考え込んだ。

 

「(ここまで簡単に意見を変えるなんて…彼らが言う適合者ってそんなに重要な物ってことなのか?)」

 

 残る柱である実弥は忌々し気に口を開いた。

 

「…竈門炭治郎の処刑については反対しましょう…ですが鬼だけは別です…許すわけには行きません…何より人を襲わないという保証が無い…」

 

 実弥の言葉を聞いた耀哉は双子の片割れに顔を向けると「では…手紙を…」と言い、少女は「はい」と答えると二通(・・)の手紙を取り出し「こちらの二通の手紙、一つは元柱である鱗滝左近次様から…もう一つは以前お二人に助けられた一般の方の証言を纏めたものです、まずは鱗滝さまからのものを一部抜粋して読み上げます」

 

 そして彼女は鱗滝からの手紙を読み始めた。

 

『――リィン殿からもすでにお聞きしていると存じますが、私からもお願いいたします…炭治郎が鬼の妹と共にあることをどうか御許しください、禰豆子は強靭な精神力で人としての意識を保っています、飢餓状態であっても二年以上の間一度も人を喰らうことはありませんでした、信じがたい事であるかもしれませんが紛れもない事実です、万が一禰豆子が人に襲いかかったときは竈門炭治郎及び―…鱗滝左近次、冨岡義勇、リィン・シュバルツァーが腹を切ってお詫びします』

 

 その手紙の内容を聞いた炭治郎はすぐに義勇とリィンに目を向けた、二人は一切動揺した様子が無く元からそのつもりだったことを炭治郎は悟り、炭治郎は自然と涙を流していた、やがて少女はもう一通の手紙を開いた。

 

「こちらのお手紙は先ほど申し上げた通り、以前お二人に助けられた方の証言を纏めた物です、狭霧山付近の町に住む和巳さんと言う方の話によりますと…危ういところをお二人に助けられたそうです」

 

 炭治郎は再び涙を流し、柱達は二人に助けられた人間がいると言う事実―そして、炭治郎だけでなく、鱗滝に義勇、そして元の世界への帰還を目的とするリィンまでもが命を懸けているという事実に誰一人として何も言えず閉口した。

 

「聞いての通りだよ…人を襲わないという証明は完全にはできないが同時に人を襲うということも証明できない…禰豆子は二年以上人を喰わずにいてその禰豆子に助けられた人がいると同時に禰豆子のために四人もの命がかけられている…これを否定したいなら…否定する側もそれ相応のものを差し出さなくてはならない…」

 

「……っ!!」

 

 耀哉の言葉に流石の実弥も何も言えなくなり、耀哉はすぐに続けた。

 

「それに炭治郎は鬼舞辻と遭遇しているんだよ…」

 

 途端に柱の目が変わり、口々に炭治郎に無惨とどこで遭遇したのか、能力は何か、根城は何処かと立て続けに質問しだし、ついには「黙ってないで答えろ!!」と一人の柱が叫んだ直後だった。

 

「いい加減にしろ!虫がいい話だと思わないのか!!」

 

 凄まじい怒りが込められた強い口調でリィンが叫んだ。その目はこれまでに無いほどの怒りが込められており、柱達全員を睨むと静かに続けた。

 

「…もう一度言わせてもらう…虫がいい話だと思わないのか?お前たちはこう言っているんだ…鬼舞辻無惨のことは話せ…だが禰豆子は殺す…炭治郎にとって何の得も無い…そういう意味で言えばこの取引に乗る必要はない…」

 

 リィンの言葉を聞いた柱は黙り込み、炭治郎はリィンの意図を察して何も言わず、それを見た耀哉は「…確かにリィンさんの言う通りだね…」とリィンの言葉に同意し、耀哉は再び続けた。

 

「…言い忘れていたけど鬼舞辻は炭治郎に追っ手を放っていてね…その理由は単なる口封じかもしれないけどただ鬼殺隊になったばかりの隊士に二体もの鬼を追っ手にするのは少し妙に感じるんだ…鬼舞辻はかなり焦っているみたいだしね…私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を放したくない…何より…鬼舞辻はイシュメルガと組みかつてない程強大になろうとしているが、私達にもリィンさんがいる…だからこそ何としても終わらせたいんだ…わかってもらえるかな?」

 

 柱は先ほどのリィンと耀哉の言葉に思う所が有ったのか何も言わずに黙り込んだ…ただ一人、実弥を除いては。

 

「…ならば一つ試させてもらいます…シュバルツァー…どんな物でも良い…入れ物をよこせ…」

 

 リィンはそれを聞いて頷くと空の薬瓶を取り出し、実弥に渡すと実弥は折られた刀を抜いて自らの手を斬るとそれに血を注ぎ、ある程度たまったところでリィンに手渡すとリィンはそれを受け取りながら「炭治郎…少しだけ禰豆子を傷つけることになるが許してほしい…必要なことなんだ…」と告げそれを聞いた炭治郎は「…はい」と答え、リィンは禰豆子が入った箱を持つと座敷へと踏み入り耀哉に「部屋を汚してしまうかもしれませんが…構いませんね?」と問いかけ、耀哉も頷くと「構わないよ」と告げ、リィンは日が当たらない場所に踏み込んでいった。

 





 次回から炭治郎に加えてリィンの視点が増えるのでオリジナルの展開が挟まることも増えますので楽しみにしていてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。