鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
今回はオリジナルエピソードで前回ラストのリィン視点の続きとなります。
リィンは悲鳴嶼の案内で玄弥の下へ向かう道すがら悲鳴嶼にある問いを投げかけた。
「…悲鳴嶼さんはどうして玄弥を弟子にしたんですか?…おれは実弥とは仲が良いとは言えませんが…弟がいるような話は誰からも聞いたことが無かったので…」
リィンは普段の実弥の言動を思い出しながらそう問いかけ、悲鳴嶼は僅かに顔を伏せると重々しく口を開いた。
「…そうだろう…不死川は玄弥を意図的に遠ざけている…だがそれは弟を…ただ一人生き残った家族を大切にしているが故のこと…詳しい事情は私の口からは話せないが…一つだけ言えることがあるとすれば不死川は酷く不器用なのだ…」
リィンは悲鳴嶼の言葉を聞いて不思議と納得ができた。彼自身が言ったようにリィンと実弥は仲が良いとは言い難いが、時折何らかの理由で話す度に実弥が不器用な人物であることは感じ取っていた。
「…不器用…ですか…少しだけわかる気がします…おれの実の父も周りに本心を隠して悪をただ一人で背負う覚悟で戦っていましたから…」
リィンは自身の実の父親であるギリアス・オズボーンのことを思い出すとそう呟き、父親と兄と言う違いこそあれ共に家族に対して不器用ながら確かな愛情を持っていた二人を自然と重ね合わせていた。
「…そうか…ついたぞ…」
悲鳴嶼はそう口にすると立ち止まり、リィンも立ち止まり、そこで訓練している少年―玄弥の姿を見た。
玄弥はそれぞれの手に日輪刀と銃を持って戦うというスタイルで訓練しており、刀で、巻き藁を斬り、それから返す動きで離れた場所にある的を銃で正確に撃ち抜き、銃弾を素早く再装填するとまた別の的に狙いを付けていたがその表情は何処か鬼気迫る物があり、それを見たリィンはすぐにある違和感に気づいた。
「?(あれ?玄弥の日輪刀…普通の刀と同じ色…それに全集中の呼吸特有の音が全くしない…!まさか!)」
リィンは玄弥のある事実に気づくとすぐに悲鳴嶼の方に目を向け、気づいたことについて問いかけた。
「…悲鳴嶼さん…おれの勘違いかもしれませんが玄弥はもしかして…全集中の呼吸を使えないのでは?」
リィンの問いかけに悲鳴嶼はすぐに頷き返し、重々しく口を開いた。
「…ああ…君の推測通り…玄弥は全集中の呼吸を使えない…だからこそ頼みたい…君の持つ異世界の技術を…呼吸を使わずとも高い身体能力を持ち、若くして剣聖と呼ばれるまでに至ったその力を貸してもらいたい…既に玄弥には君のことはある程度話している…改めて頼みたい…時間のある時で構わない…不死川玄弥に…稽古を付けて貰いたい」
悲鳴嶼はリィンに頭を下げながらそう言い、リィンはすぐに「顔を上げてください」と言い、それを聞いた悲鳴嶼は顔を上げリィンはすぐに答えた。
「…おれには継子がいますので本当に時間があるときだけになってしまいますが…それで構わないのでしたら…玄弥の稽古を引き受けましょう」
リィンの言葉を聞いた悲鳴嶼はお辞儀すると「感謝する…では…」そう言うと玄弥に歩み寄った。
「玄弥…一度手を休めて貰えないだろうか?」
悲鳴嶼の言葉を聞いた玄弥はすぐに手を止めると悲鳴嶼の方を見た。
「悲鳴嶼さん!…そちらの方は…?」
玄弥はすぐに悲鳴嶼の呼びかけに答えたが同時にリィンの姿を見てそう問いかけ、悲鳴嶼はすぐに答えた。
「以前柱の中に一人、君に稽古を付けてくれるかもしれない者がいるという話をしただろう?…彼がそうだ…」
その言葉を聞いた玄弥は驚いた表情になり、リィンと悲鳴嶼を交互に見つめたがリィンが口を開いたのを見てすぐに向き直った。
「初めまして…悲鳴嶼さんから話は聞いているよ…不死川玄弥で合ってるな?」
玄弥は自分よりも遥かに格上の剣士であるリィンを前にして思わず戸惑ったがすぐに「は…はい…」と肯定し、それを見たリィン自身も答えた。
「改めて…おれは鬼殺隊所属、灰柱、リィン・シュバルツァー…シュバルツァーだと呼びにくいだろうからリィンで構わないよ」
「わ…わかりました…リィンさん…」
玄弥は戸惑いながらもリィンにそう答えるとそれを見た悲鳴嶼が静かに口を開いた。
「…聞いての通り…受けるかどうかは君の自由だがどうだろうか?」
悲鳴嶼の言葉に玄弥は考え込んだ。
「(…悲鳴嶼さんの紹介だから間違いは無いと思う…それにこの人は今まで見て来た剣士とは何か違う…この人に稽古を付けて貰う事で強くなれるなら…!)」
玄弥は決意を込めてグッと拳を握りしめるとすぐに頭を下げた。
「お願いします…おれに稽古を付けてください!」
玄弥の言葉を聞いたリィンは頷くと「わかった、おれにも継子がいて任務もあるからいつでも稽古を付けられる訳ではないけど玄弥に時間が有って稽古を付けて貰いたいときは今後はこの地図の場所まで来て欲しい」そう言い灰屋敷までの詳細な地図を手渡すとさらに続けた。
「さてと…まずは玄弥の実力を見せてほしい、軽く手合わせと行こう…悲鳴嶼さん、木刀を貸してもらえますか?」
リィンの言葉を聞いた悲鳴嶼は頷くと木刀を二振りそれぞれをリィンと玄弥に手渡し、受け取ったリィンは「それと玄弥はさっきの銃も使って構わない、玄弥の実力を正しく把握するには必要だから…全力で来ると良い」と躊躇わずに告げ、銃を置こうとしていた玄弥は驚いたがすぐに「わかりました…」と告げ、銃を持ったまま訓練場の広場でリィンと向き合うとそれを確認した悲鳴嶼は全体を見渡せる位置に付いた。
「では僭越ながら開始の合図は私が行おう…では…はじめ!」
最初に動いたのは玄弥だった。
「(まずは先手を取る!)」
玄弥は銃を構えると立て続けに二発発砲した。弾は訓練用の物で殺傷力こそ低いがそれでも当たれば痛みで一瞬だが怯む可能性が高く、これに対応するのは鬼殺の剣士でも困難だった―正し相手が柱で無ければだが、リィンは読んでいたとばかりに回避するとすぐに玄弥の下に駆け、玄弥はすぐに木刀を抜くとリィンが横凪に振るったそれをどうにか受け止めた。
「(!…一撃が重い!手加減されてるのは解るけど同じ木刀でもこんなに違うのかよ!)」
玄弥はすぐに木刀の構えをずらして如何にか飛びのくとそれと同時に弾を再装填すると続けざまに発砲し、それを回避したことで一瞬の隙が生じたリィンに木刀を振るい、今度は逆にリィンがそれを受け止める形になった。
「(…なるほど…悲鳴嶼さんの言う通り確かに剣士の才能は無い…けど彼は機転も効くし呼吸が使えないにも関わらず最終選別を生き延びている…つまり決して弱くはないという事になる…それに…)」
リィンは玄弥の一挙一動を注意深く観察し、ある事実と既視感に気づいていた。
「(玄弥の戦い方は持っている武器の一つが剣か刀と言う違いは有るけどサラ教官に似ている…つまり玄弥の戦い方は剣士と言うよりもおれ達の世界の猟兵に近い)」
リィンは玄弥に剣士としての才能の無さを確信していたが同時に戦う者に必要となる機転に咄嗟の判断力がある事も確信を持った。
「(それに玄弥の足運びや全体の身体の動かし方は何処かあの人に似ている…よし…玄弥の実力に彼に合った戦い方も解った)それじゃあ終わらせよう…」
「!(来る!)」
今まで無言で玄弥の実力を測っていたリィンが唐突に口を開いたことで玄弥は咄嗟に防御の構えをとった。
「八葉一刀流・一の型―」途端にリィンはこれまでとは明らかに違う速さで玄弥の懐に駆け込みその刃を振るった「―螺旋撃!」リィンが振るったそれは玄弥の木刀を寸分違わずに捉え、玄弥はどうにか防御したが耐えきれずに木刀を取り落としてしまった。
「!(しまった!刀が!だったら!)」
玄弥はすぐにリィンに銃を向けようと抜き放ったがリィンは続けざまに玄弥の銃を狙って攻撃し、その衝撃で玄弥は銃を落としてしまい、玄弥はそれを目で追ったがリィンはすぐに玄弥の首に木刀を突きつけた。玄弥は困惑して固まってしまい惚けていたが不思議と冷静だった。
「(これが柱の実力か…やっぱり今のおれじゃとても敵わねぇ…でも本当にすごいって事は改めて解った…今は無理だ…けど何時かあの人の隣に並ぶためにも今は認めないとダメだよな…)…参りました…」
玄弥は自分の敗北を悟ると素直にそれを認め、それを聞いた悲鳴嶼は「…勝負あり…だな…」と告げると玄弥とリィンの下に歩み寄ると木刀を受け取り玄弥に話しかけた。
「…大丈夫か?」
悲鳴嶼の問いに玄弥はすぐに「はい…」と答え、続けてリィンの言葉を待った。リィンは玄弥が自分の言葉を待っているのに気づくとすぐに口を開いた。
「そうだな…まずは一つだけ確かなことを言わせてもらうけど…悪いけど玄弥には剣士としての才能が無さすぎる…酷なことを言うけど剣士としてよりも隠として所属した方がまだいいと思う…」
「そう…ですよね…」
リィンとしては珍しく容赦のない言葉だったが玄弥自身が一番その事を理解していたため特に反論しなかったがリィンはすぐに「けど…」と続け、それを聞いた玄弥は顔を上げリィンはすぐに続けた。
「玄弥は機転も効くし咄嗟の判断力も悪くない、呼吸こそ使えないが身体能力も低いわけじゃない…つまり…剣士としての才能は無いけど戦う者としての才能は…戦士としての才能はある」
「!戦士としての…才能…」
玄弥はリィンの言葉に驚きながらも噛みしめるようにリィンが言った言葉を口にし、その直後にリィンは静かに口を開いた。
「おれは本職ではないから見様見真似の技になってしまうけどそれでも良ければおれが知るある人の技を教えたい…どうするかは玄弥自身が決めることだけど…」
リィンの言葉を聞き、玄弥は目を閉じると心の中で「(この人はおれに本気で向き合ってくれている…それに強くなれる可能性があるなら何だってやってやる!)」はっきりとそう呟くと再び頭を下げた。
「それでも構いません!おれに戦士としての戦い方を教えてください!!」
玄弥の決意は確かなものでその目には確かな意思が宿っていた。それを見たリィンは頷くと「わかった…おれに出来る事はさせてもらう…よろしく頼むぞ玄弥」と言い玄弥は力強く「はい!」と答え悲鳴嶼は満足したように頷いていた。
今回も読んでいただきありがとうございます…悲鳴嶼さんの口調が難しかったです…
次回から炭治郎の視点に戻りますのでお楽しみに。