鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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今回は少し遅くなりました。

蝶屋敷編最終話です。


約束と動き出した心

 

 善逸と伊之助がしのぶの口車に乗せられて七日経ったある日、二人は遂に全集中・常中の習得に成功し、歓喜の叫びをあげていた。

 

「よっしゃ―――!!やってやったぞ!!見たか裕次郎!!!」

 

「見たか!!おれは一番応援された男だ!!これくらいどうって事ねぇんだよ!!」

 

 伊之助は手を高く掲げて勝ち誇り、善逸も勝ち誇った叫びをあげていた。

 

『…確かこいつらが修行を始めてから七日だから…すげぇな…こいつら精神的なバフだけで習得してんじゃねぇか…』

 

 二人が何日修行していたかを指折りで数えていた《C》は呆れ七割、感心三割でそう呟き、炭治郎も「(そうですね…おれの時と違って伊之助は自分の力だけでやるって言っていたから一人でやってましたし、善逸はそもそも皆を怒らせていたから協力は頼めないって言う事情がありましたし…ところでバフって何ですか?)」同意しつつここの所の二人の様子を思い出した上で《C》が使用した聞き覚えの無い言葉について質問し、それを聞いた《C》はすぐに『ああ悪い…馴染みの無い言い回ししちまった…バフってのは要は強化って奴だよ序に弱体化はデバフっていうな。後はお前らが普段使っている全集中の呼吸は肉体的なバフって奴だな。最後に補足だけど適合者の力でお前さんは常にバフかかってたから常中を早めに習得できたってのもあるからな、ここ試験にでるぞ、試験なんて無いけどな』と冗談めかした言い回しを交えながら解説し、なんだかんだ付き合いが長いことから炭治郎も《C》のノリを理解できるようになってきていたため「(わかりました!)」と返しつつそれから再びリハビリも兼ねた訓練が続いたある日、鎹鴉が炭治郎と伊之助の日輪刀がもうすぐ届くことを伝え、二人は出向いたもののすぐに一騒動勃発することになった。

 

「よくもおれの刀を折ったなぁぁぁ!!殺してやるぅぅぅ!!!」

 

 鋼塚は炭治郎の姿を目にするともう一人の刀鍛冶と思われる人物に刀を押し付けると包丁を手にして炭治郎に襲いかかり、炭治郎は逃げ回りながら「イヤイヤイヤ!鋼塚さん落ち着いてください!知ってますよね!?おれが相手にしたのは十二鬼月だって!?おれ死にかけたんですよ!?命あっての物種っていうじゃないですか!?」と慌てて言い返したが鋼塚は「知ったことかぁぁぁ!!万死に値するぅぅぅ!!!」と叫びながら炭治郎を追いかけまわし、それは一時間も続いた。

 

『…なんつーか混沌としてるよな…』

 

 その状況に《C》は何とも言えない気分になっていた。

 

―一時間後―

 

「いやはや…大変でしたね炭治郎君…十二鬼月を相手にするとなれば刀が折れない方が珍しいのですが…鋼塚さんは人一倍刀に対する思いが強いですから…あっ私は鉄穴森と申します。伊之助殿の刀を打たせてもらった者です」

 

 鋼塚と共に姿を見せた刀鍛冶はそう名乗り、炭治郎は「はじめまして」と答えたがその間も鋼塚は炭治郎をポカポカ殴り続けており、炭治郎はそう言いながら痛みを堪えていた、鉄穴森は刀を二本取り出すと「こちらが伊之助殿の刀です」と言いながら伊之助に差し出すと伊之助は何も言わずにそれを受け取り、やがてその二振りの刀は藍鼠色に変わり鉄穴森は満足したように頷くと「良い色ですね…なかなか渋くて何より刀らしい…」そう言って感心していたが伊之助は無言で立ち上がると庭の石を物色しだしそれを見た炭治郎は「伊之助?どうしたんだ?」と問いかけ、鉄穴森も「伊之助殿?」と呼びかけ、流石の鋼塚も気になったのか炭治郎を殴る手を止めて伊之助を見た。やがて伊之助は程よい大きさの石を手に取るとあろうことか勢いよく刀身に振り下ろして態と刃こぼれさせ、それを見た《C》は『いやおまえなにやらかしてんだよ!?』と炭治郎以外には聞こえないことも忘れて盛大に突っ込みを入れ、残る三人も愕然とし、伊之助はお構いなしに「よし!」と満足したように頷いていたがその直後「ふざけんな!ぶっ殺してやる!!このクソガキ!!!」と鉄穴森がマジギレし、ここで初めて伊之助は動揺し、炭治郎と鋼塚は協力して鉄穴森を抑え込むことになった。…後にこの時の事を思い出した《C》は『…自分よりも取り乱してるやつを前にしたら一周回って冷静になるって本当だったんだな…』と語ったそうな。

 

 

―数日後―

 

 

 伊之助の刀破壊及び鉄穴森暴走事件からまた数日たったある日、ようやく炭治郎達三人が退院できるほどに回復し、しのぶは三人を呼ぶと今後のことを話し始めた。

 

「まずは三人共ようやく回復しましたのでこれからの事を説明しますね。まず禰豆子さんを含めた貴方たち四人はリィンさんが住まわれている灰屋敷へと向かってください」

 

 しのぶのその言葉を聞いた炭治郎は気を引き締め「(遂にこの日が来たんだ…)」と心の中で呟き、自分に真実を知る準備が出来ていることを改めて確認し、善逸は「(リィンさんか…本当にどんな人なんだろう…炭治郎があんなに慕っているんだから悪い人じゃないんだろうけどやっぱり気になるな…)」鬼殺隊で唯一全集中の呼吸を使わずに柱に上り詰めた人物であり自分たちが知る限りでは唯一の異国出身の隊士と言うことからやはり気にしており、伊之助は「(リィンか…あの半半羽織が言ってたことが本当かどうか確かめてやる…)」と闘志を漲らせていると言うように三者三様の様子を見せ、しのぶはすぐに「すでに細かい荷物は隠の方々が運び出していますのでその点については安心してください、とは言っても灰屋敷まではそれほど離れていませんので今後もけがをした時はいつでも来てください。他に何か聞きたいことはありますか?」と話し、炭治郎は暫く考え込むと「でしたら…ヒノカミ神楽という物について何か知っていることはありませんか?」と問いかけたがしのぶはすぐに「いえ…炭治郎君の鎹鴉から名前は聞いていますが名前以外にわかることはありません…ですがリィンさんはここ最近ヒノカミ神楽について調査しているそうですのでもしかしたら何か情報を掴んでいるかもしれません」と答え、それを聞いた炭治郎はすぐに「ありがとうございます!」と頭を下げ、それぞれ準備をするために戻って行った。

 

『…わたしの事を彼らに伝えなくてよかったのですか?』

 

 三人が診察室を出た直後、リアンヌはしのぶにそう問いかけ、しのぶは頷くと「…ええ、彼らに伝えるのはリィンさんの役目でわたしの役目ではありませんから…」と答え、リアンヌは『そうですね…あの子が炭治郎を最初の弟子としたのもわかる気がします…ここ暫く炭治郎を見守っていましたが…あの二人は…やはり何処か似ています…自分を顧みずに誰かを救おうとするところも…本当に…』と語るとしのぶは「以前も思いましたが…リアンヌはまるでリィンさんのお母さんみたいですね…いつも見守っていたんですよね?」と問いかけ、リアンヌは微笑むと『…あの子とわたしはまともに話した事は殆どありません…ですが息子がいたらこの様なものだったのではないかと何度も夢想したことはありました…あの子がわたしの事をどう思っているかはわかりませんが…』そう答え、それを聞いたしのぶは「…きっとリィンさんも貴女をもう一人の母親の様に思っていると思いますよ」と穏やかな笑みで応え、リアンヌも笑みを浮かべると『そう願います…』と返した。

 

 

―蝶屋敷の庭―

 

 

 炭治郎は蝶屋敷の残るメンバーに出ていく前に一言挨拶しようと庭を歩いて回り、すぐに洗濯物を干しているアオイの姿を見つけて声をかけた。

 

「そうですか、もう行かれるのですね、短い時間でしたが同じ刻を共有できたのは良かったです、頑張ってください」

 

 アオイはいつも通りの平常運転と言うべき調子でそう言い、炭治郎は「たくさんお世話になったし一言お礼を言わなきゃと思って…ありがとう、忙しいのにおれ達の面倒をみてくれて…おかげでまた戦えるよ」と笑顔で伝えたがアオイは何処か自虐的に「あなたたちに比べたらわたしなんて大したことはありません。わたしは運よく最終選別で生き残れただけでその後は恐怖に負けてしまい戦う事もできなかった役立たずの腰抜けでしかありませんから」と答えたが炭治郎はすぐに「役立たずってそんなことないと思うよ、アオイさんは怪我をした鬼殺隊の人たちを助けているんだし、けして役立たずなんかじゃ無いよ。何よりおれを助けてくれたんだからアオイさんはもうおれの一部だから、アオイさんの想いはおれが持っていくから代わりにまた怪我したら頼むね!」そう答えるとすぐにカナヲの姿を探して駆け出し、アオイは彼女にしては珍しく驚いた表情で固まる事となった。

 

 アオイのもとを去った炭治郎は縁側に座るカナヲを見つけて声をかけたが何も話そうとしない彼女に本気で困ることになり、《C》も『こういうタイプの子とはあんまり話した事ねぇんだよな…専門家じゃねぇから詳しくは解らねぇけど昔何か辛いことが有って感情を表に出しにくいんだろうな…人間ってのはあまりにも辛いことがあるとそうなることがあるんだよな…あまりにもひどい暴言を受けまくった人は耳があまり聞こえなくなるとかな…』と真面目な様子で答え、炭治郎は何を思ったのかカナヲに根気強く―と言うよりもしつこく話しかけ続け、やがてそれぞれの側に『表』と『裏』と書かれたコインを取り出すとそれを上に向けて弾き、手の甲に落ちたそれを抑え、『裏』と書かれた側が見える状態となっていた。

 

『へぇーコイントスか…懐かしいもんだぜ…』

 

 カナヲが行ったそれを見た《C》は本当に懐かしそうに呟き、コインを確認したカナヲは静かに口を開いた。

 

「わたしは師範の支持に従っただけだからお礼を言われる理由なんてないから。さよなら」

 

 カナヲはやはり淡々とした様子で答えたが炭治郎は諦めずに続けた。

 

「コイントスって言うんだっけ?どうしてそれをしたの?」

 

 炭治郎の問いにカナヲは表情を変えずに答えた。

 

「わたしは何も自分では決められないから、あなたと話すことは命令されていない。だからこれで決めた。表だったら話さない、裏だったら話す、裏が出たから話した。わたしには命令されたこと以外はどうでもいいから。さよなら」

 

 カナヲは淡々と理由を説明し、話は終わりとばかりにまたもや別れの言葉を口にし、それを聞いた《C》は『ああ言ってるけどどうするんだ?(まあお前なら放っておかないだろうけどな)』と炭治郎に問いかけ、炭治郎は考え込んだ。

 

「(コインを投げないと決められない…!だったらこうすれば!)ねぇ!そのコイン貸してくれない?」

 

 あまりにも唐突な炭治郎の言葉に驚いたカナヲは「え!?うん…あ…」と思わず了承し、それを聞いた炭治郎はすぐにコインをかすめ取ると「ありがとう!コインで決めよう!カナヲがこれからどういう風に生きるか!」そう叫び、炭治郎はコインをカナヲよりもずっと高く飛ばし、それを見た《C》は『いや!いいアイデアではあるけど飛ばしすぎだろ!』と慌て気味にツッコミ、炭治郎もほぼ同時にそれに気づき「ああ!そうだ飛ばしすぎたししかも表か裏か決めてなかった!それじゃあ表!表にしよう!表が出たらカナヲはこれから自分の心に従って生きること!!」慌てながらもそう叫び、カナヲは高く飛んだコインを見つめ、やがて炭治郎はギリギリのところで落ちて来たコインをとることに成功し「やった!取れた!」と興奮気味に叫び、《C》も拍手しながら『初めてであれだけ高く上がっちまったコインを取れるとか普通にすげぇじゃねぇか』と感心し、反面カナヲは緊張を隠すことが出来なかった。

 

「(背中を向けてたから見えなかったけど細工はしていなかったはず…今のはどっちだったの?)」

 

 炭治郎は手の甲から手のひらをどかし三人は表と書かれたコインの面を目にした。

 

『フッ…賭けは炭治郎の勝ちだな…』

 

 コインの面を見た《C》は嬉しそうに笑みを浮かべ、炭治郎はカナヲに目を向けるとすぐに駆け寄り、コインを返すとすぐにその手を握った。

 

「カナヲ!おれも頑張るからカナヲも頑張れ!人は心が原動力だから心に従えば今よりももっとどこまでも強くなれる!それはカナヲも同じだから!それじゃあまた!」

 

 炭治郎は呆気にとられるカナヲを余所に駆けだすとカナヲはその背に向けて叫んだ。

 

「ま…待って!どうして表を出せたの?」

 

 カナヲの言葉を聞いた炭治郎は振り返ると満面の笑みを浮かべて答えた。

 

「おれはただコインを投げただけで他には何もしてないよ。それに裏が出ても表が出るまで何度も続けるつもりだったから!改めてまたいつか、元気で!」

 

 炭治郎はそのまま振り返らずにかけていき、カナヲはその背が見えなくなるまで見送るとコインをぎゅっと握りしめた。

 

 

―三十分後―

 

 

 蝶屋敷を出た炭治郎達は灰屋敷を目指して道を歩く中、善逸が口を開いた。

 

「おれも一度リィンさんに会ってみたいって思ってたからいいんだけどさ…継子の炭治郎は兎も角…おれと伊之助までなんで屋敷に呼ばれたのか解らないんだけど…」

 

 善逸の疑問はある意味ではごもっともであり、それを聞いた炭治郎は会議の時の事を思い出しながら答えた。

 

「確か裁判の時にリィン教官が善逸と伊之助もおれと一緒に行動してたから知る権利があるって言ってたから…多分おれに教えるって約束してたことを二人にも教えるつもりなんだと思う」

 

 炭治郎の言葉を聞いた伊之助は「つまりはレンって奴の強さの秘密がわかるのか…」と戦慄した様子で呟き、善逸は「いや…それだけじゃないだろ…あとレンって名前どっちかと言うと日本人っぽい名前だから間違えるならせめてこの前みたいに西洋系の名前にしろよ。絶妙に知り合いにいてもおかしくない名前だし…」とツッコミを入れた。因みにリィンの知り合いには本当にレンと言う名前の少女がいたりする。そんなやり取りをする中、炭治郎は地図に書かれていた目的地にたどり着くと立ち止まり「ついた…ここのはず…」と呟き、門の隅に書かれた『灰』と言う字に気づいて頷くと庭に足を踏み入れ、入口の戸を叩いた。

 

 

 





 原作よりも早めに炭治郎達が退院したこともあり、幾つか起こっていない出来事がありますが回収しますので楽しみにしてください。次回からは暫くオリジナル回となっていますのでまた遅くなってしまうかもしれませんが気長に待って下さるとうれしいです。
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