鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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 少し体調を崩してしまい遅くなりました。幸いただの風邪でしたが、最近またコロナが流行ってきているので気を付けるようにしたいです。



成長と明かされる真実

 

 炭治郎が灰屋敷の入口を叩くと「…どなたでしょうか?名を名乗ってください」と言う用心深そうな女性の声が聞こえ、炭治郎はすぐに「しのぶさんからの指示で参りました。竈門炭治郎、竈門禰豆子、我妻善逸、嘴平伊之助、以上四名です」と答えるとすぐに戸が開かれるとそこにいた九重とは別の隠の女性が頭を下げた。

 

「お待ちしていました。わたしは以前あなた方がお会いした九重と同じく灰屋敷に常駐する隠の(ひいらぎ)と申します。灰柱様は裏庭でお待ちしていますので案内します。ついてきてください」

 

 柊と名乗った彼女は炭治郎達にそう促し、彼らも続いた。灰屋敷の内装は文字通り和洋折衷と言うべき様相で日本風の建築だが何処か西洋的な部分も見受けられ、炭治郎達は興味深げに見まわし、それに気づいた柊が「なぜこの様な内装なのか気になっておられるようですね?」と問いかけ炭治郎はすぐに「ええ、まあ…」と答え、柊はすぐに解説を始めた。

 

「皆様も知っての通りリィン様は異国の出身ですが故郷は山奥の温泉郷であるらしくそれもありこの国の文化にも理解があるそうです。とは言えリィン様が異国の出なのは事実ですのでお館様のお心遣いで恋柱様の屋敷を参考に西洋の様式も取り入れておりますのでこのようになっております」

 

 炭治郎達三人は変わらずに辺りを見回していたが所々にある部屋に何人かの隠の姿も見受けられそれに気づいた善逸は「あの時の九重さんって言う人の話を聞いた時、もしかしたらって思ったけど灰屋敷ってやっぱり隠の人数が多い気がする…この屋敷も広いし…外にあるあの倉庫も普通よりも大きいような気がするんだけど…」と呟き、柊は頷くと「気が付かれましたか…目の付け所が良いですね…あの倉庫こそがこの屋敷…いえ、今の鬼殺隊にとって産屋敷家の所在と同じくらいに重大な秘密が存在する場所です。ですがそれについてはリィン様が直接ご案内することとなっておりますので今は頭の片隅に置いて置くようにお願いします」と補足し、炭治郎と善逸が素直についていくのに反して伊之助は何かを感じ取ったのか暫く倉庫を見つめ「(…なんだ?この気配は…?あの倉庫からか?人間でもなければ獣でもない…かと言って鬼とも思えねぇ…どうなってやがる…)」そう考えていたが今はリィンと対峙するのが先だと判断するとすぐに三人の後を追いかけ、やがて一つの扉の前で柊は立ち止まると三人に向き直り「こちらが裏庭の入口となっております…リィン様もこの日を待ち望んでおられました…真実を告げられる日を…それではわたしはこれで失礼いたします…」そう告げると彼女は三人が何か言う間も無く姿を消し、炭治郎は意を決するとその扉を開いて中庭に踏み込んだ。

 

 

―灰屋敷・中庭―

 

 

「うわぁ…」

 

 炭治郎は中庭の外見をみて思わず惚けたような声を上げた、中庭は見事な日本庭園と言うべき姿だが、小さな花壇のような場所の近くは西洋風のお茶会場のような雰囲気となっており何処か変わっているものの並んでいるテーブルは景観を崩さないように気を使った色合いとなっており、感じられた違和感はすぐに気にならなくなっていた。

 

「なぁ総一郎…ここにリィンがいるのか?」

 

 伊之助は炭治郎にそう問いかけ、炭治郎はハッとした表情になったがすぐに頷くと「あ!うん…柊さんは嘘をついている感じはしなかったし…多分庭の何処かにいるんだとは思うけど…」そう言いながら辺りを見回すと直ぐに炭治郎は死角となっている壁側に向かう小道の様になっている場所を見つけるとそちらへ足を進め、善逸と伊之助は直ぐに後に続いた。

 

「(…おれの予想が正しければ多分この先に…)あっ…」

 

 その道の先は開けた訓練場になっており、その中心ではリィンが巻き藁を前にして佇んでいた、それを見た炭治郎は「リィン教官…」と名前を口にし、善逸は「あの人が…(離れてるからまだよくわからないけど…不思議な感じがする…)」と呟き、伊之助は「…あいつが…リィン…(なんだこの感じは?あの半半羽織とも違う…だが…底が知れねぇ…)」そう心の中で呟き、野生の勘とも言えるそれでリィンが自分達よりも上でありながらそれを殆ど感じさせないという事実に驚愕していた。リィンは日輪刀に手を置くと目にも止まらぬ速さで振りぬき、一瞬で巻き藁を細切れにしていた。その一連の流れを始めて見た善逸と伊之助は唖然とし、反面炭治郎は以前も目にしていたがやはり驚き、伊之助がゆっくりと口を開いた。

 

「なぁ…今の見えたか?」

 

 伊之助はただそう問いかけ、善逸はそれに対して首を横に振ると「…見えなかった…多分凄い速さで斬ったんだと思うけど…」と答え、炭治郎は「(今のは多分無想覇斬だと思うけど…やっぱりリィン教官は強い…少しでも追いつかないと…)リィン教官、お待たせしました」決意を新たにするとすぐにそう呼びかけ、リィンはすぐに炭治郎達に向き直った。

 

「待ってたよ炭治郎…それから善逸に伊之助だな?」

 

 リィンは炭治郎達に歩み寄るとそう問いかけ、善逸と伊之助は何も言わずに頷き、リィンを観察しだした。

 

「(この人がリィンさん…この音は…炭治郎と同じ…涙が出そうなほどに優しい…でもそれでいて凄く強い…)」

 

 善逸はリィンから聞こえた音に対してそんな印象を持ち、伊之助は身震いした。

 

「(…悔しいがあの半半羽織が言った通り…今のおれじゃこいつには絶対に勝てねぇ…)」

 

 伊之助は彼にしては珍しく自分とリィンの実力差を素直に認めていた、それほどまでの差がある事を認めるしかない、伊之助でさえそう思うのが自然と言っても過言ではなかった。リィンは三人を見回すと頷き「おれのことを話す前に今の三人の実力が知りたい。まず伊之助にはこれを受け取ってほしい」そう言うと伊之助にアークスを差し出し、伊之助は普段だったら受け取らないが今回に限っては受け取るべきと感じ、躊躇いなく受け取り、それを確認したリィンは木刀を四本手に取ると炭治郎と善逸に一本、伊之助に二本手渡し、自身も木刀を手に取ると彼らと向き合うように立ち「勝ち負けは関係ないけど木刀を落とした時点でその人は戦線離脱…と言うことにしておこう。さあ、どこからでもかかってくるんだ」と言うと木刀を構えて三人と向き合い、炭治郎達もリィンと向き合いすぐに仕掛けた。

 

「子分ども!おれが隙を作ってやる!悔しいが一人で戦ったところでどうにかできる相手じゃねぇからな!後に続け!」

 

 伊之助はそう叫ぶとリィンに木刀を振り下ろし、リィンは涼しげな表情でそれを軽々と止めたが伊之助は持ち前の身体の柔軟性を生かし、足払いを仕掛けたがリィンはそれも読んでいたかの様にかわした。伊之助は直ぐに獣の呼吸の動きで連撃を仕掛け、リィンは直ぐに対応しながら分析を開始した。

 

「(嘴平伊之助…炭治郎と同期の隊士の中でただ一人―否…おそらくは鬼殺隊では初めて誰からの指導も受けずに完全な我流で独自の技を確立させた隊士…彼の技である獣の呼吸はおそらく風の呼吸の派生で間違いなさそうだ。それに二刀流で戦うにはそれなりに高い技術が必要になる。おれが元々いた世界のヴァンダール流の剣術において双剣ではなく大剣が主流となり忘れられていったという事実からそれは明白だ、何より彼の柔軟さと力強さ…それを併せ持った技は流石と言える、まだ粗削りだけど今後に期待させるには十分だ)」

 

 リィンは一瞬の隙をついて伊之助の木刀を二本とも弾き飛ばすと続けざまに向かってきた善逸に対応した。

 

「(アァァァーーー!!もう!おれ達の実力を見たいって言ってたけどホントに圧倒的じゃん!仮にも天才の伊之助の技をああも簡単に凌ぐとかどんな動体視力持ってんだよ!しかも全然本気出してないし!)」

 

 善逸は半ばヤケクソ気味に心の中でそう叫びながら攻撃を仕掛け、リィンは善逸の素早い動きに一瞬驚いたがすぐに攻撃を防御すると伊之助の時と同じく分析を始めた。

 

「(我妻善逸…雷の呼吸の使い手であり炭治郎の同期の中で最速の剣士…その代わりに雷の呼吸の技は霹靂一閃しか使えないと聞いたけど正直驚いたな…思ったよりもずっと速い…鬼は頸を斬れば殺せるという点から見ると善逸の居合は正に一撃必殺と言っても良い、もしも善逸の戦い方を知らなかったらおれは多分負けていた…つまり善逸は格上が相手だとしても条件が揃いさえすれば倒せる可能性がある…流石に十二鬼月には通用しないだろうけどそれは今後の修行次第と言える…後は精神面の弱さから来る本番への弱さが問題だけどこればかりは何かきっかけが必要だな…)」

 

 リィンは善逸の目にも止まらぬ速さの居合をどうにか捌き、最後は伊之助の時と同じように木刀を弾き飛ばし、最後に残った一人―炭治郎と対峙した。

 

「(クソ!やっぱおれと善吉じゃ足止めが手一杯か!癪だが秀四郎に任せるしかねぇか!)」

 

「(音で解ってたけどやっぱり強い!おれ達三人の中でリィンさんに一撃入れられるとしたら八葉の動きに慣れてる炭治郎しかいないしもうこれに賭けるしかない!)」

 

 二人は理由こそ違うが炭治郎に任せるということでは意見が一致しており、炭治郎も二人のその意図をある程度察していた為今までは敢えて動かなかった。

 

「リィン教官…全力で行きます!」

 

 炭治郎は自分の意思で蒼い光を纏うと全集中・常中の習得により上がっていた基礎的な身体能力と合わせることで身体能力に更に上乗せすることでリィンに迫り、リィンも何も言わずに炭治郎と向き合うと炭治郎が振るった木刀を受け止め、そのまま立て続けに木刀をぶつけ合わせながらリィンは炭治郎の成長を実感し、笑みを浮かべた。

 

「(しのぶさんのところに炭治郎を預けたのは正解だった。全集中・常中の習得にも成功しているしそれに炭治郎自身の力(・・・・・・・)こそ覚醒してないけど蒼の騎神の力を引き出すことには成功している。善逸と伊之助も常中の習得には成功しているし間違いなく強くなれる…教官として誇らしいよ)」

 

 リィンが炭治郎の成長を喜ぶ反面、当の炭治郎は必死だった。何故ならリィンは最初に伊之助、次に善逸を相手にしたがその時に立っていた場所から殆ど動いておらず、最低限の動きだけで対応しており一切疲れた様子を見せていないという事実があった。

 

「(やっぱり強い!今のおれ達の力じゃ勝てない!でもせめて一撃だけでも入れる!二人が託してくれたんだから絶対に諦めない!)蒼炎よ!我が刃に宿れ!!」

 

 炭治郎は蒼炎の太刀に意識を集中すると更にもう一つの技を構えた。

 

「水の呼吸・拾の型・秘技!蒼炎流転!!」

 

 炭治郎がリィンに対して秘策として振るったのは『蒼炎の太刀』に『生生流転』の特徴を上乗せするという物だった。だがこの技は普段使うには負担が大きく以前鼓屋敷で見せた『水流飛沫・乱・緋空ノ舞』とは違い、八葉の基礎的な技ではなく奥義を組み合わせると言う荒業であり、今回の様に蒼の力を合わせなければ使いこなすのは今の炭治郎には不可能だった。

 

「!(蒼炎の太刀に生生流転を組み合わせたのか!)」

 

 リィンは炭治郎の予想外の技に一瞬だけだが隙を見せてしまい、その隙が仇となった。炭治郎の放った技はリィンの腕に一撃を食らわせ、その直後にリィンによる反撃が炸裂し、炭治郎の手から木刀が叩き落された。

 

「…正直驚いたよ…成長したな炭治郎」

 

「手合わせありがとうございました。リィン教官」

 

 二人は清々しい雰囲気でそう言い、炭治郎はお辞儀し、善逸は勿論何と伊之助もリィンに向かって頭を下げた、これに当然炭治郎と善逸は驚いたが、伊之助は「おれが強くなるためだ、今のおれが知ってる奴らの中で一番強いのはこいつだ…だったら近くで技を奪えば良いだろ」と如何にもらしい言葉で答え、善逸は「らしいと言えばらしいけど…」と苦笑い気味だった。

 

 そして暫くした後、リィン達は模擬戦で使った木刀を片付けると善逸が目を突け、柊と名乗っていた隠が重大な秘密があると言及していた倉庫の扉の前に訪れ、リィンは三人に向き合うと口を開いた。

 

「三人におれの事を話す…これは嘘じゃないし、今更約束を破るつもりも無いからそこは三人共安心してほしい…けどおれの話を聞くなら彼も一緒にいた方が三人共受け入れやすいと思う、何しろおれの話は普通に考えると嘘としか思えないか何らかの幻覚で夢を現実だと思ってるかのどちらかだと思う…何しろ今から伝えることは鬼の存在以上に現実離れしているからな…」

 

「…鬼以上にですか?」

 

 リィンの言葉を聞いた炭治郎はそう聞き返したが、伊之助は案内された時と同じ気配に立ちすくみ「(間違いねぇ…ここにはナニカがいる…この気配の主は一体何者なんだ?)」倉庫に何があるのかと警戒し、善逸は「(嫌な感じはしないけど…この感じ何処かで…)」と首を傾げていた。リィンは扉を開けると三人に入るように促し、三人が入ったのを確認すると自身も倉庫に入ると明かりをつけ、倉庫内部の全体像が顕わになると三人共驚愕した表情になった。

 

「!こ…これって!」

 

「で…でかい人形!?これがこの屋敷の秘密なの!?」

 

「ま…間違いねぇ…おれが感じた妙な気配はこいつだ…ただの人形じゃねぇぞ…」

 

 その中に鎮座するソレ―ヴァリマールを目にした三人は驚きを隠せず、リィンはそんな三人を余所にヴァリマールの前に立つとその目が光り、彼はリィンに顔を向けると語りかけた。

 

『ヨウヤク全テヲ伝エル時ガ来タヨウダナ…』

 

 目の前の巨大なソレが意思を持って動き、話し始めたと言う事実に三人は困惑して言葉を失い、リィンは「遅くなって悪かったよ…けど慎重に進める必要があったし、炭治郎が十二鬼月の下弦の鬼を倒せた以上伝えても良いはずだから」と返し、ヴァリマールも『確カニ実力ハ十分ニ示サレタト言エルナ』とリィンに同意すると炭治郎達に向き直り、三人に自身の名を告げた。

 

『改メテ名乗ラセテ貰オウ…我ハヴァリマール…七ノ騎神ガ一ツ、灰ノ騎神デアル』

 

「…灰の騎神…」

 

 炭治郎はそう呟き、リィンは炭治郎の前に立つとすぐに答えを告げた。

 

「改めて自己紹介させてもらう…おれは現・鬼殺隊所属・灰柱・リィン・シュバルツァー…ヴァリマールのライザーであり…鬼殺隊に入る以前はエレボニア帝国、トールズ士官学院・第Ⅱ分校・特務課・Ⅶ組担任教官を務めていた…まぁ要するに先生だったって事かな…」

 

 リィンはそう語ったが、すぐに善逸が手を挙げ「あの…エレボニア帝国なんて聞いたことないよ…確かにこの国は江戸時代までずっと鎖国してたから色々と劣ったところは有るけど…流石に名前ぐらいは伝わってるはずだと思うから…」と問うとリィンは苦笑し「…まぁ…聞き覚えが無いのも無理はないよ…エレボニアがあるのはゼムリア大陸と言う場所なんだけど…普通の方法じゃ行き来できないから…わかりやすく言うとおれは異世界から来た人間だってことだよ」とはっきりと告げ、炭治郎達は驚きの余り再び固まった、だが荒唐無稽な話でありながらヴァリマールの存在に加え、炭治郎と善逸の二人の感覚はリィンの話に偽りが無く真実を語っているという事実をはっきりと告げていた。

 

『…やれやれ…ホント長くかかったよな…』

 

 そして炭治郎の内にいる彼もリィンと同じように真実を告げる時が来たことを悟り、覚悟を決めていた。

 





オリジナル技解説


蒼炎流転

 炭治郎が半ば即興で編み出した水の呼吸の拾の型『生生流転』と八葉一刀流の奥義『蒼炎の太刀』の合わせ技。
 初動の威力こそ生生流転を超えるがその分体力の消耗が大きい技となっており、蒼の力との併用を前提としている。


 善逸と伊之助が若干噛ませ感が出てしまいましたが今後もっと活躍の場がありますのでそこは暖かく見守ってほしいです。
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