鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
―リィンの告白から数時間経ち日が暮れたころ…―
「…なんて言えばいいかわからないけど…色々と衝撃的だったよな…」
リィンの衝撃的なカミングアウトを思い出した善逸はそう呟き、炭治郎も「うん…」と頷き、リィンが「これからどうするのかはよく考えてほしい、おれではなくて他の柱の指導を受けたいと言うなら…引き受けてくれるかは微妙だけど義勇辺りに頼んでみる…明日またどうしたいか聞きに来るから、部屋と食事、それからお風呂の用意もしてあるから今日はゆっくり休むといい」と炭治郎達に言ったのを思い出した。
「なぁ…リィンはなんであんなことを言ったんだよ?おれ達に修行を付けるって言ってたんだろ?」
三人の中で伊之助だけはリィンが異世界から来たという事実を気にしておらず(よく解っていないとも言うが…)何故リィンが自分の指導を受けるかどうかはよく考えて決めてほしいと言っていたのかその理由を問いかけ、炭治郎は考え込むと静かに答えた。
「…多分だけどリィン教官は自分が得体のしれない人間だからそんな自分の指導を受けたいかどうかおれ達自身に選んでほしいって思ったからこうしたんだと思う…リィン教官は本当に優しい人だから…」
炭治郎はリィンが自分の世界に帰ると言う目的があるのにも関わらず万が一が起こってしまった時は躊躇いなく切腹すると鱗滝の手紙に書かれていたことを思い出し、リィンが本当に心の底から自分と禰豆子の事を案じている事をより強く感じ取っていたが同時に何故恋人までいるにもかかわらず最悪の事態が起こってしまった場合はこの世界で死ぬことも躊躇わなかったのかという事実には戸惑いを見せていた。
「(…リィン教官は元の国に…いや…元の世界で待ってくれている人がたくさんいるのにもしもの時はこの世界で死ぬことも躊躇わなかった…どうしてそんなに親身になってくれたんだろう…)」
食事と入浴を終えても炭治郎の疑問は消えなかったがそんな炭治郎の様子に伊之助は苛立ったように叫んだ。
「アーーー!!いつまでも悩んでんじゃねぇぞ!廉太郎!!」
「!?い…伊之助?」
「え?え!?急に何!?」
伊之助の怒鳴り声に炭治郎も善逸も困惑したが伊之助は思う所を叫んだ。
「おれには難しい事はわからねぇ!けどお前がリィンを尊敬してるってことだけは解るんだよ!何しろお前からよく話を聞いていたからな!あいつがイセカイってところから来たんだろうがそんな事であいつを尊敬してるって事は変わらねぇだろ!それにおれが知ってる中で一番強えのはあいつだからな!あいつの傍だったらもっと強くなれるだろうが!だからおれはあいつの修行を受けるぜ!!あいつが何処から来た何者だろうが知ったことか!!」
伊之助のある意味ではまっすぐな言葉に炭治郎は困惑したが、改めて自分がどう思っているのかを考えることとなり暫くして善逸も口を開いた。
「…おれもリィンさんの指導を受けてみたい…炭治郎が尊敬してる人だからって言うのも有るけど今日初めて会ってこの人から学んでみたいって思ったから…(それにリィンさんに…あとできればヴァリマールさんにも聞いてみたいことがあるし…)」
善逸もリィン達に聞きたいことがあると言う個人的な事情も有ったが、リィンから教わりたいと言う点においては伊之助と同意見だったことからすぐに同意し、それを聞いた炭治郎は直ぐに答えた。
「…二人の言う通りだよな…リィン教官は普通なら信じられないような話も信頼して話してくれたんだ…おれもリィン教官の指導を受けるよ」
炭治郎は改めてリィンの指導を受けることを決め、その日の夜、三人は割り当てられた部屋で休むことになったが炭治郎は中々寝付けなかった事もあり柊に断った上で灰屋敷の庭を散歩し、ある人物と話していた。
「…《C》…あの時の約束だけど…」
炭治郎は《C》にそう問いかけ、程なくして《C》も答えた。
『解ってるっての…炭治郎…約束してたからな…何から聞きたい?』
炭治郎は《C》の言い回しから今の彼は炭治郎に何かを隠すつもりが無い事を悟ると今回の件でどうしても聞きたくなったことを問いかけた。
「《C》はリィン教官と同じ世界から来たんですよね?」
炭治郎のそれは問いかけと言うより確信を持ったが故の確認であり、思った以上に直球だったため、《C》は苦笑いした。
『オイオイ…いきなりそれかよ?…まあそれについてはイエス…その通りだって言っておくぜ…いつから気付いていたんだ?』
《C》は異国語混じりの肯定をし、逆に炭治郎にそう問いかけ、炭治郎は直ぐに答えた。
「…《C》はリィン教官の事を昔から知っているような事を言ってましたからその時点で同郷か昔からの友人のどちらかだとは思っていました…流石に異世界から来たというのは驚きましたけど…」
炭治郎は何処か苦笑気味にそう答え、それを聞いた《C》はおどけた様子で『まあ驚くよな、おれがお前の立場だったらどう言う反応するべきかわかんなくなりそうだしな…』と自分だったらどう思うかを踏まえて答えると続けた。
『…それと改めて名乗らせてくれ…十二鬼月を倒したし何よりリィンに修行を付けて貰うってんなら十分に合格レベルまで行くはずだからな』
そう言うと《C》は炭治郎の目の前に精神体とでも言うような状態で姿を見せるとはっきりと名乗った。
『改めて…おれはリィンと同じく初代Ⅶ組にして蒼の騎神オルディーネのライザー…《C》ってのもある意味ではおれの名前だけどな…名前はクロウ…クロウ・アームブラストだ。改めてよろしく頼むぜ、相棒』
彼―クロウは改めて炭治郎に本当の名前を名乗ると炭治郎に手を掲げて見せ、炭治郎はすぐに「これからもよろしくお願いします!クロウ!!」と言い現代で言う所のハイタッチをしようとしたが炭治郎の手はクロウをすり抜けてしまい、それを見たクロウは『あ…やべぇ』とぼやき、勢い余った炭治郎はそのまま転んでしまい、クロウは『すまん…今のおれに実体が無いの忘れてた…』と謝罪したが炭治郎は「い…いえ…錆兎と真菰の時は触れれたのでおれもうっかりしてたので…」とぶつけたところを抑えながらぼやくこととなり、何とも締まらない空気となっていた。
―数十分後―
『本当に良いのか?聞きたいことまだいろいろとあるんじゃないのか?』
クロウにとっては意外なことに炭治郎はクロウの本名を聞くだけですぐに質問を切り上げていた為、クロウはこれまで自分が色々なことを秘密にしていたことから逆に質問攻めにされていないことを気にしてそう問いかけたが炭治郎は部屋に戻る道すがらクロウの問いに対して「はい…確かに聞きたいことはたくさんあるんですけど…でもクロウもまだ話しにくいこともたくさんあるだろうから話しても良いって思った時に話してくれれば良いですので…」と答え、クロウは『…まあお前がそれで良いなら構わねぇけど…』と答えたが内心彼はほっとしていた。炭治郎に自分の過去を話しても構わないと思ったのは紛れもない本心だったが、以前から炭治郎に負い目が有ったのも事実だった。
『(…それにその日は近いうちに来るだろうしな…)』
クロウはいつか来るその日に思う所はあったもののいつも通りに過ごすと決め、その日は炭治郎に『ゆっくり休めよ…』とだけ告げると朝を待つことになった。
―次の日の朝―
そして次の日、炭治郎達は改めてリィンの下へと向かい、修行を受けることを伝えるとリィンは頷き、「…わかった、三人共歓迎するよ。今日はおれにも用事が有るから午後はゆっくり休むように…その分午前中は厳しくいくからな」と答え、それを聞いた三人の反応は様々で、炭治郎は力強く「はい!」答え、善逸は顔を青ざめさせ、伊之助は「よぉし!望むところだ!!」と闘志を滾らせ、その日の午前は修行することとなった。
―修行が終わった後産屋敷家にて…―
その日の修行が一段落したころ、リィンは耀哉からの要請で産屋敷家を訪れており、そこにはリィンだけでなく杏寿郎の姿があった。
「うん?おお!リィンか!君も呼ばれていたんだな!」
杏寿郎はいつもの明るい調子で話しかけ、リィンもすぐに答えた。
「杏寿郎もか…確かにおれもお館様に呼ばれて来たんだけど…」
リィンがそう口にした直後、耀哉が奥から姿を見せ、すぐに口を開いた。
「杏寿郎…リィンさんもよく来てくれたね…」
「お館様の要請とあらば当然のこと!ご用件をお聞かせください!」
杏寿郎の言葉を聞いた耀哉は頷くと口を開いた。
「実は二人に頼みたいことが有ってね…まだ調査中なんだけどとある列車に鬼が出ると言う話が有るんだ…調査が終わり次第と言う形にはなるけど二人にはその列車に出ると言う鬼を退治して欲しい…最悪の場合十二鬼月の可能性もある…頼めるかな?」
耀哉の問いに二人はそれぞれ「わかりました」「うむ!了解した!」と答え、リィンは続けて「それから…一つお願いしたいことがあります…炭治郎達もその任務に同行させることを許可してもらえませんか?」と問いかけ、それを聞いた耀哉は頷くと「勿論構わないよ。調査が終わり次第君たちに鎹鴉を送らせてもらうよ」そう伝えると耀哉は屋敷の奥へと戻っていき、二人は残されたが杏寿郎は「しかし驚いたぞ!真面目な君が鬼を連れた隊士を継子にするとは思わなかったぞ!」と素直な言葉にリィンは「…おれだって禰豆子が炭治郎を庇う姿を見なかったらあの行動はしなかったと思う…杏寿郎、一つ頼みが有るんだ」思う所を話した後に杏寿郎の目を見てそう伝えると杏寿郎も頷き「君の頼みだ!聞かせて貰おう!」と答えるとリィンは直ぐに口を開いた。
「…次の任務で炭治郎と禰豆子の事を見極めてほしい…おれはあの二人が戦う姿を一人でも多くの柱や隊士に見てほしいと思っている…勿論二人だけじゃなく炭治郎が信じた二人の事も…だから頼むこの通りだ」
リィンは杏寿郎に頭を下げて頼み込み、それを見た教授郎は直ぐに口を開いた。
「顔を上げてくれリィン!」
杏寿郎はそう促すとリィンは顔を上げ、それを見た彼は直ぐに口を開いた。
「お館様が許した以上二人の処分を求めるつもりは無い!あの少年の心掛けはとてもいい物だったからな!君の頼み二人を見極めるという物だが喜んで引き受けよう!」
杏寿郎は躊躇いなくそう告げ、リィンは直ぐに「ありがとう」と返すと二人は直ぐに産屋敷家からそれぞれの屋敷へと戻って行った。
次回は例のパワハラ会議とオリジナルエピソードとなります。
三人の修行についても日常回で明かすつもりです。