鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
前回の予告通りパワハラ会議とオリジナルエピソードです。
本来は人が入り込むことは叶わない次元の狭間とも言うべき場所に存在する場所―無惨と上弦の鬼からは無限城と呼ばれている場所で十二鬼月の一人―下弦の陸である
「!?(何処なんだここは?床が天井のようでありそれでいて壁が床の様でもある…一体どうなっている!?)」
釜鵺は続いて琵琶を持った女の鬼―
「(これはあの女の血鬼術か?あの女を中心に空間が歪んでいるように見える…少なくとも十二鬼月ではないにも関わらずこれ程までに強力な術を使える鬼が存在しているとは…一体ここは何なんだ?)」
釜鵺の疑問を余所に鳴女は琵琶を何度か鳴らすと、その度に炭治郎に倒された累を除く下弦の鬼が姿を見せ、釜鵺は考え込んだ。
「(十二鬼月の下弦のみが集められているとは…こんなことはこれまでに一度も無かった…下弦の伍はまだ来ていない…一体何が起こって―)」
何が起こっているという彼の思考は再び鳴り響いた琵琶の音に遮られ、彼も含めた下弦の鬼は全員、目の前の鳴女とは別の女の鬼が誰なのか判らずに困惑していたがその答えはすぐにわかる事となった。
「
途端に彼らは目の前にいるのが誰なのか理解した、その女の声は外見には似合わない凄まじい威圧感を持った男の声であり、彼らは命令通りに深々と頭を下げ、同時に凄まじい程の冷や汗を流していた。
「(無惨様だ…間違いなくそうだ…声が完全に同じだ…だが解らなかった…姿は勿論だが気配も以前とは違いすぎる!凄まじい程の擬態…)」
釜鵺は恐怖に震えて何も言えなくなっていたがそんな中下弦の鬼で唯一の女性の鬼である下弦の肆―
「貴様らのくだらない意思で物を言う事は許さぬ…私に聞かれた事のみに応えよ」
無惨は下弦の鬼が何も言わなくなるのを確認すると直ぐに本題に移った。
「下弦の伍―累が殺された…私が問いたいのはただ一つ…『何故下弦の鬼はそこまで弱いのか』だ…十二鬼月に数えられたことで満足する者も多いようだがそれは大きな間違いだ。より人を喰らい、強くなり、更に私の役に立つ為の始まりと言える…」
無惨は十二鬼月に対して何を求めているかを告げると更に続けた。
「ここ百年余り上弦の鬼は顔ぶれが変わっていない…それに加えて幾人もの柱を屠ってきた…だが下弦はどうだ?何度入れ替わったのか…最早数えるのも馬鹿らしく思えるほどだ…」
無惨の言葉には呆れと苛立ちが同じくらい込められており、それを聞いた釜鵺は「(そんな事をおれ達に言われても…)」と思った直後だった。
「そんな事をおれ達に言われても…何だ?言いたいことが有るなら言ってみろ」
途端に釜鵺はこれまで以上に震えあがった。
「!?(し…思考が読めると言うのか!?ま…まずい…!)」
「何がまずい?…まあ良い…私は最早十二鬼月は上弦だけで充分だと思っている…下弦は必要ないと」
無惨の怒りが込められた声に釜鵺は最早これまでかと諦めの境地に陥りかけた時だった。
「…だがどのような者であれお前たちが十二鬼月に選ばれたのは事実…故に一つ役目をやろう…」
怒りこそ込められていたがその言葉を聞いた彼らはまだ挽回の機会があると一筋の希望を感じた―しかし直後にこうなるのならば普通に殺される方がまだ良かったと強く恐怖する事となった。
「来るがいい…イシュメルガ」
無惨が告げたその名に対し下弦の鬼達は初めて聞く名であるにも関わらず無惨に感じたソレと良く似た恐怖を感じ、直後に現れた謎の機械に困惑した。
「(なんだアレは?機械か?いや…機械なのは間違い無いがこの禍々しい気配は何だ!?明らかに普通ではない!!)に…逃げ―」
釜鵺が逃げようと思った直後無惨がイシュメルガと呼んだソレから禍々しい影が現れ、腕の様な形を取ると釜鵺を掴み上げて持ち上げると無惨に『構ワナイノダナ?』と問いかけ、無惨は下弦の鬼に対し無情にも告げた。
「私からおまえ達に最後の命令だ…我が協力者…イシュメルガ復活の為の糧となれ」
その言葉を聞いたイシュメルガは肯定と捉えると釜鵺を少しずつ取り込み釜鵺は凄まじい悲鳴と僅かな血を残して絶命し、それを見た三つの傷を持った鬼、下弦の参―
「(ダメだ…思考は読まれる上に何を言ってもあのよくわからない機械に取り込まれて死ぬ…こんな死に方をするくらいなら鬼狩りに殺されるか日の光に焼かれる方がまだましだ…ここは逃げるしかない!!)」
病葉は瞬時に逃げ出したがそれを見た下弦の壱―
「あなた様の血をどうか私に分けてください!私は必ず血に順応しより強力な鬼となり鬼狩りを…柱を殺して見せます!」
轆轤は必死に叫んだがソレは悪手だった。
「何故私がお前の指図で血を分けなければならない?甚だ図々しい、身の程を弁えろ」
無惨にとって自分よりも遥かに格下の者から提案されるのは侮辱と言って良い物であり轆轤は必死に叫んだが無惨には通じず、無情にも「黙れ」と告げ、無惨はそのまま続けた。
「私は何も間違えない、故にわたしの言うことはすべて正しい、全ての決定権は私に有り私の言うことは絶対だ。お前に拒否する権利は無い…私が言ったこと全てが正しいのだ…お前は私に指図した…万死に値する」
その直後にイシュメルガが動き轆轤はこれまでと同じように助けを求めて叫んだが誰もそのような人物はおらず、取り込まれてしまい、やがて無惨は最後に残った一人―魘夢に目を向けると「最期に言い残す事は?」と轆轤にした問いと同じ問を投げかけたが魘夢は恍惚とした表情で―正に心の底からの喜びの表情で口を開いた。
「そうですね…わたしは夢見心地でございます…貴方様自身の手にかかることが無いのは残念でなりませんが…それでもわたしが糧となる事で貴方様のお役に立てるのが嬉しくてなりません…何より他の鬼の断末魔が聞けて心の底から楽しく、幸せだと感じました…わたしは人の不幸や苦しみを見るのは夢に見るほど大好きなのです…わたしを最後まで残してくれてありがとう…」
魘夢がそう言った直後、無惨は「下がれ、イシュメルガ」と告げ、イシュメルガを下がらせると即座に自身の血を魘夢に注ぎ込み今この時初めて笑みを見せた。
「気に入った。お前を糧にするのは止めてやる。その代わりに私の血をふんだんに分けてやろう。血の量に耐え切れずに死ぬかもしれないが順応できれば更なる力を得るだろう…私の役に立ちたいのならば柱を殺せ…それともしも花札の様な耳飾りを付けた鬼狩りを殺す事が出来ればもっと血を分けてやろう…」
無惨のその言葉を最後に琵琶の音が響き、無惨は無限城から月明かりの下へと出ていき、一人考え込んだ。
「(…今回の件は賭けでは有ったが下弦の鬼にあのような者がいたことは嬉しい誤算だった…)」
無惨がそう思った理由はイシュメルガ、そしてイシュメルガと共に現れたある男を信用していなかったためであるが、ある程度は利点がある事から、今回無惨は下弦の鬼をイシュメルガに取り込ませると言う手に乗ったという事情があった。しかしイシュメルガが復活を果たした際に少しでも自分が有利となるように力を制限させるために魘夢を残したと言うのもあり、ある程度は思い通りに進んだ事を喜ばしく思っており今後の事を考え始めたその時だった。
「…イシュメルガ様の復活の為の思念…成程…下弦の鬼の内の四人を糧にしたのですか…悪くはありません…この調子でいけばイシュメルガ様も予想よりも早く復活できるでしょう…」
途端に無惨の表情は不機嫌な物に逆戻りした。この声の主は取引した相手とはいえ今の無惨にとってこの男は興味深い物を提供してくれるがそれ以上に産屋敷家の人間とはまた違う方向性で気に入らなく同時に完全に信用できないと感じた相手だった。
「…何の用だ?アルベリヒ」
無惨の傍に姿を見せたのはイシュメルガと同じくリィン達と因縁がある一人―黒のアルベリヒだった。
「いえ…仮にも契約した仲ですし挨拶をしに来ただけなのですがね…」
アルベリヒは当たり前のようにそう呟き、無惨は忌々しいという感情を隠しきることができていなかったがそれでも確認のために口を開いた。
「…本当にイシュメルガの復活を果たせば太陽を克服するための力を渡すのだな?」
それを聞いたアルベリヒは頷くと「勿論ですよ…主の復活に協力してくださる以上約束は守ります…では私はこれで…」そう告げるなり直ぐに光に包まれて姿を消し、無惨は「…奴が提供する異世界の機械は興味深いがやはり手放しには信用できないな…」と得体の知れない協力者への警戒を強め「仮に私が奴らの思惑に乗るとしたら本当に追い詰められた時のみだろう…最も鬼狩りどもにそれができるとは思えんがな…」自身の能力から来るある種の自信を強めていた。
無惨が異世界の機械に興味を持っているのは公式の設定に無惨が好きなものに外国の機械と言う一文がありましたので今作ではアルベリヒが提供する異世界の機械にも興味を示しているという事にしました。次回は日常回となります。