鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
炭治郎達は食事を終わらせるなりすぐに杏寿郎に事情を話すと彼は良く通る明るい口調で答えた。
「成程!ヒノカミ神楽か!君の家に代々伝わる神楽の型で技が出せたのか!確かに興味深い話だ!だがすまないがおれには心当たりは無い!ヒノカミ神楽と言う物も初耳だ!よってこの話は終わりだな!」
杏寿郎にしては珍しいことに炭治郎の話をしっかりと聞いて答えたもののあっさりと悪意無しにこの後の話を終わらせようとしたため炭治郎は「え!?いやまだ話は終わっていないんですけど!?」と戸惑い、見かねたリィンがため息をつきつつもすぐに助け舟を出した。
「炭治郎が言うようにまだ話は終わっていない。今回の任務が終わった後で構わないから煉獄家にある資料を見せてもらえないか?おれの方でも色々と調べてはいるけど調査の段階は芳しくないんだ。だから頼む」
リィンの言葉を聞いた杏寿郎は直ぐに口を開いた。
「成程!そういう事か!そういう事ならば今回の任務が終わり次第すぐにでも資料を確認するとしよう!君と君の妹に対して思う所はあるがお館様が認められた以上おれが言うことは無い!だからその一件については安心すると良い!」
何処までも爽やかな様子に炭治郎は「(ちょっと変わってるけどリィン教官が言ったように悪い人じゃなさそうだな…)ありがとうございます、そのためにも頑張らせてもらいます!」と答え、傍で聞いていた善逸も「(この人裏表がないって言うか…炭治郎とはまた違った爽やかさだな…ちょっと暑苦しい感じだけど…)」と心の中で呟き、先ほどの炭治郎の言葉を聞いた杏寿郎は頷くと「うむ!やはりいい心がけだな!実際に話してみるとリィンが君を継子にしたのも頷ける。だが覚悟だけならばともかく今回の任務で君たちの活躍を見極めると言う目的もあるからしっかりと見させて貰うとしよう!そして任務終わったその時はおれの継子になると良い!三人纏めて面倒を見てあげよう!」と明後日の方向を見て言い放ち、それを聞いた炭治郎は「いやそもそもおれもうリィン教官の継子なんですけど!そして何処を見てるんですか!?」と盛大なツッコミを入れクロウは『時々話聞いてない時があるって聞いてたけどホントに話聞いてねぇなこれ…リィンが困るのも納得だな…』と苦笑いし、同じく聞いていたリィンは「まぁ継子にするかどうかはともかく…時々稽古を付けに来るのは構わないけど…」とやはり苦笑いしながら答え、それを聞いた善逸は「(えっ!?今のリィンさんの訓練も厳しいのにそこにまた一人柱が加わるとかおれ達死なないよね!?)」と愕然とし、いつの間にか目を覚ましていた伊之助は「おお!もう一人強いやつから稽古を受けられるのか!いいぜ!大道芸だ!」と言い放ちそれを聞いた善逸は「なんでお前は乗り気なんだよ!あとそれを言うなら大歓迎だろうが!おれは歓迎してねーけど!」と盛大にツッコミを入れ、それを聞いた杏寿郎はと言うと「うむ!元気なのは良いことだな!」と爽やかな表情で答え、それを聞いたクロウは『とんでもねぇ程のプラス思考だなホント…』と呆れたような表情でそう呟くなか杏寿郎は炎の呼吸、そして鬼殺隊の技の歴史を話し始めた。
「炎の呼吸は全集中の呼吸の中でも特に歴史が古い呼吸の一つだ!基本的な呼吸は炎・水・風・岩・雷が基本の呼吸だ、そもそもが全集中の呼吸の技ではない八葉を除いて他の呼吸はそれらから派生したもので例を挙げるならば霞は風の派生となっている!そしてこの中でも炎と水の剣士はどの時代でも必ず柱となっている!」
「因みにおれの主観だけど伊之助の獣の呼吸は風の呼吸に一番近いな」
杏寿郎の説明にリィンはそう付け加え、それを聞いた炭治郎は「(話を聞いてくれないのはちょっとあれだけどためになる話ではあるな…)」と心の中で呟いた直後再び杏寿郎が口を開いた。
「ところで溝口少年!君の刀の色は何色だ!」
突然の質問に炭治郎は驚いたがすぐに「いや溝口って誰ですか!?おれは竈門ですよ!後刀の色は黒です!」と名前の間違いに突っ込みつつ答えると杏寿郎は「成程、黒刀か!それはきついな!」と笑いながら答え、炭治郎は「あ…やっぱりきついんですね」と答え杏寿郎はその理由を続けた。
「黒刀の剣士が柱になったのを見たことは勿論だが聞いたことも無い!それに加えどの系統を極めればいいのかも不明だと聞く!」
杏寿郎の言葉に炭治郎は「そうですか…」と俯きかけたがすぐに「とは言え君は鬼殺隊に入って一年足らずであるにも関わらず十二鬼月の討伐を成し遂げた!それも黒刀でだ!その点で言えば君は今の鬼殺隊の中では最も柱に近い所にいるとも言える!相手に油断が有ったとしてもそれは変えようのない事実だ!自信を持つといい!」と答え、それを聞いたリィンも頷くと「杏寿郎の言う通りだ。炭治郎は決して弱くない、間違いなく強くなれている。課題もいくつかあるけどそれはこれからだ。それに炭治郎だけじゃない、善逸と伊之助にも同じことが言えるよ」と炭治郎だけでなく、善逸と伊之助の二人にも目を向けながら告げ、それを聞いた杏寿郎は「うむ!そこにおれの訓練も加われば盤石の物となるだろう!もう安心だ!」と答えそれを聞いたクロウは『やっぱり面倒見は良いな…話聞いてねー事も多いけど…』と呟いた直後―ガタン―と言う音を立てながら列車が動き出し、伊之助は窓から身を乗り出すと「うおおおお!すげぇ速ぇぇじゃねぇか!」と叫び、それを見た善逸は「バカ!危ないだろ!何をやってんだ!」と伊之助を抑え込み伊之助は「放せ!おれ外に出て競争するんだよ!」と言い放ち善逸は「死ぬ気かよ!馬鹿にもほどがあるわ!」と言い放った直後に何でもないように杏寿郎が口を開いた。
「危険だぞ!走り込みなら任務の後に付き合おう!それよりも動けるように備えておくんだ!何しろいつ鬼が出て来るか判らないんだ!」
「…え?」
杏寿郎の言葉にリィンを除いた三人は硬直し善逸が困惑の声を上げ、その声を聴いたリィンは「そう言えばこの列車自体に鬼が出るってことを伝えるの忘れてたな…」とぼやき、それを聞いたクロウは『やっぱお前時々抜けてるとこあるよな…』と苦笑し直後善逸が叫びだした。
「お二人とも嘘ですよね!?鬼でるんですかこの汽車!?」
「出る!」
善逸の叫びに対し杏寿郎は頷きながら答え、善逸はさらに絶望の叫びをあげた。
「出んのかい!嫌ァーーーーッ!!鬼の所に移動してるんじゃなくてここに出るとか嫌ァーーーッ!!やっぱりおれ降りる!!」
「ごめん…事前に伝えておけばよかったな…」
リィンはそんな善逸に両手を合わせながら謝罪し、杏寿郎はすぐに今回の任務の経緯を説明を始めた。
「短期間のうちにこの汽車で四十人以上の人が行方不明となっている!数名の剣士と隠が調査に送り込まれたが連絡役として駅に残っていた二人の隠を除き全員消息を絶った!」
「まあそう言う事情で柱であるおれと杏寿郎…それからおれの弟子である三人にも出動要請があったっていうわけだ…鬼の能力によっては列車にいる人たちが殺されそうだしいくら柱でも難しいから人手が必要だったというわけだ」
杏寿郎の説明にリィンは付け加えるように説明し、それを聞いた善逸が「わかりやすい説明ありがとうございます!!次の駅で降ります!!」と泣きながら叫んだ直後だった。
「切符…拝見…いたします…」
この列車の車掌が俯いた心ここにあらずと言う言葉が相応しい姿で現れ炭治郎はすぐに「ああ…切符が必要でしたね…」と言いながら切符を取り出したがリィンは「?(…微かに鬼の気配が…?否、気のせいか?鬼が潜んでいる列車なら多少は気配が残っていてもおかしくはなさそうだけど…)」と僅かに感じた鬼の気配に戸惑いつつも切符を差し出し、善逸も「おりるううううぅぅぅ」と泣きながらも切符を差し出し、それを見たクロウは『泣いてんのに切符はちゃんと出せるんだな…(にしてもこの車掌まるで何日も寝てないような…この世界の駅勤めはどんだけブラック企業なんだよ…)』と呆れ半分、感心半分で呟きつつ車掌の違和感に気づいた直後「拝見…しました…」と言う車掌の声が聞こえた直後だった一切の前触れも無しに切符を持っていた五人を含めた乗客全員が眠り込みそれを見たクロウは困惑し、自分を認識できる四人全員に呼びかけた。
『!お…おい!お前らどうしたんだよ!善逸!伊之助!炭治郎!リィン!』
しかし彼らが目を覚ます様子は一切なくクロウは考え込むと即座に答えを出した。
『明らかにおかしい…炭治郎以外の三人は兎も角おれが精神に間借りしてる以上呼びかけた時点で炭治郎には何か反応があるはずなのにそれが無い…!つまりコイツは血鬼術って事か!』
今の状況が鬼の仕業だとわかったクロウは無理やりにでも炭治郎を起こそうと精神に干渉しようとしたがすぐに弾かれてしまった。
『クソ!炭治郎の精神に干渉できねぇ!つまり相手の血鬼術はただ眠らせるんじゃなく精神に働きかける術か!空間に干渉できる鬼がいた以上あり得ない事じゃねぇけどそうだとしたら何とかして中の奴らが破るか鬼を倒すしか無いってことじゃねぇか…』
クロウが自分の手でどうにかできない事を歯がゆく感じ顔をしかめていた頃列車の上では一人の鬼―魘夢が薄ら笑いを浮かべていた。
「フフフ…夢を見ながら死ねるなんて幸せだよね…」
魘夢は邪悪な笑みを一切隠さずにそう呟いた。