鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
―???―
「!ここは…いったい…?」
クロウが憤りを覚えてるのと殆ど同じタイミングで炭治郎は困惑して辺りを見回した。周囲は木が生い茂り薄暗いが隙間から降り注ぐ木漏れ日から明らかに昼間であり先ほどまで列車に乗っていた事から炭治郎は警戒してより注意深く周囲を見回した。
「(さっきまでは確かに列車にいたはず…善逸と伊之助…それにリィン教官に煉獄さんの匂いも感じない…!そうだ!)クロウ!聞こえているなら返事をしてくれ!クロウ!」
リィン達全員の気配を感じ取る事が出来なかった炭治郎はすぐに自分の傍にいる筈の人物であるクロウに呼びかけたがどう言う訳か姿を見せることも無く炭治郎は思考を巡らせた。
「反応が無い…(聞こえていないのか答えられないのかは分からないけどクロウも動ける状況じゃないみたいだ…それから…)」
炭治郎はすぐに目を閉じ、騎神の力を数秒間だけ纏うと直ぐにそれを収め再び考え込んだ。
「(騎神の力は使える…つまりクロウとのつながりは切れていない…それでも姿を見せないって事はこれが血鬼術…今おれがいる場所は鬼に見せられた物だってことになるな…考えていても仕方ない先に進もう…)」
炭治郎はクロウが姿を見せる事が出来ない理由が鬼の仕業だと気づくと直ぐに足を進めていたが暫くしてある建物が目に入りつい足を止めた。
「!あれは…おれの家?」
自身の家が目に入った炭治郎は見慣れた建物とは言え血鬼術による幻だと理解していたこともあり慎重に歩み寄ろうとしたその時だった。
「あ!兄ちゃんお帰り!」
「炭売れた?」
その声を聞いた炭治郎は自然と涙が止めどなくあふれ出した。これが夢だという事は心の片隅で理解できていた。しかし殺されてしまったことでもう二度と見ることは無いと思っていた家族の姿を見せられたことで炭治郎はこれが夢だという事実を無意識に心の奥底へと沈めてしまい、それと同時に炭治郎の姿は鬼殺隊の物からかつてこの家で過ごしていた頃の物に戻っていたがそれに構わず駆け寄ってきた二人―花子と茂を泣きながら抱きしめるとただひたすら「ごめんな、ごめん、ごめん!!」と泣きながら謝り続けた。
―善逸の夢―
一方炭治郎が夢に捕らわれたのと同じように善逸も捕らわれていた。
「こっち!こっちだよ禰豆子ちゃん!!こっちの桃の方が美味しいから!シロツメクサもたくさん咲いてるよ!」
…もっとも彼の場合は自身の願望から生み出された禰豆子と遊ぶのに夢中で考える気も無いと言う方が正しいかもしれないが…
「シロツメクサで花の輪っか作ってあげるよ!おれこう見えてもうまく作れるんだ!」
「うん!たくさん作ってね!…ってあれ?」
ふと善逸の妄想から生み出された禰豆子が立ち止まり、善逸に対して「ねぇあの建物は何?」とある一点を指をさしながら声をかけ、現に禰豆子が示した場所には確かに建物がありその建物は日本と言うよりは西洋のそれに近い作りでそれを聞いた善逸はすぐに「ああ…あの建物何だかよくわからないんだよね…ずっと昔からあるような感じなんだけどどうやっても入口が開かなくてさ…」と呟いた。ちなみに善逸が創り出した想像の禰豆子がそう疑問を口にするという事は善逸も気にしていると言う事であり、同時に善逸自身は知り得ない事だがその建物はゼムリア大陸において『精霊窟』と呼ばれる種類の遺跡の入口そのものでありその中にいる善逸の精神に宿るソレは善逸の様子を悟ると『マッタク…境遇ヲ考エレバ仕方ナイ事カモシレヌガコウモ容易ク敵ノ術中ニ捕ラワレルトハナ…』と呆れたようにぼやいていた。
―伊之助の夢―
一方善逸が夢の中で思う存分禰豆子と遊んでいるように伊之助は何故か獣人の様な姿になった炭治郎、善逸、禰豆子を引き連れ洞窟の入口に立っていた。
「よおし!揃っているな子分ども!おれ達の目的はこの洞窟の主を倒すことだ!」
伊之助の言葉に狸の特徴が持った炭治郎もといポン治郎は「わかりましたでポンポコ!洞窟の奥に潜む主打倒を目指して頑張るでポンポコ!」と叫び、鼠の特徴を持った善逸もといチュウ逸も「いつでも準備はできてるでチュー」と妙に怪しい笑みを浮かべながら答えそれを見た伊之助は満足げに頷くと「よし!いい意気込みじゃねぇか!子分その一、その二!お前もついて来い子分その三!!」と直ぐに兎の特徴が現れた禰豆子に声をかけたが禰豆子は何かに気づくと「あれあれ」と言うように洞窟の入口の上を示しそれを見た伊之助が「一体どうした!」と叫んだ直後、突如禰豆子が示した場所を中心に紅葉の葉がつむじ風の様に渦を巻き、それが晴れた直後そこには狐の特徴が現れ、禍々しい見た目の仮面を付けたリィンが立っていたがただの狐と違いその尾の数は九本―つまりは九尾でありそれを見た伊之助は「またお前か!九尾仙人!」と叫び、それを聞いたリィンーもとい九尾仙人は仮面の下で笑みを浮かべると「またお前かはこちらのセリフだが…まあいい…歓迎しよう森の王とその手下よ…この洞窟の奥にいる主を倒すことができたのならば私が直々に相手をしてやろう…待っているぞ…」と悪役の様なセリフを残して姿を消し、それを見た伊之助はよりやる気を滾らせると「よし!行くぞお前ら!今日こそおれ達の力をあいつに認めさせてやるぞ!」と宣言しそれを聞いた三人も手を突き上げやる気を見せ、そのままの勢いで洞窟へと踏み込んで行った。因みにリィンのみ語尾が普通なのは伊之助自身がリィンの実力を認めていることが影響していたりする。
―リィンの夢―
「リィン…リィン!」
「!ここは…」
リィンは誰かの呼びかけでハッとした表情になると辺りを見回した。そこは何処かの庭園のような場所で何かのパーティーが行われており辺りを見回した。
「確かおれは列車に乗って…それからは…」
リィンは頭を抱えながらそう呟くとリィンに声をかけた人物が呆れた様子で続けた。
「列車って…まだ疲れてるの?まあここの所色々あったから疲れているのも無理はないと思うけど…」
彼の言葉を聞いたリィンはぼんやりした状態だったがすぐに声の主が誰なのか気づき、呆然とした表情になった。
「…エリオット…か?」
リィンに声を掛けた人物―エリオットは頷いた。
「そうだよ…もういつまで寝ぼけてるの?今日はオリヴァルト殿下とシェラザードさんの結婚式なんだからシャキッとしなよ」
苦笑いしながら告げられたエリオットの言葉にリィンは「!…結婚式?オリヴァルト殿下とシェラザードさんの?」と言いながら辺りを見回し、今自分がいる場所がカレル離宮の庭だと気づき「…そう言えば…そうだったな」と何処か浮かない表情ながらそう呟くと式場へと足を進めた。
おまけ
キメツ学園での設定その三
クロウ・アームブラスト
リィンと同郷の青年。神出鬼没な人物であり、気が付いたらいつの間にかいる。普段は遊園地のヒーローショーの敵役で稼いでいるが競馬などのギャンブルも嗜んでいる(勝率は低い)。炭治郎の事を気にかけており進んで相談に乗るなどしているがまれに見せるダメ人間ぶりに呆れられることもしばしば。富岡先生と声がそっくりでありリィンを含めた知り合い全員からネタにされている。
正体はリィンと同じくアルベリヒを追ってきたエージェントでありギャンブル好きも素ではあるが実際はかなりの策士でもある。