鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
今年初投稿です。
今年もよろしくお願いします。
『あー!クソッ!何も出来ねーのがもどかしすぎてどうにかなっちまいそうだぜこん畜生!!』
無限列車の一角でクロウは何もできない自分に対するやり場のない怒りから悪態をついていた。現在炭治郎達が眠ってからそれなりに時間が経ち、リィンを除いた四人に鬼の協力者と思われる四人の人物がロープでつながった状態となっておりその一部始終をただ指を咥えて見る事しかできなかった状況もより自分に対する怒りを強めていたが一通り悪態をついたことで冷静になったことから状況の分析を再開した。
『リィンに繋がってねぇのは単に協力者が他にいないか、いたとしても他にやる事があって動けないかのどちらかだろうな…とにかくどうするか…偵察でもするべきか?』
クロウがそう考えた直後だった。突如一切の前触れも無く眠ったままの杏寿郎が動き、彼自身に繋がっていた娘の首を窒息死しないギリギリの力で絞め上げ、それを見たクロウは唖然として『オイオイまじかよ一体こいつらの夢の中で何が起こってるんだよ。けどこうなっちまった以上下手に離れる訳にもいかねぇよな…何とかして血鬼術を破れればどうにかできるんだろうけど…』と考え出した直後だった―カタカタ―と言う音が禰豆子が入った箱から聞こえだし、程なくして禰豆子が転がり出て来てひょこりと起き上がり、それを見たクロウは『禰豆子!目を覚ましたのか!』と声をかけ、禰豆子もクロウの存在に気づくと片手を上げて「よっ!」と言うように挨拶し、それとほぼ同時に夢の中で何かがあったのか炭治郎が魘されだしそれを見たクロウは『夢の中で何かあったのか?いやそれを考えてる余裕は無ぇか…先ずは炭治郎をどうにかして起こすこととそれからリィンは仮にも剣聖だし観の眼もあるから比較的状況に気づきやすいはずだからな…それに禰豆子が起きたならこの手が使えるはず一先ず二人を起こすことに賭けて見るか…』そう言いながらクロウは禰豆子に向き直ると『禰豆子、頼みがあるんだ。お前の血鬼術で炭治郎とリィンを燃やしてみてくれ。そうすれば二人とも目を覚ますかもしれない…頼めるか?』と真剣な表情で頼み、それを聞いた禰豆子は得意げに頷くと直ぐに自身の血鬼術で二人を―正確には二人に賭けられた術の一部のみを―燃やし、それを見たクロウは『頼むから効いてくれよ…』と真剣な表情で二人を見つめていた。
―リィンの夢―
時は現実世界で禰豆子が目を覚ます少し前まで遡る。リィンは自身の夢の中で結婚式に出席しており、現在はⅦ組の面々と思い思いに話していた。
「にしてもあんたが寝ぼけるなんて珍しいこともあるのね。あたし達皆戦後の事後処理に追われていて休む暇も殆ど無かったから仕方ない所は有るかもしれないけど…」
そう言うようにリィンに対して何処か呆れながらも疲れているのも理解できるとフォローする様子を見せているのはⅦ組の一人であるアリサ・ラインフォルトでありそれを聞いたリィンは苦笑いしながら「いや悪かったって…ちょっと変な夢を見たこともあってどうにも調子が出なくてさ」とごまかしたが内心穏やかではなかった。
「(我ながら皮肉な嘘だな…夢を見たんじゃなく今夢を見ているんだ…けどそれを話す事はできない…この夢が鬼の仕業である以上下手に夢の中の人間におれが夢を見てることを気づいたって悟られたりしたら何が起こるか判らない…まずはどうにかしてここから離れるべきだよな…)」
その理由はリィン自身今見ている風景が夢だという事に気づいていた為だった。勿論パッと見は現実と変わらない風景であり、リィン自身も一度は現実だと騙されかけた。しかしそれでもリィンはこの光景が夢だと確信できた。その理由はエレボニア帝国以外―リベール王国やクロスベル自治州に住む仲間が連れて来た面々がリィンと面識がある人物以外誰一人としていないというのが大きかった。事実彼らの中にも大戦の裏で活躍したものは多かったことやそもそも新郎新婦であるオリヴァルトとシェラザード双方、若しくはどちらかと面識がある人物が招待されていないのはおかしいというのがすぐにわかった。勿論一人二人なら急な用事で来れなかった可能性も高いが全員と言うのは流石に不自然であり、その理由もリィンは簡単に見抜いていた。
「(恐らくこの血鬼術で再現できる場所や人間は夢を見ている人物…つまりおれの記憶や認識に左右されるという事になる…おれと面識のない人が誰一人としていないのは間違いなくそれが原因だろう…だとしたら厄介だ、もしもこの夢を見せている鬼がおれの知る強者を操れたとしたら…いやその可能性は恐らく低いか…)」
リィンはそう予測し、自身が知る強者であるアルゼイド子爵にオーレリア分校長そして規格外の権化とも言えるマクバーンが敵として襲いかかってくる可能性を考えたが様々な要因からすぐにその可能性は低いと気づいた。
「(血鬼術の発動のトリガーは恐らくあの切符だ…あの車掌が鬼の可能性は気配からして低い、せいぜい協力者程度だろう…直接術をかけたり時間をかけた場合は別かもしれないが間接的であることやかけた人数が多い以上間違いなく綻びがあるはずだ)」
リィンはこの術には間違いなく欠点があるという事に気づくとそれを探るために席を立った。
「どうした?リィン?」
そうリィンに問いかけたのはユーシスで彼の顔を見たリィンは一瞬目を伏せると「少し見て回ろうと思ったんだ席を外すよ」と答え、ユーシスは何かを感じ取ったのか怪訝な表情になったが「そうか…気になる事があるならすぐに片付けると良い、それからいつでも頼ってくれ」と声をかけリィンは驚いた表情になったがすぐに目を逸らしつつも「…ありがとう…」と告げたがすぐに「…ごめん…」と小声で聞こえないように付け加えると直ぐに席から離れて行きその姿を見たエマは考え込むと「…気のせいでしょうか?今日のリィンさん様子がおかしくありませんでしたか?心ここにあらずと言いますか…」そう呟き、それを聞いたマキアスも考え込むと「確かに何処か妙な感じはしたが…アリサが言うように疲れているんじゃないか?ここの所色々あっただろう?戦後の処理で休む暇も無かったからな」と返答したが「ん…悪いけどそれは無いと思う」とマキアスの考えをフィーが両断しそれを聞いたラウラも頷くと「確かにフィーが言うようにそれはなさそうだな…普段のリィンならばあのようになる事はまず無いだろうが…私達に頼らない…と言うより頼れない状態の可能性が高そうだが…」そう考えこみ、それを聞いたエリオットは「あ…そう言えば気のせいかもしれないけどさっきごめんって言ってた気がするけど…それって頼れないって事なのかな…だから謝ったのかも…」と呟き、それを聞いたアリサは立ち上がると「ならすぐにでもリィンを追いましょう!それから―「いや気持ちはわかるがだめだ」―なんでよ!」そう言いながらリィンを追おうとしたが意外にもガイウスが止め、それを聞いたサラは「以外ねガイウスが止めるなんて…どうしてそう思ったのかしら?」と問いかけガイウスは考え込むと慎重に答えた。
「ああ…実はリィンから妙な風を感じたんだ…まるであの戦いが終わっていないような…或いは同じ時間を共有しつつも全く違う時間にいるような感覚がしたんだ…だからおれ達は関われない…そう思ったんだ(まるで夢のような感覚だが…)」
ガイウスはそう言いつつも確証が持てないような様子だったが彼なりの考えを語り、それを聞いたサラは頷くと「そうかもしれないわね…今は信じましょうリィンの事をね」とどこか悲し気な笑顔を浮かべながらリィンが去って行った方向を見つめ、アリサは「…わかりました…」と答えサラと同じようにリィンが去って行った方向を見送っていた。
一方リィンは二代目Ⅶ組の席に歩み寄っていた。
「あ!リィンだ!アーちゃん!リィンが来たよー!」
そんなリィンに気づいたのはクロウと同じく初代Ⅶ組の席にいなかったミリアムでありあちこち話して回っていたようだった。因みにもう一人いなかったクロウは恐らくはジョルジュ共々アンゼリカやトワに捕まっているのだろう。
「そんなに騒がなくても聞こえてます」
そう言いながら呆れたような表情で歩み寄ってきたのは、彼女の妹であるアルティナであり、リィンはすぐに「二人とも楽しんでるみたいで良かったよ」と声をかけた。ミリアムはすぐに「楽しんでるにきまってるでしょー」と答え、それを見たアルティナは「仮にも姉なんですから結婚式の日くらいは落ち着いて欲しいですけど…」と、呆れたようにぼやいた。それを聞いた二代目Ⅶ組の一人であるユウナは、「まあミリアムちゃんらしいとは思うけど…それにもしもミリアムちゃんが急に真面目に勉強とかしだしたら、それはそれで怖い気もするし…」と苦笑い気味に呟いた。それを聞いたアッシュは、「クハハ、そいつぁちげぇねぇな」と愉快そうに返した。それを聞いたミリアムはむっとした表情になると、「もー!ひどいよ二人とも!ボクだって本気になれば勉強でいい成績残せるってば!」と駄々をこねた。「でしたら後日私と勝負しませんか?」と、揶揄うように声をかけたのはミュゼであり、それを聞いたミリアムは、「い…いやあ…流石のボクでもミュゼには勝てないかなあ…」と遠い目でごまかした。それを見たクルトはため息をつくと、「できない事をできるっていう物じゃないだろ…」と容赦なく言い放ち、それを聞いたミリアムは、「あー!クルトまでそんなこと言うの!?」と言い返した。それを見たリィンは「ははは」と思わず笑ってしまい、ミリアムはすぐに「リィンまで!」と返したが、リィンは直ぐに「違うよ…ミリアムの事を笑ったんじゃないんだ。ただ平和だなって思ったんだ」と答えた。その場にいた全員が顔を見合わせると、「確かにそうかもしれませんね」と最初にアルティナが口を開き、ユウナも「うん…戦争だったって言うのもあるけど、こうやって笑って話したの何だか久しぶりかも…」としみじみした様子で呟いた。クルトも「まだ解決していないこともあるにはあるが…確かにこんな当たり前の光景も戻ってきたんだな…」と答え、アッシュも「ハッ!何当たり前のことを言ってんだよ」と言い放ったが、いつもと比べて柔らかい口調だった。ミュゼも「そうですね…平和なのは良いことだと思います」と、ミュゼにしては珍しくしみじみしていたが、すぐにリィンの腕に抱き着くと、「ところで結婚式が終わった後、私とリィン教官の二人でお出かけしませんか?」と何時ものミュゼ節を披露した直後だった。直後、リィンは足元から妙な熱さを感じハッとした表情になると、直ぐに口を開いた。
「!(この感じは!)すまないミュゼ!」
「え?きゃあ!」
リィンはミュゼに謝罪すると即座にミュゼを突き飛ばして自分から遠ざけ、その様子を見てアルティナ達は驚いていたがすぐにリィンの行動とはまた別の驚愕がその場にいた全員を襲う事となった。リィンがミュゼを突き飛ばした直後何の前触れも無しにリィンの全身が炎に包まれ、ミリアム以外のその場にいた全員が悲鳴を上げたがリィンだけは冷静だった。
「(熱いけど悪い感じはしない!この炎は間違いない!炭治郎から聞いていた禰豆子の血鬼術か!)」
炭治郎から禰豆子の血鬼術について聞かされていたリィンはこの炎が禰豆子の手によるものだと悟ると呼吸を落ち着かせ、やがてその炎が収まるとリィンの服装は耀弥から提供された鬼殺隊の隊服に変わっていた。
「…リィンさん…その服は…」
普段冷静なアルティナですら動揺を隠せていなかったが逆にミリアムだけは珍しく落ち着いた様子で口を開いた。
「…行くんだね…リィン」
ミリアムの問いにリィンは頷くと、「今のおれにはやる事があるからな…みんな…久しぶりに顔を見れて嬉しかったよ…」そう口にした。最後の一言は悲しげだったが、何処か嬉しそうな様子でもあった。それを聞いたユウナは、「やる事って…また一人で何かするつもりなんですか!?」と声を荒げて言い返した。しかしリィンは首を横に振ると、「…違うよ…ただおれはこの光景を…」(夢で終わらせたくないってだけだから)最後の言葉は口に出さなかったが、リィンの表情を見たミュゼだけはその真実に気づいていた。
「…そういう事でしたか…確かにそういう事でしたら私達に出来る事はありませんね…」
ミュゼの言葉を聞いたリィンは頷くと何も言わずに背を向けて去って行き、最初から事情を悟っていたミリアムだけは「頑張ってね…リィン(きっとみんなにもまた会えるから…)」と見送りクルトはそれを見て叫んだ「待て!どうしてリィン教官を止めないんだ!?すぐにでも付いて行った方が良いだろう!?」と叫んだがそれにアッシュが待ったをかけた。
「無駄だろあの目はやるべきことをしに行くときの目だ…それに…死ぬつもりは無いみたいだぜ…」
アッシュも何かを悟り、クルトを諌めるとそれを聞いたクルトは戸惑いながらも「…わかった…死にに行くときの目じゃないだけ良しとするさ…」と答えアルティナはリィンが去って行った方向を見て「リィンさん…信じていますから…」とその背を見送っていた。