鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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悪夢を終わらせるために

 

「伊之助!この汽車全体が鬼と同化している!眠っている人たちを守ってくれ!」

 

 炭治郎の叫びを聞いた伊之助は立ち止まると「やはりおれの読み通りだったわけだ…おれが親分として申し分なかったというわけだな!!」そう言うとすぐに列車の屋根を破壊して車内に戻り、それを見たリィンは頷くと「先ずは乗客を守りながら杏寿郎と合流する。伊之助が起きたという事は残った二人も目覚めてるはずだ。急ぐぞ!」とすぐに指示を出し、それを聞いた炭治郎は「わかりました!」と答えるとリィンについて杏寿郎と合流するために車内に戻ると二人で魘夢の身体の一部でもある肉塊に手当たり次第に攻撃を仕掛けながら自分たちが眠らされた車両を目指して進んでいたがリィンはかなり手際が良く、横目でそれを見た炭治郎は内心舌を巻いていた。

 

「(リィン教官…やっぱり凄い…おれも負けてられない!)」

 

 炭治郎がリィンの期待に応えようと気合を入れなおしたその時、―ドォンーと言う凄まじい音と共に列車に凄まじい衝撃が走り、不意を突かれた炭治郎はバランスを崩してしまい、それに気づいたリィンはすぐに炭治郎の手を掴み転ぶのを防いだ。

 

「あ…ありがとうございます!」

 

 炭治郎はすぐにリィンに礼を言うと体勢を立て直し、それを聞いたリィンも「気にしなくていい、困った時はお互い様だ。それより来るぞ」炭治郎の礼に応えつつ先の車両を見据え、炭治郎は何が来るのかと疑問に思ったが程なくして答えが出た。

 

「竈門少年!リィンも無事なようで何よりだ!」

 

 そう言いながら姿を見せたのは二人が合流しようとしていた煉獄杏寿郎その人であり彼の姿を見た炭治郎は「煉獄さん!目を覚まされたんですね!」と口にし、杏寿郎は「うむ!君の妹のおかげだ!」と返したがすぐに本題に移った。

 

「とは言え状況が状況だ。ここに来るまでかなり細かく斬撃を入れて来たので鬼も再生に時間がかかるだろうが手短に話す!この汽車は八両編成だおれは後方五両を守る!残りの三両は黄色い少年と竈門妹が守る!君と猪頭少年はリィンと共にその三両の状態に注意しつつ鬼の頸を探せ!」

 

 杏寿郎の指示に炭治郎は困惑し「く…頸ですか!?でもこの鬼は―」頸が何処にも無いと続けようとしたがリィンが引き取るように続けた。

 

「いやどんな姿になっても鬼である以上弱点は何処かにあるはずだ。クロウが今炭治郎の傍から離れているのもそれが理由だ。それに炭治郎と伊之助なら弱点を探れるのは間違いない。けどさっきの指示だけど一つだけ変えさせてもらう」

 

「む?何か変えねばならない点が有っただろうか?」

 

 リィンの言葉に杏寿郎はそう問い返しそれにリィンは直ぐに答えた。

 

「後方五両を守るのは杏寿郎だけじゃない。五両を守るのはおれと杏寿郎の二人だ」

 

 それを聞いた炭治郎は「え!?リィン教官は来られないんですか!?」と困惑したがリィンはすぐに理由を答えた。

 

「あの魘夢と名乗った十二鬼月の実力は一度戦ってわかった。あの能力は確かに厄介だけど対処方法さえ間違えなければ今の炭治郎と伊之助なら十分に倒せる相手だ。だからおれは杏寿郎と二人で五両を守ることで不測の事態が起こった場合の為に体力を少しでも残しておく…何も起こらないに越したことは無いけど万が一の為にもそうするべきだ…だから頼む」

 

 この時炭治郎ははっきりと気づいた。リィンは自分達なら出来ると信じて託してくれたのだと―だからこそしっかりと「わかりました!魘夢はおれ達が倒します!」と力強く宣言し、それを聞いたリィンは「よし後は任せた。行くぞ杏寿郎」と炭治郎と杏寿郎の二人にそれぞれ声をかけると「ではともに行くとしよう!」と杏寿郎も力強く宣言し直後二人は凄まじい速さで駆け抜けて行き炭治郎は呆然とした。

 

「(やっぱり二人とも凄い速さだ…リィン教官はおれ達の成長のために敢えて力を抑えて戦っているのは知ってたけど…煉獄さんも凄い…って感心してる場合じゃない!すぐにでも動かないと!)」

 

 二人の身のこなしを見た炭治郎はつい呆然としてしまったがすぐに踵を返すと二人とは逆の方向へと向かって行き、対する二人は五両の中心で立ち止まり互いに刀を抜きつつ背中合わせに立つと杏寿郎が口を開いた。

 

「しかしこのような事態になるとは!柱として不甲斐ない思いだ」

 

 杏寿郎の言葉を聞いたリィンはそれを聞くと「それこそ穴が有ったら入りたい…そんな気分か?」と冗談めかして問いかけながら再生を始めていた魘夢の身体を斬り、それを聞いた杏寿郎は「確かにそれもある!だが同時に自分の見る目の無さも不甲斐なく感じている!竈門少年の妹の事だが―」と禰豆子の事について何かを伝えようとしたがリィンはすぐに杏寿郎の言葉を遮った。

 

「こういう時にそんな話をするのは縁起が悪い。おれ達の世界で言う所の死亡フラグになるぞ…何よりその言葉を告げるべき相手はおれじゃなくて炭治郎だろ」

 

 リィンの呆れたような、だがごもっともな言葉を聞いた杏寿郎は「そうだな!確かに縁起が悪い!」と言いながらリィンと同じく再生を始めた魘夢の身体に攻撃しつつ「ならばその言葉を伝えるためにも生き残ろう!背中は預けるぞリィン!」と伝えリィンも「(それはそれで死亡フラグの様な気もするけど…)ああ、こちらこそだ背中は任せるぞ!杏寿郎!」と答え、二人は同時に駆け出し魘夢の身体に攻撃を開始した。

 

 一方炭治郎も魘夢から乗客を守りつつ先頭車両へと突き進む中先頭車両の方向からクロウが姿を見せた。

 

『お!合流出来て良かったぜ!』

 

 そう言いながら姿を見せたクロウに炭治郎は「クロウ!鬼の弱点は!?」と問いかけクロウはニヤリと笑うと『ああ!ばっちり見つけてるぜ!おれだけじゃなく上の伊之助もな!』と答え、それを聞いた炭治郎は驚きながらも「え!?伊之助も上にいるのか!?」と驚いたがそれに応えるように上の方から「ああ!しっかりいるぜ!ギョロギョロ目ん玉に命令されたんだよ!鬼の頸を探せってな!すげぇ腹立った!けどな…なんか凄かった!あいつがリィンと同格だってのも納得だぜクソ!」と悪態をつきながらも伊之助が答え、それを聞いた炭治郎はすぐにリィンからの指示を伝えた。

 

「そうだ!伊之助!リィン教官からの指示だけどリィン教官は煉獄さんと一緒に後方五両守るからおれと伊之助で鬼を倒すようにって!」

 

 炭治郎は叫ぶようにそう伝えると待ってましたとばかりにクロウが『おっと!その事だけど鬼の頸は先頭車両の床下だ!ただ近くに運転手がいるから妨害に気を付けろよ!』と伝えそれを聞いた伊之助も「タロウが言ってることは確かだ!おれも全力の漆ノ型で見つけたぜ!前の方がとにかく気色悪いぜ!!」と答え炭治郎は肉塊を斬りつけながら「石炭がある辺りだな?」と聞き返し、伊之助とクロウがそれぞれ「そうだ!」『ああ!』と肯定し、炭治郎は「わかった!それじゃあ先頭車両の近くについたら伊之助は上からおれは車両の入口から二人同時に踏み込もう!合図はクロウに任せる!クロウが合図したら同時にだ!」と作戦を告げ伊之助は「わかったぜ!」と応え、クロウも『了解だ!』と互いに作戦を了承し先頭車両の前に辿り着くとすぐにクロウが先頭車両を覗き込むと程なくして『今だ!』と叫びそれを聞いた二人はすぐに突入した。

 

「ここに鬼の頸が有るんだろう!おれ様にはお見通しだぜ!」

 

 伊之助は突入するのと殆ど同時にそう叫び、それを聞いて反射的に振り向いた運転手は伊之助の大声とその異様な姿を目にして「な…何なんだお前は!?」と驚きと困惑が混ざり合ったような叫びをあげたが運転手は伊之助の存在に気を取られるあまり同時に突入した炭治郎の存在に気づかなかった。

 

『念のためだ!運転手を気絶させろ!』

 

 クロウのアドバイスを聞いた炭治郎は体制を低くしつつ掌底の構えを取ると「八葉一刀流・無手の型・破甲拳!」そのまま不意を突き手加減した破甲拳で運転手の体制を崩すと続けて流れるような動きで首に手刀を食らわせて気絶させるとすぐに開けられたままだった後方車両に放り込もうとしたが一歩遅く、周囲の壁や床、そして扉があった場所から無数の腕が出現し引くことは不可能となった。

 

「クソ!仕方ねぇ!そいつを巻き込まねぇようにするぞ!面倒だがな!」

 

 伊之助は悪態をつきながらも運転手を巻き込まないようにするために比較的腕の密度が低い場所に運転手を寝かせ、それを見た炭治郎は刀を構えるとまずは周囲の壁の腕を見た。

 

「伊之助!おれは壁の腕をどうにかするから床を攻撃して弱点を見えるようにしてくれ!」

 

 それを聞いた伊之助は炭治郎の意図に気づくと即座に体制を低くしそれを見た炭治郎は技に移った。

 

「八葉一刀流・七の型!無双覇斬!!」

 

 炭治郎は無双覇斬で周囲の腕を全て切り落とすと「伊之助!」と呼びかけ、伊之助は「言われなくても解ってるっつの!」と叫ぶと床に向けて技を構えた。

 

「獣の呼吸・弐ノ牙!切り裂き!!」

 

 伊之助の技は先頭車両の床をバツの形に斬り裂き、その下に有った魘夢の頸の骨が顕わになり炭治郎は即座に素早く出せる技である滝壺を放ったが威力が足りず防がれてしまい裂け目もすぐに再生された。

 

『腐っても十二鬼月って事かよ、思ったよりもずっと再生が速いし汽車と同化したせいか骨が太すぎて一撃じゃ無理か!ここは二人で立て続けに攻撃するべきだ!お前たち二人のどっちでもいい!一人が肉を斬ってもう一人は骨を斬れ!チャンスは一度だけだと思えよ!』

 

 魘夢の弱点を改めて見たクロウはそう分析すると二人にそう告げそれを聞いた二人は「わかった!ありがとう!」「いい考えだ!褒めてやる!」とそれぞれ告げた直後、炭治郎は壁に現れた無数の目と目が合ってしまった。

 

―血鬼術・強制昏倒睡眠・眼―

 

 眠らされる―それに気づいた炭治郎はすぐに叫んだ。

 

「伊之助!夢の中で自分の頸を斬れ!そうすれば目を覚ませる!」

 

 直後炭治郎は眠らされてしまったが車両の上で魘夢と戦った時と同じようにすぐに目を覚まして踏みとどまったが再び目が合ってしまい炭治郎は焦りだした。

 

「(まずい!目が多すぎて何処を見ても目が合ってしまう!)」

 

 再び炭治郎は眠らされてしまい同じように目を覚ましたが焦りだした。

 

「(まずい!このままだと…早く目を覚ませ!)」

 

 炭治郎は目を覚ますために自分の頸を斬ろうとした直後「『夢じゃねぇ!現実だ!』」と偶然にもクロウと伊之助が異口同音に叫び、伊之助の手が炭治郎の手を止めた。

 

「!(げ…現実!?)」

 

 炭治郎は思わず焦ったが確かに眠らされる前と光景は変わっておらず夢ではなく現実なのだとはっきりと気付かされた。

 

『まあ無理はねぇよ。こいつは術の使い勝手の良さだけならあの時戦った下弦の伍よりも上だから混乱しても無理はねぇ…けど最初の弟子が敵に騙されて自殺なんてことになったらおれはリィンになんて言やいいんだよ!』

 

 クロウは炭治郎の先ほどの行動は無理も無いとフォローしつつも先の行動を咎め、伊之助は笑いながら「おれは山の主の皮を被ってるからな!恐ろしさで目を合わせる事が出来ないんだろ!!」そう叫びながら魘夢の目を手当たり次第に斬り裂いていたが直後炭治郎は先ほど気絶させた運転手が騒ぎで目を覚ましたのかふらつきながらも立ち上がり例の凶器を伊之助に向けているのを見た。

 

「!(このままだとまずい!狭くて場所が悪いしさっきの魔眼を使おうにも力を込める余裕が無い!ここは身体ごと入るしかない!)」

 

 炭治郎が伊之助と運転手の間に割り込むのとほとんど同時に「夢の邪魔をするな!」と叫びながら運転手が持つ凶器が炭治郎の腹に深々と刺さり、それを見たクロウは『!仕方なかったかもしれねぇけど無茶しすぎだ!』と焦りながら叫び、その声に気づいた伊之助は自分の油断がきっかけで炭治郎が怪我をしてしまったという事実に動揺を隠せなかったが炭治郎はそれも構わずに運転手を気絶させると叫んだ。

 

「これくらい下弦の伍の時と比べればなんてことない!それよりも早く鬼の頸を斬るんだ!でないと善逸達が持たない!」

 

 それを聞いた伊之助は炭治郎の言う通りだと悟ると何も言わずに獣の呼吸の四番目の技である切細裂きを放ち床を文字通りに細切れにすると炭治郎は痛む体にむち打ちながらも技を構えた。だがその技は水の呼吸でも八葉でもなかった。

 

「(騎神の力を纏う余裕は無いし滝壺じゃ威力が、業炎撃じゃ速さが足りないから再生まで間に合いそうにない!だからここは父さんの…この一撃で骨を断つ!!)」

 

 炭治郎はそのまま上から横に円を描くように刀を構えそのまま一息に降りぬいた。

 

「ヒノカミ神楽!碧羅の天!!」

 

 炭治郎が放った技は魘夢の骨を両断しその頸を断ち切った直後「ギャアアアアアアアアアア!!」と言う凄まじい断末魔の悲鳴と揺れが列車全体を襲い、炭治郎は列車が脱線したのを感じ取りそのまま気を失ってしまった。

 

 

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