鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
彼らは家に着くと何も言わずに殺された人達を埋葬し、リィンはそこに跪くと弔いの言葉を口にした。
「…おれ達がもっと早く来ていれば誰か一人だけでも助けられたかもしれません…ですが残された二人は何があってもおれ達が守ると約束します…この国の弔いの言葉ではありませんが、せめて貴方達の魂が女神の元へ行けますように…」
リィンの言葉は弔いの言葉だと炭治郎には匂いでわかったが、聞き覚えが無いものだった。だが同時にどこか心が安らぐのを確かに感じ取った。
「…リィンさんありがとうございます…皆の埋葬を手伝ってくれて…」
炭治郎の言葉にリィンは首を横に振った。
「…いや…さっきも言ったけど、おれ達は間に合わなかったんだ…それにおれの弔い方はこの国の方法とは違うから変な目で見られることも多いから…」
リィンの言葉を聞いた炭治郎はすぐに本心を告げた。
「それでもリィンさんの思いはみんなに伝わったと思います…だから…ありがとうございました。」
リィンはそれを聞いて曖昧に微笑むと口を開いた。
「途中まではおれが送って行くからついて来てくれるか?」
それを聞いた炭治郎は頷き、それを見たリィンは続けた。
「ならすぐに日の光が届かない所に急ごう、ちょうどいい場所を知ってるから鬼殺隊のことはそこで話すよ。」
そう言うとリィンはすぐに駆け出し、炭治郎も禰豆子の手を引いて駆け出した。
―洞穴―
リィンは以前見つけた洞穴の奥に二人を通すと簡単な料理を作り炭治郎に手渡した。
「これは…?」
炭治郎はリィンから渡された食べ物―フィッシュバーガーを見て戸惑っていた。
「あんな事があったとはいえ何も食べないのは良くないから食べるといい、少しは落ち着くはずだから」
実際リィンが作ったそれはとても美味しそうだった。
「いただきます」「い…いただきます…」
リィンがフィッシュバーガーにかぶりついたのを見て炭治郎も同じようにした。
「あ…美味しい…」
炭治郎の表情はまだ暗いがそれでも少しだけ穏やかになった。
「ありがとうございます…その…美味しかったです…」
リィンは「ありがとう」と言い、炭治郎に水を渡し、相変わらずぼんやりした様子の禰豆子を見やり、すぐに炭治郎に視線を戻した、彼の表情は確かな決意があり、準備が出来ていることがリィンにははっきりとわかった。
「さて…食事も済んだし…何から聞きたい?おれに答えられることなら何でも答えるよ。」
炭治郎は考え込むとまず一番知りたいことを聞いた。
「…俺たちの家族を殺して、妹を…禰豆子を鬼にした奴は何者なんですか?」
炭治郎の声は震えていたがそれでもはっきりと告げた、それにリィンは頷くと答えた。
「わかった…教えるよ、そいつこそが鬼の始祖だ…会ったことは無いが名前は鬼舞辻無惨と言う。」
「…鬼舞辻…無惨…」
炭治郎はその名を心に刻み付けるように口にし、暫くした後に再び問いかけた、もう一つ気になっていたことだ。
「…リィンさんは異国の方なんですよね?どうして鬼殺隊に入ったんですか?」
リィンはそう来たかと思った、炭治郎は鼻が利く、それも相手の嘘がわかるまでに、リィンは考え込むと答えた。
「…どこから説明したものかな…すまない…今は話すことは出来ない…そうだな…炭治郎が鬼殺隊に入隊して十二鬼月…無惨直属の鬼の事だけどそいつを一体だけでも倒せたら詳しく話すって約束する…今言えるのは…おれはある存在を追っていて、そいつが無惨と組んでいることがわかったから鬼殺隊に入ったんだ…勿論そいつの存在を除いても無惨のことも放っては置けないけどな…」
炭治郎はリィンが嘘をついてないとわかり、口を開いた。
「…わかりました…そいつの名前も教えてもらえますか?」
炭治郎の言葉にリィンはそれなら構わないだろうと頷くと答えた。
「…イシュメルガ…黒のイシュメルガだ…」
「イシュメルガ…」
炭治郎はリィンからその名を聞き得体の知れないものを感じ僅かに体を震わせた。
―その夜―
この日は疲れていることもあり禰豆子を入れる駕籠を作った後に休むことにし、炭治郎が眠っている中、リィンは外で見張りをしていた、するとリィンの頭に声が聞こえた。
『リィン聞こえているか?』
「!(ヴァリマールか、どうした?)」
彼―ヴァリマールの問いにリィンはすぐに答えた。
『ソノ近クニ仮初ノライザートナリ得ル者ガイル、傍ニイル額ニ傷ヲ持ツ少年ダ』
「!(炭治郎がそうなのか?)」
リィンは驚いたが、どこか納得できた、ようやく表れた二人目だ、何より炭治郎の目にはそれだけの意思があった。
「(…適合した騎神は?)」
『―ダ』
ヴァリマールはそう言い、リィンは彼が告げた名に驚き、目を見開いたがすぐに頷いた。
「…わかった…すぐにお館様に伝える、おれはもう休むからまたあとでな。」
『了解シタ…ユックリ休ムトイイ…』
そこでヴァリマールからのテレパシーが終わり、リィンは藤の花のお香を洞穴の周囲に撒くと自身も眠りについた。
―数日後―
それから何日かリィンと炭治郎は供に行動し、その道すがらリィンは八葉一刀流の無手の型である破甲拳を炭治郎に習得させ、そのまま歩き続けたが、狭霧山近くの分かれ道で足を止めた。
「ここからは別行動だ、今おれに教えられることは全部教えたけど大丈夫か?」
リィンの言葉に炭治郎は頷き、はっきりと答えた。
「はい!ありがとうございました!リィン師範!」
「し…師範?」
炭治郎の言葉にリィンはきょとんとした表情になり、炭治郎は困惑した。
「へ…変だったでしょうか?リィンさんには無手の型をご指導いただいたので…」
炭治郎の言葉にリィンは苦笑いしつつも答えた。
「ああ…炭治郎が悪い訳じゃないんだ…ただ教官って呼ばれることには慣れてるけど師範って呼ばれることは無かったから、つい驚いただけだよ…」
今度は炭治郎が驚いた、そのためつい聞き返した。
「えっ!?リィンさんって先生だったんですか?えっと…リィン…教官…確かにこの方が呼びやすいですね。」
「はは…そうか…なら、炭治郎の教官として一つ聞こう。」「はい!」
先ほどの笑いのすぐ後にきた真剣な表情と質問の予告に炭治郎は身構え、それを見たリィンはすぐに口を開いた。
「もしも禰豆子が人に襲い掛かってその人を殺してしまったとき…君はどうする?」
リィンの質問に炭治郎は息を呑んだが答えた。
「―!…そのときは…その時は…禰豆子を殺して…おれも…死にます…」
炭治郎の声は傍目にも解るレベルで震えていたが、はっきりとそう答えた。リィンは頷き炭治郎の頭を撫でつつ答えた。
「ああ、けど一番はそんなことにならないようにする事だ…だから炭治郎は禰豆子をしっかりと支えて守るんだ…おれと同じ兄なんだからな?」「あ…はい!リィン教官!」
リィンは頷き炭治郎の頭から手をどかした。
「…それじゃあおれは行くよ、次に会うときは無手の型以外の技も教える…炭治郎は身体能力も高いから大丈夫だと思うけど体力作りは忘れずにな。」
そう言うとリィンは炭治郎が向かう方向とは違う方向に歩き出し、炭治郎はその背中に向けて叫んだ。
「リィン教官!次もよろしくお願いします!」
そう言いリィンの向かう方向とは逆に歩き出した、そしてそれに気付いたリィンは一瞬だけ振り返ると静かに声をかけた。
「…炭治郎と禰豆子を頼むぞ…クロウ…」
リィンの目には炭治郎の後ろにうっすらとだが、バンダナを巻いた青年の姿が見え、彼はリィンの言葉に対し「任せておけ」とでも言うように不適に笑った。
仮初のライザーは現在は炭治郎も含めて二人です、実は仮初のライザーが誰なのかは既に決まっています、予想通りの人もいれば意外な人もいるかもしれませんので楽しみにしていてください。
それとヴァリマールがテレパシーのような物を使っていますが、原作でイシュメルガが当時は自身のライザーでは無かったドライケルス帝や、ギリアス・オズボーンに対し思念のような物を送っている表現があったので、ヴァリマール等の他の騎神も自身のライザーに対してならばイシュメルガと同じことが出来るのではないかと思いリィンに対してテレパシーを送るような場面を入れました。
もう一つ、リィンが最後に原作における鱗滝さんと同じ質問を炭治郎に投げかけていますが、今作における炭治郎は原作よりも早い段階で無惨とイシュメルガの名を聞いた事で既に覚悟ができています、ですが実際に万が一の事態が起こってしまった時の事を口にするとなると相当な勇気が要ると思ったためあえて搾り出すような言い方をしたことにしました。
今回もここまで読んでいただきありがとうございました。