鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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激戦 上弦の参・猗窩座

 

 時はリィンと杏寿郎が猗窩座と戦う前から僅かに遡り、炭治郎達の傍から離れたクロウは被害の状況を確認していた。

 

『思ったよりも盛大に脱線してんな…これで誰も死んでねぇってのはラッキーだったな…その点だけはあの魘夢とかいう奴に感謝しねえとな…さてと…善逸と禰豆子は何処にいるのかねぇ…』

 

 クロウはこの状況を引き起こした魘夢に対して皮肉を込めた上で感謝を述べつつ善逸と禰豆子の姿を探していたがやがて禰豆子を含めた三人の乗客を抱えた状態で気絶した善逸を発見したクロウは直ぐに善逸を起こそうと声をかけた。

 

『おーい起きろー起きろっての…目を覚まさねぇな…聞こえててもおかしくねぇんだけどな…』

 

 クロウは暫く考え込むと『…よし。ここは最終手段だ』と言いながらニヤリと悪い笑みを浮かべて口を開いた。

 

『善逸、とっとと起きろ!炭治郎がお前が起きたら禰豆子と結婚させてやるって言って―「それ本当!?なら起きます!!!」―る訳ねぇだろ馬鹿野郎』

 

「ハァ!?酷くない!?」

 

 クロウの嘘を聞いた善逸は凄まじい勢いで飛び起きたがすぐにクロウにネタばらしをされ、それを聞いた善逸はすぐにクロウに対して怒りの叫びをぶつけた。因みに現在のクロウは剣になった後のミリアムに近い状態の為、炭治郎は勿論だが善逸も言っている事が嘘か本当かの判別が難しかったりする。

 

 クロウは直ぐに『悪かったって…こうでもしねぇと起きなかったからだよ。それよりも今の状況見て見ろよ…』と言いつつ周りを見るように促し、善逸は「ハァ!?周り!?」と言いながら脱線した列車を目にして一瞬硬直し、すぐに「脱線!?脱線してんの!?そう言やここ外じゃん!?あとなんか変な肉塊みたいな物が列車全体を覆いつくしてるし!?おれが寝てる間に一体何があったのよ!?」と叫び、それを見たクロウは苦笑いしながら口を開いた。

 

『その話は後にしようぜ…今はまず救助活動をしてくれ。炭治郎が動けなくなっちまってな…リィンと…杏寿郎だったか?あの二人が向かってんのが途中で見えたし伊之助も近くにいるから大丈夫だと思うけど人手が足りないんだよ…だから頼む』

 

 クロウはそう言いながら頭を下げ、それを聞いた善逸は直ぐに「…わかったよ…人命第一ってのはわかるし…」と言いながら近くで倒れている人に歩み寄ろうとしたその時だった。

 

―ドオン!―

 

「!な…何なの!?今の音!?」

 

 遠くから聞こえた凄まじい音に善逸は困惑してそう呟き、クロウもそちらに目を向けて驚きの表情になった。

 

『(あの方向は!)善逸!悪いが少し嫌な予感がするから戻らせてもらう!』

 

 そう叫んだクロウは善逸の「え!?待ってよ!?」と言う叫びも聞かずに音が聞こえた方向―炭治郎達がいる方向へと戻って行った。

 

 

―先頭車両周辺―

 

 

 そして現在、リィンと杏寿郎はリンクシステムを利用した連携で猗窩座と戦闘を繰り広げており、その様は殆ど互角に見えたがそれを見た炭治郎はリィンも杏寿郎も本気ではあっても全力ではない(・・・・・・)と言うより全力を出せないでいる(・・・・・・・・・・)ことにも気づいており、何より猗窩座もまだ本気ではないことを炭治郎は悟っていたがその理由は明白だった。

 

「(二人はおれ達を戦いに巻き込まないために防戦に回るしかないんだ…)」

 

 その理由は現在炭治郎が怪我の影響で動けないためだった。ティアの薬を飲んだとはいえそれまでに多く出血してしまったという事もあり未だに体力が戻り切っていない炭治郎は下手に動けばかえって戦いに巻き込まれてしまい二人の足手まといになってしまうと言う事実が解っていたからであり、そもそも万全の状態だったとしてもこの場から離れる事が出来るかどうかと言われても出来ると言い切る事は出来なかった。そしてそれは現在二人と戦っている猗窩座も理解していたがそれでもなお彼は歓喜の表情を浮かべていた。

 

「破壊殺・空式!」

 

 猗窩座は小手調べとして空中からリィンと杏寿郎に向けて衝撃波を三回連続で放ち、それを感じ取ったリィンはリンクシステムの応用で杏寿郎に目配せした。

 

「!(杏寿郎!おれの後ろに!)」

 

「(うむ!了解した!)」

 

 リィンは杏寿郎が後ろに下がったのを認識すると猗窩座が放った衝撃波の位置を観の眼で認識し即座に対応した。

 

「(ここだ!)八葉一刀流・六の型・緋空斬―」

 

 リィンは緋空斬を放つと猗窩座が放った衝撃波を一つ相殺しさらに続けて「―三連!」と言う言葉と共に最初の斬撃に続けて二つの斬撃を放つと残る二つの衝撃波も打消しそれを見た炭治郎は勿論、猗窩座も衝撃を受けた。

 

「(目に見えない攻撃を打ち消した!?目に見える攻撃ならおれも経験があるけど見えない…それも三回も打たれていたのにすべて打ち消すなんて…)」

 

「!(今のは真空の刃か!まさか人間がここまでの事をするとは!)」

 

 猗窩座が驚きの表情を浮かべている中、リィンと杏寿郎は猗窩座の懐に駆け込むと先ずは杏寿郎が不知火を放つとそれに続けてリィンが疾風の応用で猗窩座の背後に回り込むと無想覇斬を放ったが猗窩座はそれを跳躍して回避し、そして歓喜の言葉を述べた。

 

「素晴らしい!素晴らしいぞ!リィン!杏寿郎!」

 

 猗窩座は最早喜びを一切隠さずに二人に対する称賛の言葉を続けた。

 

「今まで殺した柱の中に灰は勿論だが炎もいなかった!それに八葉一刀流なる流派は今日この日まで見たことも聞いたことも無いがやはり素晴らしい!そして今まで戦った柱の中では誰一人としておれの言葉に頷く者はいなかった!」

 

 猗窩座はそう言いながら二人に攻撃を仕掛け、二人は交互に攻守を交代しながら相手をし、猗窩座はその中でも二人に告げた。

 

「そして何よりお前たちはおれが戦った柱の中で最も強い!だからこそ同じ武の道を極める者として理解しかねる!選ばれた者しか鬼になれないと言うのに!」

 

 三人の戦いは正に熾烈を極めており炭治郎は目で追うので精いっぱいだった。

 

「お…おい…一体何が起こってんだよ…」

 

 いつの間にか炭治郎の隣に伊之助が戻ってきていた。だがその手に握られた刀は降ろされており震えを隠すことが出来ていなかった。

 

『…何が起こってるか気になって戻ってみれば…成程…思ったよりも厄介なことになってるみたいだな…』

 

「!クロウ!」

 

「お…お前何時からいたんだよ!?」

 

 そこに善逸の下から戻ってきたクロウがおふざけ一切なしでそう呟き、炭治郎の驚きと伊之助のツッコミを流してリィンと杏寿郎の二人とその二人と戦う猗窩座の姿を見て顔をしかめた。

 

『一晩に二人も十二鬼月が出て来るとかおれ達は呪われて…いやイシュメルガの呪いがあったか…とにかく厄介なことになってるのは間違いねぇな…どう思う炭治郎?』

 

「え?」

 

 クロウの唐突な問いに炭治郎は困惑したがそれを見たクロウは改めて『あ…悪い…あいつらの戦いを見てどう思った?教えてくれ…』と改めて伝え、それを聞いた炭治郎は「そういう事なら…」と呟くと静かに続けた。

 

「正直…凄まじいと思った…煉獄さんもリィン教官も本気だったらどれほど強いのかって何度も考えたけど実際に目にしたらおれの想像を超えてた…」

 

 炭治郎のその答えを聞いたクロウは『だろうな…伊之助も同じだろ?』と問いかけ、それを聞いた伊之助は一瞬肩を震わせたが頷いた。

 

「…ああ…お前の言う通りだぜ…解っちまうんだよ…今のおれ達じゃあいつらには絶対についていけねぇってな…」

 

 二人の答えを余所に三人の戦いは続き猗窩座は先ほど放った衝撃波を今度は五回放ち、先ほどとは逆に杏寿郎が前に出た。

 

「炎の呼吸・肆の型・盛炎のうねり!」

 

 杏寿郎は自身の技で衝撃波を打ち消し、続いてリィンが躍り出た。

 

「八葉一刀流・四の型・紅葉斬り!」

 

 リィンは居合からの紅葉斬りを放ち、それを読んでいた猗窩座は腕で防いだが完全に防ぎきる事は出来ず、腕を半分程斬り進み、それを見た猗窩座は飛びのくと口を開いた。

 

「やはりお前たちは素晴らしい!だがだからこそ辛い!お前たちのような素晴らしき才能を持つ者たちが醜く衰えてゆく!おれはそのような姿は見たくない!耐えられない!死んでくれ!リィン!杏寿郎!若く強いまま!」

 

 猗窩座の言葉を余所に二人は目にも止まらぬ速さで猗窩座との距離を詰めると凄まじい連撃を放ち、それを受けた猗窩座は反撃しつつなお称賛の言葉を止めなかった。

 

「この素晴らしい反応速度!そしてこの技の数々!これら全てが失われていくのだ!お前たちはそれでいいのか?悲しくはないのか!!」

 

 猗窩座から二人に向けられた問に杏寿郎とリィンが続けて答えた。

 

「誰もがそうだ!人間ならば当然の事だ!!」

 

「そしてだからこそ人は誰かに受け継ぐんだ!自分の技を!知識を!思いを!それが数々の物を今までもこれからも人は生み出してきたんだ!」

 

 二人の言葉を聞いた炭治郎は立ち上がろうとしたがそれを見たリィンは即座に叫んだ。

 

「手を出すなと言っただろう!!これは見取り稽古だ!!待機命令!!」

 

 リィンのかつてない程強い言葉に炭治郎は思わず怯んだがその行動はリィンに隙を生んでしまい、猗窩座は一瞬のそれを見逃さずに技を構え、それに気づいた杏寿郎は強引に割り込むと技を構えた。

 

「!(しまった!今からじゃ間に合わない!ならせめて少しでも猗窩座の攻撃の軌道を見て杏寿郎に伝える!!)」

 

 リィンは自分の隙のせいで作ってしまった状況を見て歯がゆく感じたがせめて間に入れない代わりにアークスのリンクシステムを利用して猗窩座の攻撃が何処を狙っているかを伝えると杏寿郎は笑みを浮かべた。

 

「(これで良い、君には故郷で待っている友に、恋人もいるのだ。ならば消えない傷を残すわけにもいくまい!)炎の呼吸・伍の型!―」

 

 杏寿郎はリィンが伝えて来た猗窩座の技の軌道を一つでも多く躱せるように構え、猗窩座も歓喜の表情を浮かべ技を放ちそれは杏寿郎の技が形作った炎の虎とぶつかり合った。

 

「破壊殺・乱式!!!」

 

「炎虎!!!」

 

 一瞬が永遠に感じられた。その一撃の結果はまだ炭治郎達の目には見えなかった。だが煙が晴れていく中起こった結果に気づいた炭治郎は唖然とし、胴体に傷を負った猗窩座は静かに口を開いた。

 

「杏寿郎…見事だ。全てではないとは言えおれの技を防ぎきった上で技を当てて来るとは思わなかった」

 

 杏寿郎は傷を負ってこそいたがその何れも致命傷とはなり得なかった。これもリィンがアークスにより観の眼で見た猗窩座の技の内、致命傷になり得るもののみに対応した結果であり猗窩座もこれは予想外だった。だが彼が負った傷はけして小さい物ではなくその傷を見た炭治郎は唖然としていた。

 

「れ…煉獄さん…目が!!」

 

 杏寿郎の左目は猗窩座の攻撃により潰されており、これまでで最も多く体力を消費したことからか肩で息をしているありさまだった。

 

 

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