鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~   作:来斗

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やるべき事

 

―???―

 

 

「…ここは一体どこなんだろう…」

 

 無限列車の任務から一週間ほどたったある日の事。いつの間にか見知らぬ建造物の中にいた炭治郎はそう呟き、辺りを見回しつつ考え込んだ。

 

「確かおれはリィン教官たちと修行して…それから夕食を食べてお風呂に入って…疲れてたから寝たはず…あ!これは夢か!」

 

 炭治郎はすぐに今いる場所が夢によるものだと気づいたが再び首を傾げた。

 

「けどリィン教官の話だと魘夢の時みたいな例外を除けば自分の記憶が係わってることが殆どだって教えてくれたけどこんな場所見たことも無いし…となるとこれは…クロウの記憶なのか?」

 

 炭治郎は今見ている夢がクロウの記憶によるものだと推測するとすぐに呼びかけた。

 

「クロウ?今話せるか?クロウ?…返事が無い…という事はクロウは何か事情があっておれをここに呼んだって事なのかな…呼びかけにも応えないって事は先ずは見つけてみろって事だよな…クロウならあり得そうだけど…先ずはここが何なのか把握するのが先かな…」

 

 炭治郎はすぐに探索を開始し、暫くは無機質な通路が続いていたがやがてやたらと豪華な扉が目の前に現れた事でこれまでの通路と比べて場違いすぎるそれに首を傾げたがここにクロウがいる可能性を考えた炭治郎は直ぐに扉を開けて足を踏み入れた。

 

「うわ!凄いなここ…」

 

 炭治郎が足を踏み入れたそこは西洋の屋敷のホールのような場所でありそう言った知識に疎い彼でもこの場所が凄い場所だという事が理解できた。

 

「けどクロウはいないな…うん?あれは…」

 

 炭治郎はクロウの姿を探していたがやはり彼の姿は無く、手掛かりは無いかと辺りを見回していたが中心辺りのやたら豪華なテーブルの上に手紙が置かれているのを発見するとすぐに駆け寄ると手紙を開いた。

 

『良く見つけたな炭治郎。お前さんが気付いている通りこれはおれが見せている夢だ。と言うのはさておき、おれがお前さんをここに呼んだのは理由がある。まあ要するに試練って奴だな。おれに会うならこの向こうの扉からとにかく上に向かえば良い。けどここから先は今までと違って敵もいるから気を付けな。道は単純だから迷う事は無いだろうし死ぬことも無いけどやられたら死ぬほど痛い…かもしれないから気をつけろよ。今回の敵は鬼じゃないからやり過ごすのもありだぜ。それじゃ後でな待ってるぜ』

 

 炭治郎がクロウの手紙に目を通した直後、炭治郎が入ってきた扉とは違う扉から『ガチャ』と言う音が響き、炭治郎は戸惑ったが自身の持つ日輪刀を握りしめつつ「…行こう…」とだけ呟くと先へと進んだ。

 

 

―夢の中・謎の通路―

 

 

「これで終わりだ!」

 

―ジジジ…ボガン!―

 

「うわ!爆発した!?先ずはここから離れないと!」

 

 炭治郎は通路の開けた場所で襲いかかってきた小型の機械と戦闘し隙をついて切り捨てたが小さいながら機械が爆発し、その音に反応して後ろから炭治郎を追って来る先ほどとは別の小型の機械から逃げるために駆け出し、通路の角にあったロッカーを発見するとそれに隠れてやり過ごし、ある程度時間が経ったところで隠れていたロッカーから抜け出しつつ考え込んだ。

 

「ふう…助かった…一体一体はそんなに強くないけど数が増えると厄介だな…兎に角先を急がないと…クロウの手紙を見た感じだと全部倒す必要はなさそうだし今は何処かにあるはずの階段を見つけないと…」

 

 それから炭治郎は徘徊する機械から身を隠しながら進み、やがて階段を見つけるとすぐに駆けあがり、その頂上にあった扉の前で息を整えると意を決してその扉を開いた。

 

 扉の先は文字通り予想だにしない物だった。周囲は雲が流れており、炭治郎はここに来て初めて今いる場所が空を飛ぶ船のような場所だと気づき困惑したがその時だった。

 

―パチパチパチパチ―

 

 誰かが拍手する音が聞こえ、炭治郎はその誰かの―クロウの姿を見た。

 

「…クロウ…」

 

 炭治郎はそう呼びかけ、クロウはバツの悪そうな笑みを浮かべながら炭治郎に歩み寄った。

 

「よう相棒、まずはここまでお疲れさん…それと悪かったな、急に呼び出して…どういう場所にするかずっと考えてたんだけどこれ以上時間かけるのも気が進まなかったからさ…」

 

 何処か申し訳なさそうな様子のクロウの姿を見た炭治郎は「それは構わないけど…」と返したがすぐにここに来た時からずっと感じていた疑問を思い出すと問いかけた。

 

「…どうしておれをここに呼んだんだ?…ただ話すために呼んだってわけじゃないんだよな?…それだったら起きてる時でも良いはずだし…」

 

 それを聞いたクロウは何処か関心した様子で「おっ!流石炭治郎。ご明察ってな」と告げると真剣な表情で続けた。

 

「…あの時…猗窩座と戦った時にリィンと杏寿郎が言ってただろ?『おれ達の責務を全うする』ってな…だからおれもおれの責務を全うする…そのために炭治郎を呼んだんだ」

 

 そしてクロウは炭治郎に歩み寄ると銃を取り出し炭治郎に向けながらはっきりと告げた。

 

「まず一次試験はクリアと言わせてもらう。ここからは二次試験だ。簡単にクリアさせるつもりは無いが内容自体は簡単だ。おれと戦え。竈門炭治郎」

 

 クロウの口から発せられた言葉に炭治郎は戸惑いを隠せず、思わず聞き返した。

 

「!ク…クロウとおれが戦うって…どうしてそんなことを…」

 

 炭治郎の明らかに戸惑いを隠せていない表情を見たクロウは何処かいたずらっぽく笑うと口を開いた。

 

「そうだなそこから説明しないとな…と言っても理由は簡単だ。言っただろこいつは試練だって」

 

 クロウは改めて試練だと告げると銃を納めつつ説明を続けた。

 

「先ず今の炭治郎は仮初のライザー…騎神の力を本格的に使うのがいつになるかは分からねぇけどいずれその機会は来るだろ?…おれの世界だとライザーになるための試練って奴があったんだよ」

 

「試練…それって…じゃあクロウが今やろうとしてることって…」

 

 クロウの意図に気づいた炭治郎はそう聞き返し、それを聞いたクロウは「またもやご明察」と愉快そうに答えると続けた。

 

「おれがやろうとしてるのは要はおれやリィンが経験した試練の代わりって奴だ。ここまで来るのもその一環ではあるけど試練の最後には強敵が待ち受けてるってのがお約束だろ?だからおれがその役目をさせてもらおうってわけだ…まあこいつは夢だし実際の試練と違って死ぬことは無いからそこは安心してくれ…さあどうする?」

 

 クロウは不敵な笑みでそう問いかけ、その表情を見た炭治郎は考えを巡らせた。

 

「(…試練の代わり…リィン教官もクロウも経験した試練…今のおれに乗り越えられるのか?…解らない…でも今のおれではリィン教官に並び立つことはできない…ならかつて二人が経験したことをおれもするべきだ…この先戦い抜くためにも!)」

 

 炭治郎は決意を滾らせるとクロウの顔を見て口を開いた。

 

「わかった…その試練受けさせてもらう!」

 

 それを聞いたクロウはニヤリと笑みを浮かべると「了解だ。そんじゃあ早速始めるか」と告げ炭治郎から数メートル離れて向き合うと何処からか五十ミラ硬貨を取り出してそれを手の中で弄びながら説明を始めた。

 

「試練と言ってもこいつは殺し合いじゃない…だから一対一の試合って言う形式でさせてもらう。おれは訳合ってリィンと何度か戦った事があるんだが…最初にリィンと戦った時くらいの実力で相手をさせてもらう…だから炭治郎も今出せるだけの全力で来るんだ。そうで無いと試練の意味が無いからな。手加減は無しだ」

 

 クロウの言葉を聞いた炭治郎は「それで構わないよ」と了承し、それを聞いたクロウは弄んでいた硬貨を軽く投げてキャッチするとそれを炭治郎に見せた。

 

「よし…それじゃあ今からおれはこいつを上に向けて投げさせてもらう…投げたこいつが地面に落ちたその時を試合開始の合図とさせてもらう」

 

 それを見た炭治郎は頷くと「わかった…今のおれの全力を精一杯ぶつけさせてもらう」と答えるとクロウは笑みを浮かべ「それじゃあ始めるぞ」と告げるとコイントスの時と同じやり方でコインを上に飛ばし、それを見た炭治郎は思考を巡らせた。

 

「(さっき見たクロウの武器は銃だった…それも二丁…つまりクロウは二丁拳銃を使った戦いが得意だって事になる…銃に限らず離れた場所から攻撃できる武器を使う相手ならどうやって距離を詰めるかが勝負の鍵だ…けどクロウの事だからまだ隠し玉があってもおかしくない…だから距離を詰めたとしても油断はしない!)」

 

 一方クロウも炭治郎を見つめながら思考を巡らせた。

 

「(さてと…ブランクがある以上何処までやれるかは分からねぇけど…これが今おれがやるべき事なのは間違いない…おれは全力で応える…だからこそお前も全力で来い…これまでお前が学んで来たこと全てをおれにぶつけて見せな)」

 

 二人には硬貨が落ちるまでの時間が本来のそれよりもずっと長く感じられたがやがてその時は訪れた。

 

 

―キィン―

 

 

 硬貨が床に落ちる音が響くと同時に二人は動いた。

 

「クロウ!」

 

「炭治郎!」

 

 二人は互いの得物を同時に抜くとそれぞれの名を叫び、クロウは銃の引き金を引き、炭治郎は即座に銃弾を切り払うとそのままの勢いでクロウに迫り、そのまま二人はぶつかり合った。それを見ている者は誰もいないが今この時、試練が始まった事だけは疑いようが無かった。

 

 

 

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