鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
炭治郎はクロウの懐に駆け込むと躊躇い無く刃を振るい、クロウはそれを見てギリギリのところまで引き付けると紙一重と言っても良いタイミングで回避しつつ「成程な…腕を上げたようだな…だが…油断大敵だ!」と言うと右手の銃で炭治郎の刀を受け流すとさらに続けて体術での連携に繋げようとし、それに気づいた炭治郎は「(まずい!)」と感じ取ると直ぐに距離を取ったがクロウは間を開けずに「よそ見禁止だ!」と叫ぶと左手に持った銃を構えると炭治郎に向けて掃射し、炭治郎は全力で走って回避しつつ思考を巡らせた。
「(離れれば銃撃が、近づけば体術が来る!リィン教官と一緒に戦った人だから油断するつもりは無かったけどあの魘夢って奴とは比べ物にならない!それに夢の中だからかもしれないけど匂いが感じ取れない。つまりクロウの攻撃を見切るには耳と目!その両方で対応しないとダメだ!今回だけじゃない。今後も匂いや隙の糸に頼らない戦いをしないといけない時があるだろうことを考えると今ここでそれに慣れなきゃダメだ!)」
炭治郎はクロウが敢えて忠告しながら攻撃していることにも気づいており、如何にか傍にあった柱に身を隠すと慎重にクロウがいる方向に目を向けた。クロウは先ほど掃射した銃に再び弾を装填しつつゆっくりと歩きながら炭治郎に対してまるで助言するかのように語り掛けた。
「遮蔽物に身を隠したか…判断自体は悪くない…けど姿を見せるタイミングも慎重に考えろよ?でないと相手に準備をされちまうからな…例えば俺の場合はたった今撃ちつくした弾をリロード―この国じゃ再装填だな…兎に角、リロードしたことで振出しに戻ったってわけだ…最もさっきのタイミングでお前さんが正面から向かってきたら残ってる方の銃でズドン!だけどな」
クロウは先ほどの炭治郎の行動を評価しつつ、最後にもしも考え無しに向かったらどう行動したのかを撃つ真似をしながら告げ、炭治郎は慎重に柱の影から資材の山の影に移動しながらどうするか考えていたが内心舌を巻いていた。
「(クロウの言う通りだ…ただ隠れるんじゃなく狙いを付けられないように動きながら近づけばリロード?の隙を与えないで少なくとも接近戦には持ち込めたはず…いや反省は後でもできる…今はクロウが使っている銃を一つでも奪えれば何か変わるはず!)」
炭治郎は一先ずクロウが持つ銃をどちらか一方だけでも奪うと決めると遮蔽物になっている資材の中に使える物は無いかと目を凝らした。
「何か使える物は…!あった!」
炭治郎の視点から見れば本当に一瞬だけでも隙を作る事さえできればいいと言う考えだったこともありクロウを驚かせるものを探していたが手に取ったそれ―鉄パイプの真ん中辺りを持つと頷きながら「よし…この手が通用するのは一度だけだ…」そう呟きつつ深く深呼吸しクロウが先ほど炭治郎が隠れていた柱を確認しながら歩いているのを見た炭治郎は「クロウ!俺はここだ!」と叫ぶとクロウはニヤリと笑みを浮かべ読んでいたとばかりに「やっぱりな!」と叫びつつ振り向きざまに銃を構えたが直後に予想外の事態が起こった。
「これでも喰らえ!」
炭治郎は先ほど見つけた鉄パイプを全力でクロウに向けて投げつけ、それを見たクロウは驚きの余り「いやマジかよ!?」と叫ぶと物凄いスピードで飛んで来たそれを反射的に躱したが投げられた鉄パイプは先ほどまでクロウの頭があった辺りに『ドゴォ』と言う凄まじい音を立てながら深々と突き刺さっており、それを見たクロウは冷や汗をかいた。
「あっぶな!?どんな肩してんだよ!?(世が世なら野球のピッチャーか投げ槍かなんかで世界とれたんじゃねーのか?)って余計なこと考えてる場合じゃ―」
「油断大敵って自分で言ってただろ?」
「!しまっ―」
クロウが見せた隙を炭治郎は見逃さずに先ほどの意趣返しとばかりに油断大敵と告げつつ掌底の構えに入った。
「八葉一刀流・無手の型・破甲拳!」
炭治郎はクロウに破甲拳を叩きこむとその衝撃でクロウが手放してしまった銃を破甲拳で使わなかった方の手でキャッチすると即座に空いた方の手で刀を抜くとそれを横凪に振るったがクロウは即座に跳躍してかわすと距離を取りつつ「お前はヴァリマールに初めて乗った時のリィンかっての!」とリィンがシュピーゲルの剣を奪って使った時のことを思い出しながら叫びつつ牽制の為に二発、炭治郎に向けて発砲しながら距離を取り炭治郎はそれに対し一発は躱し、残る一発は切り捨てるとすぐに駆け出し、それを見たクロウは冷静に分析した。
「(銃を奪われるとはな…やるじゃねぇか…鉄パイプをあんな風に使うとは思って無かったけど発想自体は悪くない…不意打ちできないってのは欠点だけど今回に限ってはうまく行ってんじゃねぇか)…本当に驚かせてくれるな…」
クロウは炭治郎に対し素直に称賛の言葉を送ったが炭治郎は油断なく刀を構ながら「…いや…まだまだだ…貴方が言うようにおれも自分が強くなってることは実感してるけどこんな程度じゃ貴方にもリィン教官にもとても追いつけない…さっきの手だって二度は通じないはず…」と告げるとクロウはニヤリと笑みを浮かべ「ははは!まあそうだろうな…けど考え自体は悪くないって言っただろ?確かにお前さんが自身が言うように今の実力だったら本気のリィンと一緒に戦うなんて夢のまた夢としか言いようは無い…だから…」そう告げるとクロウは銃を持たない手で円を描くとそれが魔法陣のような模様を描き「!(あの模様は一体何なんだ?)」と驚く炭治郎を余所に銃をそれに向けて構えた。
「先ずはこいつを凌ぎ切って見せな…十二鬼月の中にも似たようなことができる奴がいるかもしれねぇからそれに備えた練習って奴だな…本当ならお前さんが奪った銃も使うんだが…本気の殺し合いってわけじゃねぇしこいつ一丁で充分だ」
そう言うとクロウは一切の躊躇い無く魔法陣に向けて銃を連射し炭治郎は身構えたが一切銃弾が飛んでくる様子は無く困惑した。
「!?(銃弾が飛んでこない?…いや違う!クロウの事だ、何かある!)」
暫くしてクロウは完全に弾切れとなるまで銃を撃ちつくし、銃を下すと炭治郎に「さてと…準備完了…せいぜい耐えて見せな!」と告げた直後、魔法陣の中に消えたそれが全て炭治郎を取り囲むように現れ、炭治郎は再び困惑した。
「(これ全部がさっきの銃弾なのか!?まずい!これ全部が向かってくるとしたら現実だったら大けがじゃすまない!ここは全力で凌ぐ!)力を貸してくれ!」
炭治郎は即座に騎神の力を発動して銃弾の雨に備え、それを見たクロウは手を高く掲げた。
「さあてと…元の技とはちょっとだけ違うが…まあ構わねぇよな…改めて…耐えて見せな!クロス・レイヴン!!」
技の名を告げた直後。クロウは指をパチンと鳴らし、それを合図に止まっていた銃弾全てが炭治郎に向かって行き、炭治郎は辺りを見回した。
「(このままだとまずい!何処か銃弾が少ない場所は?)」
炭治郎は素早く辺りを見回し、すぐに弾幕が薄い場所を見つけると即座に駆け出し跳躍しつつ技を構えた。
「(先ずはこの銃弾の雨から抜け出す!反撃はそれからだ!)水の呼吸・弐ノ型!水車!!」
炭治郎は跳躍した直後の落下の勢いを利用して勢いの増した水車で目の前の前方の銃弾を切り落としながら着地するとすぐに周囲の銃弾を落とすための構えに入った。
「(全部落とす必要はない!避けるのが不可能な弾を確実に落とせる技を使う!それにはこの二つの技を合わせる!)水の呼吸・陸ノ型・秘技!」
事実として炭治郎は以前にもこの技に別の技を組み合わせたことがあった。だが以前それを実行した時とは違い今回合わせたのは八葉の一の型だった。
「ねじれ渦・螺旋舞!!」
炭治郎はねじれ渦に螺旋撃を組み合わせることで自身がよけきれない銃弾と上空の銃弾を纏めて切り落とすと間を開けずにクロウに向けて駆け出し、それを見たクロウはニヤリと笑いながら既にリロードを済ませていた銃を構えた。
「やるじゃねぇか、相棒!次はこいつを凌いでみせな!」
そう叫ぶように告げたクロウは炭治郎に向けて発砲したが向かってきた銃弾は一見普通の物だったがどう言う訳か炭治郎のいる目の前に落ちる軌道でありそれに対して炭治郎は妙な違和感を感じ取り、すぐに「!(躱さないとまずい!)」と判断し即座に躱すと着弾したそこに巨大な氷の塊が出現しそれを目にした炭治郎は冷や汗を掻いた。
「(危なかった!もしもそのまま進んでいたら良くて転んで最悪氷漬けだった!)」
炭治郎は一瞬胸をなでおろしそうになったがクロウは静かに告げた。
「…安心してるところ悪いが…フリーズバレット…お前らの国の言葉なら凍結弾だな…こいつも一発だけじゃねぇぜ」
そう告げたクロウは立て続けにフリーズバレットを放ち、炭治郎は慌てて避けながら思考を巡らせた。
「(駄目だ!この弾は切り落とせない!斬ったらその時点で氷の塊が発生する!でもこのままだと勝てない!だから!)」
炭治郎はクロウの方に向き直りながらそのままクロウがいる方に向けて駆け出し、クロウは「(気づいたみてぇだな)」と笑みを浮かべながらフリーズバレットを放ち、それを見た炭治郎は「(!来た!ここを逃したら倒せないと思え!頑張れ炭治郎!頑張れ!)」以前そうしたように自身を鼓舞すると攻撃ではなく回避のための技に入った。
「水の呼吸・玖ノ型!水流飛沫・乱!」
炭治郎は素早い動きでフリーズバレットを躱しながらクロウに接近し遂にクロウを捉えた。
「(よし!この距離ならフリーズバレットは使えない!)」
炭治郎は直ぐにクロウが持つ銃を狙って刀を振るい、クロウがそれを取り落としたのを確認するとすぐに蹴り飛ばし甲板の縁から落下させて回収できないようにしそのままクロウに向けて刃を振るおうとしたその時だった。
「見事だ…けど悪いな炭治郎…一つだけ嘘つかせてもらったぜ」
クロウのその言葉に炭治郎は危険を感じ取るとすぐに反射的に飛びのいた直後だった。クロウの銃を持っていなかった方の手に長い何かが握られており先ほどまで炭治郎がいた場所に振るわれていた。だが炭治郎は間一髪で回避することに成功しておりそれは空を切っていたが炭治郎はクロウの雰囲気が先ほどのそれとは違う事も感じ取っており、刀を改めて握りしめつつ問いかけた。
「クロウ…その武器は一体…」
クロウが握る武器は中心に持ち手が存在し両側からは同じ長さだが刃が在るのは逆になった武器でありクロウはその問いと先ほどの嘘についての説明を始めた。
「こいつか?こいつについて話すなら先ずはおれがついた嘘がどういう物かを説明させてもらうけど構わねぇな?」
炭治郎は何も答えなかったが頷き返し、それを見たクロウは直ぐに答えた。
「さっきリィンと最初に戦った時くらいの実力で相手するっつっただろ?あれも間違っちゃいないんだけどな…あの時に使ったのは銃じゃなくてコイツなんだよ」
クロウはその手に持ったいかにも近接戦の為の武器を炭治郎に見せながら続けた。
「こいつは
クロウの言葉を聞いた炭治郎は頷くと「ああ…理解したよ…つまりここからは本当の意味で…」と答えるとクロウは頷きながら「…ああ…本当の意味で全力の勝負と行くぜ(…それに今の炭治郎はある種のトランス状態に近い…おれの予想が正しければ今ならもう一つの目的もやれそうだな…)」と全力の勝負と言いつつ自身のもう一つの目的も果たせると確信を持ちながら答えると双刃を構えて臨戦態勢に入りつつ不敵な笑みを浮かべながら告げた。
「さあ第二ラウンドと行こうじゃねぇか…おれと言う試練を超えて見せろ!竈門炭治郎!!」
クロウの叫びを聞いた炭治郎も刀を向けながら叫んだ。
「言われなくてもその試練超えさせてもらうぞ!クロウ!!」
炭治郎は迷いなく駆け出すと戦いが始まった時と同じように刃が振り下ろされ本気の戦いが再び幕を開ける事となった。