鬼滅の刃~世界を渡った剣聖・閃とヒノカミの鬼殺譚~ 作:来斗
一呼吸置いた槇寿郎は二人に対しある問を投げかけた。
「さて…話に入る前に二人は鬼殺隊に伝わる呼吸の技がどのように生み出されたのかについてどれほど知っている?」
槇寿郎の質問を聞いた炭治郎は直ぐに杏寿郎の言葉を思い出しながら「ある程度の事は無限列車の任務でれ…杏寿郎さんにお聞きしました。確か…炎・水・風・岩・雷…この五つが基本の呼吸で残りは派生したものだとお聞きしました」そう答えると槇寿郎は満足げに頷くと「なら話は早い…ところでリィンと言ったか?灰柱と名乗っていたが…君が使う呼吸はどの技の派生となっている?」話は早いと言いつつリィンの技について問いかけ、その問いも予想していたリィンはすぐに答えた。
「私は全集中の呼吸は使っていません。私の流派は私の師が起こした物で八葉一刀流と言う物です。灰柱と言う名は私の祖国での二つ名と言うべきでしょうか…とにかく二つ名である灰色の騎士から取られた物です…正直どちらも私には過ぎた肩書だと思っていますが…」
それを聞いた槇寿郎は眼を見開くと「そうか…君が杏寿郎が言っていた柱か…(恐らく先の言葉から察するに全集中の呼吸は
「では続けよう…先ほど上げた基本の呼吸には元となった呼吸法が存在している…それは戦国時代にある一人の剣士によってもたらされた物だ…名を日の呼吸…またの名を始まりの呼吸と言う」
それを聞いた炭治郎は驚いた表情になり「日の呼吸…炎の『火』ではなく…太陽の『日』ですか?」と問いかけ、槇寿郎は頷くと「ああ、その通りだ。鬼殺隊の掟の中には炎の呼吸を火の呼吸と呼んではならないと言う物があるが、それはこの日の呼吸の存在が理由となっている…最も長い時が経った今この理由を知る物は俺が知る限りでは一般の隊士は勿論だが柱にもいないだろうがな…」と続け、リィンはその話を聞きながら何かを考え込んでいたがやがて意を決して問いかけた。
「槇寿郎さん。日の呼吸と継国縁壱と言う人物に何か関係はありますか?」
途端に槇寿郎は驚きの表情となりそれを見たリィンは当たりだと感じ取った。
「そこまでたどり着けていたのか…その通りだ。継国縁壱…その男こそが日の呼吸の使い手であり…鬼殺隊の歴史の中でただ一人無惨と戦い…退けた剣士だ」
その言葉を聞いた炭治郎は驚きの余り固まってしまった。実際に無惨と対峙した経験があるからこそ炭治郎はあの恐ろしい男とただ一人で戦い、退けた剣士がいたと言う事実に衝撃を受けた。そして槇寿郎はその先を続け、炭治郎は耳を傾けた。
「彼はその後どう言った経緯かは不明だが何らかの理由で鬼殺隊を追放され、いずこかへ去って行った…故にその後の行方は不明だ…ここからは完全に俺の推測だが彼には子息…もしくは自分の技を託すに相応しい後継者とも言うべき人物がいたのだろう…そしてそのどちらかもしくは両方に彼は技を継承したのだろう」
そこまで続けると槇寿郎は炭治郎を見据えながら「君は恐らく継国縁壱自身か彼が後継者とみなした者…そのどちらかの子孫なのだろう…その耳飾りは鑑定しなければわからないが戦国時代に彼が身につけていたそれと同じ物の可能性が高い…君達が言うヒノカミ神楽は恐らく日の呼吸を神楽として形を変えて伝えた物だろう…無惨の目を欺くためか日の呼吸と言う名が途絶えたのかは不明だが…一先ず俺にわかるのはここまでだ…他に知りたいことはあるか?」と答えると炭治郎はハッとした表情になるとすぐに口を開いた。
「槇寿郎さん!他に何か解る事はありますか!?確か資料が残っているんですよね?それを見せて貰えますか?」
炭治郎の慌てた様子にリィンは苦笑しつつ「落ち着くんだ炭治郎。鬼と違って情報は逃げないからな…けど私も同意見です。資料を見せて貰えますか?」と問いかけたが途端に槇寿郎は気まずそうな表情になると「し…資料…か」と口ごもり、その様子を見た二人は思わず顔を見合わせた直後、槇寿郎は「すまなかった!!」と突然謝罪の言葉を言い放つと教科書に乗せたくなるほど綺麗な土下座を披露し、それを見た二人は困惑したが槇寿郎はそんな二人に構わず自身が過去に行ってしまった事実を口ごもりながら告白した。
「君たちが求めている資料だが…以前俺が…破いてしまった…」
それを聞いた二人は思わず固まってしまい暫く謎の沈黙が流れたが二人はほとんど同時にそれを破った。
「あんたは一体何をやってるんだ!!」
「あなたの先祖が代々伝えて来た貴重な情報を破り捨てるとかふざけてるんですか!?」
二人は思わず槇寿郎に対して大声で言い放ち、その声が廊下まで響いた事もあり杏寿郎と千寿朗が慌てて戻りすぐに二人に対して土下座をしている父親の姿を見て困惑することとなった。
―十分後―
二人はリィンと炭治郎から自分達の父親が何をしたのかを聞かされ何とも言えない表情になり、父親に対してそれを向けつつ父親がズタズタにしてしまった資料を確認していた。
「本当に申し訳なかった…せめて修復して分かったことがあったら伝えよう…約束する」
槇寿郎は再びリィン達に頭を下げると何か解ったら改めて伝えると約束しそれを見た炭治郎は直ぐに答えた。
「…解りました…俺もそれまで修行して今以上にヒノカミ神楽を使いこなせるようになって見せます」
炭治郎は彼にそう誓うとその姿を見た千寿郎も口を開いた。
「父上、僕も手伝います」
「!良いのか?お前まで付き合う必要は…」
槇寿郎は自分の償いに付き合う必要は無いと止めようとしたが千寿朗は躊躇わずに続けた。
「僕には剣士の才能は有りませんでした…何度修行しても日輪刀の色は変わらず剣技も身につきませんでした…でもそんな自分だからこそ剣士とはまた違う形で力になりたいんです。お二人とも、ヒノカミ神楽と日の呼吸については僕達が調べます。構いませんね?父上」
千寿郎の言葉を聞いた槇寿郎は面食らったがすぐに「…解った二人で調べよう」と答え千寿朗も「よろしくお願いします…父上」と返すことになった。
それから暫くしてリィン、炭治郎、そして杏寿郎の三人は灰屋敷への道を歩いていた。
「…炭治郎、煉獄家で手に入れた情報について心当たりはあるか?」
リィンのその問いを聞いた炭治郎は暫く考え込んでいたがやがて以前父親が話していたことを思い出した。
「そう言えば…亡くなった父が昔ヒノカミ神楽とこの耳飾りだけは途切れさせずに伝えてほしい…ある人との約束だと言っていました…そのある人と言うのが誰の事かは分かりませんが…」
「なるほど…」
「興味深い話もある物だな!」
三人がそんなやり取りをする中、灰屋敷の前でしのぶが佇んでおり、それを見た炭治郎は「あれ?しのぶさんどうしたんだろう?」と首を傾げながら呟いた直後、しのぶが三人―と言うより杏寿郎に気づくと凄まじい怒りのオーラを放ちながら三人に歩み寄り三人はビクリと肩を震わせた。
「ようやく見つけましたよ煉獄さん…私に黙って勝手に抜け出して…一体どこに行っていたんですか?」
しのぶは凄まじい程の怒りのオーラを放っており、それを聞いた杏寿郎は「そう言えば伝えるのを忘れていたな!すまなかった!」と正直に謝り、しのぶは静かに「…そうですか…まあそれは良いですよ以後気を付けてください…ところでその怪我はどうしたのですか?リィンさん…炭治郎君…どちらでもよろしいので教えてください…」と二人に問いかけ炭治郎に続く形でそれを聞いた二人は震えながら「えっと…お…親子喧嘩です…」と炭治郎が答え、リィンも「槇寿郎さんと和解する前に物凄い親子喧嘩をしていたな…」と答え、それを聞いたしのぶは「そうですか…槇寿郎さんと仲直りが出来て良かったですね…ですが!」と言い放つと杏寿郎に対して「煉獄さん…安静にしているようにって言ってましたよね?それなのにとんだ大喧嘩をするとは一先ず話すことがありますのでついてきてくださいね…」と言うやり取りの後杏寿郎は半ば無理矢理蝶屋敷へと連行されて行き、炭治郎とリィンは何とも言えない表情でそれを見送る事となった。