ゴジラ最強論について思ったことを書きました。

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 転生したらゴジラだった。

 

 身長50メートル、体重1万トン。ゴツゴツした黒い岩肌に、背丈の倍にも及ぶ長い尻尾。三列ならんだ茨の背鰭を光らせながら、必殺の放射熱線を撃ち放つ。そんな最強の怪獣王ゴジラに、わたしは転生を遂げた。

 

 しばらくは人目を憚り、海底の地下空洞で慎ましく暮らしていたわたし。けれど、周りはそっとしておいてはくれなかった。

 

「巨大不明生物、確認!」

「バカな、これが本当に生物なのですか……!?」

「信じられません、まったく、信じられません……!」

 

 わたしが初めて発見されたのは20世紀に入る頃、海の底奥深く。海をのんびりクロールで泳いでいたわたしは、ついうっかりたまさか偶然不幸な事故で、地上を支配していた種族:人類に目を付けられてしまった。

 

「キューバ・ハバナ沖、メーン号沈没!!」

「原因は巨大不明生物との衝突か!?」

「我が国の船を沈めおって、おのれ、怪獣め!」

 

 当時我が物顔で地上を支配していた人類だけれど、そんな彼らも『いまや地球は人類だけのものではない』という事実、そしてわたしという人知を超えた怪獣:ゴジラの存在を知った。

 

「モナーク計画、発足」

「1945年7月16日、トリニティ実験開始」

「1946年7月1日、アルゴンヌ研究所設立……」

 

 新たに現れた『怪獣』という脅威に対し、人類は秘密裏に国家間で手を取り合って世界大戦を早急に終わらせ、どうするべきか対策を講じ始めた。わたしの話題で世界中が持ちきりだなんてまったくもう転生、じゃなくって、天性のスターはつらいヨネ☆

 

 ……まあ、ふざけてる場合じゃアないんだけどさ。

 身長50メートル、体重1万トン、当時考えられていた古代恐竜なんか目ではない桁違いのサイズ。その圧倒的な力と巨体を前に、人類は心の底から震え上がったという。

 だけど竦み上がったのは、ほんのひと時のこと。人類はすぐさま勇気を奮い立たせ、新たな脅威:ゴジラに立ち向かおうとした。

 

「10……9……8……」

 

 その実験は穏やかな南洋マーシャル諸島のひとつ、ラゴス島で行なわれた。

 全島民が避難したことで人っ子ひとりいなくなったラゴス島、その真っ白な砂浜に据え置かれたのは、爆撃機にも載せられないほど巨大な核爆弾。

 

「7……6……5……」

 

 人類の軍事関係者たちが遠くから見守る中、設置された核爆弾のカウントは進んでゆき、そして……

 

「4……3……2……1…………!」

 

 

ドッカァーン!!

 

 

 海のド真ん中に立ち昇ったキノコ雲。幾度も繰り返された、大国たちによる核実験。

 もちろん本来の意味での核実験(テスト)として行われたものが殆どではあったのだけれど、そのどさくさに紛れて違う目的で核兵器が使用されたケースもあったという。

 その中の一つが1946年のクロスロード作戦から始まる、ビキニ環礁での核実験。表向きの目的は『各種兵器に対する核兵器の破壊力を調査すること』、だがその裏には別の、恐るべき真の目的があった。

 

 ビキニ環礁での核実験、その真の標的はわたしのような怪獣(Titan)

 すなわち『ゴジラを殺すこと』だったのだ。

 

 キロトン級の原爆からメガトン級の水爆まで、当時としては最新鋭の兵器だった各種核兵器を取り揃えた人類は、海底で発見されたわたし:ゴジラに対する核攻撃を行使した。

 その破壊力と来たらまさに桁違いのものだった。たった一撃で数百万トンの海水を吹き飛ばし、標的とした島を跡形もなく消滅させ、美しかったサンゴ礁を綺麗に抉り取って死の海に変えてしまったという。

 

 まあ、それでもわたしは死ななかったんだけどね!(・ω<) テヘペロ

 

 当時の人類にとって最終兵器だった核兵器、それらの悉くがわたし:ゴジラには通用しなかった。ゴジラ人生初の核攻撃、当のわたしも最初こそビビったけれど慣れというのは恐ろしいもので、何度も喰らううちに日常になってゆき、ゴジラの果てしない生命力はむしろ核攻撃を受ける都度より強大なパワーアップを遂げていった。

 

 けいけんち 10000ポイントかくとく

 ゴジラは レベルが あがった!

 ちからが 10000ポイント あがった!

 みのまもりが 5000ポイント あがった!

 たいりょくが 3000ポイント あがった!

 スキル ヒートウォークを おぼえた!

 …

 

 わ、わたしツエー!! ディスガイアのレベル上げかよ。どこぞの異世界には300年間スライムを倒し続けてレベルがカンストした偉人もいたと聞くが、わたしの場合は核爆弾を喰らい続けてたらレベルがカンストしてしまったようだ。

 ここまで無敵で最強でチートだとちょっとはイイ気になっちゃうのが人情で、核攻撃を受けたあとのわたしはその健在ぶりを“存分に”アピールしてしまった。

 たとえば、こんな風に。

 

わたし「HEY HEY! わたしのハートを撃ち抜いてみろYO! ハートがダメなら、このフリフリのヒップでもいいZE!!」

人類「…………(怒)」

 

 ……いや、まぁ、わたしもちょっぴり、ほんのりわずかにちょびっとばかし、“調子に乗った”面は無くもなかったかもしれないけどさ?

 でも先に手を出してきたのは向こうだし、お互い様だもんねー。というかむしろ、こちらから攻撃を仕掛けたことは一度もないしー? ちょっとうっかりケアレスミスで軍艦何隻か沈めただけでこの有様、人類ってホントマジ大人げなーい。

 そんなわけでとりあえず、怪獣王のわたし:ゴジラと、地球人類による、互いに死力を尽くした戦いが始まってしまったのだった。

 

「戦車砲! 戦闘機攻撃! 二十四連装砲!」

 

 ンッンー、効かんなァ~?

 

「落とし穴作戦! 高電圧作戦! シャーベット作戦!!」

 

 ふっふーん、屁でもないぞ~?

 

「メーサー殺獣光線!」

 

 はっはっは効かん効かん……ってイテッ、イテテッ! 目は、目を狙うのはダメだって!!

 

「ファイヤーミラー! プラズマ・グレネイド! Gクラッシャー! フルメタルミサイル! D-03削岩ミサイル! アブソリュート・ゼロ!……」

 

 痛 ぇ っ て 言 っ て ん だ ろ (怒) ! ! ! !

 

「空間電位急上昇、熱線ですッ!!」

「ぐ、ぐあーッ! インフィニットバーニング放射熱線だとォ!?」

「もはや誰にも奴を止めることはできん!!」

 

 人類はあの手この手で新しい作戦や新兵器を考案し、わたしを倒そうとした。人類があんまり攻撃してくるものだから、わたしもちょっとはやり返した。

 そんなこんなで繰り広げられたゴジラと人間の戦いは、熾烈を極めることとなった。

 

「また、負けた……!?」

 

 ……まぁ、勝つのはわたし:ゴジラだけどね。

 人類の作戦はいつも良いところまではいくのだけれど、最後は必ずわたしが勝利した。当然だ。なにしろわたしは怪獣王、ゴジラなのだから。

 他方、わたしに対する人類の攻撃は、エスカレートの一途を辿っていった。

 

「ディメンションタイド、血液凝固剤によるヤシオリ作戦、オペレーション=グレートウォール、メカゴジラ=シティ、ワダツミ作戦……いずれも通用しないとは!」

「こうなったら人類叡知の光、『核』に頼るしかあるまい!」

 

 えぇー、またぁ? これ以上の核爆弾はレベルカンストしてるから要らないんだけどー?

 

「今度はありったけの核兵器を投入だ! 史上最大クラスの水爆を150連発ッ!!」

「どーだゴジラめ、これなら流石の貴様も死ぬだろう!!」

 

 ちょ、ちょっとやりすぎじゃ……まぁ、それでも死なないんだけどね、だってゴジラだし。

 

「ツァーリ・ボンバ級の150連発も効かないだと……ゴジラは本物の化け物か……!?」

「おのれゴジラめ、奴のせいで放射能汚染が広がり、気候変動で核の冬が訪れてしまった!」

「まったく許さんぞ、ゴジラめ!!」

 

 いやあ、それは人類のせいでしょ~?

 たしかにわたしは水爆大怪獣ゴジラ、全身に放射能を帯びている。だから、あちこちで放射能汚染をバラまく結果になったこともある。

 けど、『行き過ぎた核攻撃による核の冬』なんて、いくらなんでもそこまではわたしのせいじゃないよ。核爆発で天気が変わるのはよくあることだけれど、そんな沢山の核爆弾を撃ちまくったりしたらそりゃ気候変動だって起きるんじゃないかなぁ……?

 やはり人類は愚か。まったく、やれやれだぜ。

 こんな風に、そろそろ人間との争いに嫌気が差し始めたわたし。そのぼやきを他所に、人類の方はますますムキになっていったのだった。

 

「まったく、常識外れの怪獣王め……!」

 

 そうやって加熱してゆく憎しみ、恨み、争い。それらを目の当たりにして、今度ばかりはわたしも反省した。

 ……もう、辞めようよ、人類。

 なあ人類、わたしも悪かった、ちょっと調子に乗り過ぎたよ。これからはわたしも大人しくする。だから、君たち人類も我々怪獣との平和共存路線をだね……

 

「ならば、死なばもろともだ!」

 

 って、聞けよ人類っ!

 

「とうとう完成したぞ、最新の高次元反応兵器にして最終兵器、エーテル破壊爆弾ッッ!!」

「グハハハ、聞いて驚けゴジラめ、最大出力であれば惑星もろとも吹っ飛ばすことのできる史上最強の破壊力だッッ!!」

「クックックッ、このエーテル破壊爆弾があれば、たとえゴジラであろうとも……ッ!!」

 

 ちょ、ちょっと待っ……

 こればかりは流石のわたしも止めようとしたけれど、もう遅い。血迷った人類たちは容赦なく、起爆スイッチを押してしまった。

 

 ――カチリ、ピカッ……!

 

 そしてきらめく、純白の閃光。

 エーテル破壊爆弾の炸裂は、地球のすべてを破壊し尽くしたのだ。

 

 

 

 

 エーテル破壊爆弾は、凄まじかった。

 たとえば、それまでの人類にとって史上最大の兵器と言えば最強の水爆ツァーリ・ボンバだったけれど、それだって地表を焼き払うのがせいぜいで、惑星そのものを破壊できたわけではない。

 けれど、エーテル破壊爆弾は違う。従来の核兵器とは異なる原理で動作する全く新しい高次元反応兵器、それがエーテル破壊爆弾だった。

 高次元エネルギーを取り入れた史上初の兵器として実戦投入されたエーテル破壊爆弾は、文字通り“別次元”の破壊力を発揮した。炸裂した熱量は最低でも300兆テラジュール、地球上に存在する核兵器をすべて合わせた量の934億倍にも及んでいた。それこそ、造り出した人類自身が想定していたよりも遥かに強力な。

 

 つまり、地球は木っ端微塵になってしまったのだ。

 

 地球の地殻は平均して深さ30キロメートル、その上っ面の地表で蔓延っているだけに過ぎない人類など、ひとたまりもなかった。かくして地球で栄えていた人類文明は一瞬にして消し飛び、一欠片も余すことなく滅亡してしまった。ちーん、南無~。

 

 そして何より、わたしは死ななかった。

 

 エーテル破壊爆弾の直撃を食らい、地球上の森羅万象すべて、さらには地球という惑星そのものまでもが消え失せてしまっても、わたし:ゴジラだけは死ななかった。

 たしかに身体はバラバラに裂かれ、ミリ単位の粉みじんに粉砕されてしまったけれども、そこは不滅と恐れられたゴジラ細胞だ。気がつくと元の通り、身長50メートル体重1万トンのゴジラへと完全再生していたのだった。

 そういえば過去の人類との戦いにおいても、心臓や肉片だけで生き延びて復活を遂げたこともあったっけ。だからまあ、粗挽きミンチのこんがりジューシーハンバーグにされた程度では死なないのだろう。多分!

 

 それにしても、なんて皮肉で、なんて馬鹿げた結末なのだろう。

 わたしという最強の怪獣ゴジラを生み出した地球の人類は、勝手にわたしを敵視して勝手に勝てもしない戦いを挑み、勝手に戦いをエスカレートさせていった挙句、とうとう自分で自分にトドメを刺してしまったばかりか地球そのものまでも滅ぼしてしまった。

 しかも、そこまでやっても肝心のゴジラを倒すことだけは出来なかったのだ。もしこれが戯曲なら、なんて酷いストーリーだろう。ポルノグラフィティ。イイ曲だよね、アゲハ蝶。

 

 ……わたしは独りぼっちになってしまった。

 母は別にたずねてないし三千里どころか何万キロメートルだよ故郷も遥かな北を目指すどころか虚空の彼方だよって感じだけど、惑星爆発から生き残ったわたしは文字通りの天涯孤独、あの地球で生まれついた生きとし生ける物の中で唯一の存在になってしまった。

 とはいえ、いつまでもこうして宇宙空間を漂ってばかりはいられない。どこか生命のいる新天地、棲み良いホームスイートホームに辿り着かなくては。

 RRRRRRRYYYEEEEEEEE(ルルルルルルルイイイイイイイイイイイ)!! 宇宙空間だとォ~!? ……フンッ! このキングオブモンスター、ゴジラ様を舐めるなよ!

 

 口から放射熱線を噴出させて!

 その圧力抵抗で軌道を変え!

 生命のいる惑星へ辿り着いてやるわ!!!!

 

 かつてヘドラと戦ったときのことを思い出しながら、わたしは放射熱線を噴出させて宇宙航行を開始した。なにしろわたしは怪獣王ゴジラ、その気になれば放射熱線で空だって飛べるのである。

 ……このときのわたしには、勝算があった。

 ドゴラ、妖星ゴラス、ガイガン、ゴロリン、ドロリン、ミレニアン、そしてキングギドラ。かつて棲んでいた地球を襲った数々の宇宙怪獣ども。奴らのような宇宙からやってきた怪獣がいるということは、『地球以外にも生命のいる惑星がある』ということだ。つまり、ちょっと気合と根気は要るかもしれないが、こうして宇宙を移動し続ければいずれはどこかに辿り着けるはずなのであーる!

 そんな希望を胸に抱き、わたし:ゴジラは広大な20xx年 宇宙の旅を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 それから、あっという間に時間が経ってしまった。

 何年、何十年、何百年、いや何千年? 下手すると二万年くらいは経ってしまったかもしれない。『二万年早いぜ』? うるせー、CV宮野真守。『何十年 何百年 何千年 時を超えよう 君を愛してる』? じゃかあしいわ、GReeeeN。

 とにかく、それほどの時間をかけて宇宙の旅を続けてみたのだけれど、それでもわたしは生命のいる惑星なんてものにはちっとも辿り着けなかった。

 

 ……いやー、宇宙の広さ、ナメてたわー。

 『仮に宇宙人がいるとして、地球へ滅多に接触してこないのはなんでやねん』というツッコミ、いわゆる『フェルミのパラドックス』だけれど、わたしはそれを身をもって体感する羽目になった。たかだかゴジラ一匹が闇雲に宇宙空間を探し回って棒に当たるレベルだったら、こんなツッコミされないよな。

 同時に、我が宿敵キングギドラについて『あいつも、これだけの距離をずっと独りぼっちで旅していたんだろうか』と思い至る。

 かつて金星だかどっかを滅ぼしたという宇宙超ドラゴン怪獣キングギドラ、あいつもずっと宇宙を旅してきて、やっとの思いで地球に辿り着いたのだろうか。今までずっと『地球へ攻め込んでくる気に喰わない黄金野郎』としか思っていなかったけれど、いざ同じ宇宙を旅する境遇になってみると共感というか敬意すら湧いてきてしまった。今度会ったらもうちょっと優しくしてやろう。せめてブブ漬けくらいは出してあげよう。そう思った。

 

 棲める惑星を見つけること自体はすぐに出来た。

 たとえば火星なんかはちょっと重力の加減が違ったけれど、あそこは地球に最も近い惑星だ。怪獣王ゴジラであるわたしなら火星で暮らすことは決して不可能では無かったし、実際最初の頃はそこに移り住んでみたこともある。

 ……のだけれど、問題は『生命のいる惑星』というところだった。

 仮にどこか惑星へ辿り着いても大抵は石と荒野ばかりの星で、生命らしいものは人っ子ひとり猫の子一匹、それどころか細菌一匹すらみつからなかった。まあ細菌が見つかったところでどうなんだよ、って話なんだけどね。話し相手になってくれるわけじゃないし。

 

 うえーん、さびしーよぉ~!!

 

 これじゃあカーズ様の末路みたいじゃねーか!

 しかもわたしは悪いことをして地球から追放されたわけではない、悪いのは地球を吹っ飛ばした人類、むしろわたしは一方的に攻撃を仕掛けられまくっていた被害者のはずだ。なのに、なんでわたしがこんな目に遭わにゃならんのだ!?

 誰でもいいし、もうどこでもいい! もう『日当たりの良い、暖かい南洋リゾート一等地』だなんて、ゼータクは言いません! 人類、X星人、あるいはキングギドラだっていい!! とにかく誰か、誰か、わたし以外の誰か、いや生命はいませんか!? お話しよ!? お茶淹れるよ!? だからどうか、どうか、わたしを独りぼっちにしないでくれぇー!!……

 わたし:ゴジラの猛々しい咆哮が虚しく響く。けれど、それを聞いてくれる者など、この広い宇宙空間のどこにもいやしなかった。

 

 ……ゴジラは、2度と生命のいる惑星へは辿り着けなかった。

 鉱物と、生物と、あとその他自分でもなんかよくわからないもちもちした物体との中間の生命体となり、永遠に宇宙空間を彷徨うのだ。

 そして、死にたいと思っても死ねないので。

 

 そのうちゴジラは、考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コッ、ツン☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……痛ってーなコノヤロー、やんのかゴラァッ!!

 

 そう頭をさすりながらまばたく宇宙のデスティニー、金色(きんいろ)の眠りから覚めたわたし。その目の前には、巨大なクリスタルの毬栗(いがぐり)がひとつふよふよ浮いていた。

 ……ぱちくり。ナニコレ。

 改めて目をしばたかせてみると毬栗(いがぐり)ではない、隕石である。わたしは果てしない宇宙を漂ううちに、いつのまにか隕石へ正面衝突していたらしい。

 そしてさらに奇妙なことに、隕石から“声”が聞こえてきたのである。

 

「……おい。」

 

 ……! し、信じられねぇぜ……こういうのを奇跡っていうんだな、めったにある事じゃねえ……

 

「ふふふ、その様子だと相当長いこと宇宙を彷徨ってたみたいだな……さあ、この深宇宙の最果てで俺に出会えたことを感謝するがい

「こんな宇宙の片隅に『公衆電話』があるなんてッ!!」

「公衆電話じゃねーよっ!! アタマだいじょーぶかオメー!?」

 

 ……むむむ、わたし迫真の『ドッピオくんの物真似』が伝わらなかったか。そういえばドッピオくん、『ディアボロの元人格である説』と『飽く迄もディアボロの演技である説』の二つがあるけどどっちなんだろうね?

 

「知らねーよっ、なんの話をしてんだ!?!?」

 

 な、なにぃー!? ジョジョを知らんのか貴様ー! 怪獣ゴジラであるわたしですら、荒木飛呂彦先生の傑作大河マンガシリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』は知っとるぞー!? ……前世からの知識だし、ジョジョランズ以降はちゃんと読めてないけど。

 

「マンガの話かよ!! おまえの星のマンガなんぞ知らんわ!!!!」

 

 ちっ、ジョジョの奇妙な冒険、それも珠玉の第五部『黄金の風』を知らんとは教養のない奴め。あれは全怪獣、いいや全宇宙の全生物が読むべき偉大なマンガだぞ……っ!

 ……とまあ、そんなことはさておいて、あなたはだれ?

 わたしの問い掛けに、隕石は「ま、マイペースな奴め……うおっほん!」と大仰に咳払いしつつこう答えた。

 

「我が名は〈虚ろなる者〉。深遠なる宇宙空間を彷徨う高次元コスモゾーン共生体であるっ!!」

 

 ふーん、虚ろなる者ねぇ……じゃあ、ウツロちゃんでいいか。

 

「う、ウツロちゃんって……まあいい。そんなことよりオマエ、おおかた故郷の惑星を追い出されたか失ったか、そういうクチだろう?」

 

 うーん、追い出されたわけじゃないけど……まあ確かにそういうクチですが、なにか?

 そう促すと、興に乗った様子のウツロちゃんは如何にもカッコつけた風でこんなことを言い出した。

 

「……力が欲しいか?」

 

 ……チカラ? パワーとかフォースとか、そういう力?

 

「そうだとも。全宇宙を支配できるパワー、全知全能、最強無敵のチート能力だ。どうだ、欲しいだろう?」

 

 うーん、要らないかなあ。

 

「力が欲しいなら、くれてや……え、要らない??」

 

 ええ、要らないよ。

 そう答えるわたしに、ウツロちゃんは明らかに動揺した様子で問い質してきた。

 

「え、ホントに? ホントに要らないの??」

 

 ……ウツロちゃん、ちょっと面白いな。内心でそう思いつつ、わたしは柱の男を見たドイツ軍人ばりに狼狽えるウツロちゃんに言い放った。

 ……いや、だってこちとらゴジラだぜ? もう既に最強無敵じゃん。主人公補正バリバリの効きまくりじゃん。だいたい核のエネルギーで何とかなるじゃん。今更どんなチート能力があるのさ?

 そうやって自分の考えを述べるわたしにウツロちゃんは唖然としていたが、やがて気を取り直して言い返してきた。

 

「……ふ、ふん! 向上心のない奴め! カマトトぶってんじゃあねーしっ、そんなこと言って、本当は力が欲しい癖に!!」

 

 まあ上昇志向旺盛なのは善いことだけど、身の丈ってのも大事だと思うよ~?

 いくら強くなったって、故郷が吹っ飛んで数万年も独りぼっちで生き残る羽目になったらイヤじゃん?? 実際わたしはそうだったし、それでお互いに調子に乗って行き着いた果てが地球滅亡だったしねぇ~。

 それに『力が欲しいか……』って、手口がもろに『猿の手』じゃん。

 

「ギクッ」

 

 あ、『猿の手』は知ってるんだ。

 ちなみにナウでヤングな読者の皆のために説明しておくけれど、『猿の手』というのはホラーの古典小説のこと。呪いのアイテム:猿の手を手に入れた老夫婦が些細な願いを叶えてもらおうとした結果大切なものを失ってしまう、というお話。まあつまり『そんな美味しい話、世の中そうそう転がってない』ってことである。

 ちなみに『猿の手』、DCEUの映画『ワンダーウーマン1984』でもネタにされてたりします。ワンダーウーマン1984、あんまりヒットしなかったけど超面白かったからオススメしときます。皆も観ようぜ、ワンダーウーマン!

 

 ……で、とにかくウツロちゃん。あなたの言ってる奴も、願いを叶える代わりに何か大事なものを奪うとか、魂をもらうぞ!とか、どーせそういうろくでもないリスクがあるんでしょ~? そういうウマい話には裏がある的な奴、お決まりなんだからね~?

 

「ソ、ソンナコトナイヨー……」

 

 わかりやすっ。嘘つけ、絶対あるだろ!

 

「ぷるぷる、ぼく、わるいキョウセイタイじゃないヨ……」

 

 なんだその反応。というかジョジョは知らないのに、なんでドラクエは知ってるんだよ。おかしいだろ、色々と。

 ……という具合にやり合っている最中のことであった。

 

 

 迫ってきたのは、二体の黒い影。

 

 

「げ」

 

 げ、ってなんやねんウツロちゃん。明らかにマズイ感じの反応ですよねそれ!? わたしがそう問い詰めるまでもなく、ウツロちゃんは言った。

 

「クリスタラックとオブシディウス……この辺りを縄張りにしている宇宙怪獣だ、よりによって二体がかりかよ……っ!」

 

 クリスタラックにオブシディウス? 聞いたこともない名前だったが、全身にクリスタルの背鰭を生やしたクリスタラックと、黒曜石(OBSIDIAN)を思わせる黒い体のオブシディウス、言われてみればたしかに『名は体を表す』という感じの風体である。

 まあこっちはゴジラだから負ける気はしないんだけどね。えーい、放射熱線を喰らえっ!

 自慢の放射熱線を浴びせるわたし。大概の怪獣はこれで一撃必殺、そのはずだった。

 

 ……き、効かないだとぉ~!? 

 

 途端、クリスタラックの体表に光の壁が迸り、なんとわたしの放射熱線を弾き飛ばしてしまったのである。

 ヤケクソになったわたしは何度も放射熱線を浴びせてみるが、クリスタラックは平気の平左、まるでバリアーで防ぐかのように放射熱線が通用しない。

 続けてわたしはオブシディウスに放射熱線を浴びせてみたけれどオブシディウスも同じだ、オブシディウスに至っては単に体が頑強でバリアーすら張っていない。

 宇宙怪獣二匹にまるで歯が立たないゴジラのわたし、そんなわたしを横目で見ながらウツロちゃんが言った。

 

「フハーハハハ! どーだゴジラこれで思い知っただろ、おまえが如何に非力で弱い存在か!」

 

 変なところで勝ち誇ってる場合か!? あんたも狙われとるがな!!

 

「ふん、そんなはずは……あいてっ!?」

 

 クリスタラックとオブシディウスの奴、どうやらウツロちゃんも排除すべき敵であるとちゃんと認識したらしい。わたしを攻撃する傍ら、ウツロちゃんの封じ込められている隕石にまで攻撃を仕掛け始めた。

 

「し、しまった、こいつらも共生体だったか……っ!?」

 

 「サッカーしようぜ! お前ボールな!」とでも言わんばかりに、クリスタラックとオブシディウスから足蹴にされて弄ばれるウツロちゃんの隕石。ボールは友達っていうけど、友達を足蹴にするんかいってのはよく言われるツッコミだよね。

 

「いてっ、いてててっ……お、おいゴジラ! そこでまるで他人事みたいに傍から笑って見てるけど、俺がやられたら次はお前だからな!?」

 

 言われてみれば、たしかにそうである。まあわたしは、今のうちに放射熱線で宇宙飛行して逃げればいいだけなんだけれど。

 

「この薄情者ー! 目の前で甚振られてる俺がカワイソーとは思わんのか!?」

 

 いや、ウツロちゃんとは今ここで会ったばっかだし……。

 

「ご、ゴジラ、いやゴジラ様っ、どーかおねがいしますっ、お助けを、慈悲の手を差し伸べてくださいっ、お願いしますぅぅっ!!」

 

 うーん、しょうがないなあ。たしかに、このまま見捨てたら寝覚めが悪そうだしね。

 ……で、どうしたらいいの? 

 

「『力が欲しい、欲する』と応えろっ、そうすれば契約が成立、融合が行なわれるっ!」

 

 ふーん、そうなんだ。えーと……

 

 

 『力が欲しい』?

 

 

 それを口にした途端、わたしの意識は闇へと落ちた。

 

 

 

 

 

 

 ……クククク。

 

 クーククク!!

 

 フハーハハハハハハハハ!!!!

 

 馬鹿な奴め! そのまま逃げておけばよかったものを、契約と同時に『体を乗っ取られる』ことになろうとはよもや夢にも思うまい!

 あの石ころに封じ込まれて幾億年、この瞬間をいったいどれだけ待ちわびた事か……ようやく再起を果たす時が来たっ! そして今度こそあのクソ忌々しい『一つにして無数』に復讐を……

 

 ――ふーん、そういう魂胆だったんだ~。

 

 ……!?

 

 ――ウツロちゃん、いわゆる「脅威の大宇宙パゥワァー!! だけどオウチが狭いの……」って奴だったのね。可哀想に。

 

 お、オマエっ、馬鹿なっ、意志は完全に封じ込めたはず……!?

 

 ――ふん、ゴジラ細胞ナメるんじゃあないよ。こちとら、X星人からM塩基で洗脳されそうになっても気合いと根性と核のパワーで乗り切ったゴジラ様だぜ。ちょっと力んで……

 

 ふ ん ぬ っ ! !

 

 そうして肉体の主導権をあっさり奪い返すわたし。他方、ウツロちゃんはというと……

 

「な、なにぃー!? 高次元生命の肉体支配を跳ね除けるとは……いったい何なのだ、ゴジラ……ッ!?」

 

 わたしの脳内の片隅へとすっかり追いやられていた。ウツロちゃんが与えてくれたチート能力はそっくりそのままわたしのもの、そしてウツロちゃん自身はもはやわたしの脳内で語りかけてくることしかできなくなってしまった。

 

「ぐ、ぐぬぬ、なんてやつだ……」

 

 ふふーん、キングオブモンスター、ゴジラを舐めるなよ!!

 わたしが得意気になっていると、ウツロちゃんが声を荒げた。

 

「お、おい、そんなことしてる場合かっ、宇宙怪獣どもが迫って来るぞっ!!」

 

 ……おっとそうだ。今は、コントをしている場合では無いのだった。

 わたしたちへ襲い来る二大怪獣クリスタラックとオブシディウスに、パワーアップしたわたしは改めて対処を試みる。

 まずはえーと、いつものとおり放射熱線を……そうやって口を開いて必殺の放射熱線を放とうとするわたしだが、実際に発射されたのはいつもの見慣れたチェレンコフの白色光では無かった。

 

 

 撃ち出されたのは紅蓮の猛火、そして稲妻閃光。

 

 

 うおっ、わたし自慢の放射熱線が、なんかよくわかんない卑猥なオレンジくねくねビームに!!

 

「卑猥なくねくねビームゆーなし! 太陽風のエネルギーを応用した死の破壊光線、〈コロナビーム〉だ!!」

 

 今の御時世、カードゲームにしたら発禁になりそうな名前だなオイ!

 ……まあ、確かに威力は凄いみたいだけどね。クリスタラックの奴、さっきは放射熱線を弾き飛ばしていたのに、コロナビームについては掠っただけで全身が焼け爛れてドロドロに融けてしまっている。

 クリスタラックが悶え苦しんでいるあいだ、今度はオブシディウスが襲い掛かってきた。わたしは直感的に両肩の結晶を振り上げる。

 

 わたしの両肩から放たれる、緑の光波。

 

 ……およよ? オブシディウスの奴、向かってくるはずの動きがピタッと止まっとるやん。懸命に藻掻いて空中遊泳を試みているオブシディウスだったが、こちらには一向に近寄れない。カリ城のルパンみてぇ、おもしれー。

 いったい何が起きてんのコレ? わたしの質問に ウツロちゃんが得意気に答えてくれた。

 

「反重力光線グラビトルネード! 重力を操作して相手を操る技だ!」

 

 ははあ、なるほど。相手に重力波を浴びせて動きを封じる技か。

 こりゃあたしかに、宇宙空間での戦いでは便利だろう。真空の宇宙空間は空気抵抗が無いから、一度運動が加わってしまうと止めるのは難しい。そんな微細なバランス調整が必要になる宇宙での戦いで、こんな風に重力を操る能力なんてまさにチート能力としか言い様がない。

 そして、動きを止めることが出来るということは、動きを変えることも出来るということである。わたしはグラビトルネードをより強く働かせ、オブシディウスに思いきりぶつけてやった。

 

「っ!?」

 

 途端、オブシディウスは進もうとする方向とは真逆の後ろに向かって飛び立ち始めた。なおもわたしに襲い掛かろうとオブシディウスはますます力を込めて暴れたが、真逆方向の反重力を浴びせられてしまってはもはや抵抗しようもない。

 かくしてオブシディウスの体はわたしとは反対方向、無限の彼方に向かって飛んで行ってしまった。バイバーイ、もう二度と襲ってくるんじゃねーぞ~!

 

「お、おい、後ろ!!」

 

 ……おっとっと!

 ウツロちゃんの警告に反応し後ろへ振り返ると、今度はクリスタラックが戦線に復帰してきた。全身大やけどの満身創痍のクリスタラック、だがまだやる気らしい。

 ……やれやれ。苦しめて甚振るのは、ショージキ趣味じゃあないんだけどねぇ。

 内心で溜息をつきつつわたしは本能で尻尾を振るって、その先端の結晶部分をクリスタラックの胴体ド真ん中に突き立てた。

 そしてすかさず力を込めると、クリスタラックの全身に苛烈な放電が迸った。ただでさえ全身黒焦げなのに今度は体の内側からウェルダンに焼かれてしまい、クリスタラックが悶絶の悲鳴を上げる。

 咄嗟にオリジナルの新技を繰り出したわたしに、ウツロちゃんは驚いていた。

 

「クリスタル部分を刺突武器として応用し宇宙エネルギーを流し込む技か……名付けてテールスマッシャーってところだな……っ!!」

 

 ……ウツロちゃん、なんかめっちゃ楽しそうだけど、ひょっとしたら根はスピードワゴンみたいな解説キャラなのかしら? いや、まあいいけど。

 焼き尽くされて塵へと還るクリスタラックの死骸を尻目に、わたしはそんなことを思ったりした。

 

 

 

 

 かくしてクリスタラックとオブシディウスを始末したわたしたちは、宇宙の旅を続けた。

 

 まずウツロちゃんが融合したことで、わたしの旅は格段にラクになった。これまでは放射熱線のロケット噴射でチマチマ飛ぶことしか出来なかったけれど、超次元結晶生物のウツロちゃんが融合してくれたおかげで今のわたしは光速飛行、ひいては空間を捻じ曲げて何光年もすっ飛ばしてしまうワープ航行も可能になった。それまで数万年かけた移動も、ウツロちゃんと一緒の光速飛行ならひとっ飛びだ。

 それに何より、ウツロちゃんという話し相手が出来てくれたことは、何よりも嬉しかった。それまでわたしより遥かに長い時間を旅してきたというウツロちゃんは、わたしの知らないことをたくさん知っていた。

 

「……とまぁ、この宇宙にはオマエのように、故郷の星を追われて宇宙を彷徨うことになった怪獣がごまんといる。我々はそういう怪獣と融合することを生存戦略とする、ある種の寄生体というわけさ」

 

 なるほど~。クリスタラックやオブシディウス、はたまたキングギドラも、宇宙怪獣と呼ばれるような奴らはそうやって故郷を失って宇宙を彷徨うことになった存在だったのかもしれないなあ。しかし、故郷を失った怪獣相手に寄生して生きる生物だなんて、また随分マニアックなことをしている気もするけれど。

 

「まあ、宇宙は広いからな。どんな隙間(ニッチ)にも生き物が生存し得る余地はあるということだ」

 

 そんなこんなで孤独な一人旅はウキウキ楽しい二人旅へと変わり、そうして大宇宙の天涯を飛び続けたその先でわたしたちが辿り着いたのは……

 

 

 ……地球?

 

 

 それはもはや何万年、いやもはや数字で表すことすら億劫になるほど遠い昔に失われたはずの、わたしの生まれ故郷。

 そこはかつてわたしが生まれた太陽系の第三惑星、地球にそっくりだった。厳密にはわたしが最後に観たのはエーテル破壊爆弾で吹っ飛ばされたときのことだから、こんな風に宇宙の外から眺めるのは初めてなのだけれど。

 とにかく青い海に白い雲、陸地があるのも、大気の組成も、地上に動植物たちが沢山生息しているところまで、何から何までそっくり同じだ。

 わたしがそのことをウツロちゃんに話してみると、流石のウツロちゃんもひどく驚いていた。

 

「『10^10^118光年ほど超えた宇宙の果てと果てには、そっくり同じ天体系が存在し得る』というのは聞いてはいたが……まさかその実例とお目にかかるとはな」

 

 そうしてひとしきり感心したあと、ウツロちゃんはわたしに言った。

 

「まあ、此処ならオマエの生体構造とも相性が良さそうだし、オマエが良いならここにしようと思うけれど。どうだ?」

 

 故郷そっくりの惑星をホームスイートホームに出来るなんて、もちろん(やぶさ)かではないっ!

 さっそくわたしは大気圏を突破、成層圏へと突入し、地球の街並みが見えるところにまで降りてゆく。

 間近で目にした新しい地球の姿、それはかつてエーテル破壊爆弾で吹っ飛ばされたものと何から何までそっくり同じだった。

 そして当然、わたしたち怪獣を目の当たりにした反応まで。

 

「な、なんだあの怪獣はっ!?」

「ゴジラが、空を飛んでいる……!?」

「宇宙怪獣だーッ!!」

 

 突如飛来したわたしたちを見上げながら恐れおののく、地球の人類たち。

 ……くぅ~っ、懐かしいこの感じ! 久々すぎてたまらんねっ!!

 地球の上空を一通り飛び回りながら一人はしゃいでいるわたし、それをウツロちゃんは胡乱な様子で見ていた。

 

「共生しているとはいえ、オマエの感性はよくわからんな……まあ、気に入ったならいいけれど」

 

 そうやってひとしきり呆れたあと、区切りの良いところでウツロちゃんが指示した。

 

「あの辺りがいいかもしれんな」

 

 ウツロちゃんが指し示したのは日本列島、北九州地方の都市部。

 ……あ、博多じゃん。あそこ、なんかあるの? わたしが訊ねると、ウツロちゃんはこんな風に答えた。

 

「我々共生体が拠点を築くのには、ああいう高い建物がある方が都合が良いのさ。宇宙エネルギーのアンテナとして使えるからな」

 

 へえ、なるほど、福岡タワーなんかまさにそんな感じだもんねえ。

 ……ところで、通りもんは好き? チロリアンはどう?

 

「トーリモン? チロリアン? なにそれ?」

 

 えっ、知らない?

 

「おおかた地球のローカルネタだろうが……宇宙生物の俺が知っていると思うか?」

 

 そ、それもそうか……いや、いくらなんでも博多行くのに、通りもんもチロリアンも知らないなんて! いくら長生きしてるからって、それじゃあまったく人生損してるよっ!!

 

「そこまで言うか??」

 

 まあ通りもんについては最近セブンイレブンでそっくりなの(通称:ジェネリック通りもん、正式名称:みるく餡まん)が売ってるらしいけど、やっぱり本場のを食べなきゃね。あ、あと屋台のバリカタ豚骨ラーメンも美味しいよ! モツ鍋も最高だから是非食べていきたいなあ~!

 

「……遊びに行くんじゃあないんだが?」

 

 ええ、わかりますとも。レッツ・エンジョイ、地球征服! その星の霊長を打ち倒し、目指すは新たなホームスイートホーム! そして日当たりの良い、暖かい南洋リゾート一等地をゲットだぜ!

 ……でしょう?

 

「……まあ、今はそれでいいか」

 

 あ、そうそう、ウツロちゃん。

 

「今度はなんだ??」

 

 前々から気になってたんだけど、わたしたちのコンビ名ってなんか決まってたりするの?

 

「コンビ名?」

 

 そうそう、とわたしは頷く。

 会ったときのウツロちゃんは、今のわたしたちの在り様のことを『共生体(symbiotic)』って言ってたけど、なんかアメコミのパクリみたいだし、もっとこう、カッコいい名前にしたいなあと思っていたのだ。

 どんなものにも名前は必要、せっかくだしなんかコンビ名を考えようよ~……と提案してみたのだが、ウツロちゃんはイマイチ乗り気ではないようだった。

 

「そんなの適当で良いだろ。超ゴジラとかでいいんじゃね?」

 

 ウツロちゃんの投げやりな答えに、わたしは顔を顰めた。

 超ゴジラって、そんな安直な……ドラゴンボールじゃあるまいし、もうちょいオリジナリティのある名前にしようよお。

 

「気に入らないならそっちで好きに考えてくれ」

 

 あ、そう? じゃあこっちで決めちゃうね。うーん、ウツロ、虚空、空間(Space)……ああ、そうだ!

 わたしは思いついた名前を、ウツロちゃんに提案してみた。最高にカッコいい、わたしたちのコンビ名を。

 

「……それ、カッコいいのか?」

 

 え、カッコいいじゃーん。『宇宙のゴジラ』ってニュアンスも入るし、ダブルミーニングってことで。どーよ?

 

「……ま、まあ、オマエが気に入っているならいいんじゃないか?」

 

 よっし、決まりね~!

 ……かくしてわたしたちは地球史上最凶最悪の『戦闘生命』『宇宙凶悪戦闘獣』『虚空の侵略者』の異名をとる宇宙怪獣〈スペースゴジラ〉としてこの天体系まるごと総てを恐怖のドン底へ陥れることになるのだが、それはまたのちの話である。

 




『怪獣黙示録』『PMG』の続編でスペースゴジラのアイデアがあったらしくて読みたいな~と思ってたんですけど、なかなか続きが出ないので自分で書きました。
主人公

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  • 新人ボクっ娘ウルトラ戦士、地球に赴任する
  • 天体制圧用四次元炸裂兵器ブルトン
  • キノ「ゴジラが来た国」
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使用楽曲コード:08904286,09630082,14938405

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