低カロリーなタフチーンの作り方を教えてください   作:猫好きの餅

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こういう幼馴染が欲しかった(血涙)

タフチーン実際に作ってみたんですけど、結構美味かったっす。

味は一言で言うと「カレー焼きおにぎり」


本編
肉と米と油で焼き上げた料理がハイカロリーじゃないわけないだろ


 

□□□□□

 

 

 

ーーー鳥肉と水を鍋に入れ、水分が少し残るまで煮る。

 

 

 調味料と卵黄、ヨーグルトを混ぜた液に鳥肉を漬け込む。

 

 

 鍋に水と米を入れて火にかけ、少し芯が残った状態でザルにあける。

 

 

 油大さじ3杯、鶏肉を漬けた液を半ゆでの米と合わせて鍋の底を囲うように敷く。

 

 

 鳥肉を乗せて、その上に米を乗せる。これを数回繰り返して層になる様にする。

 

 

油と鳥肉の汁、ヨーグルト液を表面に注いで蓋をして、布を被せて蒸し焼きにする。あいつは1時間と15分くらいのお焦げが好み。

 

 

「……できた」

 

完成した「タフチーン」という料理を鍋をひっくり返し、包丁を入れて皿に盛る。見た目はケーキの様だけど中身はゴリゴリの炭水化物と肉の塊だ。

 

1口食べてみると味は案外素朴め。ヨーグルトの酸味が一見ミスマッチかなと思うけど使った香辛料の香りと意外と合って美味い。それにしっかり煮込んだ肉とその汁まで沢山使ったので米と合わさってボリュームが凄い。1切れでお腹いっぱいになりそうだ。

 

そう、美味いし量多いし腹持ちも良い。俺の幼馴染が踊りの合間に食べるのもまぁわかる。わかるよ?……でもさぁッ。

 

「ハイカロリー過ぎるわぁああああああ!!!」

 

思わず厨房の天井を仰ぎ叫ぶ俺。なんとか改良を加えてもなお溢れるカロリー。肉をむね肉にして、主流だったオーブン焼きから蒸し焼きにまでしたってのに、全然ダメだ。つか米と卵と肉を詰め込んで焼いた料理だからどうやってもそうなる。いくらグランドバザールの人気料理でも1日1度食べれば多い方だ。

 

「ん?クーファ、またタフチーンの試作か?」

「ジュートさん、お疲れ様です。いや、今日のあいつの分ですよ」

「お前も飽きないな。ひとつ貰ってもいいか?」

「あ、はい。ジュートさんの香辛料も使ってます」

 

厨房を覗いた香辛料商人のジュートさんに味見をしてもらうと、十分に美味いと太鼓判を押された。

 

「うん、これは美味いな。オーブン焼きとは別で売っても行けるとは思うよ。……ニィロウはどっちを食べると思う?」

「そりゃジュートさんの方に決まってますよ。だってそっちの方が美味いっすもん。あいつが食べてくれるのは、ただモラが掛からないからですよ」

「そんなことないとは思うけどなぁ」

「俺のタフチーンは言わば引き算した結果です。オーブン焼きを蒸し焼きにして、肉をあっさりしたのに変えて。味にしてみれば計算元が1番いいのが当然でしょう?」

「でも、煮たむね肉はしっとり柔らかいし、蒸したおかげで余分な油が抜けてこれはこれでいいぞ?生地の周りの油はしっかり拭き取ってあって手で持っても指がベタつかないし、食べる人への気遣いが行き届いてる。お前はもっと自信持てって、せっかく料理の腕はあるのに」

「…お世辞として受け取っておきます」

 

そういい作った蒸しタフチーンを包んで籠に入れる。あいつの分は別に包んで、籠をジュートさんに渡した。

 

「……あの、ジュートさん」

「ん?なんだ?」

「…低カロリーのタフチーンの作り方ってしりません?」

「んなもんあるか」

 

ですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

店の手伝いが終わり、包んだタフチーンを持ってグランドバザールを目指して歩く。今の時間だとちょうど公演が全部終わった辺りかな。

 

グランドバザールはスメールシティの下にある…なんて言えばいいだろうか。言うなればバザー会場みたいな場所で色々な人々が手作りの物を露店で商売している。そしてそこの目玉はズバイルシアターと呼ばれる大きなステージで行われる踊り子の公演だ。

 

その踊りはスメールでは知らない人がいないんじゃないかと言うくらい人気で毎日公演のチケットが飛ぶように売れている。俺も何度か見たことあるけど確かに凄い。ただ、あんまり見てると変な気を起こしそうなので最近は見に行かないようにしている。

 

そんなことを思いながらステージを見詰めていると。

 

「……あっ!クーファ〜〜!!」

 

シアターに響く甘い声。ステージに登る為のスロープから1人の少女がこちらに駆けてきた。白を基調にした踊り子の装束に流れるような綺麗な赤茶の髪を首元で2つに結っている。頭に乗っている花神にあったとされる角を再現したヴェールから覗くエメラルドの様な瞳と活発そうな整った顔が作り出す表情は公演の熱が冷めた後のシアターの面々を再度暖めた。

 

……今日もバチくそにかわいいな。

 

反射で漏れた心の声が漏れないように表情を締めながら、笑顔でとてとてと寄ってきた俺の幼馴染にして、絶賛恋慕中の踊り子、ニィロウは俺が手にした包みを見て目を輝かせた。

 

「おつかれニィロウ。ほら、いつもの持ってきたぞ?」

「クーファもお疲れ様っ。わぁ……!ありがとうっ!クーファの作ったタフチーン、すっごく楽しみにしてたんだぁ!」

 

タフチーンを差し出した手をすっと握りながらお礼を言い、微笑むニィロウに一撃で持っていかれそうになりながらも気合いで耐える。コイツ、相変わらず動作一つ一つが天然であざとい……。こんなん向けられたら誰でも勘違いしちゃうだろ!

 

「ど、どうする?今食べるか?」

「うん!出来たてのまま食べたいし。…あそこに一緒に座ろ?」

「ちょっ、待てって!」

 

俺の手を引きシアターの隅っこに座らせるニィロウに大人たちからは生暖かい視線が、若い男からは妬みの視線が飛ぶ。スメールで1番有名な踊り子と言っても良いニィロウは、元々の顔面の強さも相まってそれはもうモテる。この前、教令院の前で踊ったりもしたらしく1日に何通もファンレターという名の恋文が届く始末だ。

 

「いっただっきまーす!……あーん、……う〜んっ、すっごく美味しいよ!」

「そりゃよかった」

 

大口でタフチーンにかぶりつくニィロウを頬杖を着いて眺める。頬を膨らませてもぐもぐしてるの可愛すぎかよ。

 

「今日はカロリーオフ志向で鳥肉の部位を変えて蒸してみた。ジュートさんからは太鼓判押されたけど、どうだ?」

「うんっ!いつものやつもいいけどこっちも好きかも!クーファはいつも違う作り方のタフチーンを持ってきてくれるから、毎回楽しみにしてるんだよ?」

「いろいろ試行錯誤してるだけだよ。だからいつも処理してくれるのは感謝してる」

「処理ってひどいっ、こんなに美味しいのに……ね、クーファも食べる?」

「はい?」

 

俺の目を真っ直ぐ見て褒めてくるニィロウが直視出来ずに下を見て話していたら、間を開けて座ってた隙間を詰めてきて食べかけのタフチーンを差し出してくるニィロウ(天使)に素っ頓狂な声が出る。

 

「い、いや別に大丈夫だって!さっき味見したし!」

「ほんと?でもおいしいよ?…ほらっ」

「むぐっ」

 

仕方なく口元に持って来られたタフチーンを1口齧る。少し時間が経って熱々ではなくなってしまったけど十分にいい味だ。さっき食って知ってるけどさ。口の中のものを飲み込んだ辺りでとんでもない事に気がついた。

 

……俺っ思いっきり食べかけのところ齧ってるっ!

 

「ニィロウっ、ごめーー」

「ね?おいしいでしょ?もー、クーファは昔から自己評価低いんだから自信持ちなって。……ん〜♪おいしっ」

 

だけどそんな俺の動揺も露知らず、ニィロウはそのままタフチーンの続きを楽しみ始めた。そういうところだぞお前……。

 

多分ニィロウのことだから、こういうことも他の人に普通にやるんだろうな。完全にさっきのあーんがやり慣れてたし。べ、別にわかってたけどなっ、そんな、期待とか、してないし……。

 

「ご馳走様っ!今日も美味しかったーっ!」

「よく毎日食って飽きないよな」

「飽きないよ?だってクーファのお料理おいしいもん。私の毎日の楽しみなんだよね」

「ウッ」

「ん?どうかした?」

「ナンデモナイ」

 

ちょこちょこ男子に効くボディブロー決めてくるよね君。身長差の関係で上目遣いで放たれた言葉に胸を抑えて崩れ落ちそうになる。

 

その後も並んで座りながら今日の出来事について話していると。

 

「あ、そうだ。…その、今日も呼び出されて…告白されちゃったんだよね……」

「……また?」

 

そしてこの子はこういう性格のせいでよく男から告白される。誰にでも優しい笑顔振り撒いていたらそりゃそうだわ。ただ何故か毎回俺にそれを報告してくるんだよな。それを聞いても俺ヒヤヒヤしかしないんだけど、なんの拷問っすか?これで「彼氏が出来たの!」とか言われた日にはもう泣きながらスメール出てフォンテーヌか璃月で料理人やるわ。耐えられる気がしない。

 

「……う、うん。…あっ、でもちゃんと断ったからねっ?」

「…へ、へぇ……。よかっ…んんっ、そうだったんだ。そういやいつもどうやって断ってるんだ?毎日とは言わないけど、結構な頻度でされてるよな?」

「う、うん。…えっとね……」

 

な、なんでそんなもじもじしてんの?

 

「ーーーーす、好きな人がいるからって………」

 

「…………へ?」

 

ニィロウが告白してきた男を斬り続けているであろう最強の剣で、俺も一緒にぶった斬られた。

 

え、すきなひと?俺に言ったってことはつまり、俺はその好きな人ではないってことで…………?

 

……よし、明日璃月港にでも行こうかな………。ジュートさんに仕事辞めるって言わなきゃ。ははははは明日は忙しくなりそうだなぁ。

 

固まった俺を見てニィロウが何故かわたわた慌て出す。

 

「……あっ!…ち、違うよ!?う、うそっ、そういう嘘だよっ!?勘違いしないで!」

「………あ、ああ、知ってる知ってる。そうだよな、別に勘違いとかしないから大丈夫だ。まぁ、ニィロウに好きな人が実際居てもあれっていうか、いいんじゃねぇの?」

 

……っぶねぇ!心臓止まるところだったぞ!んだよ冗談かよビビらせんなってマジでよかったよぉぉおおおおお(情緒ジェットコースター)。

 

それを悟られないようににこやかに返すと「ほんとに違うからね!」と念を押してくる。だからわかったっちゅーに。

 

「私はまだ誰とも…そ、そういう関係になる気はないからっ」

 

……あれ?でもこれ遠回しに振られてね?

 

ま、まぁさっきの好きな人がいる宣言よりは何倍もマシなのでそのまま頷いておく。「まだ」とも言ってるし。ニィロウはほんとにほんとだからねっと何度も念押ししてるけど別に俺にだけ言わなくてもいいんじゃねぇの?あとそろそろ周りの視線と俺の理性が危ないので身体を離してもらいたい。

 

少しして落ち着いたニィロウにそういえばと尋ねた。

 

「ニィロウ。明日の晩飯はどうする?」

「あ、それなんだけどね、明日はお休みになったんだ」

「そうなんだ。じゃあ明日は別に作らなくても「だからねっ」コヒュッ」

 

俺はいつもニィロウが公演の日に差し入れしてるだけなので休みならいらないかと言おうとしたところに彼女が上目遣いで見てきてセリフなんて簡単に消し飛んだ。

 

「……明日、ひまかなっ?」

 

俺の幼なじみ(天使)が可愛すぎる件について。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

「……ただいま〜」

 

玄関を開けて中に入って、サンダルを脱ぎながら呟いた声に返す人は居ない。あ、ちゃんと私のお父さんとお母さんは同じ街で暮らしてるよ。だけど私は私で自立をするために、1年くらい前からこうして一人暮らしをしてるんだ。

 

なるべくご飯は自分で作るようにしてるんだけど、最近、夕ご飯は作らなくても大丈夫になった。

 

「……えへへっ、今日も美味しかったなぁ………それに」

 

今日食べたタフチーンはすっごくおいしかった。カロリー控えめなって言ってたけど味は全然落ちてない。あの後結局ジュートさんのところでもう1切れ買って食べちゃった。「それじゃカロリー減らした意味無いだろっ!」って言われちゃったけど、こんなにおいしいタフチーンを作るクーファが悪いんだからねっ。……そう、それに。

 

「今日のクーファも、……かっこよかったなぁ…」

 

彼のことを考えると胸から暖かい蝶が舞い上がる様な、凄く胸がポカポカする。ふとリビングに置いてある鏡を見ると、私の頬っぺはピンク色に染まっちゃっていた。

 

私は踊り子の衣装がシワになるのも構わずベッドに寝転んだ。目を閉じて、今日目に焼き付けた初恋の人(・・・・)の色々な表情を思い返す。

 

彼は鈍感だから、私が毎日さりげなく彼の手に触れてたりとか、ちゃんと他の男の人は目に入ってないよって言うのを知って欲しくて、告白されてお断りした事を話してるのに全然靡かないんだもん。お断りしてる理由を話した時にちょっと意外そうな目で見られて、慌てて訂正しちゃったけど……だ、大丈夫だよね?

 

でもねっでもねっ、私は今日、ひとつ大きな一歩を踏み出したのですっ!

 

えへへへっ、今日、ついに……っ、間接キスしちゃった!

 

きゃああああああとゴロゴロベッドの上を転がる私。ついに、ついに!何度もシュミレーションして、照れないように練習して、やっとあーんと間接キスが出来たの!リアクションは…イマイチだったけどね。……うう、難攻不落過ぎだよ…。

 

興奮してベッドの片隅に置いてある、どことなく彼に似たデザインのクッション人形をギューって抱きしめる。……明日、楽しみだなぁ〜。

 

明日の公演はお休み。彼は明日食材を探しに行く予定だったからさっき頼み込んで一緒に連れていってもらうことになっちゃった!こ、これってデートだよねっ?彼と出かけるのなんて何年ぶりだろ。明日着ていく服も選ばないとっ。

 

「……クーファ…」

 

彼のことを考えていると昔、ダンスの練習で挫けそうになった時に励ましてくれた事や、公演で失敗して落ち込んだ時に美味しいご飯を食べさせてくれたこと、ちょっと前に教令院の人達にズバイルシアターの公演を賭けて討論することになって、不安で眠れなかった時もずっと傍に居てくれたことをどんどん思い出して身体がじんわり暖かくなった。

 

気が付いたら好きになってたってこういうことを言うのかな。小さい頃からずっと一緒に過ごしてきてずっとお兄ちゃんみたいな感じとして見てたけど、いつの間にか目で追うようになってきて、私の為に好物のタフチーンを作ってきてくれるようになった辺りからもうダメだった。その事を彼にお礼を言っても「大したことじゃない」って言われてしまうけど、私はクーファのそういうところが好きなのっ。

 

「明日こそは、私のことを女の子として意識させてやるんだからっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





・クーファ
主人公。元々冒険者志望だったが、ニィロウに惚れてから料理の道へ。日々カロリーの塊を食す幼馴染の為に今日もタフチーンのカロリー削減に勤しむ。

・ニィロウ
天使。小さい頃からクーファとは仲が良く、ダンスの道も彼に後押しされた。日々アプローチを仕掛けてはいるが持ち前の天然のあざとさのせいであまり上手くいっていない。



ニィロウかわいいよニィロウ



ニィロウは好き?

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