低カロリーなタフチーンの作り方を教えてください   作:猫好きの餅

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おまたせしました。

正直、ブラックコーヒーでは効き目ないかも知れませんので青汁とか挽いたコーヒー豆をそのまま食べるかしながら呼んでください。

さもないと糖尿病になります。

作者史上1番攻めたかも……


上目遣いでじっと見てくる幼なじみが可愛くてしょうがない

 

 

□□□□□

 

 

「…おぉ〜!これじゃっ!これがわしの求めていたデーツナンじゃっ!」

「別に作り方は大変…って訳じゃなかったな」

「うん。こっちもこっちで美味しそうだね」

 

完成した古風なデーツナンを掲げるファルザン先輩に苦笑する。食べる前に調理器具を洗っていると、隣で洗った物の水気を拭いているニィロウと目が合った。

 

「…」

「……」

 

合わせたのは少しだけで、お互いぱっと目を逸らす。それなりにかかった調理時間だけど、途中でニィロウに言われたことがずっと頭の中でぐるぐると回っていた。

 

 

『ね、この後わたしのおうちにきて?』

 

 

手を握られながら耳元で言われたその言葉に、身体が勝手に頷いてしまった。いや、断るとか無理だろこんなの。

 

そりゃ昔はお互いの家によく遊びに行ってはいたけど、ニィロウが一人暮らしを始めてから家にお邪魔するのは当然初めてだ。い、一体どういうつもりなんだ?

 

…と、そんなことを考えているのは顔に出さずに洗い物を終えるとテーブルにデーツナンを配膳してみんなの前に置く。

 

「一応今のデーツナンも作っといたから、良ければ食べてくれ」

「おおっ、食べ比べか。中々粋な計らいじゃのう」

「ありがとっ、でも…いつの間に作ったの?」

「ちょうどデーツの果実が余ってたから、2人がミントソースを作ってる間にな。ジャムは夕暮れの実とラズベリーを使ってみた」

 

俺が皿に盛った赤と黄色のジャムを置くと2人の瞳が輝く。

 

今のデーツナンは生地はそれほど味付けをしないで甘くしたジャムを塗って食べるのが主流。だけど今回作った昔のデーツナンは生地の方にバターとか砂糖とかをしこたまぶち込んで甘くしたのをミントソースであっさり食べる。

 

飲み物を用意した俺は対面どうしに座る彼女達を見て少し迷い、ニィロウの隣に座った。こういう時男と女で別れて座るんじゃないの?

 

2人はいそいそとフォークを持ってデーツナンを口に運んだ。

 

「〜〜っ!これじゃわしの求めていた味はっ!美味じゃ〜」

「んっ!こっちも美味しいっ!このソースがすっごく合うよ!」

 

2人の反応が良さそうなので俺も1口食べてみると、意外と悪くなかった。生地の味はどっしりとしたシフォンケーキをもっと甘くした感じで、そこに爽やかなミント味のソースが重さを無くしてくれて食べやすい。

 

「うん、これ今売り出しても全然売れそうだな。……なんで今流行ってないんだろう」

「恐らく調理器具の進化のせいじゃな。わしが100年前に食べた時もこれほどは美味くはなかったからの」

「成程な」

 

つまり今の技術で作るからこんなに美味いのか。焼き菓子だから日持ちも悪くないし、ジュートさんのところで売ってもらえるかもな。そのことをファルザン先輩に伝えると目を輝かせながらテーブルに乗り出し俺の手を包み込んだ。顔の前までご機嫌のファルザンが迫り、距離感の近さに少しドギマギしてしまう。

 

「それは本当かっ!?」

「ちょっ」

「ほ、本当本当。これだけ美味いなら売れるしまた食べたくなったら買える場所があった方が先輩的にもいいだろ?」

「ああ!助かるぞクーっ。お主はやはり気が利く若者じゃっ」

 

だから近ぇっての!先輩は包み込んだ俺の手をブンブン振るとデーツナンの続きを楽しみ始めた。マジで、ニィロウで耐性が出来てる俺で良かったわ。こんな距離感で居られたら勘違いする男が沢山発生するだろ。

 

などと少々呆れながらニコニコでデーツナンを頬張る先輩を眺めていると離された手にまたもや何かが触れる感触があった。今は膝の上に手を置いているので先輩は有り得ない。

 

俺は隣を横目でチラリと見た。

 

「……むぅ」

 

何で頬を膨らませているのかはわからないけど、くすぐったいから俺の手甲に自分の手をスリスリするのやめてもらってもいいですかね?

 

そんなことを考えてはいるけれど身体は正直で期待するように手の甲を裏返してしまう。そこにすかさずニィロウの手が滑り込んできて先輩とは違う暖かさに包まれた。

 

「……クーファも今の方のデーツナン、たべる?」

「え、あ、ああ」

 

何この子。手先と本体で別の人格宿ってるの?重ねた手をにぎにぎながら普通に話しかけて来るニィロウにびっくりしながら返事を返す。今の製法のデーツナンは俺から見たテーブルの反対側にあるのでニィロウの方が近い。彼女はデーツナンを1つ取るとジャムを付けて、俺の顔の前に差し出してきた。

 

「はい。あ〜ん♪」

「えっ…あ……ん」

「おおぅ、青いのぉ」

 

あーんくらいは割とされているので驚きつつも先輩に見られる前に食べようとしたが、少し遅かった。眩しいものを見る目で見てくるファルザン先輩はニィロウと目を合わせるとちっちゃくサムズアップした。

 

いやあんたもニィロウ側かよ。

 

 

少しして食べ終わり、片付けも全て終わすとそろそろ研究室に戻ると先輩は言った。

 

「さて、色々と感謝するぞクー。デーツナンも美味かったし、いい思い出になりそうじゃ」

「こちらこそ。デーツナンの件はジュートさんに言っておくから、後でバザールに買いに来てくれ」

「ああ、すまぬな。ニィロウもダンスを応援しておるぞ」

「うん。ありがとうっ!」

 

俺たちに手を振ったファルザン先輩は教令院に戻って行った。

 

その場に残された俺たちはお互いにチラリと顔を見合わせる。頭に過ぎるのはここに来る途中にニィロウが言ったセリフだ。時間は夕方で解散しようと思えば解散できる。

 

「…クーファ」

「な、なんだ?」

 

すると、ニィロウが俺の袖を摘んで名前を呼んできた。改めて彼女の方を見ると上目遣いの綺麗な水色の瞳と目線が合う。

 

「ね、さっき言ったこと…覚えてる?」

「あ、ああ。ニィロウの家に行くとかなんとか…」

「…そう。……いい?」

 

皆まで言うのは恥ずかしいんだろう。頬を染めながら了承を求めてくるニィロウの目線が俺の心臓を撃ち抜いた気がした。

 

「…その…ニィロウが、良いなら……」

「…ふふっ、クーファだったら何時でもいいのに」

 

なんかもう、勘違いしてもいいんじゃないかな(溶解)

 

嬉しそうに言った「俺ならいい」発言に頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。勘違いするなと抑制する感情とこれはやはり脈あるのではという感情、それを口に出すことによって関係性が変化する恐怖がせめぎ合う。

 

脳内で最終戦争が繰り広げられているにも関わらず俺たちは並んでニィロウの部屋に向かって歩き始めた。

 

 

ちょっと歩いてニィロウの部屋があるアパートに着く。玄関の前ではっとした様子のニィロウが「ちょっと待ってて!」と爆速で部屋に入ったと思いきや中からすごい音がするんだけど、大丈夫なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢

 

 

 

 

あああヤバいっ!いきなり家に誘ったから掃除が終わってないよぉっ!

 

彼を部屋に招く寸前でそれを思い出した私は、カーテンを整えゴミ箱を空にして、大昔に撮って大切に飾ってあるクーファとのツーショットの写真立てを見えないように倒す。

 

「こ、これで大丈夫かな……?…よしっ」

 

掃除を終えた私が玄関を開けると………私はちょっと帰ろうとしてたクーファが見えて必死に腕を掴んだ。

 

「ちょっと!?何帰ろうとしてるのっ!?」

「い、いやぁちょっと心の準備が…。そ、それに突然で掃除もアレだろ?だからまた日を改めて…」

「だ、ダメダメやだっ!クーファのその言い方絶対次来ないやつだもんっ!」

 

こ、これでも誘うの結構勇気いるんだからね!?今回は手を繋いだ暴走状態で誘えたけど、後日改めてとかわたし顔爆発しちゃうっ!

 

私は逃げようとするクーファを捕まえると、玄関に押し込んだ。

 

「わ、わかったわかった!入るから押すなって!……お、おお」

「な、なに?」

「いや、綺麗にしてんだなって」

「…そ、そうかなっ?」

 

クーファから部屋が綺麗と褒められて後ろでガッツポーズ。そのまま彼の後ろから自分の部屋を見てーーーベッドに置かれた、私がいつも1人で話しかけてるデフォルメクーファ人形(自作)が目に入った。

 

し、しまうの忘れてたぁ!!

 

「と、とわぁーー!!!」

「ニィロウ!?」

 

あれが彼にバレたら死ねるっ!

 

私は奇声を上げながらベッドにダイブすると、人形を素早く枕の下に隠した。…なんとか見られなくて良かった……!

 

「だ、大丈夫かニィロウ?」

「大丈夫!い、今お茶出すねっ!そこ座っててっ」

 

心配そうな顔で見てくるクーファを尻目に、私はキッチンへと逃げ込んだ。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

に、ニィロウはどうしたんだ?すごい慌てようだったけど……。

 

台所に入っていったニィロウを見送りながら、座った俺は部屋をぐるりと見回す。ちなみに剣は厨房に置いてきた。女の子の部屋に大剣持ったまま入る訳にはいかないからな。

 

ニィロウらしい白と水色で統一された家具が並んで、片付けも行き届いている。どちらかと言うと部屋汚い方の俺だからわかるけどこれは普段から綺麗にしてる整い方だ。こんなに片付いてるのに、どうしてあんな物凄い音が……?

 

その部屋の綺麗さと同時に感じることがあった。

 

……やっべぇこの部屋超いい匂いする。

 

この部屋の主はニィロウなので、当然部屋の香りも彼女の香りだ。いつも至近距離じゃないと味わえない甘い香りが呼吸するだけで鼻に伸びこんできて、それだけで鼓動が早くなる。

 

つーか、どうして女の子ってあんなにいい匂いするんだ?絶対に洗剤を超越したいい香りすぎていつも謎に思う。

 

などとアホなことを考えながら音を立てないように深呼吸をしていると、お盆を持ったニィロウがこちらにやってきた。

 

「はい、甘い物食べたあとだからコーヒーでよかった?」

「ありがとう。あ、俺ミルクと砂糖は…」

「ブラック派でしょ?それくらい知ってるよ〜」

 

結婚して欲しい(直球)。

 

あっぶねぇ!あと少しで声に出るところだった。あんまりニィロウの前でコーヒー飲んだことないんだけど、知ってくれてたのか。

 

「よ、よく覚えてたな」

「えへへっ、2週間くらい前に言ってたよ?」

 

そうはにかむと、ニィロウは自分の分のコーヒーを置いて俺の隣に座った。……え?対面じゃないの?

 

今の状況を説明すると、俺はカーペットの上に置いてある低めのテーブルの前に胡座をかいた。テーブルは四角だからてっきり向かいに座ると思っていたら、俺の真横に陣取った天使様に驚きが止まらない。

 

俺がニィロウにどう反応するか迷っていると、彼女がおもむろに俺の頭に手を置いた。

 

「な、なに」

「なんか…大きくなったなぁって。前はこんなだったのに」

「母親か。まぁ、あれから大分経ったからな」

 

俺がニィロウと知り合ったのは5歳くらいだったっけな。親同士が仲が良くて、よく一緒におままごととかしてたな。

 

「ニィロウは昔から変わってないな」

「む、成長してないってこと?」

「いい意味でだよ。なんか安心する」

 

疎遠になって、再び話すようになった時もニィロウが変わらずに笑顔だったからまたこうして仲良くなれたと話しながらコーヒーを1口飲む。

 

「クーファはどんどん変わっていったよね。毎日身体を鍛えてたし」

「……見ててくれてたのか?」

 

確かその時は丁度疎遠になっていた時だったはずだけど。

 

「えっ!あ、あー、まぁね!やっぱり幼なじみの事だから気になっちゃって……すごく頑張ってたから余計声、掛けにくくなっちゃってた」

「あー……そうだったんだ」

 

今考えると半年前まではほとんど喋らなかったんだもんな。それが今ではこうだ。家に呼ばれてるのも信頼してくれているのか、意識されてないのかはあんまり分からないけどさ。

 

「ね、ねぇ」

 

すると、ニィロウがこちらを見上げる。

 

「この前病室で言ってた……クーファが料理人になった理由が…わ、私って……ほんとうなの……?」

「っ………ああ。そうだ」

「ひぅ」

 

答えるのに結構勇気が要る質問だったのだが、気付けば即答していた。

 

か細い声を出して目を見開くニィロウ。ああ、真っ赤になったほっぺとか、あわあわしてる口元とか、本当にかわいい。湧き上がって来る抱きしめたい欲に耐えながら真っ直ぐ彼女を見つめる。

 

「や、やっぱり聞き間違いじゃなかった……ううぅ…」

「……もし迷惑なら、言ってくれ」

「迷惑じゃないっ!!……その、すごく…嬉しいから…」

「っ!」

 

真っ赤っかの顔を手で隠しながらそう伝えてくるニィロウに、俺も顔が熱くなる。気がつけば、俺は自然と隣のニィロウの肩を抱き寄せていた。

 

「ぁっ、くーふぁっ」

「…ありがとう」

「…えへへっ、それはこっちの台詞っ」

 

驚いた顔をしたのは一瞬だけで、そのまま体重を俺に預けてくる。ニィロウは寄りかかりながら俺の首筋に顔を埋めた。

 

「……俺さ、毎日レッスンとか公演とか頑張って、人気になっても驕ったりしないでさ、シアターのために色々なことを頑張ってるニィロウを見ていたら、……冒険者になりたいって夢よりも……、君を支えたいなって思えて来たんだ」

「…っ、ぅん」

「そうして料理を勉強しだして、ニィロウがいっつも食べてるタフチーンの作り方と内容物とカロリー計算して俺びっくりしたんだからな?なんだよあの炭水化物と脂質の塊」

「えっ、でも美味しいじゃんっ!」

「いや美味いけどさ。あれ踊り子とはいえ女の子毎日食べるようなカロリーじゃないぞ?体型維持とかどうしてるんだよ」

「そ、それはっしっかりレッスンを受けて、公演で踊ってればなんとか……」

「こちとら味を落とさないでタフチーンのカロリーを落とそうとするの超大変なんだからな?…それなのにお前は何切れもバクバク食べやがって…」

「なっ!なにっ、人を食いしん坊みたいにっ!別に体型維持出来てるんだから今のままでいいじゃんっ!」

 

今までの甘酸っぱい雰囲気は何処へやら、ギャーギャーと言い合う俺たち。…やっぱりその、ああいう雰囲気は苦手だからこういう事(・・・・・)を言うなら、いつもの雰囲気がいいなって思うんだ。

 

え、何言おうとしてるかって?そりゃあもう、アレだろ。今のやり取りで、ほぼ告白と言っていい「君のために料理人になった」って台詞に「嬉しい」って返してくれたんだ。それを聞いて今まで無理にでも疑問に思ってたところが全て繋がった。ここで退いたら男じゃないだろ。いきなりかよとか、このタイミングかよとか色々心配が頭を過ぎるけど、そんな不安を超えて今、伝えたい。ここで言えなかったら今後どうやって告白するってんだ。

 

 

俺は覚悟を決めて、頬を膨らませてるニィロウを真っ直ぐ見据える。まだ体勢は寄りかかったままだがら、上目遣いのちょっとムッとした顔のニィロウがとてもかわいい。

 

「もうっ!タフチーンを作ってくれることはありがたいけど、そこまでクーファに言われたく「でも、そんな君が好きだ」……ぇ?」

 

鳩が豆鉄砲食らった顔してるニィロウが面白い。彼女は俺の言ったことが理解出来ていない様で頭の上に「?」が沢山浮かんでいる。

 

「……わからなかったか?」

「ぇっ、いやっ、え?…えっ、い、今っ、すきって」

「だからそうだっつーの。…こっちも照れるから何度も言わせんなよ。……俺は、ニィロウのことが大好きだ」

「ふぇぅ!?」

 

流石に今度は意味がわかっただろう。顔をボッと着火させたニィロウが俺の手を逃れて後ずさりする。

 

「すっすすすすすすきってどっどどどういういみで」

「この状態で言った意味なんてひとつしか無いだろ。……どうしても信じられないなら、それなり(・・・・)のこと、させてもらうけど?」

 

こっちは覚悟決めてんだ。そんなんで逃がすかよ。俺は壁にへばりついてるニィロウにゆっくりと近づく。

 

「そそれなりって……な、なにするの……ふぇっ」

 

俺は爆発しそうな心臓を押さえ込みながら、顔を近づける。

 

「貴方が1人の女性として好きです。ずっとずっと好きでした。これから毎日タフチーンを作らせて下さい」

「ぇ…ぁ…ぅ」

「返事、くれないの?」

 

正直ここで焦らされるのは勘弁して頂きたい。俺の胃が死ぬ。壁に背中を着いてるニィロウに俺が覆い被さっている体勢だから傍目からすると俺が襲ってるようにしか見えない。というかほぼ事実だけど。

 

ニィロウは俺の世紀の告白に目をこれ以上ないってくらい見開くと、顔を俯かせた。

 

「……き」

「え?」

「私もっ!クーファが大好きっ!」

「わっ!」

 

ニィロウが俺を抱き締めてきた。勢い余って俺が後ろに倒れ込んで彼女が上になる。ニィロウはもう離さないと言わんばかりに腕に力を込めてくる。

 

「わ、私もっ、クーファのことがずっとずっと好きだったのっ!だからっ、私にタフチーンを…毎日作ってぇっ…!」

「ニィロウっ…!」

 

その言葉を聞いて、なぜだか視界が歪んできた。

 

目を拭うと手が濡れている。今までの俺の頑張りが報われた気がして、ずっと同じ思いでいてくれてたことがめちゃくちゃ嬉しくて、流れる涙もそのままに俺もニィロウを抱きしめた。

 

「クーファっ!好きっすきすきすきすきすきすきすきぃっ」

「ああっ、俺もだっ……」

 

耳元でニィロウの甘い声が響く度に嬉しさと興奮でどうにかなりそうになる。俺は抱き合ってるだけで十分幸せだったのだが、腕の中の天使様は違ったらしい。

 

「…くーふぁっ」

「ん?どうしんむっ!?」

「…んんっ」

 

身体を離したニィロウに声を掛けようとした直後、唇にとてつもなく柔らかい触感が当たり、俺は目を見開いた。視界に目を閉じたニィロウのご尊顔がドアップで入る。所謂キスをされていることに気がついた俺は、手をニィロウの頭の後ろに置いて髪を撫でながら自分も目を閉じて感触を堪能する。

 

「んっ……んぅっ」

 

5秒ほど唇を重ね、離したかと思いきやまた重ねてくる。俺もそれを拒まずに受け入れる。まさかニィロウがこんなに積極的な子だったとは。いや今日の手繋ぎから垣間見えてたけど、彼女の普段から想像出来ない一面に俺は胸が高鳴るのを感じた。すると、俺の唇にれろっと何かがが当たる感触がした。キスの最中に触れるものはひとつしか無いので、流石に驚いて唇を離す。

 

「…んっ……ちゅっ」

「っ!?…ちょっ、ニィロウっ!?」

「…んー♪だめっ、にげないで?……んゅっ」

「んん!?」

 

抵抗虚しく、啄まれた唇の中に彼女の舌が入ってくる。好き勝手させるものかと俺も自分の舌を使って防衛戦に出る。

 

「……んっ…ちゅっ……れろっ……んむぅ……」

 

なんなんだ。なんなんだこれは。ヤバすぎる。こんなに感覚が存在したなんて。

 

舌を絡ませた俺とニィロウの口から、くちゅくちゅとこの世のものとは思えない淫らな音が鳴り響いてなんか逆に居た堪れない。もう1周回って冷静になってきた。

 

ニィロウは全身を俺に密着させながら舌を絡ませて来て、俺は彼女の頭に手を置いて離せないようにする。ってなんで自分から離れられないようにしてんだよ。これじゃいつまで経っても終わんねぇだろ。

 

 

でも気持ちいいんだからしかたないだろ。そりゃ、まあそうか。

 

 

俺は自分でも謎すぎる自問自答をしながら、ニィロウと舌を絡ませ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……し、死ぬかと思った……」

「こ、ごめんね?わ、私、嬉しくてつい……」

 

あれから数分の間お互いの口内を攻め合い続けた俺たちは、息が続かなくなったのを理由に唇を離した。お互い舌を舐め過ぎ吸いすぎて離す時に口の間を銀色の橋が繋いで、あれだけの事をしたのに2人とも顔が熱くなった。

 

「……つーか衝撃のファーストキスだったぞ…。猛獣過ぎるだろ」

「だ、だって……両想いなのが嬉しくて…また暴走しちゃったんだもん…」

 

2人で抱き合いながら色々なことを話す。元々好きで居てくれてたみたいなんだけど、俺がぶっ倒れた辺りから俺に対する感情のブレーキが壊れちゃったんだとか。それで今日もファルザン先輩に嫉妬して家に誘って、俺の告白を聞いてタガが完全に外れてああなったらしい。

 

それを聞いて、嬉しく思った俺は変なのかな?彼女の知らない一面が見れたというか、自分を求めてくれることにとてつもない嬉しさを感じる。

 

「……でもねクーファ。私もほんとは今すぐに貴方とお付き合いしたいんだけどね…」

「ああ、公演か」

「うん。前にズバイルさんにも言われたんだ。私の好きにしてくれれば良いって言ってくれたけど…シアターに恩返しをしたいのも本当だし……」

 

俺の上に跨るようにして座ったニィロウが俺の首筋に顔を埋めながら頷く。まぁ、ほぼアイドルみたいなもんだし恋人が出来ることで人気に影響するのは凄くわかる。

 

「俺は、こうして両想いなのがわかっただけでも満足だよ」

「ほんとうに?」

「う」

 

ニィロウがじっと見てくるので言葉に詰まる。正直すごく付き合いんだけど我慢してるのがバレたみたい。

 

「ね、ほんとに…んっ」

 

言い返せないし可愛いのでとりあえず唇を奪った。こういうことをしても受け入れて舌を伸ばしてくるニィロウに、本当に想いが通じ合ったことを実感する。また暫くお互いに夢中になって唇を貪り合って顔を離すと蕩けた顔のニィロウが目に写る。

 

「…ちゅっ……もうっ!いきなりはずるいよ…」

「お前もいきなりだっただろ。」

 

なんかさっきからキスする度に時間が飛んでいるような感じがする。嘘だろ今のキス5分くらいしてたの?

 

「それなら、今のままでもいいんじゃないか?」

「いまのまま?…それって幼なじみってこと?」

 

付き合いたいってのは本音だけど、ニィロウの公演に影響を与えてまでとは考えてない。俺はこれまで通りニィロウにタフチーンを持っていくし、ニィロウもそれを食べる。公演に問題が出ない程度に仲良くしようと彼女な言うと、頭上に豆電球が灯ったような顔をしてながら頷いた。

 

「うんっ、そうだねっ!……じゃ、私たちは仲がすごく良い幼なじみって事でいいかな?」

「ああ。曖昧だけど、今はそういう感じでいこうか」

「えへへっ、幼なじみだもんねっ」

「ん?そうだけど?」

 

ニィロウはニヤニヤしながら「幼なじみ」と言うワードを強調する。それに首を傾げていると、ニィロウが飛びついてきた。脇に腕を通されてギューッと抱きしめてくる。

 

「ん〜っ、すきっ」

「お、おい今言ったこと忘れたのか?」

「忘れてないよ?だって、すっごく仲がいい幼なじみだもん。抱き合っても、好きっていっても不思議じゃないでしょ?」

「あ、お前っ、そういう事か……」

「えへへ〜」

 

してたられた。つまり仲が良い幼なじみっていうのは体のいい言い訳か。

 

「まったく、悪い踊り子だな」

「うん、私悪い子だよ?」

 

何やら期待を込めた目線で見てくるニィロウ。その上目遣いが心臓に悪すぎるのでデコピンを1発くれると俺はニィロウをどかして立ち上がった。これ以上キスとかしたらもう歯止めが効かなくなりそうだ。

 

「とりあえずご飯にするか。何食べたい?」

 

腕を捲りながら聞くと、ニィロウは笑顔で言った。

 

「勿論、タフチーンかなっ!」

 

 

 

 

続く。

 




え、えっちなカップルが誕生してしまった……。

あ、最終回とかじゃないです。だってまだ付き合ってないので(ゲス顔)

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