低カロリーなタフチーンの作り方を教えてください   作:猫好きの餅

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おまたせしました。


そろそろ皆さんの口が甘ったるくなってきたと思うので、ここで塩をひとつまみ。



想いの強さは時に人をも殺す

 

 

□□□□□

 

 

「ーークーファっ!お疲れ様っ!今日もタフチーン作って来てくれてありがとねっ!」

 

「……ん〜♪美味しいぃ〜!やっぱりクーファの作ったタフチーンが1番だよっ!いくらでも食べれちゃうもんね」

 

「…む、どうしたのそんなに私を見て。…もしかしてクーファも食べたいの?……もうっ、遠慮しなくていいよ?はい、あーんっ♪」

 

「えへへ、美味しいでしょ?」

 

 

 

 

 

ーーーニィロウがかわいいっ!!!!

 

幼なじみの性格七変化事件から数日。なんか前よりも格段に上がったニィロウの攻撃力に俺は毎日やられていた。

 

最近のニィロウ公演中に俺と目が合うと小さく手まで振ってくれるし、公演が終わると俺のところに一直線に駆けてくる。タフチーンを受け取る時にさりげなく手を握ってくるようになったし、隣に座る間隔も明らかに縮まっていた。

 

マジで、勘違いしないように自分を律する毎日。この前仕返しで「ニィロウの踊りが好き」の踊りがをぼかして伝えたら告白と勘違いされて、ヴェールの角による突き上げ攻撃を土手っ腹に貰ったばかりだっていうのに、俺の体ときたらちょっとの接触やニコッと向けられる笑顔にいちいち反応をしてしまう。

 

「……おい」

 

今日はニィロウにどんなタフチーンを作ろうかな…と頭お花畑でメモ片手に買い出しをしていると、俺の前に1人の男が立ち塞がった。

 

見るとニィロウの公演で見たことがある……どころか毎回最前列にいるやつじゃないか。この前言った外国から来てるイケメンお金持ちの客で、わかりやすく染めた茶髪を揺らして俺を睨み付けてくる。

 

俺は立ち止まると警戒をしながら自分よりも少し高い位置の顔を見上げた。

 

「なぁ、お前……いつもニィロウさんの後を追っかけて回ってるヤツだろ?」

「はぁ?」

 

開口一番随分な言い様だな。少なくとも交友的なおしゃべりをしに来たつもりじゃないらしいので、こっちもそういう(・・・・)モードに切り替える。

 

「いきなりなんなんだあんた。それに、アイツは俺の幼なじみだ」

「幼なじみ?てっきり召使いかと思ったよ。毎日彼女にあんな粗末な食べ物を渡して、恥ずかしくないのかい?」

「あ?」

 

聞き捨てならないセリフに低い声が出た。俺は目の前の男の目を正面から睨み付ける。

 

「粗末だと?てめぇに何がわかるんだよ」

「わかるさ。俺はモンドからやってきた一流の料理人。貴族の館で専属のシェフをしていたくらいのね。証拠に、名刺だ」

 

差し出された名刺を受け取らずにチラリと見ると、書いてあることは本当だった。俺はふんと鼻を鳴らすと腕を組む。

 

「で、その一流シェフさんが、俺に何の用だ?それとも、わざわざスメールの粗末な品を出すガキ1人にそうやって喧嘩ふっかける位暇なのか?」

「…口の減らない奴だな。……単刀直入に言う。この僕がお前に変わってニィロウさんの夕食を作る」

「いや単刀直入過ぎだろ。何言ってんだ急に」

 

こいつの頭は物事の過程とか喋れないのか?呆れて言う俺に謎に自信に満ちた顔の男は言葉を続ける。

 

「僕はお前よりも遥かに美味いタフチーンを作れる。それで理由は十分だろう?彼女の様な魅力あふれる女性にはお前の料理は相応しくない」

「話にならないな」

 

なんなんだこいつ。言ってることめちゃくちゃだろ。

 

相手にするのも時間の無駄だと決めて、無視して歩き出した。

 

「お、おいっ!逃げるのか!?この卑怯者っ!」

 

ああもう、勝手に言ってろ。

 

後ろでわーわー喚いてる男を無視して俺はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

 

「はぁ、……またか」

 

これで3回目だ。俺は道の先で待ち伏せているニィロウファンのイケメン集団が目に入ってため息を着いた。今のところ直接の妨害はないものの、ニィロウと別れた後に毎度こうして俺に「代われ」と行ってくる。

 

そんなこと言うならニィロウに言えよ。と言いたいところだけど、こういうことをするやつとニィロウに話させたくないので、公演が終わってこっちに来るニィロウを奴らがちょっかいかける間もなく連れ去っているのでまだ大丈夫だ。ちょっと強引かと思ったけど、当の本人はすごく嬉しそうな顔をしていたので多分問題ないと思う。けど……どんだけタフチーン食いたいんだ?

 

俺が顔を顰めて道を変えようとしたのだが、奴らに見つかってしまった。そいつがこっちに歩いてくる。

 

俺はただの通行人を装うと、するりと横を通過しようとして。

 

「おい。お前、………おいっ!呼んでるだろ!」

「……あ、別の人かと思ったんで」

「そんな訳あるか!周りに誰もいないじゃないか!」

 

肩を掴まれて止められてしまった。

 

「チッ、そうですか。……じゃ」

「だから待てって!」

 

いい感じに話題を流してそのまま帰る作戦も失敗。俺は肩に乗った手を手で払うと面倒くさいですって気持ちを顔に乗せながら口を開く。

 

「なんだよしつこいな。そんなに気になるなら自分でタフチーン持ってけばいいだろうが」

「もう持っていったさ!彼女が休みの時になっ!……でも受け取って貰えなかったんだ!公演の時にしかそういうのは受け取らないってな!」

「いや知るかよ」

 

なんかヒステリックしてるけど、あっそうとしか言いようがない。

 

「だから、1日だけでいい。公演終わりにお前の代わりに僕が彼女にタフチーンを持っていくから、お前は持ってくるな!」

「は?なんで俺がそんなことしなきゃならねぇんだよ」

 

ニィロウを信用して無いわけじゃないけど、多分こいつは俺よりも上手にタフチーンを作れるんだろう。わざわざ自分より上出来な、しかもこんな思考の奴のタフチーンを彼女に食べさせる訳にはいかない。なんか入ってそうだし。

 

俺は話は終わりか?なら俺は帰るぞと強引に話を切ると、そいつを置いて歩き出した。はぁ、面倒くさいやつに絡まれた。俺はイライラを紛らわす様に頭をかく。俺は俯くそいつを肩越しにチラリと見ると、足早にその場を去った。

 

ただ、俺は一つ大きな見落としをしていた。それは俺にここまで言うやつがこの程度で諦めるかという事と、奴の歪んだ思いがどれだけ強かったかという事だ。

 

そのせいで俺は俯いたそいつがポツリと呟いたセリフをききのがしてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お前さえ居なければ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

俺はいつもの様にタフチーンを作る準備をしていた。昨日やつに絡まれた影響か、材料はいつもより数段上質な物を使っていた。

 

これは余談だけど、毎日俺が晩飯を作って来る事に申し訳なく思っていたニィロウから押し切られる形でタフチーンのお代は頂いている。そのお金と自分のへそくりをはたいて普段は手の届かない値段の物を買ってきた次第だ。

 

恐らく奴は今日、ニィロウにタフチーンを持ってくるだろう。なんならその場で俺に「勝負だ!」くらいには言ってくるかもしれない。別にそれに付き合う義理はないんだけど、男としてなんか負けたくはないのだ。

 

「お、クーファ。なんか今日は気合い入ってるな?」

 

台所に顔を出して声を掛けてくるジュートさんに俺は笑い返す。

 

「そんなことないですよ。いつも通りです」

「嘘付け。この鳥肉も米もいいやつだろ?それにヨーグルトもお前、1から作ったやつじゃないか」

「げ、バレてんの」

「はっはっは。何年商人やってると思ってるんだ?香辛料以外でも多少の目利きはできるさ」

 

まさか見抜かれるとは思ってなかった。誤魔化したのが恥ずかしくて口をとんがらせる俺の頭をポンポン叩くジュートさん。

 

「お前、ニィロウには言ってないんだろうけど、最近変なのに絡まれてるだろ?あの毎回公演の最前列で騒いでるやつ。あいつは皆も迷惑に思ってるんだよ」

「ああ、やっぱみんなもそう思ってるんですね」

「ズバイルさんが次騒いだら出禁にするとか言ってたくらいにはな」

 

なんだそんならもう今回で出禁になるんじゃないのか?変な心配はいらなかったなとため息を吐いた。

 

「ま、頑張れよ。お前らの結婚式にどデカいウェディングタフチーン焼いてやるから」

「なんの嫌がらせっすか?」

 

式場がスパイスと油の香りに満たされるとか地獄そのものだろ。俺がすぐさま突っ込むと、ジュートさんは笑いながら「結婚式には突っ込まないんだな」と言って厨房を出ていって、俺は顔が熱くなった。

 

 

 

「っし、出来た」

 

ジュートさんがからかいに来てから2時間後。俺の目の前には完璧に焼きあがった熱々のタフチーンがそびえ立っている。今までで1番上手く出来た。中を割るといつもより米と肉の層を1層増やして、違うスパイスが練りこんだ層を追加している。

 

俺は1切れ切り分けると味見をした。

 

「うんまっ」

 

味も今までで1番美味い。旨みを中に閉じこめる工程が大成功していてわ口に入れるとその旨みが隅々にまで広がる。俺タフチーンは大好物って訳じゃないけど、これは美味いわ。

 

「あ、時間やばいな。早くしねぇと」

 

時計を見るともう最後の公演が始まっている。

 

俺はタフチーンを自分の分も包んでニィロウの分と一緒に籠に入れる。昨日一緒にたべよ?って激カワボイスで言われたからな。そんなん断れないでしょ。

 

俺は後片付けもそこそこに籠を持って出発した。

 

なるべくあいつが介入する前にニィロウに渡したい。そんで俺らはそのまま離脱、そしてあいつは出禁が理想の展開。

 

俺は足早にグランドバザールを目指す。転ばないように気をつけながらスメールシティ特有の坂を下り、グランドバザールに降りる扉がある路地に入ったところでーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーー角に潜んでいた誰かに籠をひったくられた。

 

 

「は?」

 

振り返ると黒ずくめの男が俺の籠を持っていた。マスクをした顔にフードを目深に被っていて誰かまではわからない。その男は籠を持ったまま踵を返すと一目散に逃げ出した。

 

「っ!?おいッ!待てっ!!」

 

その籠に金目の物は入ってねぇぞ!?

 

俺も慌てて追いかけ始める。黒ずくめの男は追ってきている俺をチラリと見ると、シティの外に向かって道の柵を超えて走り始めた。

 

俺も同じように柵を飛び越え、追跡を開始するが、多分この泥棒、その道のプロだ。壁や路地を上手く使って巻きにかかってくる。

 

だがこちらもただの料理ばっかしてる奴じゃない。俺は崩された道の木箱を身を捻って飛び越え、泥棒と同じく壁を蹴って建物の屋根に駆け上がる。

 

 

 

そうしているうちにスメールシティを出た。チッ、もう少しで追いつきそうなのに。

 

そこで、俺は少しの違和感に気がついた。泥棒とさっきから距離が縮まないのだ。……不自然な程に。

 

「ってことはやっぱあいつの差し金か……!」

 

籠を諦めてシティに帰り、あの男を告発することも考えたが証拠がない。最悪根も葉もない罪を擦り付けた事にされて逆に俺が悪者扱いだ。

 

そのままの状態で少し走ると、俺の目線の先で泥棒が立ち止まった。やっぱり目的は俺をスメールシティから引き離す事……!

 

「その籠を返しやがれっ!」

 

俺が止まった泥棒に飛び掛かろうとしたその時。茂みの中から何かが飛んできた。既のところでそれに気がついた俺は飛びかかるのをやめて後ろに跳ぶ。飛んできたのは瓶の先に火がついているもので、地面に落ちた瓶は割れて中に入っていた油に引火して燃え始めた。

 

「っち、外れたか」

「お前らは……」

 

茂みを警戒して構える俺の前にゾロゾロと人が沢山でてきた。エルマイト旅団じゃ無い。装いや持っている武器を見て、宝盗団と判断する。

 

「…お前がクーファだな。すまんが依頼なんでな。死んでもらう」

「…宝盗団は宝しか狙わないんじゃないのかよ」

「普通はそうだ。ただ、俺らはこういうこともやってるってだけさ」

 

黒ずくめのフードを脱いで言ってくるリーダーらしき男を俺は睨み付ける。

 

「ならせめて、その籠はスバイルシアターの踊り子に渡してくれないか?その子の夕飯なんだよそれ」

「…はっ、この状況で中々いい度胸だ。…だが、その頼みは受けられない。この籠を回収することも依頼に入っているからな」

「……チッ、そういうことかよ」

 

あの男。妨害ならまだしも殺害を企ててくるとは思わなかった。

 

どの道、ここで死ぬ訳にはいかない。俺1人にここまでする奴だ、ニィロウの傍に居させたら何をしでかすかわからない。今すぐに彼女の元に行かなくては。

 

相手は5人、それぞれ武器を持っている。それに対してこっちは丸腰、愛用の剣も家に置いて来たままだ。

 

「だったら力ずくでそれを取り戻すだけだ」

 

俺は徒手空拳の構えを取ると、宝盗団のリーダーが顎で指示をだした。

 

「…殺れ」

「死ねぇっ!」

 

俺に飛びかかるのは大きなシャベルの様な武器を持った大男。普通の市民ならこれで終わりだが、さっきも言ったように俺はそこらのもやしっ子とは訳が違う。

 

「がっ!?」

 

俺は武器を縦に振りかぶる大男に対して1歩前に出ると、振り下ろす前のガラ空きの顔に掌底を入れながらすれ違う様に重心移動をした。

 

顔に強烈な衝撃を食らった大男は、自分の重心であるへそを支点にして回転。後頭部を地面に打ち付けて昏倒した。

 

「…まずは1人」

「こ、コイツ、神の目も持ってないでっ!」

 

ザワつく周りをよそに大男が持っていた大きなシャベルを拝借すると、今度は火炎瓶を持った奴に飛びかかった。

 

腰のナイフを抜いて応戦しようとしたのが見えたのでシャベルをそいつの肩に突き込んで止めさせると、左手の瓶を奪い取って瓶を口に叩き込む。

 

「ムボッ!?」

 

瓶を銜えたことによって中身の油が口に流れ込んで苦しむ宝盗団の顎にシャベルを回して持ち手の方を打ち込んでやるとバキッと生々しい音を立てて瓶を噛んだ歯が砕け散り、白目を剥いてそのまま後ろに倒れ込んだ。一応窒息死しないように瓶は出してやる。

 

これで2人。

 

俺がなんでここまで戦えるかと言うと、前も言ったように元々冒険者を目指していたからだ。なんならちゃんと師匠もいる。

 

この喧嘩殺法というかなんでも使う様な戦い方は師匠から教わったもので、剣がない時にも戦えるようにと叩き込まれた。

 

あっという間に2人をのした俺は、驚いている宝盗団リーダーにシャベルを肩で担ぎながら言う。

 

「なんだ、俺が戦えるのは依頼主から聞いてなかったのか?」

「…っちぃ!減らず口を…!クロスボウを使え!」

 

そう指示をされた残りの3人の取り巻きがクロスボウを構えて来たので俺は()を用意して突っ込む。

 

「なっ!こいつ倒れてる奴を!」

「ほら、撃てるもんなら撃ってみろよ」

 

俺は盾を1人に向かって蹴り飛ばすとそいつに急接近した。ほかの2人が俺を狙おうとするが、味方を撃つことを恐れてなかなか撃ってこない。俺はクロスボウからの射線の間に宝盗団を挟むことを意識しながら目の前の敵が待っているクロスボウの弦を外して撃てなくする。

 

「あっ…ゴハァ!?」

 

引き金を引いても矢が発射されない事に気を取られた瞬間に意識を刈り取るアッパーを叩き込み、そいつを盾にしてクロスボウの弦を引くと呆然と見ていた宝盗団リーダーの脚に向けて矢を発射した。

 

「……っ!?」

 

ちっ、リーダーは既のところで避けたが矢が掠めたらしく、血が滲んでいる。それを尻目に気絶してる盾の腰から矢を引き抜くともう1人の宝盗団の手の甲に矢を打ち込んだ。それと同時に俺を狙っているさらにもう1人に盾を蹴り飛ばす。

 

その隙に手を矢が貫いている宝盗団の頭をシャベルで叩いて気絶させ、すぐさま横に転がるとその位置に矢が刺さっていた。お返しに振り向きながらシャベルを投げつけてやると、ちょうど次矢装填中の所に直撃して倒れ込む。

 

「……お前で最後か?」

「……クソっ!こんなに強いなんて聞いてないぞ!?」

「ま、普段はタフチーンしか焼いてないからな。どうしてくれんだよ明日絶対筋肉痛だぞ?いいからそれを返せ」

 

項垂れた宝盗団リーダーは、俺に籠を手渡……そうとして後ろ手に持っていたナイフを振ってきた。俺も反応はしたがナイフが意外と長くて頬を斬られてしまう。

 

「チッ。……死ねッ!」

 

こいつ、戦いが出来ない奴を装っていただけで実際はかなりできる。ナイフを振るスピードがかなり速い。避けきれずに肩や脚を薄く斬られてしまう。俺は一旦バックステップをして距離を離すと、宝盗団リーダーは腰に変なマークが入ったバッジを取り付けた。

 

宝盗団は近くに籠を放ると、なんと手から炎を出した。……あのバッジのせいかっ!

 

さすがに元素を使う敵には敵わないので、籠を持って離脱することを第一に考えていると。宝盗団リーダーは炎を手に纏め、こちらに投げつけて来た。紅く光ったボールのような物が飛んでくる。

 

俺は咄嗟に半歩ずらしてそれを避けたが、その玉は俺を通り過ぎるや否や爆発を起こした。

 

「ぐあああ!?」

 

爆発をモロにくらい、俺は吹き飛ばされる。地面を何度も転がって近くの木に叩きつけられ、全身に走る痛みに苦しむ。幸い四肢が飛ぶような大きな爆発じゃなかったらしく、鼓膜も破れてないがそれでもダメージを大きい。俺は咳と共に血を吐き出した。

 

「ククク……これを使ったのはお前が初めてだよ…」

「ゴホッ……それは…」

 

神の目とも違うそれから炎を出してもう一度丸く固めた宝盗団リーダーの髪がどんどん白くなっている。

 

「ま、まぁ、これから死ぬお前にこれを説明しても無駄だろう?いい加減……死ねぇ!」

 

そういいもう一度爆弾を投げつけようとする。今度食らったら流石に死ぬ。俺は力を振り絞って立ち上がるとリーダーの手を掴んで爆弾を持った手をそいつの顔に叩きつけた。

 

玉が紅く光ると同時に俺は全力に後ろに跳んだ。

 

直後、爆発。

 

「ぐぅぅ!!」

 

後ろに跳んだお掛けで爆風もある程度相殺して地面に倒れ込む。

 

爆音が収まったところで爆心地を見ると、リーダーは顔を真っ黒にして伸びていた。トドメの割には大した威力じゃなかったな。リーダーが老けたように見えるから、もしかしてこのバッジの力の代償がヤバいのかも。

 

ってそんなことをしてる場合じゃない。タフチーンを一刻も早くニィロウの元に届けなくちゃ。

 

俺は身体のダメージを無視して、地面に置いてあった籠を手に取る。……そこで違和感に気がついた。

 

籠が異様に重いのだ。……そう、まるで中身が違うかのように。

 

 

……まさか。

 

 

俺は慌てて籠を開けて中身を見る。その中に入って居たのは、2人分のタフチーンなんかではなく。

 

 

 

 

 

ーーー恐らく逃走中にすり替えたであろう依頼失敗の時の保険(・・)

 

ーーー俺を確実にこの世から消す為の、……戦いに勝利し油断した俺の心ごと叩き潰す為の。

 

 

 

 

 

 

 

…籠いっぱいに詰まった爆弾だった。

 

 

籠を開けたことによって作動する仕組みの用で、俺が全てを悟り目を見開いた瞬間、爆弾から眩い光が迸った。

 

 

 

 

…なんか、時間がゆっくり流れているような気がする。これが所謂走馬灯ってやつか……?

 

 

この量の爆弾はさすがに無理だ。死んだ。遠くに投げようにも今にも爆発しそうだし。

 

なんでこういう時逆に冷静になるんだろうな。スメールシティの外に出てからリーダーが籠の中身をすり替えたようには見えなかったから、恐らく俺はずっと、とっくにすり替えられて中身が爆弾の籠を必死こいて追いかけてた訳だ。

 

はは、さすがにバカが過ぎるって。

 

ここまで絶体絶命だともうなんか逆に清々しい。俺は愚かな自分を笑って、目を閉じ…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 

…そうじゃないだろ。

 

 

 

…違うだろ。何勝手にあいつを置いて死のうとしてるんだよ。

 

諦めて目を閉じようとした俺の頭に沢山の彼女(・・)の姿がよぎった。

 

 

ーーえへへっ、クーファっ!今日の踊り、どうだった?

 

ーーいつもタフチーンを作ってきてくれて、ありがとねっ!

 

ーーう〜ん♪やっぱりクーファの作ったタフチーン、ほんとに美味しいよ!これを食べる為に公演を頑張ってるんだよね〜♪

 

ーークーファっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

……ニィロウっ!!

 

 

俺は目を開く。そうだ、まだ死ねない。毎日踊りを頑張って、練習も頑張って、毎日グランドバザールを盛り上げて、花神の舞を踊って、毎日笑顔を絶やさなくて、泣き言なんて言わなくてっ!……でも偶にしんどくて、ちょっとだけ涙を流すあの幼なじみを残してっ!!

 

 

こんなところで……こんな所で俺はっ!……まだ死ねるかァ!!

 

 

 

その時。もう爆発するであろう爆弾の前に光が凝縮して、バッジのようなものを型どった。本能がそれを掴めと叫んでくる。俺はそれに逆らわず手を伸ばしてそれを掴み取った。ーーその直後。

 

 

 

人ひとりなんて容易く吹き飛ばすような規模の爆発音が森の中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

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