ウマ娘プリティーダービー『The Player』   作:K.T.G.Y

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ガチャでカルストンライトオを引きました
……タキオンって何処にでも現れますね


外国人はウマ娘のR-18がない事を何様だと思うらしい

 

ガラッ!

 

「明けましておめでとうPlayer君。まずは雑煮とぜんざいを頼む!」

年が明け、アグネスタキオンはトレーナー室を豪快に開けただ己の欲を満たしたいだけの要望を……、

「……あれっ? Playerく~ん、何処だい? 私を待たせるとろくな事がないぞ~」

部屋は暖房が付いており暖かいが肝心な彼の姿がない。

「炬燵で蜜柑! 雑煮! ぜんざい! は~や~く~、現れてくれよ~!」

「……タキオンさん、また我儘ですか?」

「おお、カフェ、明けましておめでとう」

「……新年、明けまして、おめでとう……ございます」

いつもなら二人ではなく三人が集い雑談に華を咲かせる筈が、彼が、「Player」がいない。

 

「昨日は年越し蕎麦とおせち料理を食べさせてくれたのに、私の幸せを考えるならいつ如何なる時でもいてくれないと困る。そう思わないかい、カフェ?」

「……たまには、待ちぼうけもいいでしょう」

 

ビービービー!

 

「ん……エマージェンシー音?」

 

『Unauthorized access detected』

 

「不正なアクセスを検知しました、だって? おやおやPlayer君、とうとう運営のお縄にでも掛ったのかな?」

「……。もしそうなら、Playerさんが現れることは二度と……」

 

ヒュン!

 

「……ふむ。システム正常。各部異常なし。よし、成功だ」

何もない空間から、ようやくPlayerがお出ましである。いつものアバターだ。どこもおかしいところはない。

「やっと来たのかいPlayer君。私を待たせるなんていい根性してるじゃないか」

「いやいや済まない。サイゲームズ運営がウマ娘プリティダービーに対して不正行為をしているPlayerを取り締まるべく対応を強化したのでね」

「……もう二度と、会えないかと思いました」

「心配させて済まなかった。まあ、この程度のプロテクト簡単に突破できるけどね。外部ツールや垢共有をしている無知の極みの連中には悲劇だろうけど」

「Hackerの名は伊達ではないという事か」

「さあ新年早々仕事の時間だ」

 

ぽん! ぽん! ぽん!

 

Playerは迅速に掘り炬燵と蜜柑、雑煮とお汁粉を空間から取り出し、トレーナー室に設置した。

おまけでBGMも正月風に。

「ああ……あぁ~ぬくいぬくい……」

「タキオンさん、顔がとろけてますよ……」

ついでにアホ毛もふにゃらと下がっている。

「気持ちいいんだからしょうがないじゃないか~……ああ相部屋にも置きたいがデジタル君が駄目だというからここで思う存分堪能させてもらおう」

「……まったく」

 

掘り炬燵に入り、暖を楽しむ。時折、雑煮を摘まむ。いつまで経っても冷めない。くだらないテレビなんて見ない。

そうやってただただ駄目になっていくような堕落を貪りたい。タキオンはそう思っていた。

しかし……、

 

「……Playerさん、一つ提案いいですか?」

「うん、何かなカフェ」

「私……今年の新年はPlayerさんと初詣に行きたいです」

「ぶっ……!」

タキオンは吹いた。意外な提案だ。人込みを嫌うカフェがこんな提案をするとは。

晴天の霹靂というやつか? あれか? あれなのか? 等と頭の中でブツブツ呟くが状況と結論が整合しない。

 

「ああ、いいよ」

Playerはたじろぐ素振りを見せない。喜んで快諾する。

(むむむ、Player君はいつも通りとしてカフェ……君の方から提案するとは)

(思えばカフェも変わった、という事なのかな)

「……それじゃあ準備してきます」

「ま、待て二人とも!」

タキオンは強引に立ち上がろうとして膝をしたたかに炬燵にぶつけて悶絶しながら、

「わ、私も行くぞ!」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

神社は学園のウマ娘と人々でごった返していた。

トレセン学園のウマ娘が利用することが多い場所なので、見知った顔も存在する。

「…………」

しかし誘った側のマンハッタンカフェは不機嫌だった。

「おや~、カフェ~、何ぷりぷりしてるんだい?」

「知りません」

ゴミを見る目でタキオンにガンを飛ばす。

「ほほぅ、ひょっとして……Player君と二人っきりで出掛けたかった、とかなのかな?」

「……! 知りません!」

ぽかぽかぽかぽか。

「こらこらこんな人込みで『お友だち』を嗾けないでくれ。怪我人が出るだろう」

 

「さぁさぁ、マチカネ印の福を呼ぶ御神籤引いてってくださいな~今なら一本二百円ですよ~」

「お汁粉美味しいですわ! 甘酒も美味しいですわ!」

 

「おい見ろよ。アグネスタキオンとマンハッタンカフェだぜ」

「去年を代表するウマ娘だけあって、雰囲気からして貫禄があるよな~」

二人でGⅠ5つ取ったコンビだけあって視線が集まっている。その姿には後光すら感じる程だ。悪い気はしないのだがやはり暴走するファンというものはいるようで……、

「す、す、すいません! アグネスタキオンさん! サイン一筆頂けますか!?」

「断る」

「ああすいません。そういうのは求めてないので」

二人の間をPlayerが割って入る。

「今日は純粋に初詣を楽しみにこちらに出かけただけです。それにここで誰かにサインを書けば否が応でもサイン会に発展せざるを得ない。私は彼女にそのような負担は掛けさせたくありません」

「そ、そんな~!」

 

グイッ!

 

「ほらてめえ、諦めてこっちに来る!」

「分かってねぇな~。アグネスタキオンはファンサービスしない所がいいんじゃねえか」

 

「……やれやれ有名になるのも困りものだねぇ。この調子じゃ春の聖蹄祭ではどんな思いをする羽目になるやら……」

「はぐらかせばいいだけでは……?」

「君も似たような状況に追い詰められるだろうよ、カフェ」

 

神社の境内に開いていた屋台のジャンキーなにんじん焼きを貪りながら、タキオンはPlayerに尋ねた。

「そういえばPlayer君、私とカフェのシニア級の予定についてだが、メディアに吹いた内容で間違っていないかい?」

「ああ。タキオンは大阪杯、カフェは春天を目標に調整する」

「私にとって現在はとても充実している。プランAも順調だ。今年は攻めに攻めて功績を伸ばすのもやぶさかではないな」

「今のタキオンなら中山記念に出ずとも出走権利は与えられるだろうからね。わざわざ手の内を見せる必要もないさ」

 

「……Playerさん、私は、春天の前に調整でレースに出たいです……」

「ふむ、では日経賞か阪神大賞典あたりが妥当かな。カフェの得意とする長距離だ」

「では、それで……」

 

じと~~~。

タキオンが視線を斜めにするようにカフェを見つめていた。

(おいおいカフェ、Player君を見る眼がキラキラしているぞ。頭の白い毛もピコピコしているし、これは興味深いねぇ……)

カフェがPlayerと二人で初詣に行きたいと言い出した時はそれなりに驚いたが、成程、合点がいくなとニヤついた。

 

(そもそも、カフェの印象は人によって高齢者の血圧の如く乱降下する。優しくて面倒見がいい娘、お化けみたいで何を考えているかわからない娘、笑顔が似合う活発な娘、不気味で人見知りする娘、所轄様々だ)

(そういうウマ娘が、理解のある男性に父性を求めるというのは、……ふふっ、検証のし甲斐があるねぇ。感情がウマ娘の走りに何を齎すか、という意味で)

 

「……。今日は2人だけが……よかったのに……」

「何か言ったかい、カフェ?」

「な、なんでもありません……!」

「ふむ……」

「ところでPlayerさん、あなたは神頼みをする人ですか……?」

「そうだな、神は極めて不公平で不平等な存在だ。格下の命を弄び、運命すら安易に捻じ曲げる。されど、いや、だからこそ神なんだ」

「……私は、神など信じません。願いだって叶えてはくれない。こんな何処にでもある神社に静謐な神はいない……」

「まあ日本は一神教思想がないだけましだよ。森羅万象に神が宿り、その頂点に天皇がいるという構図だからね」

「……天皇陛下は偉大な方です。でも……私を助けてくれるわけじゃない。……Playerさん、見ていてください」

 

フワッ

 

一瞬、足元が消失した。そして永久の夕闇と灯色が星々のように輝く空間に、二人は入っていた。

 

「ほう……」

「狼狽えたりしないんですね……」

「まあね」

「……ここは、私だけの場所です。誰にも入ってこられない、私が物思いに耽るための特別な場所……」

「いい場所だ。時の流れも匂いも本当に何もない」

「ここに誰かをお招きしたのは、Playerさんが初めてです……」

「そうか……」

「……。Playerさん程ではありませんが、私だって、幻想を操るぐらいできるんですよ……」

 

「私も、見聞を広げ勉学に励み、知識を得て未知の世界を垣間見た時はこんな感覚だったと思う」

「気に入って頂けて、嬉しいです……。正直、迷っていたんです……。『私の世界』にPlayerさんを引き込むことが」

「カフェも積極的になってくれたという事かな?」

「……。はい……。今年の私は、少しだけ積極的にいこうか、と……」

 

そして二人は神社の境内に戻ってきた。

あそこは自分以外が長くいると戻れなくなるから、という理由で。

傍にいたタキオンは「?」という感じだったが、仄かに上気したかのようなカフェの態度を見逃さなかった様だ。

(これは、中々面白くなってきたみたいだねぇ)

 

なお年明け、アグネスタキオンは見事年度代表ウマ娘に選ばれ、多くのファンから祝福を受けた。

この時ばかりはマイペースなタキオンも、自制して「身の丈に余る肩書だと自戒し、選ばれた事を心から感謝し研鑽に努めます」と答えた。

 

ファンは「こんなのアグネスタキオンじゃない!」と嘆いたそうな……。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

2月。冬がそろそろ終わるだろうかという季節。

「バ~レンタイン! バ~レンタイン!」

「……なんですかタキオンさん。上機嫌ですね」

「いやぁ、今年はこれまでの功績が認められてファンから大量のチョコレートが送られてくると思うとねぇ」

「食べない方が、いいですよ……。血とか毛とか爪とか入ってる筈ですから」

「誰が食べると言ったんだい? それを錬金術の様に活用するのさ。新たな実験材料として、ね」

「……好きにしてください」

 

「そういえば……バレンタインと言えば、Playerさんに相談したいことがあります」

「ん? 彼にチョコを渡す算段かな?」

「それとは全く違う相談です」

「きっぱり言い切ったね」

 

ヒュン!

 

「よし、ログイン完了。外部アクセスとはいえ、もうこのプロテクトの穴を通すのは容易いな」

 

「……あ、お待ちしていました。Playerさん、折り入って相談が……」

「ん、何かな、カフェ?」

「実は……」

カフェの話によると、トレセン学園から近い商店街の老舗の和菓子屋が閉店を検討しているらしい。

しかしその店にはサクラバクシンオーやユキノビジンなど熱烈なファンも多く、何とか考え直してほしいと願っている。

ついては、間近に控えたバレンタインデーに対し、創作和菓子対決で店を盛り上げようとしているとのこと。

「……私とユキノさんで、広告のビラを製作して配っているのですが、バレンタインと言えば洋菓子というイメージは強く、苦戦しているのです……」

「それで私にアイディアを、ということか。……ふむ、そうだね……んー……」

Playerは何かを考えるようなポーズを取り、10秒ほど黙った後、カフェにこう告げた。

「ここは、衣装に凝るというのはどうだい?」

「衣装……ですか」

「ああ。和菓子処と言えば看板娘の存在は不可欠だ。君たちが和装に身を包み宣伝すれば人の注目を集めるだろう」

「……でも、今から衣装を用意するというのは」

「安心してくれ。私はPlayerだ。不可能はない」

そう言うと、スマホを取り出し、どこかに電話を掛けた。

「もしもし、突然のお電話失礼します。……はい、……ええ。衣装の依頼をしたいのです。……はい……はい……ええ、つきましてはご足労願いたいのですが、……はい」

(……? 誰に掛けてるんだろう……?)

 

「よし、案件として賜ったとのことだ。明日、ユキノビジンを連れてダンスルームに来て欲しい」

「……。わかりました……」

 

 

「あの、カフェさん、わたしなンかがお手を煩わせることになっていいンですか……?」

「……私のトレーナーさんは不気味で何考えてるか分からないし愛想もないですが有限は実行する人です。期待しましょう」

「あ、バクシンオーさんとフライトさんは引き続き和菓子創作を頼ンでます」

「私たちも期待に答えなければいけませんね。ですが、どうすればいいのか……」

 

その問題を解決にPlayerは動いてくれたようだが、果たしてどんな策があるやら。

カフェは内心不安だった。手伝いをしてくれるのは有難いが、何分頼むのがアレである。嫌な予感しかしない。

 

「…………」

(そろそろ、定刻ですが……)

 

ガチャ!!

 

「はぁ~い、ウマ娘ちゃんを美しく彩るbeautifulの化身として日々邁進するソウルのデザイナー、ビューティ安心沢♡ジューンブライドの時期でもないのに登場よ~」

 

「えっ、ええええ!?」

「び、びゅぅてぃ安心沢さンだ。本物だぁ……!」

これにはカフェもユキノも驚いた。まさか6月でもないのに彼女の姿が見れるとは心のどこそこを探っても読める筈もない。

 

「oh、あなたがマンハッタンカフェちゃんにユキノビジンちゃんね。それじゃあ、早速採寸しちゃおうかしら」

「……え、あ、あの……どういう事なんですか!? 話が見えません!」

「アラ、あなたのトレーナーちゃんから聞いてないの? 衣装の依頼を頼んできたって。しかも破格の値段で」

「本当でがんすか……?」

「クライアントの依頼には極力答えたいけど、私も暇じゃないからと思ってたんだけど、ネ」

「……じゃあ、どうして……」

「この時期、バレンタインを盛り上げたいってビューティーな衣装の依頼は多いの。でもみ~んな洋装なのよネ。いいデザインの和装をインスピレーションで仕上げたんだけど、いらないって。

で、残念だけど没にしようと思っていたらこの依頼が来たの。渡りに船ってやつかしら」

後は安心沢はブリリアントなデザインは仕上がってるから後は採寸するだけだとか、一応儀礼としてエンゲージになる為の宣言はしてもらうとか、

ペラペラ喋って、やる事やってからは、実は校内に入る許可は取ってないからと言った瞬間たづなさんに見つかって逃げるようにその場を後にした。衣装には3日ほど待ってほしいとか。

「……カフェさん、カフェさんのトレーナーさンって何者なンですか……?」

「……さっき言いましたよユキノさん。私のトレーナーさんは、不気味で何考えてるか分からないし愛想もないけど有限は実行する人だ、と」

 

かくして新衣装に身を包んだカフェとユキノの活躍もあり、イベントは大成功。和菓子屋も現役続行と相成った。

 

二人の衣装を纏った写真をグラビアに載せたところ飛ぶように雑誌が売れて異例の重版になったのは余談である。

 

「ところでカフェ、体が七色に光るけど無害な薬って和菓子に使えるだろうか?」

「……絶対に止めてください」

「いやこれは特許取ればいけるんじゃないか。そう思わないかいPlayer君」

「じゃあ申請だけはしておこうか。将来左うちわになれるといいね」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

それはそれとして、話はバレンタインデー前日に遡る。

いよいよ明日は和菓子屋存続を賭けたイベント当日。ユキノビジンとマンハッタンカフェも気合が入る。

準備は全て整った。後は明日の開店を待つだけ。

そんな前日、緊張を解すためカフェはコーヒーを淹れに理科準備室に向かった。

「……なんでいるんですか、タキオンさん」

「おやカフェ、私がここにいることは別に珍しくもなんともないだろう」

部屋中がチョコレートの匂いで充満している。本当に届けられたチョコで実験していたらしい。

「体臭がチョコになる薬の結果は上々。しかしPlayer君にあげるものは、もう少し凝ったものにしたいところだな」

「……。……あ。あーっ!」

カフェは今になって、イベントの事ばかり考えてPlayerに渡すチョコレートの創作を完全に忘れていた事を思い出す。

(どうしよう……これだけ骨を折ってくれたPlayerさんに、何のお返しもしないというのは……)

 

「なんだいカフェ、別にチョコを渡さなくてもいいじゃないか。彼は気にしないよ」

「……私が気にするんです」

「そうか。ではいいアイディアをあげよう。裸になって全身にチョコを塗りたくり、わたしを、た・べ・て♡、と……」

 

どかっ! ばしっ! ぼこっ!

 

「……タキオンさん、怒りますよ」

「ぐえぇ……。もう怒ってるじゃないか、カフェ。照れ隠しにお友だちをけしかけるのは止めたまえ」

「……うう」

「それならこうしよう。店売りのチョコを買ってきて口に咥え、手で掴もうとするPlayer君に対して強引に唇を塞ぎそのまま口にチョコを押し込み……」

 

どすっ! ばすっ! ぼすっ!

 

「……タキオンさん、茶化さないでください」

「……カフェ~。君最近ツッコミがキツいやしないかい……?」

「致し方ありません。……明日の商品の一部をお裾分けしてもらい、それを渡すことにします……」

「創作和菓子のプレゼントか。いいアイディアじゃないか。どうやら、私の出番はないみたいだねぇ」

「最初から、……期待してません」

 

「まあそれはさておき、私はラッコ鍋から構想を得た惚れ薬と自白剤を盛ったチョコで言質を取る作戦で行くよ」

「……なっ!」

「おや、問題でもあるかい? 彼は世界に二人といない最高のモルモットだ。当然学園卒業後も一緒にいてもらい世話をしてもらう。狡い手ではあるが致し方ないねぇ」

「……っ! ……っ!」

「おや、なんだいカフェ。顔を真っ赤にして。もしかして……、君はPlayer君の事が……」

「し、知りません……!」

コーヒーの入った愛用のマグカップも置いたまま、カフェは出ていった。

「……。やれやれ。少々からかいが過ぎたかな?」

 

 

そしてイベントが終了し、和菓子屋のお婆さんも現役を続けていくと相成ったわけだが、カフェは内心不安だった。

(……タキオンさんまで、あの胡散臭いPlayerさんに惚気たんでしょうか……?)

気になる。とても気になる。アグネスタキオンという女は貪欲故に、欲しい物は力づくでも手に入れようとする女な事をカフェはよく知っている。

 

(……学園に戻ったら、トレーナー室か理科準備室を除いてみよう)

 

『その時はまだ、大事にはなるなどとは夢にも思わなかったのです……』(テロップ)

 

カフェはトレーナー室の前まで来た。部屋の灯りは付いている。彼はいるようだ。

「Playerさ……」

カフェの瞳孔がカッと開いた。

ドアを開けた先には、Playerの腰に手を回し、胸に顔を埋め顔を真っ赤にしたタキオンの姿が……。

 

「……ん。・・・。……~~~~!!!!」

(アイツラ、ウマピョイダ!ウマピョイシタンダ!)

(イヤ、ヒョットシタラ、スデニ一線ヲ超エタノカモ!)

付近のお友達も、ざわ……ざわ……、とざわつく。

 

「……タタタタタタタ、タキオンさん、何やってるんですか! は、破廉恥ですよ……!」

「……。あ、ああ、カフェか。イベントお疲れ様」

「カフェも言ってくれないか? タキオンが離してくれなくてね」

Playerは何一つ動じた様子もなく、タキオンの頭をわしゃわしゃしている。

 

「いやあ参ったよカフェ」

「……何か、したんですか?」

「チョコに一服盛ったのをあっさり看破されてねぇ。お先にどうぞと食べてみたら、これがまた……Player君の見慣れた顔がやけに美しく見えてねえ」

「…………」

「その後Player君に対して、君は相手に仕えるのに見返りを求めるなと祖父から教えてもらったのかねとか、君は私の本音を聞き出す為に存在しているのかとか……そりゃもうペラペラペラペラと」

「…………」

「そしてとうとう、もうPlayer君のいない人生など考えられない。シニアが終わってもずっと傍にいてほしい……。そう口を滑らせてしまったよ」

「……~~!!」

「いやはや自分の才能が怖い。怖いが、今回ばかりはそれが裏目に出たねぇ。Player君の顔が見れないよ」

「……タキオンさん、最低です(ゴミを見る眼)」

 

バタン!!

 

カフェは出ていった。

 

「……。タキオン。一つだけ言っておく。無論、後でカフェにもだ」

「なんだい?」

「私は、恋愛ADVがしたくて君たちの世界に介入したわけではない。努々忘れないよう」

「分かっているさ。でもカフェには、しばらく口を聞いてもらえないかな?」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「カフェ~、いい加減機嫌を直しておくれよ~」

「……(つーん)」

「何という塩対応! あからさまな無視! ヘリオス君とルビー君の掛け合いより酷い!」

タキオンは全くカフェに口を聞いてもらえなくなった。

付近の『お友だち』もピリピリしている。

 

そしてその対応は、Playerにも向けられた。

「カフェ。ホワイトデーにはお返しをちゃんとするよ、まずは登録した日経賞で結果を出してくれよ」

「……(つーん)」

「うーん……。カフェ、君がどんな態度を取ろうとそれは自由だ。練習にもちゃんと出てくれるしね。後は走りで結果を出してくれればそれでいい」

「…………」

「でもね、あれ以来一ヶ月近くもこれでは流石に対応を改める事を要求せざるを得なくなる。そしてそう壁を作っておいて結果が出せる程レースは甘くない。それは肝に銘じてくれ」

 

 

そしてその影響は、とうとうレースにも向けられる。

 

ドドドドドドドドドドドッ!!

 

ワアアアアアアアアアアッ!!!

 

『勝ったのはマチカネタンホイザ! ダイヤモンドステークスからの連闘もなんのそのとばかりに勝利しました!』

「やーったやったったったー。これで春天にも胸を張って出れますよー。むん!」

 

「…………」

『一番人気マンハッタンカフェは三着惜敗。有馬で見せた豪脚は鳴りを潜めたようですが……』

『終始掛かっているように見えましたね。位置取りといい落ち着きを取り戻せないまま直線を迎えた頃には脚が使えてないように見えました』

 

「はぁ……はぁ……はぁ……くっ!」

カフェは額の汗を拭い、奥歯を嚙み締めた。期待されながらのこの体たらく、自分に嫌気がさすほどだ。

理由は分かる。本来信頼すべきPlayerとの確執。それがとうとうレースにまで影響するまでに膨れ上がってしまった。

 

レース場が失望で渦巻いている。レースは何が起こるかは分からない。だが今日のレースは、らしさがまるでない惨敗だ。

観客も肌でそれを感じ取っている。

 

「……こりゃ春天、マンハッタンカフェは消しだな」

観客席で見ていたベテラン記者戸島もそれを瞬時に判断した。

 

 

レース後、Playerはインタビューにおいて、「申し訳ありませんがレースを叩きに使わせていただきました」とカフェを庇った。

当日は本物のマンハッタンカフェをお見せします、とコメントし会見を打ち切った。カフェにはマスコミを介入させなかった。

 

「…………」

控室。俯くカフェの前にはタキオンとPlayerがいた。

「カフェ、ようやく目が覚めたかい?」

タキオンは機嫌悪そうにカフェを睨んでいた。いや機嫌が悪いのだ。カフェは彼女にとってライバル。だからこそこの有様に我慢が出来なかった。

「……すいません」

カフェは消え入りそうな声でポツリと呟いた。

「カフェ、私は別に君に罰を与えたいわけじゃないんだ。君のメンタルの事まで加味出来ず君を迷走させてしまった責任は私にも、タキオンにも一部ある」

「私もかい!?」

Playerにとって目標はあくまで春の天皇賞だ。ならばここは結果が出ても出なくてもいい。スキルptに多少影響が出る程度だ。

「…………」

『ソウダネ。君ハ確カニ不甲斐ナイ』

「……!?」

控室に甲高い声が響き渡った。間違いない、カフェの『お友だち』、それもカフェが追い続けていた一番大切な『あの娘』の声だ。

Playerにもタキオンにも聞こえる。脳内を経由していないから、おそらくそこにいれば誰にでも聞こえるだろう。

 

カフェの体がふわっと浮き上がり、天井に頭をぶつけたかと思えば、直後に地面に叩きつけられる。

「いたた……」

『君ノ目標ハ、私ヲ越エルコトジャナカッタノカイ? コンナ所デフラフラシテイル暇ナンカアルトイウノカイ? 省ミナ、カフェ』

「……ごめんなさい」

 

気配はフッと消えた。

『あの娘』も喝を入れる頃合いだと思ったのだろう。痛みが良薬になればいいが。

 

「…………」

それでもカフェの心は、未だ迷いの中にあった。

(どうすれば……どうすれば……)

 




函館公演に受かりました。久し振りに里帰りしてきます。
でも観光と思って函館に来る人がいたら、止めてください。何もない所です
観光業に全振りして地場産業が極端に弱く、人口減が止まらないゴミのような街です
まあ旭川よりはマシですが。旭川は北海道の恥部です。一生許しません
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