ウマ娘プリティーダービー『The Player』   作:K.T.G.Y

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おかしい。
私は今回は秋天のタキオンとカフェの激走を書くつもりではなかったのか?

なんで幕間みたいな話で終わってるんだ……?

「計画性のない作者だねぇ」
「……そんな話しか書けないから、人気ないんですよ」

申し訳ない。次回まで待っててください……


新シナリオの度にオリウマ娘が過去のキャラになる件どうにかならんか

 

ヴェニュスパークのジャパンカップ挑戦は、会見に集まった記者達の度肝を抜いた。

無理もない。異国の小さな島国とはいえ、世界レコードを数秒更新する春の天皇賞の走りは、うまチューブによって通信回線を通して世界中に知れ渡っていたからだ。

しかも直前の宝塚記念では国内中距離最強王者アグネスタキオンにも勝利している。

凱旋門賞にこそ挑戦しなかったとはいえ、今世界でも五指に入るウマ娘として、カフェは世界中に認知されていたのだ。

 

それだけではない。実はもう一人いた。

今年の凱旋門賞2着、前年優勝ウマ娘であるイギリス代表ウマ娘、リガントーナもまた、ジャパンカップ挑戦を表明したのだ。

 

「……二連覇の夢は、ヴェニュスパークによって阻まれた。応援してくれた祖国の人々には……申し訳ないと思っている」

「事実、今年の凱旋門賞をラストランにしようという提案もあった……。だが私自身、もう少し夢を追いかけたいという想いがあった……」

「ターフにやり残したこと……。もしそれがあるとするならば……、あの漆黒の幻影との真剣勝負……。この身を焦がし、滾る勝負がしたい、と……」

「晩年を汚す……? 否……。ウマ娘は走る運命にある。私は抗わない。遠い異国の地で、凱旋門賞にも勝る最高の勝負をしてみせよう……」

 

 

この『大事件』とも言える記者会見は、当然日本にいち早く伝えられた。

「が、凱旋門賞勝利ウマ娘が二人もジャパンカップ参戦だって……!?」

「大ニュースじゃねえか。今年のジャパンカップはとんでもないレースになるぞ!」

「既に来日の準備を始めているそうだ。10月中旬には来るらしい」

「秋のGⅠシーズン真っ只中だってのに、取材に割り振れる人員が足りないぞ! どうすりゃいいんだ……!?」

日本のメディアは国内GⅠとジャパンカップの特番の割り振りで大パニックに陥った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「いやはやなんとも、モテモテだねぇカフェ」

「……タキオンさんに言われても、嬉しくありません」

そんな国内の空気はどこ吹く風とカフェはいつもの旧理科準備室でコーヒーを淹れていた。

おそらく校門前には取材陣が今の気持ちを聞きたいと殺到しているだろう。

「それでそれで、どうするんだい? ジャパンカップ出走は前々から伝えていたが、まさか日和る気はないんだろう?」

「……無論です。受けて立ちます。……私も、『お友だち』も、それを歓迎しているでしょうから」

 

ヒュン!

 

「ログイン完了。各部異常なし、と」

そこへPlayerが現れた。

「お、来たねPlayer君。今ちょうど例の話をしていたところなんだよ」

「そうか……」

(マンハッタンカフェのジャパンカップ勝利条件は2着以内。しかし相手は凱旋門賞ウマ娘ヴェニュスパークとリガントーナ……)

(不味いな……最悪3着もありうる。よもや『プロジェクトL'Arc(ラーク)』と同条件が国内とはいえ実現してしまうとは)

「……Playerさん。自信ないんですか。私が、負けるとでも」

「もしカフェを負かせる相手がいるとしたら、あの二人だと思う」

Playerは、虚空に二人の姿とステータスを表示した。

「これは、凄いな……。流石は凱旋門賞勝利ウマ娘。国内のウマ娘とは比較にならないねぇ」

スピード、スタミナ、パワー、根性、賢さ、そして多くのスキル。どれをとっても一級品だ。

カフェはこれを相手に東京で2400を走る事になる。

「近年は日本のウマ娘が優勢とはいえ、ジャパンカップは外国産馬がレコードを出したことから始まった。日本にとって、海外に追い付け追い越せは至上命題となった。

そして、今や日本のウマ娘は海外を舞台に走る事が当たり前になりつつある。努力の結果といったところかな」

「…………」

「だが、計算外の相手がやってきたことは事実だ。こちらはホームとはいえ、間違いなくカフェと互角かそれ以上だろう」

「……つまり、今の力だけでは勝てない。Playerさんは、そうおっしゃりたいのですね」

「そうなるね」

「……大丈夫ですよ。私だけではない。Playerさんがアシストしてくれるんです。……負ける要素なんて、ありませんよ」

 

(ふぅン。カフェは実力だけでなく精神面も成長したと見える)

(やれやれ、その前に私が秋天を走る事が蚊帳の外となってしまったな……)

 

「……行きましょう。Playerさん。取材陣に対して、受けて立つ、そう表明しに」

「分かった。私はカフェの意志を尊重する。最高のレースを目指そう」

「Playerくぅ~ん、私が秋の天皇賞を走るって事を忘れないでくれよ~」

 

 

集まった取材陣に対し、カフェはベストを尽くすだけ、そう答えた。

勝負はやってみるまで分からない、私はカフェの力を信じます、Playerはそう答えた。

 

タキオンはふてくされた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

10月第3週。週末に菊花賞が行われる木曜日。日本のメディアが予想したよりも早く、ヴェニュスパークとリガントーナは来日した。

傍には師であるモンジューもいる。

彼女たちだけではない。

ドイツ、イタリア、ロシア出身のウマ娘もジャパンカップに出走するために来日していた。

もはや今年のジャパンカップは「二度と見られない一戦になる」というのがメディアの共通見解であり、その熱は日々を追うごとに高まっていった。

「歓迎ッ! 日本のトレセン学園他各メディアは、海外から来た諸君らを心から祝福する!」

学園理事長秋川やよいも、空港までやってきていた。傍には、『プロジェクトL'Arc』の責任者、佐岳メイもいる。

メディアも新聞、テレビで海外陣営を報道し続ける。

 

無論、国内のGⅠレースの特集が疎かになったわけではない。しかしこれだけの規模での国際レースとなると日本側も恥じない報道をせざるを得なくなる。

「日本に対してどのような感想をお持ちですか!?」

「意気込みのほどをお願いします!」

「国が変わっても自分の走りは通用すると思いますか!?」

週刊ウマ娘、ウマスポ、デイリーウマニュース、各メディアも質問責めを行う。

「静止ッ! こらこら、皆10時間以上の飛行機の旅で疲れているのだぞ! インタビューは後程にしないか!」

「あたし様が未だ叶わない凱旋門賞制覇、その気持ちを聞きたくはあるけどね」

 

 

そして翌日、時差ボケの体は動かすに限ると借りた東京レース場で公開練習が行われた。

秋のGⅠレースで東京レース場は使われることは多い。

だがレース場を知らねば勝てるものも勝てない、という提案からレースが行われない日はあらゆる練習を東京で行うという事が来日前から決まっていた。

観客席には日本の報道陣、ヴェニュスパークの師であるモンジュー、各ウマ娘のトレーナーが併走を見守っている。

「はっ、はっ、はっ、はっ」

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」

まずはヴェニュスパークとリガントーナが2400mを想定した併走を開始する。

「……どう思う? リガントーナ」

「そうだな……。踏みしめて分かるが、やはり固い」

「うん。そうだよね。コンクリートみたいだ。芝も、土も、固くて、どうぞ走ってくださいって感じだ」

 

「…………」

その光景を、鬼気迫る表情でモンジューは腕組みしながら見つめていた。

「やあ、モンジュー殿」

「……あなたは、見たことがあるわ。確か日本の……」

「日本のウマ娘が凱旋門を勝つことを目指す『プロジェクトL'Arc』の総責任者、佐岳メイだ。改めてよろしく」

「こちらこそ……」

 

「どうだい、あなたのお弟子さんは。愛弟子が凱旋門を勝ったんだ。師としては鼻が高いんじゃないかい?」

「私から言わせればまだまだだ。私が現役なら、私が勝ってたよ」

「……手厳しいね。弟子とはいえ甘やかす気はない、か」

「先程、日本のウマ娘が凱旋門を勝つことを目指す、と言ってたな」

「ああ、まあね。2着は実績があるんだが、1着となるとね……。世界の壁は厚いものでわたし様も難儀している」

「酷な事を言うが……、今のままなら日本のウマ娘は100年経っても凱旋門を勝利する事はできない」

 

「…………」

佐岳メイはあからさまにムッとした。

「練習に目的意識がないからだ」

「目的意識……」

「タイム至上主義でレコードを出すことがウマ娘の栄誉とされる日本のレース界では、当然土も芝も、コースさえも、走りやすいものになっている。だが私からすればそんなものは甘えだ。

あらゆるレース場を想定し、あらゆるレース場に対応できる、それこそが真に強いウマ娘の在り方だ」

「…………」

「日本に、雨が降れば泥の様になる芝と土があるか? 10m以上の高低差のある坂があるか? フォルスストレートはあるか?

欧州のウマ娘はそういった過酷なレース場で走る事を想定し、日々研鑽を重ねている。その有様が、強いウマ娘を作り出すのだ。日本のウマ娘には、その意識が欠けている」

「言うじゃないか……」

「まあ今回はアウェイではあるが、おそらく今年のジャパンカップは、どちらかがレコードを出して終わるよ」

 

 

「どう思います、戸島さん。ベテラン記者の眼からして」

「こんなの見る価値ねえよ。まるで本気を出してねえ。ジャパンカップまでの一ヶ月で完璧に仕上げるつもりだ。見る気なら毎日見に来なきゃ駄目だな」

「日本勢、勝てますかね?」

「酷な言い方をするが、多分この二人のどちらかがレコードを出して終わるよ」

「レコード決着、ですか……」

「日本のウマ娘がマンハッタンカフェを勝たせるために徹底的にマークして潰せばワンチャンあるかもしれねえけどな」

戸島は煙草を灰皿に放り投げた。

(賞金の問題じゃねえ。世界一の称号を獲るために来日、か……。頼れるのはマンハッタンカフェだけだってのが切ねえなあ)

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

その週の土曜日の事だった。

 

コンコン。

 

「ヴェニュス、来たぞ。開けてくれ」

同じホテルに泊まっているモンジューがヴェニュスパークの部屋に来た。

 

どたばた。どた。ばたばた。

 

「…………」

中で何が繰り広げられているかモンジューは大体想像が付いた。

 

ガチャガチャ!

 

「し、師匠、おはようございます!」

「……寝てたのか?」

「いえいえ、今日はオフだからって、夜更かしとかしてませんよ!」

「ほほう……。じゃあ部屋に入らせてもらおう」

モンジューはドアを強引に開けて部屋に入る。

 

「……なあヴェニュス」

「はい……」

「どうして来日して数日で部屋がこんなに部屋が汚くなるんだ!?」

 

ヴェニュスパークの部屋は普段着でありゴミであり、もはや脚の踏み場がない程ぐっちゃぐちゃだった。

モンジューはヴェニュスのズボラ癖は知っている。まだメディアにはバレてないが、プライベートは相当酷いもので、何度叱責しても直らない。

服を洗う事も面倒くさくなって新しい服を買って汚れた方は捨てるのは日常茶飯事。

ゴミの分別もまともに出来ず燃えるゴミと燃えないゴミの扱いも割と適当。

髪も短いのはセットするのが面倒くさいから。正直結うのもしんどいと溢していた事すらある。

 

もし走りの才能を見出してその道を歩ませなかったらとっくに人生が破綻していたかもしれないと思うとゾっとする、とは口が裂けても本人には言えないモンジューであった。

 

「ヴェニュスよ。ホテルにはコインランドリーがある」

「はい」

「何故使わない?」

「え、いや……新しい服買った方が楽かなー、って」

「馬鹿者!」

「わー師匠に怒られたー」

怒られても懲りないのだ。師匠としても頭が痛い。

「大体何だこのゴミの数々は!」

「聞いてくださいよ師匠! 日本ってコンビニエンスストアって24時間開いてるショップが街のあちこちにあるんですよ!」

「ああ、そうだな。もっともコンビニ発祥はアメリカだと聞くが」

「特に凄いのがこれです! カップラーメンです! お湯を入れるだけで滅茶苦茶美味しいヌードルが食べられるんですよ。しかも種類が多くて多くて」

「日本と言えばカップラーメン発祥の地だからな」

「これに別売りの煮卵なんかを入れて啜ると美味しくて美味しくて……いやー、ついつい食べ過ぎちゃいました」

「深夜にカロリーが多い物を食べるなとあれほど……」

部屋の足の踏み場がないのも、それは多分ゴミ箱が溢れてもう入らないから部屋中に撒き散らしたからだろう。

「ほら、もうすぐホテルの清掃員が来るぞ。ゴミを片付けないか」

「大丈夫ですよー。チップはずみますから」

「馬鹿者。日本にチップはない」

「……。……? え?」

「日本の客室清掃員は薄給の中辛い思いをしながら働いている。我々インバウンドが部屋を汚すから片付けが辛いと有名だ」

 

コンコン。

 

「すいません。本日の客室清掃の者ですが……」

「ほら来たぞ」

「わー! わー! す、すいません、ゴミだけ出しますからちょっと待ってくださいー!」

「……全く、ホテルの一室をゴミ屋敷にするつもりか」

始めはレースで結果を出してくれれば大目に見ると考えていたモンジューだが、流石に度が過ぎたのでその都度説教をしていた。

今日も胃が痛いモンジュー師匠であった……。

(自己管理が出来ない者は何をやっても駄目なんだが……よくこれで凱旋門を勝てたものだ。やれやれ)

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

今日のオフ、リガントーナは新幹線で東北の歓楽街に来ていた。

「……新幹線。素晴らしい乗り物だ。イギリス鉄道も悪くはないが、何より快適だ。世界中が作りたがる気持ちが分かる」

今日のお目当ては、日本の温泉。都内のスーパー銭湯でもいいが、やはり日本に来たからには天然の温泉に入りたいと思って遠路はるばるやってきた。

「このホテルか……」

事前の調べで日帰り入浴が出来る事は知っている。一部のホテルは宿泊者限定なので調べておかないと後になって愕然とすることになる(作者一敗)。

服を脱ぎ、ロッカーに入れ、湯浴み着を付けていざ、浴室内に。

「おお……おおお……」

多くの人々が入浴を楽しんでいる。この光景だけで感動で胸が震える。

リガントーナは風邪を引きやすい。注意しているのだが、何故か引いてしまう。年に最低2度は引く。

特にイギリスの冬は寒くていくら着込んでも寒い。日本にも四季があり、当然冬もあるのだが、イギリスの冬はそれ以上でいつも憂鬱になる。

「さて……」

リガントーナははしゃぎたい気持ちを抑えながら露天風呂の方に向かう。

「見て、あのウマ娘の人、すっごい美人!」

「外国の人だよね。日本の温泉は海外の人にとっては珍しいのかな」

ヨーロッパにもイタリアの辺りには風呂の文化が残っているが、イギリスはもっぱらシャワーだ。

それに風呂の湯を溜めたとしても日本の様に追い炊き機能などないのですぐに冷めてしまう。

 

ガチャ……。

 

「おお……!」

なんと広い風呂なのだ。リガントーナは感嘆した。

風呂だけではない。装飾も実に凝っている。何より自然を見ながら風呂に入るという発想が素晴らしい。

「よし……」

足元を滑らせない様に、ゆっくりと湯の中に身を沈ませ、座る。

「ああ……最高だ……。たっぷりの湯に浸かり足を延ばすという行為が、これほど心地よいものだとは」

風で樹木の葉が揺れ、小鳥が泣く。まるで大自然が自分を優しく讃え、癒してくれるようだ。

今だけは、走る事を忘れ、この快感に身を委ねていたい……。

(ふむ、あちらの木製の風呂はここより温度が高いのか。後であっちにも入ってみよう)

 

一通り露天風呂を堪能したら、一度水分補給をし、サウナへ。

「日本は今空前のサウナブームらしいが、ここは改装してロウリュウを取り入れたらしい。そろそろ係員が来るな」

事前に入り、刻を待つ。

なお間違ってもサウナで盛ったりサウナストーンに小便をかけないようにしよう。そんな奴はPlayerじゃなくても怒って存在を消されるぞ(社会的に)。

「失礼しまーす」

(来た……)

ストーブで暖められたサウナストーンに、アロマ香る専用水がかけられる。

たちまちのうちにサウナ内は蒸気で満たされる。

(うっ……くおおおおおおっ! きたきたきた! このむせかえる様な蒸気こそロウリュウの神髄……。体の老廃物が熔けるように出ていくのが分かるぞ……!)

汗が噴き出るように流れる。気晴らしに室内のテレビに目をやりながら、蒸気の責め苦にひたすら耐える。

 

「ふう……」

よろめきながらサウナを出る。満たされた。心地よい疲労の様な感覚が全身を包む。

そして……、

「水風呂……。お……おお……! ~~~~! と、整うぞ……!」

強烈な熱気から一転冷気に身が締まる。あんまり入ってると風邪を引くかもと分かってはいるのだが、抑えられない。

 

「堪能した……。日本の風呂を、この上なく堪能した……」

あの後改めて体を洗い、風呂上りにフルーツ牛乳を一杯飲んでから、リガントーナは着替えて食事処に。

「おお、ショーケースの中のこの料理の数々が全て蝋細工とは。改めて日本の技術の高さは素晴らしい……」

さて、どれにするか。どれも目を引く。何を選んでも美味しそうに見える。

「よし……」

「あ、いらっしゃいませー」

「座る場所はここでいいのか?」

「はいはい空いてるところならどこでもいいですよ」

「では、この『定食 雅』というものを頼む」

「はい、雅いっちょーですね」

「それから、私は箸が使えないので、スプーンとフォークを付けてくれ」

 

「お待ちどうさま。雅です」

「おお、なんという美しい盛り付けだ……!」

ご飯、味噌汁という和風の王道に、天ぷら、刺身、香の物。

「ふむ、まずは天ぷらを……」

フォークを差し込んだのは大振りの海老天。専用のタレに付け、口へ……。

 

サクッ……。

 

「……! ん~~~」

プリプリの海老の甘みとサクサクとした衣。甘いタレ。全てが調和して口の中が喜んでいる。

「フィッシュアンドチップスとはまた違う香ばしさ。揚げ物だというのに油っこさを感じさせないのは見事というほかない」

続いて刺身に挑戦。

(日本で重宝されている生の魚を食べるという文化、残すのももったいないので挑戦してみよう)

「この山葵という強烈な辛みのあるハーブと醤油というタレに付けて食べるのだな……」

 

つ~~~ん。

 

「……!? ~~~~! こ、これは鼻にくるな。だがこの辛みが刺身の生臭さを取り除いているのか。美味しいじゃないか……」

新鮮な海の幸を珍重するのも分かるとリガントーナは感動した。

 

 

「いや~食べた食べた。日本食、恐るべし……。さて、次は何を食べてみようか」

腹六分目を満たすべく、次の料理を思案するリガントーナであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

来日したウマ娘達が日本を満喫する中、アグネスタキオンはストイックに練習に励んでいた。

「はーっ……はーっ……」

「……タキオン、タイム落ちているよ」

「うっ、そ、そうか……」

タオルとドリンクを渡され一息付こうとした時、Playerに言われる。

ストップウォッチのタイムを除く。あまり芳しくない結果が出ていた。

「……タキオンさん、調子悪そうですね」

「ふ、ふふ……口は禍の元ということだね。カフェをいびっていたツケが、今になって脚にもたれかかってきたようだ」

「……重石が乗っているのは、脚ではなく……心では? タキオンさん」

あれほど泰然自若を体現していたタキオンが、追い詰められている。

ステータスは盤石だ。付け入る隙などない。しかしメンタル面が揺らいでいる。

カフェの前を走っていた自分が、今や追う側に回っている事を悟ってしまったからだろう。

 

(ウマ娘の無限の可能性……かつて見えた神の域を、Player君は破滅と揶揄した)

(だが、私は見たい……。あの光景をもう一度見たい。もう一度だけ……もう一度だけでいいんだ……!)

 

「タキオン、余計な事に固執していると、自分を見失うよ」

「Player君……。仕方ないだろう。私だって人の子だ。結果以外に求めるものがあってもいいじゃないか」

「君の次走の勝利条件は一着だ。もし不覚を取るようだったら、私は容赦なく時計を使う」

「いらないよそんな玩具。勝つさ。勝てばいいんだろ?」

「別にレコードを出せとかそういう要求をしているわけじゃないんだ。普通にやって普通に勝てばそれでいい」

「……。もう一周してくる」

タキオンは駆けていった。

 

「うーん、完全にかつてのカフェと立場が逆になってしまったな」

「……負けの味が一度染みついてしまったら、そう簡単に、拭えるものではありません……。タキオンさんは、焦っている……」

「私としては、普通にプランAルートのタキオンでいてほしいものだが」

「思春期の乙女は多感なんですよ……。あ、いや……私らしくないですね。忘れてください……」

「次のレースはタキオンにとって剣ヶ峰となる。何事もなく終わってくれればいいが……」

 

(やはり宝塚でカフェと対峙させるべきではなかった、か……)

(私としても、あんなタキオンは正直見てられないんだが……)

 

「…………」

タキオンは走りながら物思いに耽っていた。集中できてはいなかった。

(私はウマ娘の無限の可能性を求めていた。だが、その定義とは、何だ……?)

(もっとも速く走れる者なのか、もっとも長く走り続けられる者なのか、それともどれだけ走っても怪我とは無縁の者なのか……)

 

速さという点では今の自分はもはやカフェに後れをとっている。

長く走れるという点では自分は長距離以上を走った経験はない。

怪我という点では既に自分の脚は人に救いを乞わなければならなかった欠陥品だ。

 

(二度と走れなくなってもいい、ありったけを出せば、求める領域に届くかもしれない。だが、今の私にその覚悟はあるか……)

(心のどこかで未練がましいものがあるのではないか……。私は単に怯えているだけじゃないのか……)

 

「……っ! くそっ! 落ち着けアグネスタキオン! 普段の自分は何処に行った……!?」

 

 

そんな走っているタキオンを見ながら、Playerの心中は複雑だった。

「タキオン……」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

一方でタキオン以上の仕上がりと思われてもおかしくないのがダンツフレームだった。

「ゴール! はぁ……はぁ……どうですかおハナさん」

「この上ない程素晴らしいタイムだわ。これならアグネスタキオンにも勝てる。いや、絶対勝てるわ」

「はいっ!」

 

「凄えなダンツ。猛特訓の成果がここまで出るとはな。あー俺もレースに出てえ! 有馬まで待てねえー!」

「焦りは禁物だよポッケ。走りたいという気持ちをぐっと溜め込んで最後の最後に爆発させる、そう決めたじゃないか」

「フジさん……。いや分かってますよ。分かってるけど……あのダンツを見てるとどうしてもというか……」

 

(勝てよダンツ! 先にタキオンに吠え面かかせるのはおまえに譲ってやるからな!)

 

 

「はぁ~、今日もつっかれた~」

もはや超特訓のペースが完全に染みついてしまったダンツだが、それでもこの疲労感には慣れない。

今日も明日まで熟睡できるなー、そう考えていたところに、

「やっほー、ダンツちゃん。おつかれー」

「ミラ子ちゃん」

「材料買ってきたんだ。後で部屋でタコパしようよ」

「いいねー」

 

じゅ~。

 

「シーフードミックスもあるよ。イカも海老もあるよ」

「ははは、これじゃイカパとエビパじゃん」

といた小麦粉をたこ焼き器に入れ、思い思いの材料を入れて、焼けたらひっくり返す。

おいしく焼けたらたこやきソースを搦めてふーふーしながら食べるとおやつみたいでとても美味しい。

「あちっあちっ」

「ははは、ミラ子ちゃんこの前はお好み焼き焼いてくれてありがとうねー」

「えー、何を今更ー」

 

「……ダンツちゃん。ダンツちゃんはほんとーに凄いよ」

「……??」

「あんな私だったら三日も持たない練習続けてさ。タキオンに勝つんだー、って。辛かったよね。苦しかったよね」

「えー、なにー、ミラ子ちゃんなんか気持ち悪いよー」

「気持ち悪い言わないでよー。私は私なりにダンツちゃんをリスペクトしてるんだよ。あんなにぷにぷにだった体が今やムキムキって感じだもん」

「はは、確かに筋肉は付いたねー」

「勝てるよ。ダンツちゃんなら」

「……。うん!」

「よーし今日は前勝祝いでがんがんいっちゃおー!」

「わわ、ミラ子ちゃん太ったらまたトレーナーさんにプールに連れていかれるよー」

 

決意した者と、未だ迷いの中にいる者。

 

それぞれの思惑が交錯する中、いよいよ10月第4週。天皇賞秋を迎える……。

 




「作者君。話題沸騰中だねぇ。週刊コロコロコミックの『ダウナーお姉さんは遊びたい』」

「タキオンに似てるっていうあれ?自分もみたけど本当に似てるよね」

「これはあれか? 私におねショタをやってほしいというあれかな?」

「だからサイゲはR-18禁止だって」

「でも君、極秘ルートで手に入れたウマ娘R-18本幾つも持って……」

「わー! わー! わー! その話は申し訳ないがNG!」
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