ウマ娘プリティーダービー『The Player』   作:K.T.G.Y

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ネトゲで仕事を辞めた人は多い。
辞めろと言われた人も多い。
ネトゲは遊びじゃない。
あなたにとってウマ娘の育成は遊びですか?
いや、ちゃんと遊びになってますか?


おまえはウマ娘で仕事を辞めたのか

アグネスタキオンがホープフルステークスを走っていた頃、トレセン学園は冬休みに入っていた。

帰省する者が殆どだが、一部は寮に残っている。

 

マンハッタンカフェの同部屋のユキノビジンは、

「この時期は帰省して屋根の雪さかかねえと、重みで潰れちまうンでず」

 

アグネスタキオンの同部屋のアグネスデジタルは、

「冬コミ! さいたまスーパーアリーナ! 横浜ぴあアリーナMM! あっひょおおおおおっ推し巡りで幸せすぎるよぉぉぉぉぉっ!!」

 

直前のクリスマスではダイワスカーレットとウオッカがトラブルをなんともせずタワーを駆けあがりイルミネーションを完成させれば、

近所の古い神社ではキタサンブラックとサトノダイヤモンドがウマ巫女参りを見事やり遂げ人々の喝采を浴びた。

 

 

そして、新年が明ける。

「ふわぁ……」

アグネスタキオンは帰省もせず、理科準備室で実験を……した結果、薬品を暴発させ部屋を真っ黒にして逃げた所を捕まった。

掃除はPlayerがやった。

「元旦になったか……。まあ、一富士二鷹三茄子とはいかないねぇ」

眠たい目を擦り、重い体を持ち上げ、身支度を整える。

「Player君はトレーナー室にいるのかな?」

 

 

「あけましておめでとうPlayer君! まずは朝食を頼む!」

「新年の開口一番がそれかい。君らしいといえばらしいけどね」

Playerはアバターである。ログインさえすれば時間軸など関係ない。理科準備室に向かったがいないのでトレーナー室まで行ったら、適当にPCをいじっていた。

 

「せっかくの正月だ。お雑煮とお汁粉を振舞おうかな」

「じゃあそれでお願いしよう」

 

「もぐもぐ……で、どうするんだい?」

「どうする、とは何かな」

「君の事だから元旦からトレーニングでもするのかなと思ったんだよ」

「はは、まさか。そんな真似はしないよ。まあ、ミーティングぐらいはするかもだけどね」

「ふぅン。では拝聴しよう。私の本年度の目標を」

 

「皐月賞出走権を賭けた弥生賞、そしてその後は皐月賞。後は成り行きかな……」

「それだけかい?」

「ああ、今のところは」

「確かに、強豪相手の勝負は自身を高めるいいトリガーになることはホープフルを走って実感した」

「クラシック期は体が出来上がって戦ってきた相手もより強くなっていく。レースに出なければ得られないデータもあるんじゃないかな?」

「まぁ、そうなんだけどねぇ……」

タキオンは話半分を装ってはいるが内心は複雑だった。

Playerは言った。史実のアグネスタキオンは皐月賞で『終わった』と。ならばその先は未知の領域だ。

なによりカフェがいる。彼は自分たちを両方同時に幸せにするルートを探る為現れた、そう言った。

ならばある程度頭の中で青写真は決まっている筈だ。

(腹の底は見せない……本当に食えない人だよ君は。いや、人である事すらも疑わしいけどね)

 

「検討する……と言いたいところだが、親愛なるモルモットである君の頼みを無碍にするのもいけないな。いいだろう。その方向で行こうじゃないか」

「有難う。じゃあ早速出走手続きを今のうちからやっておくよ」

 

カタカタ……カタカタ……。

 

「最優秀ジュニア級はやはりミホノブルボンが獲ったか。記者会見ではどんな抱負を言うのかな。あの無表情で」

「…………」

「さて、皐月賞を走るであろう彼女に対してどう対抗策を考えるか……」

 

 

「カフェは?」

「もうじき来るんじゃないかな。流石にレース直前に雪山登山はさせられないよ」

 

ガチャ……

 

「タキオンさん、Playerさん、あけまして……おめでとうございます」

「やあやあめでたい。周囲の『お友だち』も静かなものなのだねぇ」

「静かなのはいつものことです。機嫌を損なわなければ……、皆いい子たちばかりですよ」

 

「カフェ、京成杯の登録は済んである。次こそ結果を出してくれよ」

「分かっています……。同じ轍を踏み、散っていくウマ娘は多い……。レースの攻防とはそういうものなのだと学習しました……」

「そう。ほんの0.1秒で状況が目まぐるしく変わる。ウマ娘の『走り』とはそういうものだよ」

 

「さてさて、カフェの新年の抱負はなんだい。聞かせてもらおうか」

「まだ……そんな大それたことを言える体ではありません……。まずは直前に迫ったレースに集中するだけです……」

「ほほぅ、私と君、二人がレースでかち合う時、そんな時が来るとしてもかい?」

「私の目標は、アナタではありません……『お友だち』……それだけです」

「つれないねぇ」

 

二人の言葉のデッドボールは相変わらずだ。

そんなやり取りを、Playerは微笑ましく見ている。

 

「私の目標はウマ娘の走りの限界と、私自身の未知の領域にどこまで踏み込めるかだ。それが果たして叶うのか否か……、興味が湧くね」

「科学者特有の探求心というやつですか……」

「まぁね。ついては雑用各種をお願いする」

「……。Playerさんにやらせてください……」

 

「ふふっ……」

「ん? なにかおかしいかいPlayer君」

「いやなに、凸凹コンビかと思ったが、中々どうしてしっかりハマるんだな、と思っただけだよ」

「……」

 

「さて、それでは元旦という事で神社にお参りにでも行こうか」

Playerが提案する。

「いや、私は人混みは苦手なんだが」

「私も……です」

「おいおい、誰がわざわざ人が多い神社に外出すると言った?」

 

パチン!

 

トレーナー室は一瞬にして神社風に姿を変えた。

「はい。これでよし。賽銭を投げ入れるもよし、おみくじを引くもよし、絵馬に何か描くのもよし、好きなものをどうぞ」

「信じられません……。こんな事も可能なのですか」

「……いやはやなんとも、流石に私も驚いたよ」

 

「アプリに限らず、ネットと繋がったゲームはいつ不具合が出るか分からない。彼らに盆や正月はない。いつもPCに張り付いていなければならない。

……と言う事は、だ。こういう設備設置も可能だということさ」

 

結局、タキオンとカフェは賽銭に小銭を投げ入れ、お参りし、おみくじを引いた。

不確かな結果は嫌う、と言いながら大吉が出たタキオンはご機嫌だった。カフェは小吉だった。

 

一通りの作業が終わると、Playerは部屋を元に戻した。カフェはコーヒーを煎れに行く、と部屋を出た。

タキオンはPlayerが出したこたつで二度寝を始めた。

 

 

年明け、最初の週末の『京成杯』、マンハッタンカフェは今度こそ期待通りの結果を出し一着完勝。声援を浴びながらウイニングライブを踊った。

 

 

マンハッタンカフェ:目標・ファンを4000人集める。達成。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

季節は2月に入った。冬の寒さはまだ続く。

タキオンは暑いのも寒いのも苦手だ、とトレーナー室の炬燵から出ようとしない。

 

2月といえばバレンタインがある。

スーパーやデパートはチョコレート商戦一色に染まる。

 

ガチャ……

 

トレーナー室にカフェがやってきた。手の紙袋には大小様々な包装されたチョコレートが入っている。

「おやカフェ、それ全部貰い物かい? 君も隅に置けないな」

「勘違いしないでください……。クラスの女の子と……チョコを交換してきただけです」

 

カフェは今年、手造りをした。コーヒーの香りを効かせた、甘さ控えめのビターなチョコレート。

それを大量に作り、型にはめ、冷やし、完成。それを配った。

「有難うカフェさん、それじゃ、これお返しね」

といった具合だ。

 

もっともトレセン学園はウマ娘のみ。言わば女子高。中には、

「ライアン先輩! 受け取ってください! 一生懸命作りました!」

「私のも! プロテイン入りの チョコです!」

「私からも! そ、それから……わ、わたし……ライアン先輩のことが……」

「は、はは……参っちゃったな……」

 

「フジ先輩! どうぞ、これ私からのチョコレートです!」

「ひ、日頃からお世話になってるし、私のもどうぞ!」

「ふふ、ポニーちゃん達の色気にあてられちゃうね(実はヒシアマと貰ったチョコの数で勝負してるなんて言えないよね)」

 

「私はそういう習わしにはとことん逆指を立てたくなるんだがねぇ。まあ今日一日凌げばいいか」

「どうせタキオンさんにチョコレートをあげる物好きな人なんて……」

 

ガチャ!

 

「あ、タキオンさん、ここにいたんですか」

入ってきたのはダイワスカーレットだ。

「これ、この前のトリートメントのお礼のチョコレートです。どうぞ」

「おやおや、情けは人の為ならずとはよく言ったものだ。有難う」

「なっ……! タキオンさんの作ったトリートメント……!? スカーレットさん、大丈夫ですか。何か……髪が抜け落ちたとか、髪が突然発光したとか」

「え、いやいや、そんなことありませんでしたよ。よく効くし香りもいいし、愛用しています」

「…………」

 

「大丈夫だよカフェ、実験の偶然の産物ではあったが、ちゃんとプ……トレーナー君で被験したからね。問題はない」

「問題があったら言葉通り大問題なんですが……」

 

「もぐもぐ……、うん、美味しい。これは手作りの味だね。甘さ強めで実に美味しい。チョコレートに含まれたポリフェノールと砂糖は最高のシナジーだねぇ」

「さて……、私も少し頂きましょうか……」

挨拶を済ませると、ダイワスカーレットは去っていった。

 

フュン! ピーピーピー。ウィーン。

 

「ログイン完了。各部異常なし。やあタキオン、カフェ、こんにちは。今日は放課後ジムでエアロバイクを走ってもらうけどいいかな?」

「えー、嫌だー。炬燵から出たくないー。Player君、蜜柑を出して肩を揉んでくれ。夕食は鍋を突きたい」

「……タキオンさん、あんまり我儘言うと……炬燵消されますよ」

「ぶーぶー」

「幼児退行しても駄目です……」

 

「タキオンは相変わらずだな。ん、カフェ、その手に持っているのは……」

「チョコレートです。今日はバレンタインなので」

「ああ、今こちらの時間軸ではバレンタインなのか。では、二人を労うために、私からチョコを送ろうかな?」

「え、Player君、もしかしてそんな趣味が。駄目だぞ、不健全は断固NGだ」

「別に珍しい話じゃない。台湾なんかでは男性が女性にチョコレートを贈るんだ。2月14日にここまで騒げるのは日本人ぐらいなものだよ。と、いうことで」

 

ぽん!

 

「はい、チョコレート」

二人に渡されたチョコレートは綺麗にラッピングされていた。タキオンもカフェも紐を解き、包装を乱暴に破る。

「……。おいおい、ピエールマルコリーニのザッハトルテだって? よくこんなもの空間から出してこれたね」

「創造神に限りなく近い人ですからね……」

 

タキオンはプラスチックのフォークを刺し、豪快に齧り付く。

「…………。……。~~♪♪ 私はチョコに関しては味より量を重視するのだが、これは、今まで食べたチョコレートの中で一番美味しいねぇ」

「美味しいです……お世辞抜きに、これは本当に美味しい……」

「カフェ、これは世界一のブランド品だよ。味わって食べないと罰が当たるさ」

 

「ごちそうさま。いやいや、こんなものを食べさせられては、頑張るしかないじゃないか」

「気に入ってくれたようで何よりだよ。じゃ、そういう事で……」

「……おやぁ、この見返りを練習程度で返すのは勿体ないんじゃないかい」

タキオンが炬燵から出て、Playerに近づく。

「君も男なら、もっと嬉しい見返りを求めるべきじゃないかねぇ? そう、官能的で、肉感的な……」

「はいはい。冗談はその辺にしておいて、準備しておいで」

「なっ!? ちょっ、ちょっと、Player君、こんな美少女に迫られてその塩対応はないんじゃないかな!?」

「……止めておきましょうタキオンさん。この人は……ウマ娘に指導を行ってその見返りを求める、と微塵も考えていない。最も扱いやすく、最も扱いにくいタイプの人です……」

「むぅ……ちょっぴり傷付いたぞ。この怒りは器具にぶつけよう」

「壊さないでくださいね……」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

3月。

 

いよいよ春のクラシックレースのトライアルが始まる季節。

 

この時、タキオンとカフェは皐月賞トライアルということで『弥生賞』の出走をPlayerに希望していた。

別に張り合うわけではない。生涯一度しか得られないクラシックの三つの冠という好機。

ウマ娘なら誰もが憧れる夢の舞台に思いをはせ、出走権を得たいというのは自然な流れだ。

「…………」

(タキオンとカフェの直接対決……これはまだ時期尚早だ。出来れば回避させたい。二人が同時に幸せになる為には……)

切磋琢磨大いに結構、しかしこの未開のルートで格付け行為を行うのはまだ得策ではない、これがPlayerの出した結論だった。

(……私の予感が正しければ、この描いた『青写真』はハマる筈……)

 

「さて、Player君、今日は基礎的な併走でいいんだね?」

「…………」

 

「その前に、確かめたい事がある。カフェ……」

「何でしょう……」

「……調子悪そうだね」

「そ、そんな事……ありません……!」

「いや私の目は誤魔化せない。まるで『肌荒れ』状態になったかのようにやる気が落ちている。連闘を行ったわけでもないのに、だ」

 

「確かに、最近のカフェは何処かおかしいんだよねぇ。声を掛けても返事がない事もあるし、顔色も悪い」

「…………」

 

ぽん!

 

Playerは体重計を空間から取り出した。

「カフェ、乗ってみなさい」

「大丈夫です……。増減ありません」

「いいから」

「……」

 

…………。

 

「……え? そんな、どうして……」

「こ、これは……」

 

「体重が、5kgも減ってる……?」

 

 

「やはりこうなってしまったか……」

Playerが腕を組む。

「心当たりがあるのかい?」

「ああ。史実のマンハッタンカフェもこの春先、極端な体重減に悩まされたんだ。ピーク時でデビュー時比較で42kgも瘦せ細ったらしい」

「動物が42kgも痩せたら、そりゃ一大事だねぇ」

「元々体があまり強い方ではなかったんだろうね。そしてカフェ、君も体は頑健な方ではない。セーブしてセーブして、それでもこの状態は起きた」

 

「そんな……タキオンさんみたいに紅茶に角砂糖を大量に入れているわけでもないですが、昼食はちゃんと取っていた筈です……」

「やれやれ、カフェ~、体調管理すら出来ないのはアスリートとして失格だとは思わないか?」

「タキオンさんに言われたくありません……」

 

「……決まりだな」

Playerは組んでいた腕を解いた。

「カフェは悪くない。そこまで気を配れなかった私に責任がある。……だがこの状態でレースは無理だ。やむを得ない。弥生賞にはタキオンだけ出させる。しばらくは休養だ」

「……!」

カフェはあからさまに動揺した。

「大丈夫です! 走れます……!」

「……その状態で、『お友だち』に勝つつもりかい?」

「うっ……」

 

「ウマ娘もアスリートである以上、怪我は付き物だ。怪我さえなければ……そんな選手は荒野の砂塵ほどいる。全くの無名選手から、怪物と評された一流まで。

もしここで無理をして致命傷を負えば、二度と『お友だち』の背中は追えなくなる。そしてカフェ、君も壊れ、消え、終わる……。私は君を、そうはさせたくない」

「ですが……」

言わんとしていることは分かる。

カフェ自身も、かつて虚弱の身だったから走りたくても走れない辛さは理解している。

だが理性は無茶と分かっていても、あの背中を追えずにはいられない。

今追うのを我慢して羽を休めれば、その先にいるあの娘はもっと先に行ってしまうだろう。

それほど、彼女にとって『お友だち』は特別な存在なのだ。

 

「大丈夫。君が活躍できる舞台は必ず用意する。それまで細心の注意を払いながら軽めの練習をしていけばいい」

「そうだよカフェ。君が悪いわけじゃない。悪いのはでかい口を叩いておきながらこのような有様を招いたPlayer君にあるんだ。お友だちでボコってやればいいのさ」

 

「……。分かりました……」

結局、カフェもここで折れるしかなかった。無念である。

だが悔しさに拳を握った時、背中に『あの娘』がそっと肩を抱いてくれたのを感じた。

(……慰めてくれるんだね……。ごめんね……あなたには迷惑かけてばかりだし……期待もしてくれていた筈なのに。本当に……ごめん)

 

 

「さて、ではカフェに私の背中を見せるべく、精進しなければならないな」

タキオンがふんすふんす言いながら気合を入れる。

「カフェ、見ていてくれ。私は必ず皐月賞を勝つ。ブルボン? 何するものぞだ」

「タキオンさん……」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

皐月賞トライアル戦は二つある。

一つはマイルレースのスプリングステークス。そして中距離レースの弥生賞。リアルではディープインパクト記念とも呼ばれるレースだ。

いずれもレース場は中山であり、皐月賞の舞台と重なる。本番前に走るには絶好のレース場だ。

中山と言えば心臓破りの坂と短い直線。これをどう走るか、戦略的な面も兼ね備えなければポールトゥインは成し遂げられない。

 

「ふむ……」

控室には走る前のタキオンとPlayer、カフェがいる。

調子は絶好調。パラメータも他を圧倒、掛かりとブロックさえなければまず負ける要素はない。

まあ泰然自若のタキオンにそのような不安はないと思われる。

「タキオン、いい走りを期待しているよ」

Playerが他のウマ娘のパラメータを比較しながら声を掛ける。

「タキオンさん……、あんな自信満々に言ったんですから、不甲斐ないレースはしないでくださいね……」

カフェがジト目で言う。

 

「あー……その件なんだが、いやね、あんな口をきいておきながら今更なんだと思うだろうが……、Player君、カフェ」

タキオンが咳払いで一呼吸置き、

「今日のレースなんだが、負けていいかい?」

 

 

「なっ……!」

カフェが驚愕した。

「いや、ボロ負けするという意味じゃないんだ。二着になる。二着なら出走権は得られるそうだからね」

ゲームでは出走権などない。このレースは5着以内に入れば次に進める。なのだが、何故タキオンはそこに拘るのか……?

 

「理由を聞かせてもらえるかな?」

Playerが問う。

「ミホノブルボンに勝つ為さ。手の内は晒さない。ああ大したことないな、と思わせたいんだ」

「…………。ふむ、了承した。では2着になってくれ」

「Playerさん、……いいんですか?」

「実は私も似たような情報戦を考えていたんだよ。かといってタキオンに負けろとは言えない。どうしようかなと思ってたところさ。渡りに船というやつだ」

 

ガチャ!

 

「アグネスタキオンさん、時間です。レース場までお越しください」

「ふむ、では行ってくるよ」

 

 

『さあ最終コーナー回って直線に向いた! 先頭はアグネスタキオンだが、後方から2番人気ボーンキングが迫る! 差すか!? 差し切れるか!?』

 

「うりゃああああっ!!」

「……」

 

『どっちだ!? ボーンキング! ボーンキングだ! 皐月賞の前哨戦、弥生賞を制したのはボーンキングだ!』

 

「やったああっ! これで胸を張って皐月賞に挑める!」

「よくやったぞボーンキング! 見事な走りだった!」

「やりましたよトレーナー! 本番も勝ちますから見ててくださいね!」

 

 

「あー、アグネスタキオン負けたな……」

「前哨戦とはいえ、ホープフルのようなキレがなかったな」

「これは一番人気はないな。当日はミホノブルボンが注目されるだろう」

 

(妙だな……。ソラを使ったようにも見えるし、セーブしているようにも見える)

(スピードを上げる気もないようにも見えた。いや、まさかな……勝ちたくないウマ娘なんているものか)

 

「戸島さん、インタビュー行きましょうよ」

「ん、あ、ああ」

 

 

「タキオンさん……、本当に二着になりましたね……」

「勝つことは難しい。上手く負けることはそれ以上に難しい。ならば今日のレースの採点は、120点だろうな」

 

「やあやあ残念。済まないね、Player君。負けてしまったよ」

「白々しいですね……」

「お疲れタキオン。勝利の美酒とはいかないが、まずは紅茶を一杯どうぞ」

「ほほぅ。ふむふむ。想定内であり、計算内、そういう顔だね。私が言い出した事ではあるが、残念そうではないねぇ」

「レースで情報戦を展開し、想定した相手を煙に巻くのは一流にしかできないよ」

「さぁて、ウイニングライブで引き立て役に行こうかな……」

 

 

一方、ミホノブルボンはスプリングステークスを完勝。無敗のまま皐月賞に挑む形になる。

メディアは早くも無敗の三冠ウマ娘などと囃子始めた。

 

「楽しみだねぇ。皐月賞は」

タキオンは、Playerは、そんな周囲を他所に牙を研いでいたのを、まだ誰も気づいていない。

 




ブリュスクマン、君の出番は終わった。これからはドゥラメンテの時代だ。
……彼女はその後どうなったんでしょう。
何処かにないでしょうか。ブリュスクマンがキタサン世代の中ドゥラメンテを倒そうとするSSが
私、気になります
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