非常識に生きる者   作:七福えると

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人里にようこそ

人里はそこそこの広さがあり、少し歩くだけでもそこそこの長さのある建物や寺らしきものがある。道行く人々の視線がちょっと痛いのに疑問を抱きつつ、ルーミアに教えられた寺子屋へと足を運ぶ

 

だが寺子屋の外観が分からない。道行く人に聞くと少し引いた顔をして逃げられてしまう

 

一体どうした事かと頭を悩ませていると、自分の体を見て気が付いた

 

滅茶苦茶に汚れている。土と血が服を汚し、ボロボロだというのを知らしめるかのように服が傷みまくっている

 

しかし替えの服等あるわけでもないので、仕方なしに自分だけで辺りを探索する

 

しばらく歩いていると人だかりがあり、何事かと思い、野次馬に混じって自分も騒ぎの下へと近づいていく

 

近くまで向かうと一人の男がナイフらしき刃物を持って少女を人質に取っていた

 

 

「あの、何があったんですか?」

 

モブ「あ、あぁ。何でも食い逃げらしくてな。あそこに白い服を着た男がいるだろ?そこの店主なんだが、あの人質に取ってる男を追いかけたらあの子を人質に取ってしまったらしいんだ」

 

「はぁ~。たかが食い逃げでそこまで罪を重ねるかね?」

 

モブ「全くだ。あんなことをしても自分の罪が重くなるだけだろうに」

 

 

だが見てしまった以上どうにかしてしまうか。今の自分にはそれを成す事の出来る力がある

 

しかしどうやって人質を解放させようか。そう考えていると、一つ面白い事を思いついた

 

 

「…ヒャド」ボソッ

 

 

コップに入れる程度の氷を生成し、本来の呪文の様に尖った形ではなく、傷をつけないような丸い球体の氷を生成する。それを弧を描くようにして空高く打ち上げた

 

やがてそれは落下を始め、男の首筋から見えている服の中へとスポッと入っていった

 

 

男「つっ、冷たっ!?」

 

 

男が背中に入った氷に悶え、その瞬間を狙って女の子が駆け出して人質の下を離れていく。その隙を見逃さず、白い服を着た店主が男を取り押さえたのだった

 

 

モブ「あ、アンタ…」

 

「今見たのは内緒でお願いしますね」

 

モブ「…あぁ。そうするよ」

 

「あ、すみませんが寺子屋の場所を教えてくれませんか?実はそこに用がありまして」

 

モブ「それならこの道を真っ直ぐ行くと良い。しばらく行くと子供の妖精や妖怪、人間の子供たちが集まっている場所が見えてくるはずだから、そこが寺子屋だ」

 

「なるほど。教えていただきありがとうございます」

 

モブ「元気でな。また何かあったら力になるよ」

 

「はい。またその時に」

 

 

人里に住む男と別れ、教わった通りに道を進んで寺子屋へと向かう

 

しばらく歩くと寺子屋らしきものが見え、話に聞いた通り、たくさんの子供たちが授業を受けていた

 

今は授業中という事もあり、慧音が授業を子供たちに教えているようだった

 

流石に授業中にお邪魔する訳にいかないので、寺子屋の入り口近くでボーっとしながら時間を過ごす

 

鳥が頭上を何匹か飛び、薬売りや人々が目の前を通過していくのをしばらく眺めていると、学校のチャイムの音が鳴った

 

寺子屋なのにやけに現代的な学校のチャイムが流れたのに驚きつつ、寺子屋の門をくぐって中へと入る

 

 

「ごめんくださーい」

 

子供「あれ?お兄さんお客さん?」

 

「そうだよ。慧音先生にちょっと聞きたい事があってやってきたんだけど、呼んできてくれるかな?」

 

子供「うん!分かった!」

 

 

元気よく返事をし、子供たちが慧音の裾を引っ張って呼んで来た。少し困惑した様な顔で引っ張ってこられる慧音だったが、その顔は少し嬉しそうだった

 

 

慧音「すまない。君が私を呼んだ人かな?」

 

「はい。外来人の○○○と言います。実はルーミアにここに来た方が良いと言われて来たのですが」

 

慧音「ルーミアに?アイツが良く外来人を喰わなかったな」

 

「えぇまぁ。たまたま運が良かっただけです」

 

慧音「それで、私の所に来たと言う事は仕事が欲しいのか?」

 

「ですね。ここに来たばかりなので一文無しなもので」

 

慧音「ふむ…そういう事なら子供たちの相手をしてくれないか?何分、ここには自分しかいなくてね。私一人じゃ皆の相手をするのは大変なんだ」

 

「そういう事でしたら喜んでお手伝いさせていただきます」

 

慧音「話が早くて助かるよ。なら早速だが子供たちの相手を頼む」

 

子供「慧音先生。お話終わった?」

 

慧音「あぁ、終わったよ。この外来人さんが皆と遊んでくれるそうだ。存分に遊んでもらいなさい」

 

子供「わーい!」

 

 

そういって子供たちが一斉にこちらに向かって走り出す。だがそれを慌てて止めた

 

 

「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ。この上着を見てもらえれば分かると思うが結構汚くてね。出来れば上着だけでも洗いたいのだが、先に洗い場だけ貸してもらえないだろうか?」

 

慧音「おっと。確かにそうだな。なら裏手に案内しよう」

 

子供1「じゃあ僕も手伝う!」

 

子供2「あ、私も!」

 

慧音「お、おいおい。流石に人数が多いぞ」

 

「ははは。だったらお願いしてくれた(子供1)(子供2)にお願いしようかな」

 

子供1・2「「はーい!」」

 

慧音「では案内しよう。こっちだ」

 

 

そういわれて慧音の後ろを付いていく。裏手に回るとたらいと洗濯板があった

 

 

慧音「何か必要な物があれば教えてくれ。あ、水はそこの中に入ってるから」

 

 

そういって踵を返し、子供たちがいる場所へと向かって行った

 

 

「さて、それじゃあ今からこの桶の中に水を入れるから、この服を桶の中に入れておいてくれないかな」

 

 

そういって服を脱ぎ、子供1に渡す。渡された子供は元気よくハイと答え、桶の中へと持って行った

 

 

子供2「私は!私は!?」

 

「んー、そうだね。だったらこの洗濯板の使い方を教えてくれないかな?実はこれを使って服を洗うのは初めてなんだ」

 

子供2「えー。お兄さんこれを使ったこと無いの?駄目だなぁ…」

 

「あはは。ごめんね」

 

子供1「ねぇねぇ!桶持ってきたよ!早く水入れようよ!」

 

「おっ、それじゃあちょっと魔法を使うからよーく見ててね?」

 

子供1・2「「魔法?」」

 

「ザバ」

 

 

呪文を唱え、水が空中から桶に向かってドボドボと音を鳴らしながら入っていく。それを見た子供たちはキラキラした目でこちらを見ていた

 

 

子供1「すごいすごい!お兄さんって魔法使いだったの!?」

 

子供2「魔法が使える外来人さんって初めて見たかも!」

 

「まだちょっとだけしか使えないけどね。早速だけど洗濯を始めようか」

 

子供1・2「「はーい!」」

 

 

そういって小さな洗濯大会が始まった。かなり力を入れてゴシゴシと洗われ、汚れは落ちたが少しだけボロくなってしまったが、子供たちが楽しそうなので良しとしよう

 

洗い終わった服を乾かす時にバギとメラの二つを同時に使って熱風を生み出したのだが、これを見て子供たちがキラキラと目を輝かせながら、何とか近づかせない様に押しとどめるのに必死だった

 

にしても初めて二つ同時に呪文を展開したけど上手く行ったようで何よりだった。こういうのってかなり難しいと話に聞いていたが、少しコントロールに苦労しただけで済んだ

 

 

子供1「あっという間に終わっちゃったねー」

 

子供2「ねー」

 

「さて、それじゃ服も乾いたしそろそろ皆と合流して遊ぼうか」

 

子供1・2「さんせーい!」

 

 

子供たちに手を引かれて広場へと戻る。するとそこに⑨が仁王立ちで立っていた

 

 

⑨「おい!外来人!アンタは私の子分にしてやるからこっち来なさい!」

 

大妖精「チ、チルノちゃん。いきなり外来人さんにそんなこと言うのは失礼だよ…」

 

子供1「チルノがまた威張ってる~」

 

子供2「慧音先生に言いつけちゃおっかなぁ~」

 

チルノ「なぬ!それはズルいぞ!」

 

「ま、まぁまぁ。ようは僕と遊びたいって事でいいの?」

 

チルノ「む、話が分かるじゃん!」

 

「良いよ。それで何して遊ぶ?鬼ごっこ?それともかくれんぼ?」

 

チルノ「ふっふっふ…アタイがするのは勿論、弾幕ごっこだよ!」

 

「えっ」

 

子供1「ち、ちょっと!ここで弾幕勝負したら慧音先生から頭突きされるよ!?」

 

子供2「お、お兄さん!気を付けて!チルノはホントにここで弾幕ごっこするよ!馬鹿だから!」

 

 

ナチュラルにディスられてる⑨。哀れなり…

 

とまぁそんなことは置いといて、コイツは外来人が皆弾幕ごっこ出来ると思っているのだろうか?

 

 

大妖精「チ、チルノちゃん!駄目だって!」

 

チルノ「止めるな大ちゃん。アタイは自身のプライドに賭けてコイツに勝たなきゃならないの!」

 

「どうして急にプライドをかける事をするんだ…」

 

チルノ「まずは様子見!弾幕ごっこスタート!」

 

 

そういってチルノが手のひらから弾幕をこちらに向かって飛ばしてきた。近くに子供1がいたのですぐさま抱えて回避し、何とか事なきを得た

 

 

「あのガキ…ちょっと危ないから寺子屋に入っててね」

 

子供1「う、うん!お兄さん頑張って!」

 

チルノ「ほらほら、ドンドンいくぞー!」

 

 

氷符『アイシクルフォール』

 

 

ドォーンという音が聞こえ、チルノがスペルカードを使ったようだった。チルノの手のひらから弾幕が飛び、左右から挟む様に氷の弾幕が自分に向かって飛んでくる

 

弾幕に隙間があるというのは知っている。そしてチルノのこのスペカには致命的な弱点があるという事も知っている

 

真っ直ぐにチルノに向かって走り出し、当たりそうになる弾幕をギリギリで何度も避けながらチルノの懐へと踏み込む事に成功した

 

 

チルノ「なっ!ズルいぞ!」

 

「こんな所でスペルカードを使う奴があるか!」

 

 

スペルカードの発動を咄嗟に止める事は出来ないようで、すぐさまチルノの頭を掴み、左手にメラの呪文を唱えて飛ばす準備を整える

 

 

チルノ「えっ!?お前って魔法使いだったの!?」

 

「残念。ただの外来人です」

 

「さぁ、どうする?このままこれをお前に当ててピチュらせる事が出来るぞ?」

 

チルノ「うぅ~!分かったわよ!降参よ!降参!」

 

「はぁ…」

 

 

チルノの頭から手を放し、解放する。それを見ていた大妖精がすぐさまチルノに駆け寄り、こちらに向かってペコペコと頭を何度も下げるのだった

 

その後来た慧音に見事な頭突きをくらい、まるで鐘の音が鳴ったのかと思う程の大きな音が辺りに響き渡った

 

 

 

________

 

 

 

慧音「チルノがすまなかったな」

 

「いえ、あれくらいなら対処出来たのでまだ良かったですよ」

 

慧音「そう言ってもらえると助かる。しかしあんなこと出来たんだな」

 

「あれが出来たのはここに来てからですけどね…外の世界ではあんなこと出来ませんでしたよ」

 

慧音「ふむ…流石にそんな話は聞いた事がないな」

 

「何でも紫さんが言うには自分は幻想郷に受け入れられてしまったとの事です。だから能力が使える様になったんだろうとの事でした」

 

慧音「紫に会ったのか!しかし幻想郷に受け入れられたって…そんな外来人がいるのか?」

 

「詳しい事は僕には何も…」

 

慧音「まぁここで色々考えても仕方ない。飯を用意するからここで待っていてくれ」

 

「あ、それなら僕もお手伝いしますよ」

 

慧音「ふふっ。何、気にするな。客人にそんなことまでさせられないよ」

 

「…では、お言葉に甘えさせて頂きます」

 

 

そういって台所に立って料理を始める慧音。その背中を眺めながらこれからの事を考えていると、慧音がこちらに話しかけてきた

 

 

慧音「そういえば今夜の宿は決まっているのか?」

 

「いえ。外で野宿しようかと思っていました」

 

慧音「おいおい…幻想郷の夜は妖怪達の時間だぞ?」

 

「あても何もないもので。金だってありませんから泊まる事すら出来ませんからね」

 

慧音「そういう事ならウチに泊まると良い。ここはちょっと広いから客人の一人や二人位泊められるよ」

 

「でしたら、お言葉に甘えさせて頂きます」

 

慧音「ホラ、出来たぞ」

 

 

そういって料理が運ばれてきた。内容は米がどんぶりに山盛りに入っており、所々にさつまいもが入っていた

 

他にも味噌汁や山菜らしきものが皿の上に盛られており、外の世界に居た頃に昔のおばあちゃん家で食べた食事が出てきて懐かしさを思い出していた

 

 

慧音「丁度秋姉妹に秋の味覚を貰ってね。誰かに振舞いたかったんだ」

 

「いただきます!」

 

 

箸を手に取り一つ一つの食事を味わう様に噛み締める。米は芋の甘みが染み出して見事に芋との調和を果たしており、味噌汁を呑むと体が温まるだけでなく、先程まで噛んでいた米がホロホロと口の中でほどけていくようだった

 

山菜も歯ごたえが非常に良く、噛むごとにまるでレタスの様なシャキシャキという音がなっていた

 

 

「うっめぇ…」

 

慧音「そう言ってくれると助かるよ」

 

 

向かいで慧音も手を合わせていただきますと言って食事を始め、久々に人らしい食事に嬉しさを感じていた

 

食事も終わり、片付けを手伝った後は風呂の準備を始めた

 

所謂五右衛門風呂という物で、中に水を入れ、外から火を使って温めるというものだった

 

最初に家主である慧音が入り、火の調整に少し戸惑ったものの、かなり極楽という評価を頂いた。そして次は自分の番だ

 

 

慧音「湯加減はどうだ?」

 

「最高です…」

 

慧音「ふふっ。それは良かった」

 

「…風呂も飯も久々でした。本当にここまでして頂きありがとうございます」

 

慧音「構わないさ。幻想郷は外来人に厳しいからね。これくらいのもてなし位はさせてくれ」

 

「そうだ。ここに確か稗田阿求という人物がいませんか?」

 

慧音「阿求を知っているのか?」

 

「えぇまぁ。ちょっと紫さんからのお願いで聞きに行かなければならない事がありまして」

 

慧音「ふむ。なるほどな…」

 

慧音「良し分かった。そう言う事なら明日案内しよう」

 

「ありがとうございます。助かります」

 

慧音「しかし紫に頼み事をされるとは…大分変わった事をするものだな」

 

「何でも私は完全な別の外の世界から来ましたから。ある種の重要参考人として見られているんだと思います」

 

慧音「ほう?どうやら面白そうな話だ。せっかくなら聞かせてもらえないだろうか?」

 

「良いですよ。では、何処から話したものか…」

 

 

夜が更けていき、明日に向けての準備が始まっていく。明日はどんな事が起こるか楽しみにしながら、その日を終えるのだった

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