非常識に生きる者   作:七福えると

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紅白巫女に会いに行く

「…しかし左腕ヤバいな。マジで痛すぎる」

 

 

日の光が頭上で輝くお昼ごろ、夢の中でドレミ―の生み出した妖怪に噛まれた左腕の痛みが未だ取れないでいた

 

割と深刻なダメージだったようで、夢の中で癒したとはいえ、精神的なダメージはかなりの物の様だった

 

もしもこれが夢ではなく現実で起こったら?おそらく一瞬で絶命してしまうのではないだろうかという思いが脳裏をよぎり、身震いしてしまう

 

動かせないという訳ではないので歩きながら腕のストレッチをし、そのまま木々を掻き分けてとある場所へと向かっている

 

その場所は博麗神社。理由としては幾つかある

 

まず一つは東方の最推しと言える霊夢に会いたい。ついでに魔理沙にも会えたら御の字だ

 

もう一つは幻想郷の最重要拠点と言える場所だからだ

 

博麗の巫女というのは幻想郷を守護する守護者の様なものだったと記憶している

 

例え絶対に勝てない敵が幻想郷に現れても、幻想郷を守るために命を賭けて戦う。そこに個人の感情なんてものはなく、博麗という名前の意味、そして重さを背負っている一族が住んでいた場所だからだ

 

まぁ長々と語ったが、要は聖地巡礼である。ついでに道中で妖怪と喧嘩にでもなれば面白い事になりそうと推測しての事だった

 

そういう訳で地図をみながら博麗神社らしき場所へと向かっている。しかし先に進めば進むほど森から抜けられる気配がせず、一休みとして近くの木に寄り掛かる

 

 

「ふぅ…人里で幾つか保存食を買っておくんだった」

 

 

ぐぅ~と腹が鳴り、近くの木から樹皮をめくっては口に放り込んで咀嚼する

 

木の芳醇な香りと雨水を吸ったり虫が止まったのであろう匂いと味が口内を刺激し、一気に胃液が喉へとせり上がるが、精神力で胃液を飲み込み、そのまま飲むのだった

 

口の中が木のトゲトゲしたものが幾つか刺さるが、ザバの呪文を唱えて口の中を水で満たし、そのまま口をゆすいで地面へと吐き出す

 

 

「…そういえば紫が気になる事を言ってたな」

 

 

自分の能力について紫はおそらくと言っていた。これはつまり、今自分が使っているドラクエの呪文やステータスが見える以外にも様々な事が出来ると言う事ではないのだろうか?

 

しかし何だろう?頭を捻って考えると、一つの結論に至った

 

分からなければ試す。考えるのはそこからだ

 

左手を前に出し、呪文を出すイメージではなく、ドラゴンボールで言っていた気を出すイメージで掌にエネルギーを集める

 

すると、自分の中で何かが動くイメージがあった。まるで呪文を使う時とよく似てはいるが、おそらく違うもの。いうなれば生命そのものがエネルギーとなった物が掌に集まっているような感じだ

 

そのまま自分の掌にエネルギーを集めるが、エネルギーが掌に集まってはそのまま風に吹かれる様に散っていくだけで飛ばすまでは至らなかった

 

おそらくだが呪文とはまた違う。全く別とも言って良いエネルギーの使い方をしなければならないのだと推測をたてた

 

おそらくこれに詳しいのは紅魔館の門番である美鈴だろう。彼女は確か気を操る能力だったはずだ

 

 

「だが、今の自分には紅魔館は難易度ルナティックすぎる。そのまま向かえばただの外来人として受け入れられ、レミリア達の食料として食糧庫で吊るされるんじゃなかろうか?」

 

 

アニメでしていた様に何処かに気を集めて集中する。これを日常的にしておけば少しは気のコントロールが上達するだろう

 

ドラゴンボールを基準で出来ることを考えたが、これが出来るなら他の事も出来そうだ

 

しかしこれ以上試してしまえば器用貧乏になってしまいそうだ。しばらくはドラクエとドラゴンボールをメインに鍛えていった方が良いだろう

 

休んでいた体を起き上がらせ、気を練るようにして一点に集中させながら歩いていく

 

別の事をしながらまた別の事をするというのはかなり辛く、博麗神社に到着したのはそれから7時間後の事だった

 

 

夜、暗闇と静寂が辺りを包み込み、階段を登る音だけが辺りに響く

 

階段を登っていると、やがて神社の鳥居が近づいてきた

 

狛犬が並び、博麗神社に足を踏み入れた瞬間、横から声をかけられた

 

 

???「あら、こんな時間に参拝客?」

 

 

横から声が飛んできた。そちらを見ると赤い巫女服に腋を出している腋巫女がいた

 

 

???「誰が腋巫女だ」

 

 

おっと、こちらの声が聞こえていたらしい。厳しい目で腋巫女がこちらを睨んでいる

 

 

「紹介が遅れました。僕は外来人の○○○と申します」

 

???「あぁ。貴女が紫の言っていた外来人ね」

 

???「なら自己紹介を。私が博麗の巫女をしている博麗霊夢と申します。よろしくね」

 

「よろしく」

 

霊夢「しっかしアンタ…良く幻想郷の夜を生きてきたわね」

 

「ただ運が良かっただけですよ。ここにくる途中も妖怪に襲われませんでしたし」

 

霊夢「そっ。なら今日はどうするの?何処か泊まる予定でもある?」

 

「何処もないので境内の適当な地面で寝かせて頂きます。場所さえ貸してくれるなら、ですが」

 

霊夢「あら、中に入ろうって気はないの?」

 

「何処かに泊まるって聞いてる時点で僕を中に入れてくれないのは分かっていますから。とりあえずは境内を貸してくれるならそこで雑魚寝でもしますよ」

 

霊夢「罰当たりな事するわね…まぁいいわ。さっきのは私の言い方が悪かったけど、部屋なら貸してあげるわよ。神聖な神社で雑魚寝なんかされたらますます人が寄り付かなくなるわ」

 

「おぉ。助かります」

 

 

そういって霊夢が客室に案内しようとしてくる。しかしその前に自分にはやっておきたいことがあった

 

三万円を財布から取り出して賽銭箱に入れる。後ろを振り向いた霊夢が何してるのと訪ねて来たが、何でもないと返して後を付いていく

 

 

霊夢「とりあえずアンタ。汚いからお風呂に入りなさい。じゃないと部屋に上がらせないわよ」

 

「それもそうか。だったらドラム缶とかありますか?」

 

霊夢「ドラム缶風呂にでも入るつもり?そんなのに入らなくてもウチにお風呂位あるわよ」

 

「なん、だと…」

 

霊夢「ぶっ飛ばすわよアンタ」

 

 

こっちよと言われて後を付いていく。少し神社から離れた場所へと着くとそのまま脱衣所に連れ出された

 

 

霊夢「そこの籠に今着てる服を入れて頂戴」

 

「分かった。色々ありがとう」

 

霊夢「これくらい別に良いわよ。それじゃ、さっさと入っちゃいなさい」

 

 

霊夢が部屋から出るのを見て自分も服を脱ぐ。そのまま籠の中に服を入れ、風呂場へと繋がる扉をガラガラと音を立てながら開いた

 

浴槽は木造となっており、立ち込める湯気が樹齢何年か分からないが綺麗な木造風呂を露で濡らし、窓から差し込む月明りがそれを更に美しく光らせた

 

足先を湯船に付け、足から伝わる温度が体に向かってゆっくりと昇っていく。その感覚に喜びで震えながら体を慣らしていき、ゆっくりと足から体と順に浸かっていく

 

完全に湯船に体が浸かると極楽に来たように感じ、はぁ~っと大きく吐くように声を出してお風呂を楽しむ。すると窓の外からクスクスと笑う声が聞こえ、霊夢が聞いていたのだと分かると少し恥ずかしくなった

 

 

霊夢「そんなに気持ち良かった?」

 

「えぇ。とっても」

 

霊夢「なら良かった。着替えに関してだけど、宴会用に用意した服があるからそれを着て頂戴」

 

「分かりました。色々ありがとうございます」

 

霊夢「それじゃ、ごゆっくり」

 

 

そう言って霊夢の声が遠ざかっていく。窓から差し込む月を見ながらここに来てどうしようか考える

 

確か霊夢も博麗大結界を管理する人物だ。霊夢に頼んでも外の世界に行くことは出来るだろうが、紫に自分は外の世界に忘れ去られてしまったと言っていた。つまり外の世界に戻っても行くところなんかない

 

これ以上考えると気が滅入りそうなので風呂に再び浸かってのんびりとする

 

すると何かが飛んでくるかのような音が聞こえ、その音はやがて賽銭箱辺りで止まったかと思えば霊夢の足音がその場へと向かって行くのが聞こえた

 

 

霊夢「あら、…じゃな…。一体ど……の?」

 

???「れ…さん。実は…じんの方がいると…さでき…まして」

 

霊夢「そ…なら今おふ…にいる…」

 

???「なんとっ!それはシャッターチャ…スというこ…すね!」

 

霊夢「あっ、ちょっ…!」

 

 

突然風が窓の近くに吹き荒れるのを感じ、その方向に向けて手を伸ばす

 

 

???「こんばんは!清く正しい「メラ」あっつうぅぅぅぅ!!!」

 

 

火の玉が飛び、完全に油断していたのか躱す気配すらなくまともに喰らった

 

おそらく文屋だろうが、人様の裸を取材しようとは何事か

 

 

「取材ならお前も風呂に入れ。それなら聞いてやる」

 

???「あ、あやややや!?どうやら外来人さんは野蛮でかなりのプレイボーイと「もう一回燃やされたいのか?」」

 

???「じ、冗談ですよぉ~」

 

「…ま、アンタなら仮に燃やそうとしてもすぐさま逃げるんだろうな。幻想郷最速の文屋さん?」

 

文屋「おや、そのことを知っているとは、お話は本当だったんですね」

 

「話?」

 

文屋「なんでも人里で人が来るはずのない永遠亭の治験実験に参加し、無事に生還した人だと!」

 

「金が無かったから参加しただけだ。というかそんなに危ないのか?」

 

文屋「当然です!噂ではその実験に参加した人は体がボロボロになり、その度に回復しては傷つく場所が増えていってはまた直るという無間地獄の様なものなんですよ?」

 

「ほーん。そんなもんじゃなかったけどな」

 

文屋「と言いますと?」

 

「明らかに怪しい見た目の薬を飲んで体がおかしくなったり発情させられたり魔法を撃てるようにしてくれたりとなっただけだ」

 

???「ほうほう!それはそれは面白い体験をしましたね!」

 

 

カリカリとメモを書く音が聞こえ、しばらくすると手帳を閉じたような音が聞こえた

 

 

文屋「取材協力ありがとうございますぅ!早速ですがこの事を新聞にして発行しなくては!」

 

「あ、そうだ文屋」

 

文屋「なんです?」

 

「変な事書いたら地獄の果てまで追いかけてねじりミンチにするんでよろしく」

 

 

淡々と言葉を告げ、何処か震えた様な声ではいぃと返事をする文屋

 

しかしコイツは分かっているのだろうか?自分なんか相手にすればあっさりと返り討ちに出来るハズなのに

 

 

文屋「で、ではでは!この辺でお暇させていただきまーす!」

 

「おう。またなー」

 

 

窓の外から風を切る音が聞こえ、それに合わせて窓から風が入り込んで来た

 

風呂に入っているとはいえ流石に寒かった。とりあえず長湯しすぎたので風呂を上がり、入り口に置かれていた真っ白なタオルで身体を拭いて、何処かの道具屋の店主が着ていそうな服を身に着け、籠に入れた服を籠ごと持って部屋を出た

 

 

霊夢「お帰りなさい。どうだった?」

 

「最高でした。風呂を貸していただきありがとうございます」

 

霊夢「そ。なら今日はもう寝なさい。やる事だってもうないでしょ?」

 

「いや。その前に服だけ洗ってきます。あれしか服が無いんで」

 

霊夢「なら洗濯籠と洗濯板はいる?」

 

「大丈夫です。もう必要無くなりましたから」

 

霊夢「それってどういう…」

 

 

ザバの魔法とバギの呪文を唱え、空中に水を浮かせて左手に小さく回る風を準備する

 

宙に浮いている水の中に服を入れ、そこへバギの魔法を入れて洗濯機の様に回す

 

それを見てあんぐりと口を開けている霊夢を他所目に、少し消えかかってしまっているバギを再びかけ直し、汚くなっていく水を少しずつ捨てて新たにザバの呪文を唱えて新たに水を追加するという作業を繰り返していく

 

やがて汚れが取れていくのを確認すると、ザバの呪文を唱えるのをやめて服をこちらへと呪文を操作して飛ばす

 

まだ少し痛む腕で服を取り、バギの呪文も取り消してメラの呪文を唱える

 

服に触れそうになるギリギリまでメラを近づけ、しばらく裏表と乾かしてからメラを地面に落として火消しを行った

 

 

「良し。綺麗になった」

 

霊夢「あ、アンタ…外来人よね?」

 

「はい。幻想郷に受け入れられて能力を手に入れた外来人です。おかげで暫くの間サバイバル生活でしたがこの能力のおかげで助かってますよ」

 

霊夢「アンタ…良く生きてるわね?」

 

「さ、そろそろ寝ましょうか。僕は外の何処で寝れば良いですか?」

 

霊夢「だから、外で寝なくて良いって言ってるでしょ?アンタはこっちの部屋よ」

 

 

そうして霊夢に通されたのは客間らしき部屋だった。約5畳ほどあり、かなり贅沢ではないかと思う

 

 

「こんないい部屋を…」

 

霊夢「別に気にしないで良いわよ。河童たちが改造して少し神社が広くなったのは良いけど持て余してたからね」

 

「なるほど…そういう事でしたらお世話になります」

 

霊夢「さ、もう寝ましょう。何かあったら賽銭箱のある所から左の建物内で寝てるから呼んでね」

 

「はい。色々ありがとうございます」

 

霊夢「それじゃお休み」

 

「おやすみなさい」

 

 

襖がパタンと音を立てて閉じられ、敷かれた座布団を被って眠りにつく

 

その日の夢に紫さんが出てきたが、霊夢に何かしたらただじゃ置かないと言われた。そんなことしたら自分が夜の星となるのは容易に理解出来るのでする気も無かった

 

そしたら何で!?と取り乱す様に聞いて来たのでコイツめんどくせえと心の中で心底思いながら早く夢から覚めたいと願うのだった

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